FGOクリアしました、リアルで。   作:チョコラBB

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不穏、敗北、逃走、リトさん

フェルグスを撃破した俺たちはしばしの休息の後、無線機でぐだ男君たちと連絡を取った。

お互いの状況を報告すると、どうにもラーマ君の調子が芳しくないようで彼の呪いを解くために彼の奥さんシータを救いに行くそうだ。

場所はルパン三世などでお馴染みのアルカトラズ刑務所、正に敵の本拠地と真反対である。

むむむ!思い出してきたぞ!

確かゲームでは二手に分かれて行動し、現在俺と一緒にいるネロ達が、オルタニキに敗北してしまい、サーヴァントの多くが帰らぬ人となるのだ。

後、シータというラーマ君(男の娘仕様)も呪いを引き連れて消えてしまうのだ。

くそ!虚淵 玄の脚本よりマシだがヒドイ展開だな!

しかもよくよく考えるとこちらにいるサーヴァント達は皆オルタニキ暗殺にいったメンバーじゃねえか!

どう考えてもフラグです。ありがとうございます!!

 

「では余たちが暗殺に行こう!何余は暗殺されるのもするのも大得意だ!それにこちらにいる葉山達もそういうの得意であろう?」

 

あ、立った。

 

 

 

その後、なんとかオルタニキという魔王との決戦を避けようとした俺であったが、ネロの意外と合理的な説得と、客観的に見てアサシンやアウトローで構成された俺達の有意性を説かれてワシントンに向けて連行されてしまった。

 

「野郎ども!手筈は良いか!!」

 

「「「お、おう・・・」」」

 

今のは俺の声である。

例え臆病者の誹りを受けようとも、最悪自分の幸福のためにぐだ男君たちやネロ達を犠牲にしてでも生き残ろうと考えていた俺なのだが、叶わなかった。

まるで神の見えざる手によって俺とオルタニキが対峙することが運命づけられているかの如く流れていく。

ちくしょう!セイバーばっかり増やす神なんて大嫌いだ!!

 

好感度マイナスを覚悟してあれこれ言い訳したが回避は不可能な状況。

ならばもう別の覚悟を決めて進むしかない。

オルタニキを倒す?

ノン!!

聖杯を持っているであろうスーパーケルトビッチ別名淫乱ピンクのメイヴちゃんをぶっ殺し、オルタニキ放置で地の果てまで逃げるのだ!

最悪奪った聖杯でスカサハ様を呼び出してぶつけてでも生き残ってやる!!

 

「目的は聖杯!それ以外には目もくれるな!!邪魔する奴だけ潰すぞ!」

 

好感度とかもう知らん。

温存もなしで全力だ!

 

「「「なんか気合入ってるなあ~マスター」」」

 

葉山達が到着したとき、ちょうどワシントンではメイヴによるパレードが開始されようとしていた。

それを見た葉山達はジェロニモの意見を参考にパレードの真っ最中にロビンの【顔のない王】で接敵しネロの招き蕩う黄金劇場(アエストゥス・ドムス・アウレア)で敵を捕らえ弱体化、そして敵をフクロにするという素晴らしい作戦であった。

だが甘い。

暗殺なのだから派手さなどいらないし、可能ならば二手、三手と手段を講じなければならない。あとは敵の物資を焼き払い軍そのものを弱体化されば逃げれる可能性も高まるだろうしな。

俺はロビンとエミヤに相談し、ネロ達の作戦に(勝手に)アクセントを入れつつ全滅を避けるため【招き蕩う黄金劇場】に取り込まれなかった敵戦力の殲滅を行う手はずになっている。

 

「往くぞ!!」

 

さて考え込んでいると決行の時間になったみたいだ。

暴れるとしよう。

 

金色の光と共にオルタニキとメイヴ、その周囲にいたケルト兵達が結界に取り込まれた。

俺は計画通り、予めハサンとXに気配遮断をした状態で結界内に侵入させている。

確か原作では敵を結界内に取り込むことに成功したネロ達は堂々と姿を現し、結局弱体化して尚、力の差があったオルタニキと超ド級の伏兵アルジュナが原因で敗北していた。

なので俺は早々にオルタニキとアルジュナを倒すことを諦めた。

簡単に言うとネロ達の戦闘が始まってもひたすらX達には気配を消してもらい、隙を見てメイヴを殺害する作戦である。

要するに本人たちも了承済みだがネロ達を捨て駒にするため、鬼の誇りに拘りを持つばらきーちゃんと聖人たるマルタとは言い合いになった。

長い討論の末、実際問題、戦力差があり過ぎることからマルタは渋々納得してくれたのだが、基本人間(オルタニキは半神)を舐めている節のあるばらきーちゃん、茨木童子とは半分仲たがいのような形で終わってしまった。

