Fate/Grand Order 「マシュ。聖杯ってよく拾うけど全部願望器として機能してるの?」「勿論ですよ先輩」「じゃあソロンモさんを永み─」「先輩!」   作:第2類医薬品

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ボックスどうですかー!




Order.68 戦争

 

 

 

 

 カルデアから特異点のマスターの元へサーヴァントが召喚される際、基本的に今までついてきてくれていたマシュが召喚サークルを設置して、物資等と一緒に行くのが普通だ。

 だが、終局特異点を終えてからマシュの力はほぼ無くなった。その為新宿からは特異点に跳ぶ際にぐだ男を指定座標にしてサーヴァントをレイシフトさせるシステムが組み立てられ、漸くマスターとカルデアに召喚されたサーヴァントが一緒に特異点へ行けるようになっていた。

 とは言え、実はこのシステムは既に2年前に実装されていたのだが、あの爆破で復帰するのに大分時間が掛かってしまった為に新宿が初披露となったわけだ。

 もっとも、そこはサーヴァントが弾かれて見せ場が無かったのだが。

 何れにせよカルデアに残ったサーヴァントはやっぱり暇なのは変わらない訳で──

 

「戦争です!」

 

 食堂の隣。3色の外装が目を引く、サーヴァントのクラス7騎からもじった『7(セブン)』の数字をトレードマークにするコンビニエンスストア。

 一体どんなルートで仕入れているのか、我々が知る普通のコンビニエンスストアと同じ様に雑貨から食品。それ以外では()()()()()礼装まで幅広く取り扱っている便利なお店の中から甲高い怒号がカルデアの廊下に響いた。

 声をあげた男は不気味に飛び出た目玉が特徴的なインスマス顔のサーヴァント。

 そしてそれを朗らかな笑顔で見下ろす様に相対しているのはやや色の悪い肌をした筋骨隆々のバーサーカー。

 店員としてバイト中のメドゥーサが関わるつもりは一切無いと、魔眼殺しの眼鏡からバイザーに付け替えた所でそのバーサーカー、スパルタクスが手に小さな箱を持ちながら声を発した。

 

「戦争? それはつまり、お前は圧政者と成る訳だな?」

 

「そぉぉですとも! 貴方は私達とは相容れぬ存在! 古来より人は同種を同種と見ることが出来ず、考えの違いから排斥するのです! 今の私達も同じ……『きのこ派』と『たけのこ派』の相反する勢力に属するが故に!」

 

 インスマス顔のサーヴァント、ジル・ド・レェが同じく小さな箱を両手に掲げてそう言い放った。

 その手に持つのはカルデアでも特に人気のお菓子、『きのこの山』。彼は人類(主に日本人)が長年に渡り、今尚続いている戦争の片陣営に属していた。しかもその中でも過激派であり、1つ挙げるなら単騎でたけのこ工場に侵入。破壊工作としてクッキーを全てクラッカーにした事もある危険人物だ。

 

「愚かな。我が愛、たけのこの力は永遠不滅。そしてその我が愛すべき里を侵さんとするきのこの民よ。お前達がそのきのこを圧政者の鎚の様に掲げると言うのならば、私達もたけのこを槍が如く掲げ叛逆で応えよう。そして戦うのだ! 愛をもって! 侵略と反撃をもって互いの命を散らすのだ!」

 

 対するスパルタクスは当然『たけのこの里』陣営のサーヴァント。

 彼はジルとは違って過激派ではないが、その思考と相まってきのこ派とぶつかると事態が大きくなる事が多い。

 そしてたけのこの里の過激派と言えば誰なのか? 意外にもモードレッドだ。

 彼女はたけのこは好きだがきのこも好きなサーヴァントで、どっちの陣営として振る舞うべきか悩んでいた。ある時、自らの(はは)であるアルトリアがきのこ陣営に属したと聞き、彼女は迷わずたけのこ陣営に加わって今に至る。

 因みに彼女が過激派と呼ばれる所以は、彼女がきのこの山をチョコとクラッカーに分けた後、それらを溶かして砕いてたけのこの里に成形し直したと言う残酷(?)な行いをした事が原因だ。

 

「面倒な事になりそうですね……」

 

 見ざる聞かざる状態でも聞こえてしまう二者の主張。

 マスターであるぐだ男とその代わりを務めることも多いマシュが居ない時の騒ぎは過激になる事が多いので、何かと鎮圧に当たるメドゥーサは大きな溜め息を吐いた。

 恐らく、今ここでいつものように魔眼で石化させてしまえば落ち着くのだろう。2人ともランクC以下の魔力なのでメドゥーサの魔眼、キュベレイと予め知られていたとしても石化させるには充分。

