Fate/Grand Order 「マシュ。聖杯ってよく拾うけど全部願望器として機能してるの?」「勿論ですよ先輩」「じゃあソロンモさんを永み─」「先輩!」   作:第2類医薬品

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悪性なんたら新宿でしたっけ?楽しみですね。
ソロンモを攻略したからって変に難易度上がってなければ良いですけど……



Order.8 英霊反乱 Ⅰ

 

 

 

 

 

 

「さて黒髭。話を訊こうか」

 

「あのー……さっきやられたからお咎めは無しの方向だと拙者ありがたい」

 

「あぁそうそう。質問に答えない度にその樽にゲイボルク突き刺すから」

 

「無慈悲!?」

 

「やだなぁ。慈悲の心はあるよ」ケタケタ(CV:悠木○)

 

「……それでは事情聴取を始めます。先輩、そのゲイボルクを構えるのはまだ早いかと」

 

「刺す気満々!?」

 

カルデアの一角。アッセイ部屋と筆で書かれたその部屋で樽に頭出して拘束された黒髭と、カルデアスタイルになったマシュ。そして白と朱が不規則に混ざった槍、ゲイボルクを構えた少女が居た。

彼女は女性でありながら男用の魔術礼装カルデアを見事に着こなしており、オレンジ色のショートヘアがだらしなくクセで所々跳ねている。そして時々自身の胸を揉んでいる。

 

「じゃあ質問。聖杯はどこで手に入れた?」

 

「……丁度風呂の一件で怒られてから自室でフィギュアのキャストオフしてたら、ふとベッドの下から」

 

「エロ本かよ……で、それは黒髭のなの?」

 

「知らないですな。何しろ、拙者がもし聖杯を手に入れてたらソッコでハーレム願ってますぞ。所でぐだ男氏も中々可愛いおにゃのk」

 

室内にドスッと鈍い音が響く。

 

「余計な事を喋っても刺すわよ?」

 

「お、おぉう……拙者ガチめに命の危機?」

 

「知ってるでしょう?黒髭危機一髪ってゲーム。本来は黒髭を解放した奴が勝ちだった……今回は黒髭の命が解放されたら私の勝ち。そっちは負け。分かった?」

 

「が、ガッテン」

 

ぐだ男と呼ばれた少女は少しずつ己の口調や一人称が変化していくのに気付かずに話を続ける。

あくまでマスターらしく。サーヴァントを従える者としての威厳を示しながら樽に足をかけ、槍を向けながら。

 

(これは……何とゾクゾクするシチュエーション!まるで女王様かの如く自然にそれをやってみせ、迫力もある!せ、拙者新な扉を開いてしまいそう!!)

 

「次。あの聖杯に私に成ることを願ったのね?」

 

「です」

 

「それにしては中途半端なものだったけど、何で?」

 

「……ぐだ男氏は考えたことがありますか?何でも願いを叶えてくれる……ならば、回数制限を無くせば究極になれると!」

 

「思ってもやらないわよ……。で、結果があれ?」

 

「まぁ、結果的に回数制限はなくなったけど願いの効力制限がかかってんでおじゃる。ぐだ男氏は後半感づいていたんです?」

 

その問にぐだ男は頷くと穂先で樽に穴を空け始める。

 

「……あの、先輩?」

 

「─ぁ?あ、ごめんどうかした?」

 

「疲れているようでしたら後は私がやっておきますので先輩は先に休んでいて下さい。恐らく聖杯の影響も……」

 

「そうね……マシュには悪いけど先に休ませて貰うわ。じゃ」

 

「あ、先輩。あと口調が……」

 

「え?っ─あぁ!ありがとうマシュ」

 

 

体が重い……さっきまで媚薬を盛られたみたいになって大変だっ─いや、俺は少なくとも媚薬を盛られた事はないから感覚としては間違っているのだろうか?しかし前にもあの感覚をどこかで味わったことのあるような気が……確かバレンタインデーで誰かからチョコを貰って─

 

「ぁいたっ」

 

「あ、ごめんジャック!怪我してない?」

 

記憶の糸を辿っていると、ジャックとぶつかってしまった。サーヴァント相手に少しぶつかった位で怪我をするような事は無いだろうけど、どうしても小さい子供だからそう接してしまう。

 

「うん。大丈夫だよおかあさん(マスター)

 

「良かった。所で、ここで何してるの?」

 

「鬼ごっこ!他のサーヴァントの皆とおかあさんを捕まえるために探してたの」

 