現在は俺の意思により、結果的に敵主力との闘いから外されてしまった茨木童子はその怒りをケルト兵達にぶつけている。

 

「邪魔だ!人間ども!!」

 

技術もくそもない鬼としての破格の身体能力に頼った拳が振るわれ、血と臓物がばら撒かれる。

目にもとまらぬ速さで敵の真っただ中へ突っ込んだかと思うと、炎をばら撒き、手に持つ巨大な骨刀を振り回す。

僅か数十秒で其処は血の池になっていた。

 

「ハハハハ!!弱い弱いなあ!!余裕ではないか!!臆病者が!!」

 

どうにも俺の全力で正面戦闘を避けるスタイルは彼女には臆病者、卑怯者と感じられて不愉快らしい。

正直彼女の態度に俺も思う所があるが、今は和解している暇はない。

後で関係修復を図らなければいけないな。

 

だがメタ視点で後々思い返すと、この判断が後に俺の在り方を大きく変化させることになるのだが、それはこの特異点が終わった後の話である。

 

エミヤは最初ある程度敵の数を減らすと、俺が聖杯から組み上げた魔力を用いてダース単位で投影を行い、そこら中に仕掛けている。

これは、またもや「魔術師殺し」をリスペクトした爆破解体を行うためである。

暗殺に失敗した場合、敵が油断している間にすぐさま爆殺もしくは俺達の逃亡の時間を稼ぐための足止めである。

ダース単位での宝具の爆破だ。

流石にオルタニキといえどタダでは済まないはず・・・と思いたい。

 

次にマルタと黒ヒゲだが、彼らはいつも通り部分召喚や光弾での援護である。

新ネタとして船の網だけを召還して投網のように投げて拘束、身動きの取れない相手を一方的に攻撃という俺好みの攻撃を黒ヒゲが披露していた。

マルタは粛々と仲間を癒し、俺を盾で防御してくれた。

ただ偶に苛立ちを発散するかのようにケルト兵や魔獣を撲殺していたが、俺は何も見ていない、見ていないのだ。

 

最後に俺。

いつもどおり魔猪を召還、ケルトへ放牧し、俺自身は虚数魔術によって生成した円錐状の棘や黒鍵、ルーンストーンで遠距離から攻撃している。

いつのまにか複数のケルト兵を相手に出来るまで成長した自分自身の異常さに少々戦慄を感じたが、今は自分にとって有利に働いているので敢えて無視する。

この特異点から帰ったら本格的に自分の身体を調べることを決心したが、茨木童子のことといい、このことといい、何か順調に死亡フラグを立てている気がしないでもない。

 

戦いが始まって10分。

奇襲ということもあり大体の敵勢力を駆逐した。

本拠地のくせに妙に数が少ない気がするが、おそらくディルムッド達に着いて行ってぐだ男君を襲撃しているのだろう。

結果的には絶好のタイミングで襲撃した俺達だが、ゲームの結末を知っている俺の心はどんよりと曇ったままであった。

 

「誰か出てきたぞ!」

 

エミヤが声を上げて報告してくれたので見てみると、ロビンが出てきたようだ。

だがその身体にはベッタリと血に濡れており、とうとうゲームとの明らかな差異が俺の目の前に現れてしまったようだ。

 

「大丈夫か!?ロビン何があった!?他の皆は!?」

 

「これは俺の血じゃねえ。・・・すまねえしくじった・・・クー・フーリンは健在、っていうかアレは化け物だ。聖杯の担い手のメイヴが願ったせいで余計に手が付けられなくなって今必死にネロ達が足止めしてくれてる。」

 

「そのメイヴは?ハサンやXは?」

 

ラインを通して魔力の流れは感じるので存命ということだけは分かるのだが、彼らは結界内に捕らわれている為、念話が通じないため葉山には状況がつかめないのだ。

 

「それも失敗だ。ハサンがメイヴに重傷を負わせたが殺し切れず、逆に伏兵のアルジュナに重傷を負わされた。」

 

「アルジュナですって!?」

 

「ほおう!」

 

