「はあ!」
「おりゃあ!!」
「シャアア!!」
一時は戦線が崩れてこちらの兵達は総崩れとなっていたが、李書文や二コラ・テスラという強力な援軍のお陰で押し返すことが出来たようである。
エレナがエロ同人みたいな目に会うなど俺の集中力を崩さんとする卑劣な罠もあったが何とか苦難を乗り越えることが出来たのは喜ばしいと思う。
ただ未だに玉藻の前は健在で敵ケルト兵達の異常強化も続いている。
実際の所膠着状態に戻っただけなのだ。
「おのれ!人間如きが!!」
しかしながら局地的に見るとかなりこちらが優勢とみて良いだろう。
此処ではXの二刀流とマルタの拳がブンブン唸って玉藻の前を押している。
流石の大化生もこの二人に密着され呪術も使えず、傷の回復も出来ていない。
というか二人とも防御をほぼ捨てての攻撃の為相応の怪我を負っており、俺の回復魔術が無ければ実質互角、という事実が頭オカシイと思う。
まあ二人がそういう戦術が取れるのも友軍の援護で俺自身を守る必要がなくなったためである。
二コラ・テスラの高火力のお陰で殲滅力が上がり、ケルト兵に吶喊していたブーティカがフリーとなったのだ。(巻き込まれないよう退避したとも言う。)
そして現在は俺の護衛としてブーティカとタラスクが守ってくれているのだ。
尚、現在はケルト兵や追加の骸骨兵などの意識を俺に誘導して狙わせている状況である。
どういうことかというと、俺は先日行軍中に引き当てた礼装「謎の仮面群」により召喚したアイランド的な仮面を装着し、俺自身に注目を集めて敵を誘導しているのだ。
理性の強い奴にはそこまで影響はないだろうが、現在玉藻の前の影響で敵はほぼ本能で動いている為入れ食い状態である。
運よく取り返しのつかないことには成らなかったとはいえ女性サーヴァント達がエロ同人みたいな目に会うのは流石に看過出来なかったので、頑張ってみた。
まあ俺の正面には魔猪とタラスクが、側面からはブーティカが奮闘してくれているためどうにか大丈夫だろう。
「行け!タラスク!!」
タラスクを抜けてきたワイバーンに黒鍵を叩き込み、駄目押しのライダーキックで黒鍵を貫通させる。
序でにマルタより貸し与えられたタラスクに命じて魔獣たちを倒してもらう。
「さて他の戦線はどうなってるかな?」
ひと段落着いたので遠見の魔術を用いて周囲を見回す。
二コラ・テスラは何だかんだ言って一級ともいえるサーヴァントのため、白兵戦はともかく雷撃による火力は群を抜いており、今もケルト兵の多くを黒こげにしている。
エジソンも電撃と機械化歩兵達の指揮を飛ばし戦線を維持してくれているし、エレナ女史も俺が魔猪を用いて送った「アニバーサリー・ブロンド」を着て既に戦線に復帰している。
ヒェ!?UFOが現れてケルト兵の局部を集中的に燃やしてる・・・。
清楚な可愛らしい服を着て、正にお嬢様という姿の彼女が行っていると考えると・・・・興ふ、いや恐ろしいものを感じる。
メディア師匠は宙に浮いたまま魔法陣を複数展開し宇宙戦艦みたいな砲撃を繰り返している。
その姿はSN本編のようにフードを下しておりその唇は美しく笑みを浮べているのだが、どう見ても悪い魔女にしか見えない。
あ、エレナ女史の可愛らしい姿をガン見してノールック魔術砲撃してる。
余裕そうで・・・ああ!?エレナが呼び出したUFOを見たら一度視界をエレナに戻した後すぐに二度見して墜落しかかってるうう!?
しかもフードを挙げて「やだ何これ恐い」みたいな表情でUFOを凝視してるし。
まあそんな状況でもノールック魔術砲撃で敵をせん滅してるし援護も必要ないだろう。
少し戦場の中央寄りを見てみると・・・
エリザベートとネロも宝具の展開を停止し、普通に戦っているようだ。
あ、ロビン生きてたのか・・・。
さり気なくエミヤがロビンを救助しているようだ、彼は相も変わらず良い仕事をしてくれる。
ご褒美に今度エミヤにもサンタムマスクをプレゼントしてあげよう。
俺は再度接近してきたケルト兵を虚数魔術で拘束し魔力を吸収、殺害、その魔力でXとマルタの回復というルーチンワークを繰り返していると、徐々に戦況が傾いてきたようである。
玉藻の前、Xとマルタは相変わらずだが他の戦線は既にかなりのケルト兵や魔獣が駆逐されており、現在はサーヴァント達の多くが俺の周囲を固めてくれている。
「さてマスター、戦況は好転してきたがどうする?」
手が空いたエミヤが問うてくる。
俺は少し考えて、エジソンに声をかけた。
「エジソン少し聞きたいのだがいいだろうか?」
「ん?何だね?」
彼の鬣に、正確には耳に顔を近づけて俺は質問した。
「実は・・・」
「しつこい!人間が!!」
「人間舐めんじゃないわよ!!」
「諦めなさい。既にケルト兵達の大半は敗北、残りも時間の問題です。」
「そちらこそ舐めるな!妾は玉藻の前、金毛白面の大化生なるぞ!!」
玉藻の前が呪術を無理矢理行使し、彼女の髪の毛が硬質の刃に変化する。
それは瞬時に玉藻お前を囲むように展開するが未来予知にも比肩する直感持ちのXには易々と感知されて回避される。
もちろんマルタもXに連れられ退避したので無事だ。
「分身!あのもの達を引き裂け!!」
