Fate/Grand Order 「マシュ。聖杯ってよく拾うけど全部願望器として機能してるの?」「勿論ですよ先輩」「じゃあソロンモさんを永み─」「先輩!」   作:第2類医薬品

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よく考えてみたら兄貴達のリニューアルされたモーションってunlimited codesのものっぽいんですよね。

あとタイトルの意味は最後に。



Order.7 KSTS

 

 

 

 

 

「ごめんマシュッ!」

 

「あ、はいマスターっ」

 

抱えて走って、暗い廊下をひたすら進む。時折今のように先輩が苦しそうに咳をして、壁際に下ろすと先程の怪我の影響で少量の血を吐いている。

クー・フーリンさん曰く、怪我が治っていない訳では無く胃に溜まった血だと言う。

 

「マスター立てますか?」

 

「あぁ……っとと。ごめんマシュ」

 

先輩は完全に血が足りていない。先程から私の補助なしでは立てない程にふらついている。

 

「マスター。血が足りねんだろ?」

 

「……面目ない」

 

「気にすんな。休める内に休んでおかないと戦えないからな」

 

「私こそマスターを守れず……」

 

「マシュ。いつまでも引き摺ってるといざって時に戦えないぞ。第一、危険地帯に踏み込んでいるから怪我をして当然なんだ。それはマスターだろうがサーヴァントだろうが変わらない」

 

私の肩にもたれ掛かった状態で、やや覇気のない声音で先輩が言う。

確かに、私もそういう危険が無いなんて思っていない。

 

「……はい。マスター!」

 

この人は強い。私とは違う、別の強さを持っている。だから……何度と私が危険だった時に救われた。

今でも鮮明に思い出せる。あの日……熱い炎の海の中で会って間もない私の傍に寄り添ってくれて、この手を握ってくれた感触を。温かく、優しいあの感覚を。

それを、その人を私は守りたい。

 

 

「うわぁぁぁぁ!!参ったぞ!全く反応が掴めない!うわぁぁぁぁ!!参ったぞぉぉぉぉ!!」

 

「落ち着きなってロマニ。彼等なら大丈夫に決まってるって」

 

「落ち着いていられるか!こんなに連絡が取れないなんて初めてなんだぞ!?」

 

一方のカルデア管制室ではロマニを含め、スタッフ全員が大慌てで走り回っていた。1名、ダ・ヴィンチはコーヒーを飲みながらゆっくりとしているが。

 

「何の騒ぎですか?またマスター達を見失ったんですか?」

 

「まったくしょうがねぇな……ま。マスターなら大丈夫だろうな。な?アサシンの父う─」チラッ

 

「カリバーーーーー!!」

 

「なんでさぁぁぁ!?」

 

「騒がしいぞ。何を騒いで─」

 

「ぐほぁっ!?その凶器()は……ッ!うわぁぁぁぁ!」

 

「……こいつはバーサーカーにでもなったのか?」

 

ロマニがそろそろ発狂しそうになった時に限ってアルト……アサシンのセイバー(?)、謎のヒロインXが管制室に入ってきた。そして間髪いれずサーフボードを担いだセイバー、モードレッドがやって来てヒロインXのエクスカリバーで吹き飛び、更に続けてやって来たランサー、アルトリア〔オルタ〕(下乳上)の胸を見てヒロインXが吐血しながら管制室を走って出ていった。

正に嵐とはこれである。

 

「や。どうしたんだい?ぐだ男君が心配なのかな?」

 

「べ、別にそう言う訳ではない。ただ騒がしいので気になって見に来ただけだ」

 

「ふぅん?ま、良いけどさ。ロマニー。まだ見付からないのかい?」

 

「レオナルドも手伝ってくれよ!?」

 

「えぇー?やらなくても大丈夫でしょ?」

 

「彼なら大丈夫だよ。間違いない」

 

と、更に騒がしくなりかけたそこへ1人のサーヴァントが足を踏み入れてきた。

もう誰が来たって構うのは止そう。そうスタッフ全員がアイコンタクトだけで意見を揃えた。だが─

 

「うわ。どうしたんだいその格好」

 

「……貴様。この私の前だと知っていての行いか」

 

「待って!?僕だってこうしたくてやってる訳じゃない!」

 

下乳上のロンゴミニアドが唸り始めたのを察知して振り返るロマニの眼に写ったのは、それを止めてくれと懇願するパンツ一丁のダビデだった。

訳が分からない。分かる筈もないと混乱していると、ダビデが自身に起きた出来事を語り始めた。

 