 だが、ぐだ男にも言われている事で、石化させて落ち着いたからと安心しては駄目なのだ。

 彼ら、彼女らはサーヴァントではあるが個人であり仲間でもある。こう言った問題を無理矢理抑え込んで後で支障が出ると厄介なのは今までカルデアでマスターをやって来た者なら分かるだろう。

 だから敢えてお互いが納得するまで放置するのも手だと、随分前に3徹明けのぐだ男が灰色の眼でメドゥーサに言っていた。

 しかし、今放置すると確実にヤバイのはすぐに分かる。

 

「はぁ……困りました。このままだとお店が破壊されかねませんね」

 

「石化させて追い出せば良いだろう」

 

「駄目です。それは解決にはなりません。あの争いは最早お互いの霊核に『たけのこ』と『きのこ』が突き刺さった状態ですから、無理に(メドゥーサ)達『コアラのマーチ派』が介入すると爆発してしまいます」

 

「……すまないが、私はマーチ派ではないし突き刺さってるとか意味が分からない」

 

 溜め息を吐いたメドゥーサの左隣にバックヤードから帰って来たアナことメドゥーサ(槍)。右隣にスタッフルームで発注管理をしていたゴルゴーンが同じく2人の様子を見ている。

 

「面倒だ……ぐだ男を呼べば良いだろう」

 

「ぐだ男さんは既に特異点へ赴いたので対応できません。取り敢えずここはこの『セヴン・イ・レェヴン』の店員である私達で彼らを摘まみ出しましょう。大丈夫です、優しくなんてしませんから」

 

 取り敢えず店が壊されると反省文がぐだ男に加速度の如く積み上がってしまう。

 先ずはメドゥーサ2人できのこの民とたけのこの民を店の外へ追い出してメディア(リリィ)を呼ぶ。到着までの間も戦闘が始まりそうなのを抑え、漸くペインブレイカーで喧嘩する前に戻して鎮静化──の筈だった。

 

「決着を付けるべきだと思いますっ! あ、私はパンケーキ派なので見物させて貰いますね」

 

「何を言っているこのサイコは? このままでは──」

 

「ですから、ここで鎮静化してもまた同じ状況になるので、だったらお互い満足するまで戦争をするんです。ほら、あれですよ。殴り合いの後に河川敷で仲良くなる」

 

「古い少年漫画の見すぎだ! 誰かコイツを止めろ!

 あ、いや、宝具を使わせろ!」

 

「何々? 何の騒ぎだい?」

 

 呼んだサイコが役に立たない最中、何処から嗅ぎ付けてきたのか両手にトッポを持ったダビデが姿を表した。

 

「え? きのこたけのこ戦争? 成る程。確かに、人と言うのは相互理解を諦めた時から暴力に訴えてしまう悲しい生き物さ。けど、争いは何も産み出さない訳じゃない。良いかい? 現代で言うと戦争は最早ビジネスさ。非効率的ではあるけどね。で、戦争には武器が必要だ。戦争は需要と供給が爆発するから、武器を売ればそりゃあ儲かる訳さ。だからどこかの国は経済がヤバくなったら戦争させて金を稼いだりするんだよねぇ。現代の人間は恐ろしい……っとと、話がそれた。じゃあ今回はその武器をそれらお菓子にすり代えるとどうなると思う? 明治は儲かり、ボク達は平和的に戦争が出来る。もっとも、先ずは明治に対してどれ位発注するかが肝だ。あぁ、心配しないでよ。そこはボクが仲介する事で円滑に進むから。ボクのツテで君達が支払ったQPを現金に換金して絶えず君達に供給の流れかな。まぁ、多少の換金手数料は勿論頂くけどたったの8%、マスターの故郷の税金と同じシステムと思ってくれれば良いよ。あと、ボクは絶えず独りで発注と在庫管理、君達への供給を行うからボクの人件費や関税等も含めて──ざっと30%の上乗せで勘弁しよう。うん。独りでやるから効率的ではないのが珠にキズだけど、その点トッポって凄いよね。最後までチョコたっぷりだもん」

 

「それが言いたかっただけだろう貴様!? しかも滅茶苦茶な商法で貴様だけが得をする手に引っ掛かるものか! ビットコインでもやってろケトゥス!」

 

