境界の彼方 ~next stage~   作:眼鏡が好きなモブ男

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感想が入っていてビックリしました。1でしたが||||||(_ _。)||||||
ですがそこは伸び代として頑張ります。当面の目標は5を貰うこと。がんばるぞい。


第4話 そして誰もいなくなった

先輩がこの世を去ってから約6年。

身体能力が尋常じゃないレベルになった以外は特に変化は無く、いつもと変わらぬ日が来る…と思っていた。

嫌な予感はよく当たる。そんな人生の不条理の一つが今の私を襲っていた。

「…つまり、境界の彼方の復活が予想より早いと捉えていいんですね?」

「まあ、そういうことだな」

未來に持っていかせる弁当を作っていたら突然携帯が鳴り、今に至るのだが…

「この朝の忙しい時に電話をするのはどうかと思うんですが」というセリフはぐっと飲み込むことにした。しかし、朝食食べさせて、弁当作って、見送りしての朝のイベント3連発のこの時間に電話をするだろうか?せめてあと30分は遅らせて欲しいものだ。

「母さん、誰と話してるの?」

「うわぁぁ!って、未來か…」

寿命が3秒縮んだじゃないのとか言いたかったがそんな下らない事を言っている暇は無かった。だんだん私の冷静な思考が戻ってきた。今私の胸中にあるのはただ一つ。それすなわち、「さっきの話を聞かれていないか?」である。

もし聞かれようものならこの六年間が水の泡なのだが、神様は少しだけ味方してくれたらしい。

「本題に入るけど、何話してたの?」

「……大人になってからよ」

「いつもそればっかり!!」

どうやら今回は味方をしてくれなかったらしい。

…ごめん、未來…。でも、ただの嫌がらせじゃないのよ。

なんとしてもこの宿命は次の世代には引き継がせない。…今日、倒そう。それで、未來に話してあげなきゃ。今まで隠してきたすべてを。

そんな私の決意とは真逆に娘はひたすらに怒っていた。風呂が長いとか、ご飯食べ過ぎだとか…。

朝の騒動が終わり、未來を見送った後、私は境界の彼方を討伐することにした。手紙を書いて、早速ヤツの内部へ。

この時、私は気付いていなかった。()()()の意志が生きていたことに。

ーーーー

全く。お母さんはいつも話をはぐらかしすぎなんだ。

一人で母に対する愚痴を言いながら登校していたその時。

空に黒い稲妻が走った…気がした。

ーーーー

…十何年ぶり位なのだが、改めて凄い。なぜこれ程に強力な力を持っているのだろう。そして、それを押さえつけていた先輩も。

雑念を払い、早速ヤツの核を壊しに行こう。

と思ったが、そう簡単な話ではない。

境界の彼方の中にも妖夢がいるのだが、いくら弱っているとは言え30代も後半に差し掛かった世間一般でいうオバサンの私じゃあ前回のような戦い方は出来ない。

今対峙しているのは百足のような妖夢で、ひたすらにすばしっこい。こういうやつはまだマシだ。なぜなら、すばしっこい故に防御が薄く、少ない隙で集中放火を浴びせればいい。

問題は硬くて鈍いやつだ。隙は多いくせに一回一回で蓄積させられるダメージが少なすぎる。

しかし、ここは私の発想の勝利だ。

まず、高く跳ぶ。その後前方に回転し、足に血で尖った踵を作りだして回転の勢いで踵落とし!

