Fate/Grand Order 「マシュ。聖杯ってよく拾うけど全部願望器として機能してるの?」「勿論ですよ先輩」「じゃあソロンモさんを永み─」「先輩!」   作:第2類医薬品

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カイバーマン(FGOの姿)がガーディアンオブギャラクシー?の主人公にしか見えなくて仕方がない。




Order.63 プリズンブレイク

 

 

 

「あらあら?もうギブアップですか?」

 

「も、もう無理だよ……これ以上は……」

 

「仕方ありませんネー。じゃあ今日はここまでにしマース。ちゃんと休んで、明日に備えてね」

 

「ふぁはっ!はぁ、はぁ……」

 

投獄(・・)当日。

あれから気を失っていたらしい俺達はメイヴの監獄……中に居る囚人は誰もが関係無く力を失う特殊な結界で覆われたそこに囚われた。

目が覚めた時には地下の牢にチーム毎で既に閉じ込められていて、何でここに連れてこられたのか未だに把握できない。

ただ、最後にメイヴが言っていた『私のコノートにこんな変なテクスチャを貼って──』と言うのが今回の騒動の核とみた。

 

「うわぁ、凄い汗ね。大丈夫?」

 

「はぁ……はぁ……」

 

把握できないのに、いきなり当監獄副長であるケツァル・コアトルがルチャをやらせるではないか。

なんでも、これが囚人の更正プログラムらしいが、俺には本人がルチャを広めているにしか見えない……。

兎も角彼女に指名されてルチャる事になった訳で、30分と経たずへばってしまった俺は全身ビチョビチョの汗だくで舗装された地べたに仰向けになった。

三蔵ちゃんに覗き込まれているが、呼吸に精一杯で返事をする暇が無い。

 

「いやぁ、若いと言うのは良いねェ。アラフィフには到底できない。残念だなぁ」

 

「あら、そんな事ありまセーン。貴方も宝具解放時にあんなに高さが足りてるんだし、とってもルチャ向きネ」

 

「だそうだプロフェッサー。高さは充分足りている。なら、見事なプランチャーを今見せてもらいたいものだ」

 

「え」

 

「オーウ、それは名案ね。じゃあリングに上がって。先ずは貴方がどれだけ受け身を出来るか試してみるわ」

 

「え」

 

自分はアラフィフで腰が弱いから出来ない、とリングに上がるのを拒むモリアーティだったけど、ケツァ姉に無理矢理リングに引っ張られて数秒後には宙を舞っていた。

可哀想に……。自分はアラフィフだから出来ないと変に主張するからああなるんだ。

 

「うーん、全然駄目。やっぱりそこの魔術師サンが一番有望ネ。その筋肉の付き方や身のこなしはちゃんとルチャを叩き込まれた者のそれ。よく頑張ってるわ」

 

「ど……ぅも……はぁ、はぁ……」

 

「これからも頑張って下サーイ」

 

「はいそこまでよ哀れな囚人達!自分の牢へと帰りなさい。40秒でこの広場から立ち去らないなら……ふふ。私の拷問を味わいたいと言うことかしら?」

 

どうやらここにはカーミラさんも敵側のサーヴァントとして勤務……もとい現界しているらしく、妙に場に合っている。

俺は立ち上がれなかった為、キャットにお姫様抱っこをされて牢へと戻る事になったが、こんな調子でここから逃げ出せるのだろうか。

さっきから頼光さん達がこの監獄の結界を破壊できないか試していたけど、どうやらここはかなり出力が制限されるらしい。傷ひとつ付けられなかった。

 

「……どうやって逃げれば……」

 

 

「ちっ……もうちょっと早ければ分体を皆の所に送れたけど……無理にあの結界を破ろうなら中のアイツ(・・・)に弾かれる可能性が高いし……」

 

「ど、どうしましょうイシュタルさん!先輩と、いえ、皆さんと通信が繋がりません」

 

「分かってるわ。念話も試したけど、あの監獄結界の中じゃあの女王サマに許可されてないものは全部無力化、ないし能力が著しく低下するみたいで全くよ。はぁ~、参ったわねぇ」

 

「あのー、イシュタル神。ぐだ男達が捕まったのは監獄ってことで間違いないんですか?」

 

イシュタル、マシュがどうしたものかと思考を巡らせていると、リッカがおずおずとした様子で発言する。

彼女もまた水着で、オレンジと白のストライプが印象的なチューブトップタイプの水着。義肢との繋ぎ目が目立つが、それ以上に鍛えられた腹筋が皆の視線をタゲ集中していた。

 

