境界の彼方 ~next stage~ 作:眼鏡が好きなモブ男
土砂降りの雨。威力が強く、水量も多い雨だ。
ああ、ホント強い雨だなあ、目にばっかり水が溜まって…前が良く見えないや…
少し遠くには博臣先輩
「雨、強いですね」
「……そうだな」
博臣先輩は目を細くしていて、今までに見たことがないくらい細い目だった。
「先輩は…?」
返ってきたのは沈黙。
「先輩は……?」
再び問いかけるも、またもや返ってきたのは沈黙だった。
「…答えてください!先輩は何処なんですか!?」
博臣先輩は微動だにせず声を掛ける前と同じ空の1点を見続けていた。
その空は、まるで鏡のように街が、大地が映っていた。
「…いい加減に…!」
慣れた身のこなしで右手の傷から刀を作り出し、首に突きつける。
「…その様子だと、思い出したようだな」
「だからどうしたって言うんです?」
そう、思い出した。嫌な思い出も、楽しい思い出も全て。しかし、それは何の意味も無い。その思い出を共有する人はもう、いないのだから…
「アッキーの最後の言葉だ」
「……先輩の?」
「ざまあみろ、だそうだ」
…ずるいよ、そんなの。もう、仕返しも何も出来ないっていうのに。
さすがに抑えきれなくなった哀しみが頬を流れる。
体感では数時間、実際には3分程泣いた後、帰りを待つ未來の事を思い出し帰ることにした。
家に着いたら既に12時だったため、未來に昼食を食べさせ、寝室に籠った。
神原秋人が存在した証であるあの手紙を何度も読み返し、その度に泣きそうになった。
が、手紙が入っていた封筒にまだ何かがあるのを見つけた。
取り出してみると、「p.s」と書いてある紙が入っていた。
えーっとなになに…?
「p.s
君の事だからきっと境界の彼方を討伐しに行くんだろうね。
きっと僕が止めろと言っても…だから一つだけ。頑張って。あの世とかそういうのがあるのかは分からないけど、ゆっくり来るんだよ。|いつまでも待ってる。 」
危なかった。泣きかけた。しかし、未來がいる以上泣くわけにはいかない。…辛いもんだ。
閑話休題。
さて、これからどうしようか。今すぐ討伐とか死ぬ気しかしない。
なぜなら、さっき走った時、全盛期の十分の一ぐらいしかスピードが出なかったからだ。
恐らく境界の彼方も力が弱まっているだろうとはいえ、現状で倒せる可能性は皆無なのだ。
そして、今死んだ場合、小学生になりたての未來を一人ぼっちにさせてしまう。
せめて中学生までは一緒に居てあげたい。しかし、私の勝手で世界が破滅など本末転倒もいいところだ。
ということで博臣先輩にタイムリミットを聞いてみると、大体十年位で完全復活するらしい。
うん。平気だ。生活費稼ぎかつ戦闘の勘を取り戻す為に妖夢退治をして…。
よし、頑張るぞ。
その日の夜。未來が寝た後、額に優しくキスをして、妖夢退治に出発した。
久々の標的は初めて先輩と狩った包帯みたいなアイツだった。懐かしい感覚になりながらもしっかり倒す事に成功。
意外といけるかも?というのは間違った認識だったようで、息は荒いし貧血でフラフラになったりと2体目に取りかかる余裕は無かった。
…こいつ確か牛丼(並)二杯分しか無かったような…
真っ先にお金の方にシフトされた思考を今の自分の状態へと傾ける。
改めて考えると結構ピンチかもしれない。ホントにぶっつけ本番じゃなくて良かった…
元の状態に戻るのに数十分を要した後に2体目を撃破。後々妖夢石を鑑定してもらったところ野口さん一枚分だったから一応報われたんだろう。
帰った後はシャワーを浴びてパジャマに着替えて寝た。
今日の成果:1500円
最近字数が少ないのも反省点です。次回こそは…