「マスターならちゃんと生きてるよ!実際、あっち(・・・)で僕の服剥ぎ取られたんだ!」

 

「……どういう事かな?」

 

流石のダ・ヴィンチもそれだけでは殆ど状況が掴めず、質問を返す。下乳上も矛を収め、ダビデの言葉に耳を傾け始めた。

 

「僕は()が面白いことをしてるから面白半分で足を突っ込んだんだ」

 

「嘘を吐くな。貴様は面白全部で足を突っ込んだんだろう」

 

「うん。そうだね。確かに僕は面白全部だった」

 

「……こいつを砕いても良いか?」

 

「まぁ待ちたまえ。話した後に頼むよ」

 

ダビデは話をした後にロンゴミニアドを食らうことが決定した。

 

「でだ。その彼と言うのは何を隠そう─」

 

 

「敵は高確率でカルデアの誰かだ。流石のダビデでもただの悪党に着いていくなんて事は……ないと思うんだ」

 

「今若干自信なかったでしょ」

 

「言うな」

 

最後らへんがやや濁ったのをすかさず邪ンヌが指摘する。指摘されたぐだ男も僅かな間もなく返した。

 

「まぁ、それはそれで。誰が犯人なのかまだ分からない状態なんだけど、皆はどうだと思う?」

 

「と、言うと?」

 

「カルデアのメンツでこんな下らねぇ事をしそうな奴を予想しろってことだろ?」

 

「そうなの?じゃあ私は黒髭」

 

「……少しは迷うって事はしないのか邪ンヌ」

 

「迷う筈ないでしょ?逆にアイツと熊のぬいぐるみ(オリオン)以外誰が居るのよ」

 

P(パラケルスス)とかシェイクスピアとかカエサルとか?」

 

「アンタも迷わず言うわね……」

 

だがそれも仕方がない。大体カルデアで問題を起こす鯖は彼等で固定されている。どこかのアイドル系ランサーもちょくちょく問題を起こすが、あっちは周りを盛大に巻き込んだりはしないのがまだ救いなのだ。

 

「で、皆は?」

 

「俺も黒いジャンヌの嬢ちゃんと同意見だ。アイツ、風呂で痛い目見たから腹いせじゃねぇかってな」

 

「私もクー・フーリン殿と同じですな」

 

「身内を疑わないといけないなんて何て哀しい事なんでしょう……」

 

「無理するなってマルタ」

 

「無理してないわよっ!」

 

マルタもマルタで聖女なりに振る舞おうとするのだが、如何せんすぐに地が出てしまう。本人としては隠していたいらしい。

 

「えーと、皆さんやはり黒髭氏ですか?」

 

「そうなるよね。でもさぁ……正直これで黒髭だったら逆に萎えない?」

 

「分かる。何かお決まりって感じよね。例えるなら……何度も同じ味のガム食わされてる感じ?いい加減他の味が食べたい……みたいな?」

 

「微妙な例えだけど言いたいことは分かる。んー……どうする?本当に黒髭だったら」

 

「ないわー」

 

 

「ま、まさか本当にここまで侵入されるとは……」

 

「……やっぱりお前だったのか、黒髭……」

 

「先輩。それだと……」

 

「あ、そうか。やっぱりお前だったのか!」

 

「何で言い直したでござるか!?」

 

結局奥まで進んだ結果、やっぱりと言うか案の定と言うか、いかにもといった玉座でアンメアとエウリュアレを両脇に従える黒髭だった。

しかしただの黒髭ではないのは見た目からして分かる。先ず服装だ。いつものジーパンとYAMITAのTシャツではなく魔術礼装カルデアを纏い、髭や頭髪が綺麗さっぱりに纏められている。く、黒髭のアイデンティティがぁぁぁ!!

 

「ちっ……やはり生きていましたのね。しぶとい男ですね」

 

「ねぇ、マスター。あそこの髭、殺って良いでしょ?」

 

「ジル。随分アンメアに目の敵にされてるじゃん。何したの?」

 

「私は何も……」

 

「違うよ。何すっとぼけてるのか知らないけど、次は無いよ。黒髭(・・)

 

「……何?」

 

メアリーはカトラスを抜き、その切先を俺に向けている。……成る程これで納得がいった。今、黒髭は俺になっていて俺が黒髭になっているんだ。

 

「……デュフ、デュフフフフ……!確かにふざけるのはここまででごさるなぁ」

 

「せ、先輩?」

 

「おいどうしたマスター……?」

 

「良いから……拙者も本気を出しますぞ!ホォアアアアア!!」

 

こうなったら下手にやっても面倒だ。だからいっそのこと黒髭に成りきるのもアリだ!