「リッカ、だったかしら?ぐだ男の友達よね?」

 

「はい。ご挨拶が遅れて申し訳ありません。本当は女神ともあろう皆さんに挨拶をしっかりするべきだったのですが、ちょっと怖かったので……」

 

「……アイツ、何を吹き込んだのよ……。まぁ、確かに女神と言うのは怖いものよ。嫉妬ですぐ誰かを殺すし、戦争も起こす。それは貴女達人間との考え方の違いもあるけど……今の私達は女神であってもぐだ男のサーヴァント。彼の呼び掛けに応じ、共に人理を護る仲間よ。そんなにヤバい奴は居ないから、安心なさい」

 

『──って、言ってくるだろうけど、イシュタルはその女神の中でも色々とレッドクラスだから気を付けてね。多分、うっかり目覚まし時計と自爆スイッチ押し間違えるタイプの女神だから』

 

(うっわぁ……指摘ドンピシャ過ぎ。流石200騎近いサーヴァントのマスター。恐れ入ったわ)

 

「?」

 

「ぁあ、すみません。ありがとうございます」

 

リッカの目には、イシュタルは別段悪いことを企んでいるようには見えない。

もしかしたら本人は本当に特異点収束に尽力しているだけなのではないかと思ってきたが、そのうっかりでもしかしたら既にやらかしているかもしれない。

彼女は取り敢えずイシュタルにお礼を言うと、本題に移った。

 

「それでなんですけど、監獄なら、刑務所とかと同じ様に面会が出来るんじゃないでしょうか?もし可能なら、そこでもっと強力な通信機とかを渡せば……」

 

「成る程。じゃあ貴女(リッカ)と……マシュ。面会でお願いできるかしら?」

 

 

さて……。状況は変わらず最悪だ。通信は出来ず、近くの牢とは言え、他チームとの会話はし難く脱走の協力も出来ない。ん?会話……もしかしたら念話を利用すればイシュタルとも情報のやり取りが出来るんじゃ。

 

「よし。……『こちらチーム疾地二輪。皆、聞こえる?』

 

『こちらシューティンスター。音声良好だ』

 

『こちらも聞こえるぞ。成る程、念話(ブロードキャスト)とは考えたな』

 

どうやらここの皆はちゃんと聞こえてるみたいだ。だけど……やっぱり結界の影響か他の皆とは一切繋がらない。

令呪で跳躍させても、恐らくはカルデア式の令呪じゃ出力が足りないとかで阻害されて上手くいかないだろう。三画使えば良いだろうけど、全く無駄になるかもしれない。無駄に消費するのは避けよう。

取り敢えず、今はここの皆で脱走……いや、脱獄の方法を考えないと。

 

『成る程脱獄とは、また楽しいイベントだ。ここはやはり、昼食の時にちょろまかしたスプーンで掘るかね?』

 

『ぱぱ、たのしそう?』

 

『掘るにしても、あの結界が地中にまで通じていないとも限らない。一応掘ってはみるけど、別案も平行で考えていた方が良さそうだ』

 

『となるとやはり暗殺かのう。この結果がメイヴの力による物なら大本を殺すのが一番じゃろ』

 

それもそうなのだが……。

 

『どうやってこの弱体化した我々でメイヴさんを倒すか、が問題になりますね。とてもじゃありませんけど、メイヴさん以前に他の監獄職員のサーヴァントも居ます。特にルチャの女神は恐らくメイヴさんより強いでしょうね』

 

頼光さんの言う通りだ。

このままメイヴと戦っても勝てる見込みはまず無い。

トラップだろうが何だろうが、この監獄内の彼女は絶対だ。

圧倒的な力の下、俺達は拘束されている。だから武器を持っていても魔術を使ってもお咎めが無いのだ。絶対の自信……それ程の力なんだここは。

 

「はぁ……」

 

「そこのため息吐いてる貴方。そう、貴方よ。こっちに来なさい」

 

敵側のカーミラさんに呼ばれ、鉄格子の近くまで行くと彼女は鍵を取り出した。

 

「面会よ。物好きな人も居るものね。貴方が学校の先輩じゃないかって。て言うか、この特異点に学校なんて無いのだけれど……まぁ、どうでも良いわ。どうせ貴方達がどう足掻こうと無駄なのだから」

 

「何の事だか俺も分かりませんけど……足掻きますよ」

 

「大した自信ね」

 