不味い事になっている。嫌な予感をビンビンに感じた俺はジャックの頭をくしゃくしゃに撫で回し、くすぐったがってる内に辺りを確認する。

幸いにもここら辺は居住区ではなく、普段サーヴァント達も立ち寄ることのないエリア。ジャックがたまたま迷い混んできたのか、他にサーヴァントの姿はない。

無邪気な子供を騙すようで悪いが……。

 

「ジャック。わた─俺はまだドクターの所に行かなきゃ行けないから、後で鬼ごっこしようか。皆にもそう伝えてくれる?」

 

「分かった。じゃあ後でロマンの所行くから待っててねおかあさん!」

 

手を振りながら走っていくジャックを見送って、俺はすぐにその場で崩れ落ちた。済まないジャック!本当はドクターもアッセイ部屋に居るんだ!よく刑事ドラマとかであるマジックミラー越しで居たんだ!だけど寝てるんだ!

 

「……だが、正直言ってこの機会を楽しもうとしない英霊など居ない。俺だってそうする……ガンドと緊急回避、あとは無敵化(オシリスの塵)で凌ぐしか」

 

ゲイボルクを振るおうか一瞬迷う。一度目はスキルで凌げても二度目、三度目も上手くいくとは限らない。

どんな手を使っても俺を玩具にしたがる奴等なら、宝具の使用だって大いにあり得る。否、寧ろ確定だ!だったら俺も仲間だろうが全力で相手をしないとお嫁に行けなくなってしまう!

 

「って違う!!お婿だ!」

 

「……何をしているマスター」

 

「へぁ!?」

 

ひとりツッコミをしていると突如目の前に巨大な影が現れ、親父ぃに起こされて寝起きでビックリしたような声を出してしまった。

 

「ご、ゴルゴーン……まさか、俺を探しに!?」

 

「ふん。他のサーヴァント共が何やら企んではいたが、私はそれとは関係ない。ここら辺は天井が高いし静かだからな。よく来ている」

 

「……ほんとにござるかぁ?あ、ごめんなさい。お願いですから魔眼止めてください」

 

「愚かなマスターよ。しかし……本当に女になったのか、確かめさせてもらうぞ」

 

「え、ちょ!止めて!令呪使うぞ!?」

 

「はっ。笑わせるなマスター。その残り二画の令呪はここから自室に向かうまで温存しておくつもりだろう?なに、取って食おうと言う訳じゃない」

 

何やら楽しんでいる様子のゴルゴーンが魔眼で俺の身動きを封じ、服を脱がしていく。そうか……!ゴルゴーンは言うなればメドゥーサの延長線!ならば、彼女が女性をより強く好むのは標準装備!

 

「や、止めてくれゴルゴーン……!この前ステンノ達をけしかけたのは悪かった!これ以外なら何でもするからぁ!」

 

「……姉様達の指示なのだ。逆らえない」

 

「んのぉぉぉぉ!?まさかそっちが真の敵だったかぁ……!あっ……」

 

「マシュや(メドゥーサ)には及ばずとも、大きめの胸だな。さて、どう料理してやろうか……」

 

体が動かせない以上、ガンドは使えない。他のスキルも使っても意味が無いだろう。やっぱり令呪しか無いのか!?

 

「令呪を以て命ず!」

 

「無駄だ。今の私には令呪よりも姉様達の命令の方が影響力が上。無駄遣いする前に止めておけ」

 

「ダニィ!?」

 

重ねて命ずるのも避けたい。もう駄目だ。おしまいだぁ……。

 

「くっころぉぉ!」

 

「何をしてるんですか?」

 

「お、お前は……!」

 

「アナ!どうしてここに!?」

 

「騒いでる声がしましたので。それより貴女は……え、マスター……?」

 

「ま、待って!?その目は止めて!」

 

アナ……真名はメドゥーサ。まだ呪いを受ける前の幼い姿でランサーだ。どうやら俺がTSしたのをまだ聞いていないようだから、女装していると思ったのだろう。引いてるし。

 

「実はゴルゴーンに襲われて貞操の危機なんだ!」

 

「貴様!私は別にそのつもりでは─」

 

「そう、ですか……いや、知っていましたよ。成長した私が女性の方を強く好むのも」

 

「その遠い目を止めないか!」

 

「!」

 

しめた。ゴルゴーンは魔眼をかなり手加減して使っているからか、視線を外しただけで石化が解けて自由になれた。

俺はその隙に指で銃の形を作って指先に魔力を集める。初めこそ慣れなかった動作だが、今では息を吸うように簡単なものとなった。

 

「ガンド!」

 

「!?」

 

俺のガンドは人類悪をもスタンさせる!理屈は分からないが考えるな。感じろ……!

