Fate/Grand Order 「マシュ。聖杯ってよく拾うけど全部願望器として機能してるの?」「勿論ですよ先輩」「じゃあソロンモさんを永み─」「先輩!」   作:第2類医薬品

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回し時だったので暫く周回に注力してました。


Order.64 チ○○には勝てないメイヴ

 

 

 

2日目の夜も皆でひたすら掘り進めた。

途中、何人も弱音を吐いたが俺はその度にあるライダーの言葉を胸に反芻させた。

『諦めなければ夢は必ず叶う』そう。諦めなければ前に進み続けられる。例えゆっくりだとしても、その歩みを止めない限り歩いていられるのだから。

 

「俺は諦めねぇ。そうだろコロンブス」

 

そうして寝ることもせずに掘り進めた俺達は遂にどこかしらの空洞に突き当たった。

崩れた土の向こうは意外と明るく、頭を突っ込めば中の様子がよく見える。

 

「どう? 何か見える?」

 

「えーと、変な機械がいっぱいある。何だろう……」

 

機械(からくり)が?」

 

「あとはGって書いてある大樽とか小樽とか……見たことあるな」

 

『横から失礼します! それはもしや大タル爆弾Gでは!?』

 

トランシーバーからやたら興奮した様子の声。この声は先の下総で戦い、カルデアに来てくれたサーヴァント。

アーチャー、巴御前だ。

過激な時代を生きた彼女は、実は鬼の血も混ざっているからか人の頭を捻り切ったと言う逸話を持つ。更に旦那さん関係でちゃっかり低ランクの狂化スキルも持ってきている。これもあって、カルデアである人物に会えば彼女は己を制御できなくなるだろう。

そんな彼女だが、最近は専らゲームにドはまりしており、アーチャーと言うよりはゲーマーのサーヴァントにクラスチェンジした。

だから彼女が言う大タル爆弾Gとはご存知モンスターをハントするあれのだ。

 

「だとしたらどうしてここに? もしかして爆弾魔が収容されてるとか」

 

「正解ですよお客さぁん」

 

「うわああああっ! メッフィーだあああああ!!」

 

何となく察しかけていた時にメッフィーが後頭部、つまり死角の天井からヌッと顔を近付けてきた。

慌てて頭を引っこ抜いて逃げようとするが、皆でこの穴に潜っている為案の定詰まって動けなくなってしまった。

 

「おやおや? そんなに驚かなくても、私は何もしませんよ。お客さんも、訳有りそうですからねぇ」

 

「うぎぎ……ッ、そ、そうなら話をっ……させて……ちょっと押さないで!」

 

「駄目だ。一度その部屋に出ないとバベッジが突っ掛かって退けん。だから少しばかり我慢してもらうぞご主人様よ」

 

「え、ちょっと、何するつもり? ねぇ?」

 

「せーの、せ!」

 

「おぐっ!?」

 

誰かが俺のお尻を物凄い勢いで押し……殴ってきた。

いや、もう誰かとか言わなくてもこの金属質な痛さはバベッジのパンチ辺りだとすぐに分かった。

少しは静かに行動する気は無いのだろうか。俺を使って壁の穴を拡げるのはまぁ、致し方無いのだが、殴るのはちょっと酷い。

 

「いたた……」

 

「すまないぐだ男。急に絢爛なりし蒸気機構(ディメンション・オブ・スチーム)が作動した」

 

「宝具じゃん!」

 

「流石ぐだ男だ。あの攻撃を受けながら痛いで済むとは」

 

1人、また1人と壁の穴から出てくる。

流石にこの人数にはメッフィーも驚いたらしく、ケラケラ笑いながら指さしで人数を数えている。

 

「はぁー、これはまた凄い脱獄班ですな。頑張って下さいねウヒヒ」

 

「悪いね。邪魔するつもりは無かったんだけど、がむしゃらに掘ってたら開通しちゃって……」

 

「いえいえ構いませんとも異邦のマスターさぁん。私こう見えて冤罪で捕まってますので、いつものように大人しくしてればぁ? ……ご飯が三食食べれちゃうんですよ!」

 

大人しく、ねぇ……?

