やはり俺が世界を救うのはまちがっている。   作:カモシカ

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第九話 やはりダンジョン探索は疲れるものである。

「戦闘、開始ッ!」

 

 合図と共に走り出す俺と川崎。川崎は一番先頭に居たゴブリンガーディアンに、『烈空拳:虎咆』を放ち、ターゲットを引き付ける。対して俺は鎌を両手で構え、もう一体のゴブリンガーディアンに斬りかかる。どちらの攻撃も防がれるが、すかさず挑発技を使い攻撃を引き付ける。俺のレベルを下回るのはウィザードやサモナーなどの数体なので、《死神之一薙ぎ》を使うのはもったいない。

 

「『雷撃:ライトニングフォール』」

 

 雪ノ下の能力《魔導の申し子》の効果で無詠唱となった魔法が敵小隊後方に炸裂する。このまま放っておくと雪ノ下に攻撃が集中しかねないため、俺と川崎は魔法を行使する。

 

「『付与:炎拳』、『魔拳乱舞』」

 

 川崎が行使できる数少ない魔法のひとつ、『付与』(エンチャント)だ。効果は読んで字のごとく、拳が炎を纏う。

『魔拳乱舞』により、燃え盛る拳がゴブリンガーディアンを襲う。右ストレート、左アッパーから跳躍し少し浮いた体を右の拳で打ち下ろす。なんとか踏みとどまるもまだ連撃は終わらない。左右の拳が何度も叩きつけられ、炎が煌めく。その連撃が終わる頃には、耐久の高いゴブリンガーディアンと言えど残りのHPは半分ほどになるだろう。

 

「『魔を纏いし我が魔力、幻の刃となりて、敵を切り刻め――魔刃:ファントムスラッシュ』」

 

 俺は魔属性魔法、『ファントムスラッシュ』を発動する。小町の能力《天使と悪魔》により強化されたこれは、どちらかと言えば補助的な魔法で、俺が武器で攻撃する度に敵にしか当たらず、敵には見えない幻の刃が発生し攻撃する。ゴブリンの耐久を削り切るのではなく攻撃を引き付けられればいいので、タンクをするのにこの魔法はとても便利だ。どこからくるか分からない攻撃というのは、それだけで敵を警戒させる。しかし、ゴブリンガーディアンはカウンター系の剣技を持っていたようで、俺と川崎の耐久がじわじわと減っていく。

 

「『天の光よ、聖なる輝きで彼らを癒せ――治癒:クイックヒール』」

 

 戸塚の治癒魔法によって体が一瞬光に包まれ、次の瞬間には耐久が全回復する。さすが戸塚、マジ天使。

 

「『大地に生きる精霊よ、地底の彼方より、来たれ――召喚:スライム』」

 

 由比ヶ浜の召喚魔法で、ゴブリン達の足元に大量のスライムが出現し、ゴブリン達の動きを止める。

 

「先にウィザードとサモナーを倒すわよ!」

「了解」

「りょーかいです」

「こっちもおっけーだよ」

「うん、いつでもやっちゃって」

「雪乃せんぱい、私も準備オッケーです」

 

 ゴブリン達の動きが鈍ったところで、雪ノ下と一色が畳み掛ける。

 

「『氷弾:アイスバレッド』」

 

 拳大の尖った氷が生成され、二体のウィザードと一体のサモナーに叩きつけられる。単純故に強力だ。

 

「『我、悪魔に魅入られし者、我が魔力は狂槍となり、紅き雨を降らす――魔槍:ブラッドレイン』」

 

 一色が放つ魔法は凍ったゴブリン達を刺し貫き、詠唱の通り血の雨を降らす。この攻撃で耐久の低いウィザードとサモナーは命を奪われ、俺達の経験値になる。

 残るはガーディアン二体と、フェンサー二体だけだ。しかし、ゴブリン達にとっての一番の驚異は雪ノ下と一色だと映ってしまったようで、魔法の途切れた今をチャンスと見て一気呵成に攻めこんでくる。ただでさえ耐久の低い雪ノ下と一色だ。この攻撃に晒されたらいくらレベルがあがったと言っても耐えきれないだろう。

 

「『我が腐眼は、万物に腐敗という終わりをもたらす――腐敗:イノチノオワリ』」

 

 腐敗属性魔法『イノチノオワリ』により、視界に入ったガーディアン一体とフェンサー一体を腐らせ、殺す。

 

「『光のなかを舞う、聖なる我が魔力よ、その清浄なる光で、不浄の魂を鎮魂せよ――聖技:レクイエム』」

 

 聖属性魔法『レクイエム』を小町が放ち、残りのガーディアンとフェンサーを倒す。

 もう一度周辺の安全を確認し、警戒をしながら休憩をする。

 

「ん~やっと終わった~」

「やっとって言ったって精々二、三分だろ、小町」

「そりゃあんたは強いから余裕あるだろうけど……」

「女の子にとって戦闘って結構余裕無いんですよ~せんぱい」

「そういうもんか?」

「うーん、僕だって怖いけどな~」

「あら、私はそんなことないわよ」

「……うん、ゆきのんれべりんぐ?のときもどんどん敵倒してたしね」

「おー、レベリングなんてよく言えたな~偉いぞ~」

「な、それぐらい言えるし!馬鹿にすんなし~!」

「ちょっ、大声出すな敵来るだろ!」

 

 慌てて由比ヶ浜の口を押さえるが、時既に遅し。『透視』で確認するも、前から二小隊、後ろから一小隊来るのが見えた。

 

 

 

 

 続


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