 ゴルゴーンの宝具でダビデがブッ飛ばされる。

 大分早口で何を言っているのか終始分かり難かったのを彼女はしっかり理解していたのが命綱になった。意外にも彼女はちゃんとする女なのだ。

 

「お前らさ、少しは落ち着けよ。騒ぐと怒られるぞ」

 

「おや!? 貴女はジャンヌに似ながら全く品性も何も足りぬ叛逆児ではありませんか!」

 

「同胞の匂いがするぞ。そう……叛逆への愛とたけのこの里の匂いだ。問おう、お前は圧政者(きのこ)かな? それとも叛逆者(たけのこ)か?」

 

「あぁ? んなもんこのモードレッドが叛逆者じゃない訳ないだろ。それとジル。誰の胸が足りなくて女として見られないって?」

 

「いえ、私はその様な事は──」

 

「ぶっ殺す!!」

 

「良いぞ! 叛逆精神が我がたけのこの里に染み渡っている! ハハハハハ!」

 

 散々女として扱うと(男としても)怒っていたモードレッドが騒ぎ始めて、騒ぎを聞いたサーヴァント達も集まっては各々の派閥に感化されて、いよいよ収集がつかなくなってきた。

 中にはメドゥーサ達のようにコアラ派で皆を落ち着かせようとする者や関係無い『こしあん派』と『つぶあん派』の衝突、果ては『ビアンカ派』と『フローラ派』で言い争いも。何故どれも日本国内で起こっている争いと同じなのかは、召喚システムに登録されたぐだ男の国籍情報に大分影響されているようだ。

 

「決着つけるぞ! この、きのこたけのこ戦争のな!」

 

「「「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」」」」

 

 老若男女問わずサーヴァント達が開戦を告げるように咆哮した。

 

 ◇

 

 ドドンッ!

 何処から持ち出してきたのか、大太鼓をカリギュラが打ち鳴らす。偉く堂に入っていたが、それを気にするものは殆ど居ない。

 

 ドンッ! ドンッ!

 それもその筈。皆一様に険しい顔で川を挟んだ相手の陣地、その中で展開している軍を睨んでいるのだから。

 

「皆の者! 遂に決着をつける時が来たぞ! この戦いに於いて、生きて変えれるとは思うな! 貴様らがこれから戦うのは因縁の相手きのこの民だ! その川を越えた先に奴等が、戦場が待っている! チョコと比率が合わぬクラッカーなぞ踏み潰せ!」

 

「「「オオオオオオオオオオオッ!!」」」

 

 対してきのこの山派──

 

「えぇ、決着の時です。クラッカーとチョコの比率が合わない等と宣う彼女らに思い知らせてあげましょう。きのこの山のチョコ比率こそが黄金であり、クッキーとチョコの割合こそが合わないのだと! 粉だらけになるクッキーよりもクラッカーが食べやすいと!」

 

「「「オオオオオオオオオオオッ!!」」」

 

 ドンッ! ドンッ! ドコドコドコドコドコ……!

 大太鼓の音で話していたものはそれを止め、またそれを眺めていた他派の者達も音源へ目を向けた。

 そして──

 

「ウォォォオオオオ! キノコォォォオオオオ! タケノコォォォオオオオ!」

 

「ローマッ!」

 

 パォファアー!

 カリギュラの隣で待機していたロムルスが法螺貝を吹き、それを合図に両軍総勢80()が川に向かって走り出した。

 ここはシミュレーターで作り出した高原。中心に幅10m程の川が東西を両断する涼しい気候だ。

 一方でカリギュラやロムルス、他派の者達はそれらギリギリを一望できる程の高さの丘の上でパラソルを広げたり、テーブルでトッポやらコアラのマーチやらを摘まみながら優雅に観戦している。

 

「良かったのでしょうか……」

 

「騒ぎが大きくなれば良くないな。だが、逆に言うとこのシミュレーター内で済ませれば迷惑は掛からないだろう」

 

「あ、始まります」

 

「きのこは粛清だ!」

 

「たけのここそ!」

 

 川は幅の割には浅いようだ。

 膝下程度までの深さの中、たけのこを象った盾や槍、片やきのこを象った大槌や弓矢が相手を倒さんと振るい、飛ばされている。

 そんな中、擬似日光の光を眩しく反射させる白の騎士が柄と鍔がきのこソックリな剣でたけのこ派のサーヴァントを2騎一刀のもと切り伏せられた。

 その騎士、太陽の恩恵は受けておらずとも鈍る事なき強さを誇るガウェインである。

 