そう言うものだから部屋を見回すと、あちこちに爆弾の残骸らしきものが転がっている。本人にとっては、なのか嘘を言っているのか定かじゃないが、野良のメッフィーには北海道の狐と同じくらい警戒しないと危ない。

下手に触られたりしたらエキノコックス症で病院送りだ。

 

「じゃあ行くね。皆、見張りが来る前に掘ろう」

 

「何処に向かって?」

 

「うーん……」

 

「因みに、私の下の牢には怪人が捕らえられてると聞きましたなぁ。確かそう……∞面相」

 

「怪人∞面相……誰だか薄々分かってるけど、協力してくれるかなぁ」

 

いや、きっと彼だからこそ何か見返りをちゃんと提示すれば協力してくれる筈だ。とは言え、こちらは何も持っていないし、多分飴をあげても満足することは無い。

取り敢えずは会って話してみないと始まらない。掘るぞ!

 

「あぁ、因みにそこには隠しておいたプラスチック爆薬があるので──」

 

「……おい」

 

「アハ」

 

刹那、俺の視界は真っ白になった。

 

 

「また揺れてる……ちょっとケルト兵!」

 

「はっ!」

 

「また地下で誰か暴れてるの?」

 

「いえ! 今回は地下4階の独房、つまりあの爆弾魔が何やら怪しい動きを見せているとの事です!」

 

この監獄……いや、()()()の女王であるメイヴは必ず決まった時間にシャワーを浴び、決まって身嗜みを整える。例え夜でも欠かさない。

それはこの国のトップとしての威厳を保つためでもあり、いつアイツが投獄されても相手が出来るように1人の女としての当たり前の事だ。

そんな彼女のルーティーンを邪魔したのは、今しがた地下でぐだ男が起爆させてしまったプラスチック爆薬──別名C-4の爆発による振動や音。この監獄にダメージが無いと言ったら嘘になるが、驚異になるかと言ったら答えはNOだ。

何せ、牢は破壊されるかも知れないが、結界はどう足掻いても無傷。メイヴにとってはその内牢に入れれば済む話でしかない。

 

「まったく……努力は認めるけど、それも最早無意味。適当に注意してきてちょうだい」

 

「メイヴちゃんサイコー!」(返事)

 

シャワールームのスモークガラスの向こうから命じられたケルト兵はそう返事と敬礼をするも直ぐ様現場へと駆けて行く。

良くも悪くも、兵として機能は十全に果たしている辺りその女はやはり女王であるのだろう。

 

「ここは私のコノートよ。囚人ごときが、どう足掻こうと無駄」

 

彼女は甘い香りの石鹸から出たシャボン玉を、ふうっと開いた窓の外に追いやると、いつもの笑顔でそのシャボン玉が割れる様を眺めていた。

まるで囚人が何をしても逃げられない、逆らえないのがシャボン玉は割れるように当たり前の事だと表しているかの如く。

 

 

爆発したC-4の威力は冗談でも弱いとは言えなかった。その証拠に、メフィストが居た牢の床を木っ端微塵にして一瞬で件の怪人∞面相が捕らえられている牢に通じたのが何よりだ。

 

ぐだ男A「──で、俺は何とか死なずに済んだ訳だけど」

 

ぐだ男B「どういう状況なのこれ……」

 

「──」

 

「ぐだ男が2人居るではないか! これはあれか? 余の両脇でサラウンドで蜜言を囁いてくれるボーナスステージだな!?」

 

「参ったな。まさか早速∞面相とやらに遊ばれるとはな。敢えて訊くぞ? ご主人様、どちらが本物だ?」

 

A&B「「勿論、俺だよ!」」

 

「うむ! 分からぬ!」

 

同じ見た目、同じ声の2人は各々が自分こそ本物だと主張する。

しかし、このテのサーヴァントはカルデアにも1騎居た。その名をアサシン、燕青。過去に色々関わった故にモリアーティはある程度の対策法は思い付いては居るが、それはあくまでこの燕青がぐだ男の記憶を有していなければの話。