 

「行くぞ野郎共!あいつは大した強さのないマスターだ!しかも鯖の数はたったの2騎!ならば数の多い俺達が有利!」

 

「ぅお、ちょ、拙者だって戦え─」

 

(いや待て!拙者は今ぐだ男氏になっている状態……下手に拙者が戦いに出てしまうと設定を破綻させてしまう可能性が!まさかぐだ男氏はこの聖杯の─)

 

「マスターは下がって!あんな奴ら、僕達で倒せる」

 

「戦闘指示くらいはお願いします」

 

「メドゥーサが居れば楽だったのですけれど……仕方無いから私も戦ってあげる」

 

「各員、1人につき2人で当たれ!」

 

アンメアは2人で1騎だ。だから1騎につき何人を当てるのではなく、1人で割り振る。今回はマシュもマルタと組ませて俺が単独で動けるようにした。

 

「……」

 

「ぐ、ぐだ男氏……拙者は……」

 

「オリオンが一緒だと思ってたけど?」

 

「オリオン氏はお仕置き中で誘ってないでござる」

 

「ならば死ねぇい!」

 

「ならば!?!?」

 

玉座で聖杯を手にしていた黒髭へ槍を構えて肉薄。敵のサーヴァントがマスターである黒髭を守ろうとしようが、各々が分散され更には2人も相手にしていて此方へ来ることはない。

正真正銘、黒髭との一対一だ。

 

「─っく……はぁ、はぁ」

 

「ぐだ男氏その血は……」

 

「撃たれた時のだよ……お陰で血も足りなくてフラフラする……」

 

今も黒髭に肉薄したは良いが、すぐに目の前がぐらついて槍を杖にしないと尻餅をつきそうだ。

 

「拙者が指示したのでありませんぞ!?」

 

「分かってるよ……でも聖杯をイタズラに使ったのは赦さないからな!」

 

「許してくだちい!拙者だってハーレムしたかっただけなんですよぉ!だからぐだ男氏に成ればハーレム展開てんこ盛りかと思って!」

 

「……は?ハーレム?何を言ってるんだ……俺の周りでそんな展開が起きてるのはエミヤ位だろ」

 

「あー……これはぐだ男氏も中々の典型的な─」

 

「ごはっ!?」

 

「!!」

 

兄貴が苦悶の声を上げたのが聞こえ、背筋が凍ったように冷たくなった。この感覚は知っている!

ほぼ脊椎反射で床に伏せると玉座後ろの壁が穿たれた。アンの銃撃か!

 

「ご無事ですかマスター!」

 

「あ、ありがとうアン」

 

「……!今だハサン!」

 

「承知!苦悶を溢せ─妄想心音(ザバーニーヤ)!」

 

僅か一瞬。黒髭へと注意が向いたアンにハサンの腕が触れ、エーテル塊のコピー心臓が作り出される。このコピーを潰す事により、対照は本物の心臓も破壊。呪殺される。アンも例外ではなく、これをやられて膝から崩れ落ちた。

 

「嘘!?アン!」

 

アンとメアリーは2人で1騎。これのデメリットはどちらかが倒れれば、もう片っぽも問答無用で戦闘不能となる。だからコンビネーションの良い2人に複数ぶつけるのではなく、個々にして一方さえ倒してしまえば良い状況に追い込んだ。その作戦は上手くいったようだ。

光の粒子へと変わり、霧散していくアンメアを目にした黒髭も流石に銃で応戦を開始した。

 

「本当は拙者が戦えば、設定したぐだ男氏から逸れてエラーが出てしまうがやむ終えん!拙者の怒りが有頂天!行くでござる!行くでござる!アン女王のふ(クイーンアンズリベ)─」

 

「させるか!ガンド!」

 

「ぬほぉっ!?」

 

「痛っ!?ちょっと……何よこの頭が─」

 

エウリュアレが頭を押さえて苦しんだ様子を見せる。コレが黒髭の言った設定から逸脱した結果か。

 

「黒髭。何か言い残すことはあるか?」

 