これで敵は真っ二つになった。…気分が悪くなったのは内緒。

 

さて、段々中心部に近付いてきた。こうなると相手も焦ってくるのだろう、下手な鉄砲数打ちゃ当たる作戦で火球を飛ばしてくる。

だがしかしこっちも盾があるからそんなに苦では無い。

筈だった。

何者かに足を撃ち抜かれた。態勢を保てなくなり、前かがみに倒れてしまう。おまけに体に力が入らないと来た。

弱めだと防がれてしまうと気付いた敵は動けなくなった私めがけて火球に力を溜めている。絶体絶命ってやつだ。

ーーーー

眠い。めちゃめちゃ眠い。

数学の教科担任の山田先生は授業がとても静かで、それはいい事なのかもしれないが、とにかく眠いのである。

ふと窓に目を向ける。すると、天に向かって屹立する紫の光の柱が見えた。

眠気なんて吹っ飛んだと思っているのも束の間、今度は体がだるい。それに…嫌な予感がする。

この日初めて私は学校を早退した。体のだるさを吹き飛ばし、家に猛ダッシュ。

嫌な予感が現実にならない事を祈りつつ、再び走り出す。

ーーーー

動け動け動け!

火の玉はついに遠目から見ても私の身長と変わらない程度の大きさとなっていた。アレをくらったらいくら防御してても関係ないだろう。

現実は非情にして残酷。火球が放たれ、炸裂ーーーしなかった。いや、正確には私に当たる前に炸裂したというか。

ポカーンとしている私の前に、6年前死んだ筈の。愛を誓った神原秋人(先輩)がいた。

彼は私に微笑みかけると、ゆっくりと遠ざかっていく。

「待って……!先輩っ……!」

見た感じ先輩は普通に歩いているのにダッシュの私でも追いつけない。雪に足を取られて先程と同じようにコケてしまった。見上げるとーーー既に先輩はいなかった。

寂しかった。泣きたくなる程に。しかし、私には寂しさとは違う、温もりがあった。

まだ大丈夫。私はまだ戦える。

火球で力を使い切ったのか特に攻撃もされずに中心部に辿り着いた。

全力でジャンプする…と、再び力が抜けてきた。知るかそんなもん。気合だ気合。血の刃を振り下ろすと、まるで悲鳴を上げているかのように大地が揺らぐ。

だが私の攻撃は終わらない。最後に血を解放し、完全に消し去る。

その時の爆発にきっと私は耐えれないだろう。でも止めない。この宿命を…終わらせる。

「ハアアァァァ!」

そう叫びながら、私は力を解放した。

ーーーー

遥か上空で爆発が起きた。

何か聞き覚えのある声が聞こえた気がするが、気にせず走る。

家に着いたが誰もいない。テーブルには…手紙だ。

内容は敢えて省略させてもらおう。お母さんの背負っていた宿命や子供の頃に出来た手の平の穴についてが書かれた文章だった。

 

しかし、私の体の震えは止まらない。もう会えないと分かってしまったから。秘密にしていた理由が分かったから。お母さんは私より後の世代の、いわゆる「呪われた血の一族」にこんな気持ちにさせたくなかったからなんだと思うと、涙が止まらない。

1人、声を殺して泣き続けた。

ーーーー

遠くに誰かがいる。その正体も既に分かっている。

「…先輩」

声をかけると、彼は振り向いた。穏やかな表情でこちらを見ている。

私は迷わず彼の胸に飛び込んだ。彼は優しく抱き返すと、私に呆れた声で囁く。

「まったく…ゆっくり来いって言っただろ」

「不愉快です」

もちろん言ってやった。いや寧ろ言わないわけがない。

「…一人にさせちゃったな」

「そう…ですね」

そう、心残りはただ一つ。未來の事だ。

でも。

「心配ないですよ。私達の娘ですから」

「……そうだといいな」

「そこはそれもそうだな!って所でしょ!はぁ…。にしても、これからどうなるんです?」

「もちろん三途の川へレッツゴーだ」

…聞かなきゃ良かった。

「でも…」

「?」

「大丈夫ですよ。2人なら」

そういって私は先輩と手を繋ぐ。

彼は「それもそうだな!」と言い、少しずつ前へと進んでいく。

その先は…例えどんなに暗闇に覆われようとも、前が見えなくても、いい未来が待ってるはずだ。

そうさ、2人なら。

ーーーー

ピリリリピリリリピリリリ

突如電話が鳴った。

通話ボタンを押して応答する。

「もしもし」

「えーっと、そちら栗山さんでよろしいですか?」

軽く身構える。誰だか知らない人が自分の名前を知っているのは少し気に食わない。

「はい、そうですが。あなたは?」

「ああ、名乗り忘れていましたね。私はーーーー」

この電話の後、私の人生は大きく変わることになる。

それがいい方向なのか悪い方向かは分からないが、ともかく、それはまた次回の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3年後