 

「くっ!おのれ……頼むマスター!このままでは姉様達に顔向け出来ない!」

 

「知らないよ!人の胸揉みしだいたりするからだ!今度バビロニア周回の刑だからね!」

 

「おのれマスター!」

 

「じゃあねアナ。ステンノ達が来たら俺は逃げたって伝えておいてよ」

 

「あ、はい。分かりました」

 

アナの頭をジャックと同様に撫で回したらすぐに走り逃げる。後ろの方でゴルゴーンが喚いているがもう知らない。安全地帯……であるかは正直微妙だが、大体は大丈夫な自室に向けて全力疾走でカルデア内を移動する。

 

「あ!マスター!」

 

「!!」

 

曲がり角まで凡そ15mと迫った時、ヒョコッと顔を覗かせたライダーのサーヴァント、アストルフォ。ここからでも見えるニヤニヤした顔から、俺を探しているのは察した。右足で踏ん張るようにして急ブレーキをかけ、Uターンしてアストルフォに背を向ける。

 

「ちょっとー。何で逃げるのさー!ボクまだ何もしてないよね!」

 

「“まだ”してなくてもその内するつもりだろ!ひー!速い!」

 

俊敏:Bも速い!捕まったらどうなる……考えたくない!

 

「うわぁぁぁ!ガンド!ガンド!ガンド!」

 

「わわっ!いたた!ちょっとひどーい!」

 

もうすぐそこまで迫ったいたアストルフォに思わず3発もガンドを撃ち込んでしまう。

何て事だ……これだとこの後俺の大したことのない魔力がどこまで続くか……!

 

「居たぞ!」

 

新たな敵が現れる。

一番自室に向かうのに短かったルートは死んだ。遠回りであっても迂回するしかないと踏み、少し戻った所の階段を駆け上がる。時折ガンドで牽制しながら3階まで行くと、仁王立ちしたバーサーカー、ランスロットが現れる。

 

「ら、ランスロット……」

 

「……」

 

真っ赤に輝くラインアイが俺を捉えたと言わんばかりに強くなり、体を仰け反らせながら叫んだ。

 

「Hereeeeeeeeeee!!!」

 

「くそっ!」

 

居場所を知らせられたが、それを気にしている場合ではない。目の前の敵は強力だ。真正面からガンドを撃っても華麗に避けられ、接近を許してしまう。

 

「Aaaaaaaaa!」

 

「─これでも食らえ!」

 

だが俺には対ランスロット用のウェポンがある。それはスマホの画面に映し出されたマシュの写真だ。

投げたスマホに俊敏:EXはあろうかとスピードで反応し、それをキャッチするとすっかり大人しくなったランスロットを尻目に4階へと駆ける。

 

「はぁ!はぁ!」

 

黒髭が願ったのは『ひ弱な女の子にしてくれ』。その願いはゆっくりと、しかし着実に俺の体を蝕んでいく。

影響は早速体力面に出てきており、散々兄貴達とのトレーニングでついた体力は何処へやら。早くもバテてしまった。

 

「はぁ……はぁ……んっ、はぁ」

 

「ま、マスター……?どうしたんですかそんな喘いで」

 

「お……沖田さん……」

 

「えっと……病弱スキル追加されました?」

 

沖田。真名は沖田総司、セイバーだ。英霊中恐らく最も吐血する病弱サーヴァント。最近は武蔵と小次郎の3人でよく行動しているのを目にするようになったかな。

 

「マスター?何かあったのなら聞きますけど……と言うより、私がマスターの状態を訊きたいんですが」

 

沖田さんは基本的に“あっち側”の連中ではないから、今回のマスター捕獲作戦に関わってはいないだろう。それに、もし沖田さんがあっち側だったら縮地スキルで逃げられる筈がない。

 

「実は─」

 

かくかくしかじか。

 

「……成る程。マスターも大変ですね」

 

「はは……笑えないや。兎に角、俺は何としても自室に逃げないといけないんだ」

 

「ならばこの沖田さんもお供しますよ!」

 

「……これから向かうのは死地。敵は全員サーヴァント。それでも?」

 

「私はあの時言いましたよ。たとえ冥府の果てでもお供すると」

 

「─ありがとう……ありがとう沖田!」

 

(お、おぉっ?初めて呼び捨てされましたよ!これは沖田さん大勝利の予感!?)