 

「ではぐだ男君。君の好きな女性のタイプは何かね?」

 

A&B「「え? 俺の? いやぁ、何と言うかよく分からないんだよね」」

 

A「決まってこの人が好み! とか無いし……ねぇ?」

 

B「な。でも強いて言うなら、小動物系?」

 

A「あー、そうかも知れない。流石俺。俺の事分かってるわ」

 

B「自分に誉められるのも変だね」

 

A&B「「まぁ、そんな感じ」」

 

(成る程、私も分からん!)

 

流石に内面までは完璧に真似できない筈だが、お互いにまるで本人のように振る舞っている。いや、方っぽが本人なのでその言い方は怪しいが……兎に角モリアーティも今の会話だけでは全く区別がついていない。

ゆっくり見分けていくにしても、あまり長い時間変装させていると、ぐだ男の記憶も書き込まれて行くので変装した本人も自分を見失いかねない。

そこで今度はアルトリアが質問した。

 

「では、この前私に言った言葉を覚えているか?5日前のお昼だ。貴様は私とランサーの私を見比べて不躾な質問をした」

 

A&B「「?」」

 

B「なんか言ったっけ……?」

 

A「覚えてないよな……最近物忘れ激しいし」

 

B「だよな。しかし不躾な質問か……なんだと思う?」

 

A「胸のサイズ……は言わないよな」

 

個々の記憶や情報を判断する問いなのに、あろうことか本人も偽物もお互いに協力して問題に答える態勢になっている。

流石にそれは駄目だと言うと、今度は2人揃って分からないとキッパリ諦めてしまった。

 

A「て言うか、その日って」

 

B「多分お昼食べないで師匠のトレーニングに付き合わされてたと思うんだけど」

 

「……見事だ。確かに、この質問に正解はない。あるとすれば、貴様達が答えられない事こそが答えだ」

 

A&B「「成る程ね。そう言う引っ掛けも有効だ。危うく意外と歳行ってるなんて言って不躾カリバー食らうところだっ 「──不躾カリバァァァァアアアア!!」

 

黒い聖剣の魔力が放出。本人も偽物も一切を関係無く呑み込んで無人の独房を2つ程凪ぎ払った。

でもそうなのだ。彼女は聖剣を手にした結果、成長が止まって今の姿だが、本当は30ウニャノャ歳。まぁ、サーヴァントに年齢云々は言ってもしょうがないとは思われるが、本人としては気にせざるを得ないところだろう。特にケルトのある女性なんかはとても気にしている。なんたって2000──おっと誰か来たようだ。

 

「何と! よもや余より歳上だったとは知らなかったぞ! 因みに余は30歳で死んでしまった故な。今はこうして全盛期……多分20歳位で召喚されている筈だ!」

 

「私だって全盛期での召喚だ劇場女! カムランの時より若いぞ!」

 

「落ち着きたまえレディ達。今は年齢で争ってる場合ではない」

 

「そうよ。大体、そんな事言ったら私もこの見た目でおばあちゃんなんだから些細な事じゃない。それに、彼が年齢を知ったからと貴女達に対する接し方は変わらないわ。最近来た『りゅうたん』ってサムライも如何にも老剣士って感じなのに彼は皆と同じ様に接してるじゃない。逆に気にする方が変に思われるわよ」

 

「むぅ……それは確かにそうだな。すまぬ」

 

「私も怒ってすまなかった。メイドたる者、年齢程度で仕事にブレを生じさせるのは愚の極み」

 

B「俺も無神経な発言だった……ごめんアルトリア。でもモーさんが実年齢10歳なのはどうしても驚きを隠せない」

 

A「分かる。しかも全盛期召喚だから一桁の可能性もあるとなると、ジャック達と同じ様に情操教育を……」

 

しれっと瓦礫の中から立ち上がった2人がアルトリアに謝っている。

やはり、その様子はぐだ男そのもの。見分けはつけられそうにない。

 