刃と化した髪の毛が抜けて20人近くの玉藻の前(一尾)に変化する。
生み出された彼女らはすぐさま二人に殺到するが、所詮は一尾。
例えるならば無双ゲームの雑魚の如き勢いで倒されていく。
「常世咲き裂く大殺界!!」
遂に玉藻の前は大技を行使したようだ。
彼女の周囲には黒紫色の暴風雨が吹き荒れて分身もケルト兵や魔獣、植物など種類を問わず全てが黒ずみ死に絶えている。
「!?グ、か、身体が・・・。」
分身を倒すため突っ込み過ぎていたXが毒煙から逃げ遅れ、苦しみながらひざまつく。
流石に即死するようではないが、とても戦えるようには見えない。
「くくく。この毒は我自身が変化した殺生石より生じた毒気。その毒は生きとし生けるものを全て犯し殺しつくす猛毒よ、妾も中々に疲れたからの。仲間が助けに来る前に縊り殺すとしよう。」
ゆっくりと玉藻の前が身動きの取れないXに近寄り爪を振りかぶる。
玉藻の前はああ言うが、俺達があの毒の中に入ればすぐさま毒に犯されて身動きが取れなくなる。最悪は死亡であるが、俺は間違いなく即死だろう。
「くっこれまでか!」
「さらばだ。死ね!」
遂に爪がXに振り下ろされるが・・・無意味だ。
「と思わせてからの、タタミウォール!からの刺突!」
Xは爪をあっさりと避けて背後に移動、背中から心臓めがけての刺突を行い、見事に致命傷を負わせる。
騙し討ちとは汚い流石アサシン汚い。
「何故・・・毒が効いておらんのか?」
「あ、私聖剣の加護があるので毒とか効かないんですよ。魔剣に変化してますけどもう一本持ってるので効果も倍です。」
Xはネタバレをしつつも刺した剣をグリグリと動かし、傷をぐちゃぐちゃにしている。
序でにもう一本でも同じことをしており、俺も含めてドン引きである。
エミヤですら理想に裏切られたような表情をしている。
「玉藻の前、お前の敗因はいくつかある。」
「敗因だと?」
メディア師匠により玉藻の前に拘束がかけられた
Xは拘束を確認すると剣を抜いて距離を取る。
「W・F・D(ワールド・フェイス・ドミネーション)」
「?」
「エジソンの宝具でな。世にも珍しい世界信仰強奪効果を持つそうだ。」
「!ああ、そういうことか・・・。」
Xの聖剣と魔剣に魔力が注がれて光が灯る。
「此処はアメリカだからそれほどではないかもしれないが、お前への信仰はすべてエジソンが奪い取っていたのさ。戦ってたお前が気づかないほどゆっくりとだけど。」
すると俺の隣で妙に光り輝くエジソンがサイドチェストを極める。
暑苦しい。
「ついでに言うとお前は俺達を舐め過ぎだ。お前は確かに強いが前衛で戦うタイプではなく後衛で術を行使するタイプだ。更に宝具の効果も加味すれば、最初の全軍強化と分身や召喚による兵力増強に徹してれば確実に俺達に勝てたんだ。」
まあ本当に最悪はメイヴとコンビ組んで強化ケルト兵を無限に量産することだが、お互い自分の能力とか明かさなかったんだろうな。女王様同士で相性悪そうだし。
「次に単独で来た事。せめて1騎でもお前の護衛のサーヴァントがいれば話は変わったんだけどな。」
「・・・」
「皆には内緒ダヨ?以下略、えっくすかりばー!!」
白と黒の光が身動きが取れず大きな血だまりを作っていた玉藻の前を飲み込む。
その直前、
「・・・そうか妾はまた人間を舐め過ぎたか。こればかりは死んでも治らぬな・・・。なればこの結末は生前の焼き直しよな。」
ついに玉藻の前から完全に力が抜けた。
相手がどこぞの金ピカのように慢心していたから、仲間がいなかったおかげで何とか勝てたから良いものの、非常に危なかった。
結末は呆気ないようであるが、一気に無力化しないとこちらが危なかったのでこんな物だろう。
遂に玉藻の前が光に飲み込まれた。
だが飲み込まれたにもかかわらず彼女の影が呟いた言葉が俺には不思議とハッキリ聞き取れてしまった。
「ではさらばだ人間共。――――――――――――――――絶望せよ。」
玉藻の前が光に飲み込まれた。
が、彼女はその直前に凄絶な笑顔を俺達に残していった。
『!?大変だよ!!その地点に突如玉藻の前とは異なる魔力が計測されている!何か変化はないかい!?』
聖剣と魔剣の光の中に玉藻の前とは異なる形状の影が浮かんでくる。
ソレは徐々に大きくなっていき、最後には光を弾き飛ばしてその姿を現した。
大きくなる影に合わせて段々と上を見上げていく。
『・・・この反応は魔神柱だ。え?何だいダ・ヴィンチちゃん?・・・葉山君、向こう側では無事メイヴを撃破したらしい。だけど消滅する前にメイヴが「二十八人の怪物」を召還したらしいんだがぐだ男君たちの方には召喚されてないらしいんだ・・。』
「ロマン・・・こちらで確認した。」
「ああやっぱり。」
ロマン情報ではあちらでもオルタニキを苦労して倒したら最後に魔神柱になっているそうで現在はアチラも修羅場らしい。
こっちも今から修羅場ですよ。
「皆ラスボス戦だ!!」
玉藻の前の最後の笑みの意味が分かった。
自身を依代にメイヴに「二十八人の怪物」を召還させたのだ。
ちくしょう!女王様同士仲いいじゃねえか!?
【悲報?】魔神柱討伐~ライト版~開催!!【朗報!】