やはり俺が世界を救うのはまちがっている。   作:カモシカ

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第六話 俺達は、少しだけ疑問を解消する。

 さて、アンセルムさんにいきなり抱きつかれた俺達は、アンセルムさんが知っていると言う両親のことを聞いている。

 

「……君達の両親は、二十年前君たちと同じようにこの世界へやってきた。聞いているかもしれないが、魔族、悪魔族との戦争だ。その時、人間族は持てる力の全てを結集し、ある魔法を発動した。……勇者召喚だ。そうして勇者として召喚されたのは、君達の両親を含めた四十人程の若者達だった。その中にはおかしな奴が居てな、君達と同じような髪型をして目を腐らせた男だ。……そう、君達の父だ」

 

 まじか親父、二十年も前から目を腐らせてたのか……そりゃ俺の目も腐るわな。

 

「そしてもう一人、普段はグループのリーダー格だが君達の父と居るときは適当になる女。……つまり君達の母だ」

 

 うん、まあ息子の名前間違えるような人だしな。しょうがない。

 

「君達のステータスからも分かるように、君達の両親は強かった。……だが、強ければ強いほど彼等は孤独になっていった。普通の人間はそれほどの強さを受け入れられないからだ」

 

 その言葉に、雪ノ下が俯く。持つ者故の苦悩と言う奴だろう。

 

「そして、君達の両親はその強さで魔族・悪魔族の連合軍を打倒し、相互不可侵の条約を取り付けたのだ。しかし、和平が実現しても彼等に居場所を与え、対等に扱った者は居なかった。それでも、この世界を楽しめた者も居た。国の騎士として戦う者も居れば、この国で伴侶を見つけたものも、この世界を旅して暮らすものも、魔族となり、裏切り者と呼ばれるようになったものさえ居る。けれど君達の両親は不器用だったからな、段々とこの国に居づらくなったのだろう。いつの間にか、元居た世界へと帰っていったのだ。彼等がその後も幸せに生きているか、それだけが心残りであった……」

 

 ……親父達、色々あったんだな。帰ったら、ちょっとは労ってやろう。

 その後も語られる英雄譚。それは誰しもが憧れた正義で、救いで、しかし当人達には重荷でしかなかったであろう人々の期待。それに応えなければ、と無意識に刷り込まれそうなほどに強い想い。

 

「……どうだい、君達の両親は幸せそうかい?」

「ん~、幸せかは分かんないけど……」

「ま、幸せなんじゃねえの、じゃなきゃあんな生き生きと社畜やってらんないだろ」

「そうだね」

 

 色々小町とは差別があった気がするが、それでも感謝している。……けどなーちょっと露骨すぎだったわ。

 

「まあ、こんなところだな。長くなってしまったが、質問を受け付けよう」

「……ではまず、『ステータス』にはレベルの表記がありすが、これはなんなのでしょう」

 

 葉山が立ち上がり、質問をする。……そこかよ!?とも思ったが、まあさっきの話でなんとなく何をすべきかはわかるしな。それと葉山もあれで混乱してるのかもしれん。

 

「うむ。レベルと言うのは、簡単に言えば戦闘力やステータスのある程度の目安となるものだ。もちろんそれだけでは無く、レベルが高くなれば受けられるクエストの難易度も上がるし、国での扱いも良くなる。城で働くとなれば、最低でもレベル30は必要だ。しかしレベルと言うのは、戦闘をしなけれは上がらない。そのせいで、二十年前の大戦により疲弊した我等は戦力を確保できず、此度の災厄で危機に瀕しているのだ」

 

 ほーん、この国はクエストで回ってるのねん、しかもレベルによる実力主義、と。

 

 さて、こっからはテンポよく行こう。

 

 Q―魔法とは?

 A―自身の持つ魔力を、術式や詠唱などを介して形にし、発動するもの。様々な属性がある。

 Q―剣技とは?

 A―剣などの武器を用いて発動する技。魔力を併用するものもあるが、基本的に魔力は不要。

 Q―能力とは?

 A―潜在的な願いや想いが、なんらかの『力』として発現したもの。魔法や剣技とは別物。

 Q―レベルは具体的にどうやって上がるの?

 A―魔界でモンスターと戦うか、人間界に点在するダンジョンでモンスターと戦い、その生命力を吸収してレベルを上げる。

 Q―魔界とは?

 A―魔族や、一部の人間が住む世界。ゲートが魔界の出入り口。

 

「さて、こんなところか。日も落ちてきたし、今日はこの位にして続きは明日話そう」

 

 そう言って、アンセルムが俺達を部屋に案内する。あー、やっと一人になれた。そう思って備え付けのベッドに寝転ぶ。まだ寝るには早いかもしれないが、まあいいだろう。

 目を閉じて少し微睡んできたころに、部屋をノックされる。

 

 ―まだ、俺は眠れないらしい。

 

 

 

 

 続


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