やはり俺が世界を救うのはまちがっている。   作:カモシカ

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えー、十か月ぶりの更新となります。はい。
感想にてもう書かないのかと聞かれまして、読み直して見たらなんか書けちゃいまして。はい。
あの頃いきなり続きが書けなくなったのは何なのか……

まあとにかく、どうぞ。


第十話 やはりダンジョンにはピンチが付き物である。

「クソがっ!」

 

 取り敢えず三小隊を相手にする余裕は無いので、前方の二小隊に向け《死神之一薙》を発動する。レベリングの結果、俺はレベル50に達した。まあここからが上がりにくくなるらしいのだが。そう考えるとアンセルムさん化け物だな。

 

 ともあれ、前線に出ないで後ろからちょこちょこ攻撃するだけのウィザード系やサモナー系は、総じてレベルが低い。十一階層の要求レベルは45。最低でも敵モンスターのレベルは45だということだ。そして、ガーディアン二体、フェンサー二体、ウィザード一体、サモナー一体の計六体の小隊が二つあるわけで、十二体のうち、四体から《死神之一薙》によって魂を抜き取る。

 この階層程度の敵では能力持ちはいないので《魂喰い》は発動しない。

 

「由比ヶ浜!〈巨石兵(ストーンゴーレム)〉で俺のサポート頼む!雪ノ下、そっちの一小隊は頼んだ!」

「う、うん!」

「頼んだわよ」

 

 《死神之一薙》は透過攻撃なので姿が見えない敵にも有効だ。戦闘における先制攻撃の有効性は言わずもがな。無属性魔法『透視』によって敵二小隊の混乱を確認する。

 そして俺は混乱によって生じた隙を利用し、阻害魔法を仕掛けることが出来る。

 

 阻害魔法とは、落とし穴などによって敵の交戦や行軍を阻害する罠の魔法だ。戦闘中に使える魔法では無いが、こういった状況では攻撃魔法よりもよっぽど有用である。

 

「『効果範囲指定:前方十メートル地点に縦幅二メートル横幅通路一杯­­――阻害設置:五メートル落とし穴』」

 

 そしてこの通り詠唱と魔法名がクソダサい。まあそれでも使える魔法ではあるから良いのだが。

 

「『大地に生きる太古の業よ、結晶よ、友の願いに応えよ――召喚:〈巨石兵(ストーンゴーレム)〉』!」

 

 由比ヶ浜の召喚魔法により、身長二メートルほどの石で出来たゴーレムが現れる。堅さと大重量から来る攻撃力の高さが取りえの、精霊に分類されるモンスターだ。

 

「うぅぅ……ヒッキーごめん、あたし、もう魔力切れちゃった……」

「いや、十分だ。ありがとな」

 

 設置された落とし穴は阻害属性の魔法だ。故に完全な物質化はしていない。つまり、だ。

 混乱しているモンスター程度が、それも魔法系クラスがやられた状態で気付ける筈が無いのだ。

 

「GYUUUAA!?」

 

 先頭を走っていたゴブリンガーディアンが落とし穴に落ちた。こんな状況でもタンクが先行していることに驚くが、モンスターなのだから戦闘行動が本能に刻まれているのだろう。

 

 そういう訳で落ちたガーディアン三体は無視。引っかからなかったガーディアン一体とフェンサー四体を相手にする。

 比較的鈍いガーディアンをゴーレムに任せ、錆びた剣を不恰好に構えるゴブリン共に小町謹製の聖具〈誓いの魔剣〉を向ける。聖属性であるにも関わらず銘には魔の字が入る謎装備だ。

 

 聖具や魔具というのは総じて強力なもので、この剣もその例に漏れず『モンスターに対する与ダメージ10%増加』と『モンスターからの被ダメージ5%減少』という効果が付いている。

 

「GUGAA……『БЖ:щъюэх』!」

「『БЖ:ДПЦ 』!」

「『БЖ:щюэ』!」

「『БЖ:шфйёж』!」

 

 フェンサー達がモンスターの言語で剣技を発動させる。

 剣技の利点とは何も魔力消費が無いという事だけではない。極めるには才能が必要だが、大した魔力を持っていなくとも素早く、かつある程度強力な攻撃が出来る。

 相手よりも速く攻撃出来れば、それだけで勝機はあるのだ。

 

 ──攻撃が届けば。

 

 俺には《変わり行く形、変わらない想い》とか言う恥ずか死ねる能力がある。これは自身が触れた物体の形を変えることが出来る能力だ。

 

 そして、俺は足という自身を介してダンジョンの床に触れている。

 つまり、

 

「潜ってやり過ごす」

 

 これが正解。

 床を凹ませて体を隠し、『透視』で俺の姿が消えて戸惑うゴブリン達を確認する。そのままではすぐに床の窪みに気づかれるので《ステルスヒッキー》を発動し、ゴブリンの意識から逃れる。

 

 そして、その位置から離脱すると共に剣技を発動。

 魔力を併用する珍しい剣技で、俺が使える数少ない剣技の一つ。

 

「『魔剣技:貪狼』」

 

 北斗七星を構成する恒星(ダジャレにあらず)の一つを名に持つ剣技だ。

 その効果は単純にして強力。貪欲な狼の如く、敵の耐久を削り切るか五秒が経過するまで敵を切り刻み続ける。

 要するにえげつない。

 

「おらぁっ!」

 

 二体は腕を斬り飛ばし無力化。大きく耐久を削るも倒すには届かない。

 残りの二体も耐久を三分の一程度は削れただろう。俺のステータスは物攻特化では無いのでこんなもんだ。しかも何故か俺のステータスレベルアップしてもほぼ上がんねーし。

 

「比企谷君、避けてっ!『氷針:アイスニードル』っ!」

 

 と、そこで雪ノ下の範囲攻撃魔法が放たれる。チートステータスにものを言わせて全速力で魔法の効果範囲から逃れ、終わったらしい後ろの戦局を確認する。

 戸塚が魔力切れでへたり込んでいるから、《神の祝福》を使ったらしい。リアル天使を、見逃しただと……!

 

「せんぱいっ、前!前!」

「あ?」

 

 焦った様子で必死に叫ぶ一色。一色が指差す方向に視線が導かれる。そこに居たのは、いつから居たのか短剣を俺に向けるゴブリンアサシン。ゲーム風に言うなら盗賊(シーフ)と言ったところか。

 

「『щБЖ:ййБй』」

 

 漏れでるようなか細い声で告げられたモンスターの言語。それはアサシンの剣技発動を示し、反応出来なかった俺は、その短剣を無防備な腹に捩じ込まれた……

 

 

 

 続




最後まで読んでくれた方、あなたは救世主です。主に私にとって。だから感想ください。お願いします。くれたら悦びます。

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