「サーヴァントの霊基も模倣できるレベルな以上、令呪を使ったとしてもカルデア式じゃどちらが本物か区別が出来ずにエラーを起こす可能性が高い。それも得策ではないだろう」

 

「お主の故郷は?」

 

A&B「「日本だよ」」

 

「ちっ。駄目じゃったか」

 

「いや、モロ日本人なのにその質問は意味がないでしょう。では、剣を持つ者なら当然ですが、私のクラスは?」

 

A&B「「その顔はセイバーだけど、アサシン」」

 

「くっ……認めたくは無いですが、正解です……」

 

次々と撃沈してく。そんな中、電気ショックを与えて居た獅子と紳士の様子をレオナルドにトランシーバーで伝えていたキャットに彼から指示が来た。

どうやらモリアーティに渡せとの事らしく、キャットは言葉通りモリアーティに手渡す。

 

「何かね? 今忙しいんだけど」

 

『教授。ちょっとやってもらいたい事があるんだけど、良いかな? なに、単純な事さ。今から彼らに──』

 

A&B「「ビリビリ!」」

 

「ふむ。取り敢えずやってみたは良いが、交流が邪魔で痺れ方が分からないな」

 

「はっ、何て事だ。直流のせいで私の観察が無駄になってしまった」

 

「「……」」

 

「こら。2人ともいい加減になさいな。争ってる場合じゃないってさっき言ったばっかでしょ」

 

「そう言うことだから、退いてくれるかね諸君」

 

コツ、コツとモリアーティがわざとらしく靴音を鳴らして2人に歩み寄っていく。

トランシーバーを胸ポケットに押し込み、後ろ手に組んで如何にも自信ありげな天才らしく(実際天才だが)2人の前に立つとはぁー、と大きなため息を吐いた。

 

「君達には残念なお知らせがある。心して聞いてくれたまえ」

 

A&B「「……」」

 

ポンとモリアーティが2人の肩に手を置く。まるで心配するなと落ち着かせる仕草だったが──

 

A「いてっ!」

 

B「えっ?」

 

「成る程。(A)が怪人か」

 

モリアーティが突然痛がったぐだ男Aから手を離すとAが左肩から肉眼では見えにくい針を引き抜いた。

隣のぐだ男Bもビックリして自分の右肩を見ると、同じ様に針が刺さっていて慌てて引っこ抜く。やはり刺された痛みは感じなかったらしい。

 

A「ちっ、バレたんなら仕方がねぇ。流石は天才様だ。肉体派の俺にゃ思い付かない事をやってみせる」

 

「おい、どういう事か説明しろアラフィフ。私の目には貴様がぐだ男の肩に針を刺してたように見えるんだが」

 

「止めてアルトリア君! 私だって辛いとも! だけどこうしないと駄目だってレオナルド君に言われたんだよぅ!」

 

取り敢えずレオナルドに言われたのは確かなのでそっちに罪を擦り付けると、アルトリアの望み通り説明を開始する。

実はあの飴には副作用で痛覚が鈍る効果があった。サーヴァントに効かない為、分かるのは人間のぐだ男だけで、内面まで再現できないなら突然の痛みには幾らサーヴァントと言えど反応してしまうだろう。

とモリアーティは説明した。だが、実際にモリアーティに伝えられたのは少し違う。

レオナルドはモリアーティがティアマトに何を言われたか知っている。ただ、現在の本人がどんな状態かまでは聞かされていなかったので、痛覚が殆ど機能していない事を伝え、上の手段を取るように指示を出していた。

 

「へぇ。まさかそんな手でバレちまうとは、やっぱり難しいなぁ。ま、何にせよ正体を見せねばなるまい。俺こそが燕──じゃなかった。怪人∞面相だ」

 

「アイツ真名言いかけおったぞ」

 

「いやぁ、悪かったなちょっかい出しちまって。急に天井に穴空けて落ちてきたもんだから、ただ者じゃないと思ってさ。たまのストレス発散になったわ。本音は仕合がしたかったが」