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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僕は今、屋上にいる。

本当は夕暮れ時の暖かな日差しを受けて熟睡する…つもりだったんだ。

でもなぜか今、僕は目の前にいる後輩女子の自殺を止めている。(後輩だというのは上履きの色から分かった)

さて、その後輩女子の特徴を語るとしよう。

髪型は…ミディアムって言うのかな?肩にかかる寸前の所まで伸びている。色はピンクのような茶色のような…

次に体型。凄く小柄で、ほっそりしている。大体150前後…だと思う。

顔は童顔で、その身長のせいもあってか恐らく実年齢の3歳位は若く見えるだろう。

思春期男子なら誰でも気にする()()の存在は皆無だった。俗に言うまな板だ。

取り敢えず存在がゼロのそこは置いといて、なんと言っても特徴は眼鏡だろう。少し古ぼけた赤縁の眼鏡で、まるで眼鏡と共に産まれてきたのごとく、眼鏡=コイツ、コイツ=眼鏡でくくれる位のフィット感だった。

彼女の名は栗山未來。世間一般からしたら超絶美少女の2歩先を行く眼鏡美少女だろう。

閑話休題。

とにかく、僕はこの子の自殺を止めたんだ。

「眼鏡が似合いますね」から始まり、彼女の全てを褒めまくった。筈なのに。

返答は「不愉快です」だった。

どうしようどうしようこのままじゃ彼女がフライアウェイしちゃうじゃなくてえーとえーと…とパニクる僕の眼前では普通有り得ない光景が広がっていた。

2.5mはあろう安全用の柵を飛び越え、右手にどこから取り出したのか赤黒い刃を握りしめた後輩女子は僕の腹部をその刃で貫いた……わけない。そうすると僕は死に戻り体質とかそういう不死身属性の何かがあるという事になってしまうからだ。

軽くパニクっていたとはいえ、僕が敵(?)の接近を許すはずがない。

結界の一種を作り出し、その刃を防いだ。が、問題がもう一つあった。このままだと後輩女子の下腹部が貫かれる。「伏せろ!」と僕は反射的に叫んでいた。

数瞬遅れて伏せた後輩女子の着ていたカーディガンに穴が開き、屋上にはしばしの沈黙が訪れた。

さて、ここで皆さんに問おう。

こんな衝撃的な出会いをした2人がそれきりの関係になる物語があるだろうか?

答えは「否」だ。いや…あってたまるか。




ここで神原秋人と栗山未来の物語はおしまいです。次回からはずっと書きたがっていた未來編です。だから話が急展開です。異論は認める。
恐らく殆ど原作キャラがいなくなるのでそこあたりはご了承を。
ではまた次回に。
2019 2/13
まず何よりも、更新1年弱(もしかしたら超えてるかも)止めてすいません。学業もありましたが、ほとんどサボりです。最終更新からしばらく経っているのにまだUAがのびているのは本当に驚きであると同時に、本当に申し訳なく思います。改めてお詫び申し上げます。
さて、本題に入りますと、大幅な加筆...というよりプロローグとして独立させていた出会いを一章の最後に入れさせてもらいました。字数が足りないばっかりにセクハラ野郎を作り上げてしまっていたので、どうしても変えたかったんです。
これを機にいろいろな部分を、最新話を読んでいく上でおかしいところが出ない程度に変えていきますのでよろしくお願いします。

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