手錠も鎖も何も無し。

本当に敵にすら見られていない俺は大人しくカーミラさんについていく。

俺達は中々の大罪人なのだろう。改めて他の牢を見てみると、如何にも人相が悪い人が多く囚われていた。ただ、残念なことに殆どの人がカーミラさんが通る度に「メイヴちゃんサイコー!」と敬礼をするのだ。

どうやらここら辺の人達は手遅れらしい。

 

「着いたわよ。10分で終わらせなさい」

 

「分かりました」

 

面会室に入ってみると、意外にもそこは現代のそれに似ていた。

まさか自分がこんな立場になるとは思ってもみなかったけど……新鮮だなぁ。

 

『先輩!大丈夫ですか!』

 

『良かった無事で。皆心配してたんだからね』

 

「リッカとマシュだけ?他には居るの?」

 

『私達だけです。あとこれを』

 

監視の目があるのも構わず、マシュはポーチから大量の飴が入った袋を渡してきた。

見たことない飴だ。何だろうか?

 

「これは?」

 

『食べ物を渡すのは大丈夫みたいなので、ちゃんと栄養を摂れる飴を持ってきました。これで栄養失調等で倒れることはない筈です。一粒食べれば元気になります』

 

「……成る程。ありがとう。皆にも分けておくよ。それにしても、釈放金とかで何とか出来ないのかな……」

 

『因みに全財産は?』

 

「3億」

 

『ごめん、訊いてみたは良いけど私にはそのQP(クォンタム・ピース)の感覚がまだ分からないから多いのか少ないのか分からなかったわ』

 

QPで億行けば大分頑張ってる方だと思う。BOXガチャを延々と回してれば何とか1億は行くけど、そうじゃなきゃ厳しいんだぞ?

何だって皆あんなに高額な値段突き付けてくるのさ。結晶1個と2千万QPを一体何に使うのさ。

 

「まぁ、地獄の沙汰もとは行かないみたいだし、大人しく脱獄するよ」

 

『貴方……幾らなんでも監視の前で堂々と言うのはどうなのよ……』

 

『頑張って下さい先輩!脱獄、応援してます!』

 

『貴女も脱獄を応援するって複雑にならないのかしら……』

 

 

投獄2日目。

昨日皆と脱獄の計画を立てた俺達は、先ず朝食のスプーンを失敬した。

元気になると言う(黄金の果汁入り)飴も均等に分けて配布し、自由時間に行動を開始する。

先ずはスプーンで穴を掘る。これは一見無理なように思えるが、難しいことではない。映画のように長い時間を掛けてではなく、魔力放出や強化魔術との併用でガシガシ掘り進めていくのだ。

最初は俺が皆の牢と繋ぐ穴を掘ることになった。

 

『どうだ?』

 

「上々。そっちは?」

 

『こちらに大きな動きはない。ただ、メイヴが貴様を探していたぞ。何をしたんだ?』

 

アルトリアのやや強い口調が俺の手を止める。

俺は何もしてないけどと答えるとモリアーティが割り込んできた。

 

『ラッキースケベとかやらかしたんじゃないのかね?いつもみたいに』

 

「失敬な!そんな事ないよ!」

 

『そうだとしても会った方が良いんじゃない?今はケツァル・コアトルが昨日のルチャで疲れてるから休ませるのも必要って言ってくれてるけど』

 

「……いや、このまま掘るよ。どうせもう少しで終わるから明日メイヴに会う」

 

『そのままメイヴを暗殺する手もあるが?』

 

簡単に言ってくれるけどね……メイヴだって血気盛んなケルトの女だぜ?

暗殺なんて、しかも弱体化した状態じゃ無理だよ。ゲイボルクは辛うじて喚べるから良いにせよ、失敗したら死刑だ。

 

「ダ・ヴィンチちゃん何かない?」

 

ポケットからトランシーバーを取り出して結界の外のダ・ヴィンチちゃんに連絡を取った。

実はさっき渡された大量の飴に紛れてこれが入っていたのだ。

 

『こんな話を知っているかい?ケルトのある女王が、………に頭をどつかれて死んだのを』

 

「何それ。どんな死に方……それって、もしかして」

 

『そう。いくら強力なサーヴァントであれ、生前の死因は大きな弱点になる。何しろ、それも含めて構成されるのが我々サーヴァントだ。彼女は、それに勝てない』

 

そんな死因が世の中にあるのか……。

口の中に残っていた小さな飴を飲み込んだ俺は何だか嫌な予感を感じ取っていた。

 





メイヴの頭に当たったってチーズと同じのを見たのですが、完全に質量兵器でした。確かにあんなのが当たったら死にますよ

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