 

何だか妙にソワソワし始めた沖田さん。早速敵を感知したのか?流石アサシン適性がある。頼もしい!

 

「行くぞ!全速前進DA☆」

 

「は、はい!」

 

身を潜めていた女子トイレから飛び出し、常にガンドが撃てるように準備をする。

 

「あらあら、随分非力なガンドね。私が手本を見せてあげるわ」

 

「!?」

 

咄嗟に廊下の先の暗がりにガンドを撃つ。今回のは特別に数倍の魔力を込めた一撃だ。だが、俺のガンドはその暗がりから同時に飛び出してきたガンドによって相殺されてしまった。

この声、この鋭くも大胆な威力のガンド……間違いない、奴だ。金星の(赤い)悪魔がやって来たんだ!

 

「イシュタルェ……」

 

「ふふっ。ことガンドにおいてはこのカルデアで私の右はおろか、足元に及ぶ事も出来る英霊は居ないわ」

 

「そもそもガンドを使える英霊が居ないんだけどね。で……目的は?」

 

「言わなくても分かるでしょ?」

 

「マスター!沖田さんセイバーなので相性悪いです!」

 

それも分かっている。イシュタルが出張ってきたとなると、他の女神連中も大々的に行動を開始したと言うことか!

 

「ガンド!」

 

「無駄よ」

 

クイックドロウ宜しく早撃ちを仕掛けるも、寸分違わず全く同じ弾道で相殺される。何故だ……確かにガンドの威力はイシュタルの方が上だ。だが、俺のガンドは人類悪を、あのティアマトもスタン出来ると言うのに!何がガンドの優劣を決めるのか分からなくなってきた!

 

「大人しく降参なさい。別にアーチャーに洋服を投影させて、それを着てもらうだけじゃない。何がそんなに嫌なの?」

 

「それが嫌なんだよぉ!」

 

「……マスター。私ならマスターをおぶって縮地くらいは可能ですよ」

 

耳に息がかかる距離で沖田さんが耳打ちしてくる。こそばゆいのを我慢していると、沖田さんから脱出作戦が話される。

貴女は神か!いや、貴女こそ神か!桜色のジャァァァンヌ!

 

「では失礼して」

 

「え?あ、ちょ。何でお姫様抱っこなのさ。普通におんぶで─」

 

「一度やってみたかったんですよ。さぁ、遠慮なさらず!」

 

「へぇ?貴方にそんな趣味がねぇ」

 

「ちがわい!」

 

ツッコミも適当になりつつある。と、縮地に身構えていると景色が後ろに流れていき、殆ど揺れを感じさせずにイシュタルの背後に回り込んだ。

 

「では!」

 

再び沖田さんは縮地を使ってイシュタルから距離をかけ離す。流石にワープとも言われる沖田さんの縮地に反応できなかったイシュタルが遠くに離れていくのを眺めながら俺は改めて思った。

 

「多くのサーヴァントを敵に回しているな、と」

 

「やられた!あの縮地ってのがあんなに速いとは思わなかったわ……兎に角、アーチャーに連絡を─」

 

俺と沖田さんを見失ったイシュタルが天舟マアンナに乗せていたスマホを手にとって連絡を取るべく画面を触る。電源を入れて、ボタンを押すだけ。と繰返し呟く彼女のぎこちない操作でもスマホはホーム画面を出してくれた。しかし─

 

「な、何よこれ?どこに電話帳なんてあるのよ……!」

 

カルデアの各デバイスは特にサーヴァント用に作ってある─と言うのは無い。基本的にサーヴァントが召喚されるときに座から情報を得ているからだ。それこそ、カルデア低学年組やバーサーカーのヘラクレスが扱えるのだから、わざわざラクラクふぉん的な設計にはなっていない。

だが、知識を与えられていたとしてもまるで覚えられず、扱うことの出来ない者も(ここにいる1人だけだが)居る。それを人々は機械音痴と呼ぶのだ。

 

「ちょっとぉ!どうすれば良いのよぉぉ!」

 

その後、他のサーヴァント達がやって来た事で何とかなったが、それに及ぶまで実に10分という時間を有した。

 

 






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・ガンド残り弾数:10(通常魔力):6 (魔力強溜め):15(クイックドロウ)


・通常ガンド:→→↓←□↓□
・強溜めガンド:→→↓←○↓○
・クイックドロウ:↓→↑□


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