インドの授かりの英雄、アルジュナ。

神話では、神の介入があったとはいえ先日遭遇した公式チートカルナを殺した英雄である。

それを知るマルタは蒼白に、それ見たことかと喜色を滲ます茨木童子。

此処でも鬼と人の反応に相違がみられるようだ。

 

「だから限界まで他の連中が粘っている内にマスター達に報告して逃げようってことで俺が逃げてきたのさ・・・。本当にすまない。」

 

「・・・。今ハサンのラインが途絶えた。一応カルデアで再召喚は出来るから気にしないでくれ。ただ再召喚には数日かかるから、もうこの特異点では死んだことと同意だと思ってくれ。・・・くそ!!」

 

再度蘇るからと言って、やはり自分のサーヴァントが死ぬのは堪えるものがある。

だが今はそんなことは無視して行動しなければ全滅してしまう。

俺は死んだら蘇らないし、俺が死ぬことでぐだ男君たちが死ぬことは避けなければならない。

 

「全員逃げるぞ!黒ヒゲ!俺の魔力を全力で持っていけ!宝具の全力開放を許可する!」

 

逃げの一手。

まずはぐだ男君達と合流して仕切りなおす。

 

「了解したでござる!!」

 

普段部分召喚しかしていないが、黒ヒゲこと大海賊エドワード・ティーチの宝具は「船」である。

そしてその船は宝具らしくとある特徴が有る。

一つは英霊を乗せれば乗せるほど性能が上昇する。

そしてもう一つは莫大な魔力さえあれば海だけでなく空も陸も進むこと。

 

「アン女王の復讐!!」

 

黒ヒゲの号令と共にアメリカの荒野に伝説の海賊船が現れる。

俺達が甲板に上がると其処には海賊たちが忙しなく動き回り出港の準備を行っている。

 

「行くぜえ!!」

 

「「「おおおおおお!!」」」

 

聖杯から魔力を組みだした端から俺の魔術回路を経由して黒ヒゲに注ぎ込まれる。

絶えず魔力回路が過剰に働き続け、脳裏には血管の中を熱湯が流れるようなイメージが浮かぶ。

 

「ぐうう!?」

 

船が宙に浮かび、徐々に速度を上げながら空を進む。

ワシントンが豆粒ほどに見えるほど離れた時、ラインを通じてXの反応が感じられた。

 

「!?令呪を以って命ずる!X身近な奴を連れて戻ってこい!!」

 

一日経過して復活した令呪一画を使い果たすと、俺の前の前にボロボロのXと、彼女に抱き抱えられた血まみれのネロが現れた。

 

「大丈夫ですか!?」

 

直ぐにマルタが駆け寄り彼女の治療を行う。

だが出血こそ止まったが、ネロの意識は戻らずぐったりとしたままであった。

 

「・・・ハサン、ジェロニモ、ビリーはリタイアです。私とネロはなんとか生存していますが、しばらくは休まなければコンディションは戻らないでしょう。」

 

予想通りのボロ負けである。

 

「敵はクー・フーリン、アルジュナ、メイヴの三人です。メイヴはハサンにより重症、ほか二人はほぼ無傷です。またクー・フーリンは聖杯のバックアップを受けており戦闘タイプのサーヴァント複数で相手にしないと厳しいでしょう・・・。」

 

こうも明確な敗北は久しぶりだ。

予想していたことだが思うのと実体験でこうも違うとは・・・!

 

悔しい。

本当に悔しい!

 

俺はこぶしを握り俯く。

カルデアで人理修復の旅の中だけではない。

今生でも無理はせず、嫌なことから逃げてきた結果が何故かカルデアの警備員であった。

傍から見れば警備員とはいえ国連の重要施設での勤務だ。

給料は良いし、信頼があるからこその職でもある、世間一般から見てもなんら後ろ指をさされるような職ではないだろう。

だが俺自身の視点から見ればそれは断じて違うのだ。

自分のやりたい事を諦めて、嫌なことから逃げ出し、楽しみなど無く、唯生きるための金を得るためだけの人生を過ごした結果だった。

前世でもそうだ。

俺は成り行きで生きてきた結果、普通のサラリーマンとなって偶の休日を楽しみにするだけのツマラナイ人生だった。

生憎死んだときのことは覚えていないが、どうせ殊更大した死に方ではないだろう。

俺は、俺のような馬鹿は死んでも治らないようだ・・・。

 

「・・・・」

 

「マスター!?しっかりしなさい!!いくら逃げ切ったとはいえ敵は全員生存の上、こちらは多くが討たれたのです!!ここぞというときこそ辛くても気合を入れた立ちなさい!!」

 

「・・・え?え?」

 

「しっかりしなさい!!」

 

気づくと俺は尻もちをついて惚けており、マルタにより抱きしめられていた。

俺はいったい何をしているのだろう?