 

「済まないが先を急いでいてな。単刀直入に──」

 

「いや、事情は記憶があるから分かってる。協力しても良い」

 

「本当に? ありがとう∞面相」

 

(困ったもんだ。こいつの記憶があるせいで妙に甘くなっちまう。人類最後のマスターってのも一級の英霊並に大変なんだな)

 

「で、まだ計画は不鮮明と見た。誰に成る?」

 

 

翌朝。

硬い床で目を覚ました俺は全身に倦怠感を覚えた。

恐らく……いや、確実に昨日夜から今日の朝方に駆けて行った突貫工事のダメージがまだ残っているみたいだ。

 

「いちち……何時だ……」

 

時計を見ると、既に時刻は正午を回っていた。

皆は……外に行ったのだろう。そろそろ昼食で食堂に呼ばれる時間だし。

 

「朝はカーミラさんの鉄格子叩きで起こされる筈だけど……それでも起きなかったか。カルデアのマスターがこの様とは、情けないな……」

 

「そんな事は無いぞご主人。むしろご主人はもっと肩の力を抜くべきだと思うワン」

 

「キャット……外に行かなかったのか?」

 

「ご主人が居ないと思いの外つまらん。ので、大人しく帰って来たと言う訳」

 

「悪いね。気を遣わせちゃって」

 

何とか起き上がると、あまりに自然で気付かなかったが俺はキャットに膝枕をされていたらしい。

力が抜けた人の頭は重たいのに、一体どの位その体勢のままだったのだろう。本当にキャットには気を遣わせて申し訳無い。

 

「気にするなご主人。アタシは膝枕をしたことで、今週分のご主ジニウムを回収完了。これで単独行動はAランクと相成ったワン」

 

「ゴシジウム?聞いたこと無いな……まぁ良いや。取り敢えずお昼にしようか。お昼はお昼でちゃんと席についてないとペナルティだしね」

 

「既に朝御飯を抜いてしまったご主人はペナルティ追加済みで更にはメイヴが探している。なんでも、ご主人からケルティック(ケルトっぽい)オーラが出でいるらしい」

 

「それは……多分、師匠とかが原因かな。ルーンも戦闘技術も教えられてるし」

 

どうであれ、メイヴにはどのみち会わなければならない。

深夜にモリアーティが提案した、暗殺(アサシネーション)破壊工作(サボタージュ)を遂行する為には先ずお昼ご飯だ。そこで今日のメニューにある食材を回収。俺が現在唯一使える料理用ルーン、『発酵のルーン』を用いてチーズを作る。

何故チーズか? それはメイヴの死因だからだ。

チーズとは元々硬い故鈍器に、鋭利な形にして強化の魔術を使えば見事な刃物。溶かしてトロトロ熱々にして口に流し込めば拷問道具。その汎用性は計り知れない。

そしてそのチーズに無限の可能性を感じた俺はメイヴに呼ばれるのを良いことに、チーズでナイフを作製して暗殺、ないし時間稼ぎをする事にした。

 

「やぁ、来たねぐだ男君。ホラ、昼食の牛乳だ」

 

「ありがとうモリアーティ。……これだけあれば5分で出来る……」

 

とは言え、俺が扱えるルーンはとてもじゃないが原初のルーンではない。

ケルトの鬼教室に通い詰めても、会得できたのは俺専用にアレンジされた簡易ルーンの幾つかだ。簡易だけど、出力は現代ルーンより2段階程高いらしい。

でも俺が一番得意なのは『インターホンを鳴らすルーン』。

 

「彼女を倒せるのなら問題ないが、確実に無理だ。だから、我々の破壊工作を遂行できるだけの時間を稼いでくれ。……体でも何でもだ」

 

「分かってる。スピード脱獄、やり遂げるぞ」

 

俺は飴が入っていた袋に牛乳を移しかえ、水着のポケットに押し込んでトイレへとお腹が痛いフリをして駆け込んだ。

 

 




頭一段下げが上手くいかないので次から。

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