境界の彼方 ~next stage~   作:眼鏡が好きなモブ男

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やっとや…やっとここまで来たんや…


第14話 本当の目的

「やあ、本当に来たんだね」

「一応、仕事なので」

「仕事か…俺は君たち異界士のそういう所が嫌いなんだよ。何でもかんでも仕事仕事と、自分の意思を持つ事を悪とさえ思い、それを信じて疑わないんだからな」

そう語るこの人は今朝会った、私の本当の目的。

 

通学路で、何か不穏な雰囲気を感じ振り返ると、異界士協会でお尋ね者となっている髭面で何故か眼帯をしているおっさん―河井(かわい)正人(まさと)を見つけたのだ。

そして、午後7時30分にとある倉庫―横浜の赤レンガ倉庫みたいな―に来いと言われ、今に至る。

「さて…どうする?とは言っても、その手に握っている物騒な物を見れば目的は明らかだけど」

「もちろん、貴方の命を頂きます」

私は、全力の突進を放った。

敵は右手で私の血の刃を掴もうとする。

まずは右腕。

そう一瞬でも思った私をぶん殴りたい。

血の刃が相手の右手に当たる寸前、見えない壁に止められる。

そして、私の血の刃がドロドロの状態になっていった。

なんなのだ、これは。

「ふふ、驚いた?この能力は君の宿命、境界の彼方の能力さ。これは君の能力に限らず、どんな結界も無効化するんだ。それと…一番大事なのは、その性質を他のものに与えられるところなのさ」

そう言って相手は指を鳴らすと、周りに火球が現れた。

先程の話を聞くに…これも私の武器を無力化させれるという事なんだろう。

この瞬間から、この戦闘はもはや戦闘と呼べるものでは無くなった。

私はただただ逃げている。しかし、それは生き延びる為ではなく、唯一のチャンスを掴むためだ。

「ははは、逃げてばっかじゃ終わらないぜ?!」

ダメだ。今回も避けるしかない。だが、そろそろこっちの体力も血も限界だ。

足が丸太のように重いし、貧血寸前というのも相まって早く決着をつけなければまずい。

再び、火球が飛んでくる。

……来た!ようやく食らわせれる。

チャンスは一度きり。テレビでたまーに見る野球みたいに…!

「いっけぇぇぇぇ!」

渾身のピッチャーライナーを食らうがいい。ついでにバット(?)投げもしてやる。

もうもうと上がる白煙。

その中に立つ人影は、何度かフラフラと揺れた後、倒れるなんて事はなく、私の方を指差し、その指の先から一筋の閃光が放たれる。その閃光は、私の足を無慈悲に貫いた。

何が起こったのかを悟ったのは少し間を空けてからだった。

足を貫かれた事を認識した瞬間、感じた事の無い激痛が走り、私はただ呻く事しか出来なかった。

ヤツの左腕からは、生えてきているとさえ思える包帯が出てきていた。それはゆっくりと、動けない私を嘲笑うように近づき……

遂に私の右腕に巻きついた。その次に左腕に。

先程のヤツの口ぶりからすると、恐らくもう私の血の刃は封じられてしまっている。

事実、もう上手く刀の形を保てない。

力を失った私を嬲るかのように右腕から先程よりも遅く、私の両足に近づき、再び巻きつけられてしまった。

「このまま殺しても良いんだけど。最期に一仕事してもらおっか」

「ひっ……」

眼帯を外した目の中には、紫に発光している蟲が蠢いていた。そりゃ、私だって年頃の女の子なのだ。こういうのは苦手だ。

「弥勒さんも良いの遺してってくれたよな。キミがどんな風に……くくっ、考えただけで震えが止まんないね。こりゃ」

「……?」

血が限界に達した私は貧血を起こしていたのも相まって、ぐったりしてしまっていた。発された言葉の意味も掴めないまま、私の意識は消えた。

 

 

 

 

 

と思ったのだが、真っ暗な場所にいるようだ。

先程と同じように手足は縛られていて動きそうに無い。

何が始まるのか。

そう思っていると。

「マイクテスマイクテス。なんちゃって。聞こえてるかい?聞こえてなきゃ困るんだけど」

「これから何をするつもりですか?」

「お、聞こえてるね。それじゃスタートだ!」

急に景色が変わる。

夜の古びた駅のホームだ。人も殆どいない。

でも何故だろう?

どこかで見た事があるような…

そうだ!昔の私の家の最寄り駅だ!

しかし、パズルを解いた時のような達成感などない。

どうしてコイツが知っているんだろう…?

そう思っていると、前から男性が歩いてくる。

金髪でツンツンの髪型をしていて、優しそうな顔立ちをしている。

あれは…

「お父さん…?!」

「おお、正解。やっぱ覚えてるもんなんだね」

「質問に答えてください。どうしてあなたがこんな映像を?」

「見てれば分かるよ。くくくっ…」

とは言ってもお父さんの周りには何も無い。

そうして安心していると、何も無い空間から黒い服を着た男が現れた。

「あっ……」

と声を漏らしていると、

その男はお父さんに近づき

ポケットからナイフを取り出して

その刃を

お父さんの体へと――

「――――――!!」

声にならない絶叫が響いた。そして、それが私のモノなのだと気付くのには長い時間を要した。

「いやあ、楽しかったなあ、君のお父さんを刺した時は。あの苦しみ、悶える顔。願いが叶うならもう一度見たいもんだね…。それに、()()()()()()()()()()()()()()()()()()からなあ…」

「お前が…お父さんを…」

……待て、今「もう一人」って…。

「じゃあ、次行こうかね」

今度は、もうどこに居るのかを察した。

中一の頃にいた場所だ。そして、この日を私は忘れた事なんて無い。

きっと、いや絶対にお母さんが居なくなった日のことだ。

もうこの先を見たくない。

そう思い目を瞑っても脳に直接映像が流れ込んでくる。

雪が積もっている中、一際目立つ巨大な装置があった。その装置のスイッチが押されると、紫色の閃光が空へと放たれる。

「この装置はねぇ、君たち異界士の力を抜くのさ。この後の君のお母さんの死に様を見てみたかったね」

「う、うあぁぁぁああぁぁぁ!!うっ、ぐっ……殺す…殺してやる…絶対に殺して……!!」

言い終えた時、私の体に何かが触れた。

それを手繰り寄せると、どこか温かいような…そう、冬の朝の毛布の中のような不思議な感覚がした。

私はそれに抗うことは出来なかった。

飲み込まれていく意識の中、私はふと思う。

これは本当に温かいのだろうか…?

しかし、もう考える力は与えられず、私はそっと目を閉じた。




小説は書き始めると止まりませんね(笑)

早速後書きを加筆してしまうのですが、ここまで見てくれている皆さん、本当にありがとうございます。
この先は退屈させないようにしたいと思います。
ここからはこの小説を書く前から考えていた部分なので、これからもnext stageをよろしくお願いします。

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