 

「!?すまない、マルタ。ショックが思ったよりも大きかったようだ。大丈夫。全然大丈夫じゃないが大丈夫だ。まだ俺は立てる。」

 

「・・・少しきつかったですかね、ごめんなさい。それでもそうやって立ち上がることが人が生きる上で重要なのです。怯えても戸惑ってもたとえ見苦しくても立ちなさい。必ずしも報われるとは限らないでしょうが、それでも神は見ています。」

 

神は見てるだけなのか。

まあ必ずしも報われることがないなんて事実、都合50年近い俺の主観的人生の中では分かり切ったことである。

神は俺の頑張りなど見ていない。

だが、それでも俺の中には経験、満足感など名前に違いはあれど何かは残るのだ。

そして今の俺は独りではない。

茨木童子とも仲直りしなくてはいけないし、ハサン先生ともまた会わなければいけない。

ダ・ヴィンチちゃんともまたハチミツ授業をしたいし、ロマンとも趣味について語りたい。

エミヤやX、ついでに黒ヒゲ。

もちろんマシュ、ぐだ男君、カルデアのスタッフと、考えるとたくさん未練があるようだ。

支えてくれる人が居るうちは、また立ち上がらなくてはいけない。

それが今生での俺の最後の意地なのだから。

俺は気合で立ち上がり、今できる精一杯を尽くそうとする。

 

「・・・このまま全速力でまっすぐアルカトラズへ向かいぐだ男君と合流するんだ。治療は継続し、合流次第すぐ動けるようにするんだ。後は・・・」

 

ドウン!

 

だが俺の言葉を遮り、突如轟音が轟き、船が激しく揺れる。

立ち上がった早々、船から投げ出されるところであった。

 

「うおおおお!?おち、落ちる!?死にたくなーい!!」

 

「きゃあああ!!マスター格好つけた途端ヘタレてどこ掴んでるんですか!!先ほどはああ言いましたが見苦し過ぎでしょう!?神すら見捨てますよ!?」

 

「やっすい神様だなおい!!」

 

「あ゛?」

 

「何でもありません!マム!!」

 

ドウン!!

 

「マスター、アルジュナだ!!どうやらこれは奴の矢のようだ!」

 

エミヤが言うにはコレは矢らしい。

砲撃じゃないの!?

矢で「ドウン!」って効果音間違っていませんか!?

などと慌てている間もドウンドウン撃たれている。

黒ヒゲと船員達は必死に左右に蛇行して避けているがいつ当たるか分からずヒヤヒヤしてしまう。

取りあえず態勢を整えようとするとマルタから離れようとした瞬間、

 

ドドドウン!!

 

「ん、あんぅ♡ ん? んあ!?」

 

「へ?アレ何か視界が白いような・・・。」

 

「え!?ちょ、何よこれ!?」

 

今まで以上に直近を掠めた一撃により俺は船外に放り出されそうになる。

咄嗟に近くにあったナニかに抱き着いたが、揺れが強く、やむなく倒れ込んでしまった。

揺れが収まり、目を開けると視界は一面真っ白。

マルタの慌てた声が聞こえた途端、視界から白いナニカが移動し視界に青空が広がる。

 

(綺麗だなあ。)

 

現状をすぐさま把握した俺は、すぐさま現実逃避をした。

分かるだろうか?

落ちかけてなんとか耐えようとしたら人生初TOLOVEった訳だが、今度は先ほどよりも若干船に近い位置を謎の砲撃が掠めていった。

更に激しく揺れる船、マルタのナニカを掴んだままでバランスを崩す俺。

その結果、俺は遂にダークネスまで到達してしまったのだ。

俺は・・・

 

「慈悲を。」

 

「却下です。」

 

俺は迅速に命乞いをしたが叶えられなかった。

 

俺は腹部に激痛が走ったかと思うと、青空をバックに砲撃をパリィ(?)している全身タイツ姿の美女という白昼夢を見ながら暗闇に落ちていった。

 

 




葉山さんの最後が想像できない人はお母さんに聞くか、「リトさん 鼻置き」で検索しよう!!

・・・自分で検索したがリトさん毎回埋めてるけど後頭部とか大丈夫なのだろうか?

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