境界の彼方 ~next stage~   作:眼鏡が好きなモブ男

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久しぶりです。ごめんなさい。正直打ち切りにしようかなって思ってました。もう少しで、完結を迎えそうですので、もうしばらくお付き合い下さい。


第17話 過去を越えろ

「…落ち着いた?」

「…うん」

確かに、落ち着いたには落ち着いた。しかし何か忘れてる気が……

「あっ」

「え?」

「あー……うん。行かなくちゃ、私」

「平気なの?頭は痛くない?」

「子供扱いしなくてへーき。それに……待ってるから…」

「誰が?もしかして、春がやってきたの?」

うわ、すっごいニヤニヤしだした。

あーもう、なんでこんな熱くなってるのよ私。

「違う。ただの先輩だから。そういう関係じゃないから」

「ふんふん。これは後で挨拶しとかなくちゃね」

「ホント違うからね!?……少なくとも、まだ、告白してないしされてないし……」

最後は聞こえないように小さく言っといた。母にそういうのがバレるというのはとても危険だ。

「ま、とりあえず行ってらっしゃい」

「うん、行ってきます」

私は、1度も振り返らずに走り出した。

私を止めるために。

━━━━

先程からずっと栗山さんの動きが止まっている。

これは…成功したのか……?

まさにその時だ。

「グルアァァァアアァ!!」

「お、おいおい…」

栗山さんの黒い刃が空を斬った。

しかし、様子がおかしい。まるで、切りつけている所に何かがいるような…。それに、よーーく見てみると1本だけ動いていない。

あれは一体…?

━━━━

「……やっと…来たのね…」

その声は、本当に、狂おしい程に待ち遠しいという響きだった。

「貴方が…どこかにいる限り…私は不完全なまま……」

「自分の心の闇すら扱えないくせに」

「…黙れ!」

刹那、黒い刃が眼前に現れた。

こっちも剣を作りたいところだが、間に合わないだろうから盾を作って防いだ。

しかし、金属音に混じって何かが焼けている音がしている。

音のする方を見てみると、私の作った血の盾に穴が空いていた。そしてそこに、黒い液体が滴っているのが見える。

「ふふ、私の武器にリスクはない。私の怨念を素材にしているからね。それでもって形状の自由度はこっちが上。決定的なのは…この呪われた力の有無。鍔迫り合いすら出来ないなんて、絶望的ね」

「…まだ分からないの?本当に、埋まらない差が何なのか!…守りたい人がいるということ。それが私と貴方の決定的な差」

「そんなもの…ただの邪魔よ。その証拠に……」

私のいる方向とは全く別の向きを、もう一人の私は切りつけた。黒い刃は空中で止まり、その後すぐに爆散した。

「……まさか…貴方は…!」

「そう、貴方のいっっちばん守りたい人が現実世界のその位置にいるわ」

「絶対に…許さないッ……!」

━━━━

ずっと僕の事を無視していた栗山さんが、僕を斬ろうとしたかと思えば、急に暴れ始めた。というか、やたらめったらに切りつけまくっている。

そして、先程まで動かなかった一本の刃が、その全てを防いでいる。

少し考えていると、いきなり来た刃に反応が遅れてしまった。

しかし、驚いた事に斬られる寸前に動かなかったやつが僕を救ってくれた。

その時、声が聞こえた。

(大丈夫ですよ、私が守りますから…)

それは、聞き慣れた彼女の声だった。

「く、栗山さん!?栗山さん!聞こえてるなら何か返してくれ!栗山さん!!」

にしても、僕を守る?

違う。それは、僕の役目なんだ。宿命とも言える、僕の…

━━━━

「許さないとか息巻いておきながら防戦一方じゃない」

「うる、さい……!」

「へえ、七本同時もクリアか。次は…キリよく十本?」

「うっそぉ……」

流石に自分を相手しているとだけあって敵も私の弱点やスキを突いてくるのが上手い。

それに加えて先輩の分の三本―こっちは先輩の居場所が分からないため大分距離が空いていても防がなければいけない―と私の分を四本でも充分限界だというのに。

「休憩は終わりね。貴方の命も」

来る!と思っていると、黒い刃は殆ど動かずに止まっていた。

━━━━

「これで良いだろ。たぶん」

取り敢えず栗山さんを結界で包囲しておいた。こうすれば、あっちの栗山さんも集中出来るだろう。

━━━━

今しかない。現実世界に気を取られている今しか。

私は私を目掛けて全力で走った。

こっちに気付いたようだがもう遅い。

私は、もう一人の私を思いっきり抱きしめた。

直後襲いかかってくる不快感や憎悪は、私の心を確実に蝕んでいる。

でも、今なら負けない。

一人じゃないから。

少しの抵抗はされたものの、何とか押さえつけることが出来た。

「つ、疲れた……。あれ、体が…動かない…」

━━━━

髪の色が戻っているのから察すると戻ったのであろう栗山さんは、僕の方を向いてすぐにバタリと倒れ込んだ。

「く、栗山さん!返事をするんだ栗山さん!」

「…ね、ねむ…い……」

「待て栗山さん!状況からして寝たら死ぬやつだ!」

「えぇ…もう、無理…です……」

「栗山さん!諦めるな!今助けを呼ぶからな!」

「……すぅ…すぅ…」

…寝息?

後ろを向くと、凄く幸せそうな顔で寝ていた。

ひとまず凛香に連絡をして、治療してもらうことにした。

というか、僕が居なかったらどうなってた事だろうか……無計画すぎる…

 

―数日後の放課後。屋上にて―

 

「…あの、先輩」

「ん?どうしたの?」

「先日はありがとうございました」

「ああ、勝手に行っただけなんだから気にしないでよ。…それより、無茶な事はするんじゃないぞ?」

「はい…」

「さて、今日も文芸部の活動か。あー…眠いなぁ」

「…その、今日だけ…は、特別に、寝ていいですよ」

「本当に?」

「今日だけですからね」

「サンキュ!眠くて死にそうなんだよ!…………」

「うわ、寝るの早っ。…ああ、人が寝てると…私も眠く……」

…寝息が聞こえる。つまり、栗山さんは寝ているということだろう。

「くそっ…前の時から体の調子が……。ここで、倒れたら栗山さんに…心配を掛けてしまう……」

屋上の鉄扉を開けて、階段を降りる。

2階に来た所で、僕の気力は限界に達した。

━━━━

「……んー………あっ!寝てた…。ああ、もう夕暮れ時か…先輩は…流石に起きたか」

部室に置いていた荷物を取って昇降口に向かおうとした時、人が倒れているのを見つけた。

「あの…平気です…か……って、先輩?!!どうしたんですか!返事してください!先輩っ!」

返ってきたのは呻き声だけだった。

どうしようどうしようと思っていると、携帯が鳴り出した。

「何でこんな時に……!はい、もしもし栗山です……はい。今は学校です。それで……えっ!?分かりました。すぐに…行きます……。…すいません先輩…また、無茶しちゃいます…」




待たせた割にこの出来だよ!

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