「……せめて首は残してくれると─とでも言うと思ったか!聖杯よ!このぐだ男氏をひ弱な女の子にしてくだされぇぇぇぇ!!」

 

「「「何ぃ!?」」」

 

「させるか!令呪を使う!」

 

「無駄でおじゃる!この世界では令呪はサーヴァントに適用は─」

 

「その腐った度胸ごと、心臓を貰い受ける。それこそ不徳の報いに相応しい─刮目せよ。絶望とは是、この一刺し……その身で味わえ!」

 

令呪は何もサーヴァントに命令を実行させるだけのものではない。確かに使用目的はそうなるが、元々は単純に膨大な魔力。それをマスター自らに使うことが不可能というわけでは無い(条件はある)。

しかもこの特異点でなら俺の筋力が上昇している事も相まって、瞬間的でならサーヴァントに並ぶことも出来る筈。

 

「そうか!令呪の魔力を自分に……!だがもう遅い!この願いは─たった今叶えられる!」

 

「はぁぁぁあ!」

 

─ドゥクン!

 

「はぅあ!?」

 

「おぐぅっ!」

 

変な心音が聞こえてついでに体が変な感じになった。そのせいで俺の渾身のゲイボルクは黒髭の脇腹を少し抉って終了し、黒髭は玉座に尻餅をついて俺は顔面から脱力して倒れてしまう。

 

「ぐっ……やりますなぐだ男氏……だがちょっとばかし……迷いが見えた。サーヴァントとは言え、刺すのが怖いか……?」

 

「はっ……珍しく真面目モードだな。そうだよ……怖い」

 

「だったら覚悟を決めろ!この黒髭、エドワード・ティーチを従える男がそんな腰抜けでどうする!」

 

「……」

 

幾度となく、敵サーヴァントと戦う機会があった。その度に俺はマシュに守られ、他のサーヴァント達にも戦ってもらってきた。

確かに俺は何の実力も持たない一般人の類いだ。だけど、だからといってそれだけで終わりたくない。俺は俺の出来る範囲で成せることをやる!

 

「……その眼だ。じゃあ拙者は先に帰って─」

 

「ちょっと待て。良いこと言ったのは認めよう。だが、この聖杯を止めてくれはぁんっ!」

 

「デュフフフフ!もうこの聖杯は願望器の役割を果たせんでおじゃる!ぐだ男氏もT.S.(トランス・セクシャル)を楽しむが吉!デュフフフフハハハハハ!」

 

体が熱い……何でこんなに熱いんだ……。

目の前で高らかに笑う黒髭が退去していくのを、ただ何も出来ずに見ていることしか出来ない。

熱い……何だろう物凄く……興奮する。

 

「─って、媚薬みたいな反応させんなやぁぁあっ!?」

 

三度(みたび)心臓が跳ねた。(ワタシ)はその度に変な声を出して体を仰け反らせてしまう。

 

「先輩!大丈夫ですか!?」

 

「マスター!」

 

「はぁ、はぁ。もう、駄目……後はお願いマシュ……」

 

「先輩!そんな……先輩ーーーー!!」

 

 

「良かった!じゃあ無事黒髭君は倒せたんだね?兎に角、今すぐレイシフトするから待っててくれ!」

 

カルデアではマスター行方不明騒ぎを聞き付けた多数のサーヴァント達が管制室で通信が復活した様子を見ていた。

わぁっ!と歓声が上がり、皆が良かったと安堵している最中、遂にレイシフトが完了してマスター含め7人帰還した。

 

「ん?何だろこれ?ぐだ男君?」

 

マスター(トナカイ)さんの所に行ってきます!」

 

「わたしたちもー」

 

「えぇ、行きましょう」

 

カルデア低学年組は嬉しそうに管制室を飛び出し、下のコフィンへと駆けていった。それに続いて何人かのサーヴァントも我がマスターの迎えに出ていく中、スロマニ含めタッフ数人は訳も分からずと言った様子でモニターを凝視していた。

 

「どうしたんだいロマニ?」

 

「……」

 

「?」

 

『ええええええええええええ!?!?』

 

そんな時、コフィンルームのマイクがサーヴァント達の叫びを拾った。

誰もが驚いて管制室の窓に張り付き、下の様子を確認しようとする。そして目にした。コフィンから無事出てきた7人の内、血塗れのダビデ服を纏った女性が居たのを。

 

 

 






後半の流れが早すぎてすみません。




KSTS(黒髭の・聖杯で・トランス・セクシャル)





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