『たけのこ陣営サーヴァント。アサシン、荊軻。アヴェンジャー、アンリマユの2騎リタイア』

 

 アナウンスされた2騎がたちまち何処かへ転送されていく。

 実はこの戦争では騒ぎの深刻化を避ける為BB監修の元、シミュレーターを利用してダメージデータ等を電脳化させて死傷者が出ないようになっている。

 その為、皆は武器防具が各陣営の象徴だったりしているのだ。

 更に、それだけでは面白くないのでサーヴァントはRPGの様に『戦士』『攻撃系魔術師』『治療系魔術師』……と言った職業を選んで本来のクラス関係を無くして戦術面でも楽しめるように細かく設定されている。

 ルールとしては単純に相手を殲滅か、大将を倒すこと。

 因みに負けたサーヴァントはシミュレーターの外に出されて観戦している。

 

「両陣営にアルトリアが居るのに結局きのこにしたのか」

 

「円卓の騎士も大変ですね」

 

 メドゥーサ達がお菓子を摘まむ中でも戦いは続く。

 いくら本来のクラスではなくても、流石は英霊。あっという間にコツを掴んで攻撃に鋭さが増してきていた。

 そんな両者譲らずの戦闘が20分程経過した時、突然両軍を空から降り注いだ大量の槍が襲い掛かった。

 否、それは槍と言うよりはトゲバットのような武器。持ち手の部分はビスケットで、砕かれたアーモンドがぎっしり詰まってミルクチョコレートでコーティングされた、棒状の菓子。それは知名度こそ低いが歴とした『きのこの山』『たけのこの里』の兄弟で『ラッキーミニアーモンド』と言う。

 いや、その名前だと寧ろ分からないだろう。ならば真名を明かす他無い。

 

 その名は──

 

「『すぎのこ村』だとッ!? 誰だ! 何処からやって来た!」

 

 ざわめく。無理もない。何せ『すぎのこ村』とは昔に販売された明治の菓子なのだが、登場した時には既に『きのこの山』『たけのこの里』の争いが勃発していた。

 山と里に挟まれてしまった形の村はこの戦争を善しとせず、何とか中立を保っていたのだが……きのこたけのこ戦争は激しさを増して遂には村は巻き添えにより滅びてしまった。

 故に食べた事がある者も知る者も少ない。

 そしてただ消えただけではない。すぎのこ村には伝説が残されている。

 

 ──再び戦争が起こる時、すぎのこ村は蘇る。

 

 弓「フハハハハハ! 醜いな、雑種同士の食い潰し合いと言うのは!」

 

「ギルガメッシュ! 貴様、邪魔をするのか!」

 

 弓「邪魔? はっ、違うな。(オレ)は滅ぼしにわざわざ出向いてやっただけだ。貴様等をな!!」

 

 術「そうだ。いつまで経っても学ばぬ雑種共に(オレ)達が教えてやる。すぎのこ村こそ、最高の菓子であるとな!」

 

 太陽を背にアーチャーとキャスターのギルガメッシュが同時に砲門を展開。その数、軽く100は越えている。つまり、今ここに居る全員を捉えることの出来る数だ。

 そこからすぎのこのチョコ部分がゆっくりと出てくる。

 

 弓「すぎのこ村を滅ぼした罪、貴様等の屍を築くことで償って貰う!」

 

 すぎのこが発射される。

 たけのこの盾がそれを凌ぎ、しかし2発目を受けて敢えなく散る。

 きのこの剣がそれを受け流し、川に着弾させて水飛沫が舞うが、すぎのこの表面はデコボコを越えてトゲトゲしている。瞬く間にきのこの剣は刃を駄目にし、健闘虚しく折れる。

 圧倒的だ。すぎのこは衰えを知らず、次々とサーヴァントを貫いてダメージを与える。幸運なのは、すぎのこは装備破壊がめっぽう強いだけでダイレクトダメージは大した事。それでも絶え間無く打ち出されるそれらに全員が屠られるのは時間の問題だ。

 

「皆さん落ち着いて下さい! ボクがあれを迎撃しますので、その間にアレ等を倒してください!」

 

「うむ! 頼むぞ子ギル!」

 

 宝物庫を使わないと決めていた子ギルが迎撃の為少ないが60砲門を展開した。そこから射出されるたけのこの数々。

 たけのこは子ギルの微調整で弾丸と同じ回転を加えてある。それのお陰で相性が悪いながらも確実にすぎのこをドリルブレイクしていく。

 

 術「おのれぇ」

 

 弓「もっと数を増やすぞ(オレ)!」

 

 術「分かったぞ(オレ)!」

 

 更に数を増やすすぎのこ砲門。遂にその数は200に達した。子ギルも負けじと頑張るが、それでも圧倒的にすぎのこの数が多く、HPが尽きるサーヴァントが続出してしまう。

 最早どの陣営だろうと関係無い。全てを無差別に蹂躙だ。

 

「ぅ落ち着けぃッ!! 我々には! 知恵があるのです!! かつてのテルモピュライに比べればぁ!!」

 

 しかし、ただ圧されているだけでは無かった。きのこ派のレオニダス指揮の元、きのこたけのこ関係無く防御陣形を組んで各々の職業の最も力を発揮できる様になって被害も大幅に減っていく。

 

(まが)れ!」

 

 弓「ぬぅッ!? 魔眼無しでも(オレ)のすぎのこが曲がるか! 攻撃魔術で為せるとは余程曲げるのに慣れている系雑種ぅ! しかもスタイリッシュ!」

 

「ったく……サーヴァントになって体が頑丈になったからってよく動くよな」

 

「何々? シキは運動は苦手なの?」

 

「苦手な訳じゃない。ただ、あの女がちょっとテンション高いのが見慣れないって言うか……で、アストルフォ。お前『ガーディアン』なら盾しっかり持ってろよ」

 

「ごめんごめん。ちょっとこの盾重たくてさー」

 

「さて……ルール的には魔眼も禁止だけど、視えるのはしょうがないよな」

 

 アサシンクラスである両儀式は職業『ナイフマスター』。いつもの業物ナイフと同じくらいの大きさのナイフを使うのに長けた職業で、暗殺にも有利になれる。

 パッシヴスキルである『ナイフ投擲』で投擲時に於ける命中率が高い彼女はどうしても視えてしまう“死線”に合わせて、低攻撃力の無限ナイフを投げる事で装備破壊も可能だ。

 流石は抑止力の眼鏡に叶った魔眼持ち(式の方は「 」の補正と思われるが)。彼女達の活躍もあり、今度こそ終わりかと思われた戦局が変わってきた。

 ギルガメッシュに攻撃が依然として届かないが、ギルガメッシュの攻撃も盾等に阻まれて届かなくなる。後は回復技を持たない『アーバレスター』である2騎に何とか攻撃を当てるだけだが──

 

「Arrrrrrrrrrrr!!」

 

 バーサーカーのランスロット、今は『ガーディアン』の彼が飛来して来たすぎのこを1本、盾で防ぐのではなく掴んでやり過ごした。

 何事かと周りから視線で問われる中、ランスロットは川の水にそれを浸けてゴシゴシと洗い始めた。

 やがてチョコが剥がれ、アーモンドが流れて……何故か中から金属質の輝きが姿を表す。

 

「おいおい、そりゃあオジサンのドゥリンダナ──の原典じゃないの? これはルール違反だろうよ」

 

 弓「ルール違反を最初にしたのはそっちだろう雑種! それにこの(オレ)がルールだ!」

 

「やべぇぞ! ギルガメッシュの野郎、宝具を撃ってきやがった! マジで死人が出る前に倒さねぇと!」

 

「その役目、私が果たしましょうランサー」

 

 そう言って元祖セイバー、アルトリアがきのこの剣を捨ててエクスカリバーを代わりに握る。

 魔力が迸り、彼女の職業であった『ソードマスター』では出来ない筈の魔力放出がされる。完全に、ルール無視の宝具真名解放体勢だった。

 

「馬鹿止め──」

 

「エクス──カリバァァァァアアアッ!!」

 

 光がギルガメッシュを問答無用で襲い、シュミレーターなのを知ってか知らないでか全てを凪ぎ払った。

 当然、シュミレーターはそのせいで穴が開き、外から冷気が侵入。いずれホログラムが保てなくなりただの空間に戻ってしまった。

 

「ふぅ。これで一件落着ですね」

 

 そう。

 取り敢えずこれでこの戦争は一件落着した。お互いに認め合い、和解もしたのだ。

 

 ──ぐだ男の始末書が増えたと言う代償を得て。

 

 




超・展・開

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