Fate/Grand Order 「マシュ。聖杯ってよく拾うけど全部願望器として機能してるの?」「勿論ですよ先輩」「じゃあソロンモさんを永み─」「先輩!」   作:第2類医薬品

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ナポレオンの宝具がね……うん。ダサいのよ。

そこのアニメーションに尽力する前に初期勢サーヴァントのモーションを変えてくださいってね。


Order.62 ラストスパート

 

 

極寒の影の国からジリジリと肌を焼くコースに戻ってみると、意外にも時間はそんなに経っていなかった。

イシュタル曰く、俺達が影の国に吸い込まれてから大体28分らしい。不思議な宝具だったなぁ。

 

「あつーい……」

 

「さっきまであんなに快適だったからねぇ。いや、魔術で何とかしないと凍えていたけども」

 

「確かに先程から我が蒸気機関が異常に──否、装甲全体の放熱が間に合っていない。これは地熱か?」

 

「そう言えば地図を見ると確かに火山のエリアだ。バベッジ君大丈夫?」

 

「問題ない。とは言えないのが現実だプロフェッサー。何か案は無いか?」

 

内と外とで熱に悩まされているバベッジが暑そうにしているモリアーティに問い掛ける。

すると、やっぱり彼は何かしら用意していたようでちょいワルな笑みと共に指を鳴らした。

 

「放熱変形──起動」

 

「おおー」

 

思わず俺も並走して見ていると、バベッジの装甲が展開していく。

ある装甲がスライドすると下の装甲が蒸気を解き放ちながら頭を上げ、陽炎を纏った放熱フィンが姿を見せる。

複合装甲式の彼の体の各所がそれをものの2秒で完了させると機体の左右に翼が生えた。

いや、違う……!放出された蒸気が翼に見えるんだ!

 

「ボディの総熱量が12%低下。放熱効率72%向上」

 

「ふははは!格好いいだろう?」

 

「バベッジの複合装甲を活かした刹那的な装甲展開、全体的に流線形のイメージを崩さない放熱フィン、蒸気による演出……格好良すぎる!!」

 

俺は握った拳をプルプルと震わせるしかなかった。

俺もああ言うの欲しいなー!!

 

「ますたー、ないてる?あついから?」

 

「いいや、フラン。あれは男の子特有の涙だ」

 

「ふーん?わかんないや」

 

いかんいかん。レースに集中しないと。

それにしても急に暑くなってきたのはバベッジ達が話していた通り、火山エリア故の地熱が原因。

地図上には火口にチェックポイントがあるのだが、これは間違いだと信じたい。

 

『む?あれはブーディカか?何故あんな所に』

 

『構うな劇場女。ポイントは火口中心、怯まず進め!』

 

『いや、待て冷血メイド。余的に無視したら不味い気がするぞ』

 

先頭を走るレッド・ヴィーナスがブーディカを見付けたらしい。

それを無視するか構うかで若干揉めている様だが、俺もブーディカを視認出来た瞬間、嫌な予感がして声を張った。

 

「ネロ!アルトリア!逃げろ!!」

 

次の瞬間、レッド・ヴィーナスの周りが爆発した。

火山による影響か……?いや、違う。魔力による攻撃だ。

遠くの方からブーディカが見慣れない剣を振り上げて魔力弾を放っているんだ。

 

「また、私の土地(・・・・)を奪いに来たのか」

 

『ブーディカ先生?何故その様に殺気を……』

 

『以前、ぐだ男から聞いたことがある。バーサーカーとなったブーディカがかつて一切合切を蹂躙した時のようになっていたと。余達の邪魔をすると言うなら、そう言うことだな?』

 

『成る程な。通りで私の聖剣に似ている訳だ。その剣、約束されざる勝利の剣(ソード・オブ・ブティカ)だな』

 

それを聞いて成る程と思った。

彼女のステータスには、名前だけだがそれが載っていた。彼女のもう1つの宝具、アルトリアが持つ星の聖剣ではない願いの剣が。

 

「どうして……お前達が一緒のマシンに……」

 

「ブーディカ、俺達は土地を奪いに来たんじゃない。火口を越えて、レースをしたいだけなんだ」

 

「魔力で陣を描いておきながら、レースをしたいだけ?ふざけるな!」

 

剣が振り上げられるとブーディカの頭上に幾つもの魔力弾が充填されて、俺を目掛けて発射される。

咄嗟に瞬間強化でバックジャンプをして回避行動をとると直前まで居た場所が爆発した。

今のは明確な殺意を込めた攻撃……!

 

「私はお前達を許さない!私の土地を奪いに来たお前達を!もう、奪わせたりしない!屈辱も、凌辱も許さない!」

 

『……バーサーカーじゃないな?これは、復讐者(アヴェンジャー)か』

 

「あるとは思っていたけどやっぱりか。迂回は?」

 

『無理ですね。この火山を全部降りる勢いで戻るなら出来なくもなさそうですが……』

 

「そうだ。ここは私を倒さない限り通させない。丁度私にも戦車(チャリオット)がある」

 

チャリオットとは良く映画とかで見る、馬が引く車輪の付いたあれだ。

ブーディカはそれで俺達と戦うと言っているのだ。てっきり問答無用で魔力弾の雨かと思っていたけど……。

 

「ここは火口に近い。つまりチキンレースだ」

 

『むぅ……済まぬが、先程既にやってきたばかりでな』

 

『そうね。多分、ここの火口より過酷な所で』

 

「………許さない!」

 

 

それからと言うもの、兎に角レースは過酷だった。

ブーディカ火口を何とか抜けると今度はレイアちゃんとことペンテシレイアが陣取る地溝帯で美しさ対決。

そこでは特殊な空間が設定されていて、判定員のダ・ヴィンチちゃんと黒髭が美しい(萌え?)と認定したチームの速度は上昇。逆は速度が下がると言うもので兎に角キツかった。

マシンは皆美しいから優劣は決められないと言うので良かったけど、黒髭は完全に自分の趣味とか好みで判定していたから順位は最下位に。

 

その次はアルテミスとオリオンが分裂しまくった谷。いや、谷と言うか谷間?

兎も角、そこでも面倒な事になってオリオンの本物を探しに右往左往して漸く見付けたと思ったら興奮したアルテミスから宝具の雨あられ。

ホント、ギリシャの神っておかしいのばっかりだよ……。

 

だけど、そんな事もあったがレースはもうじき終わりを告げる。

今までのチェックポイント到達の順位によってスタートには差があるが、最後のイシュタル神殿までコースは直線。

ソッコでギアを6にすれば一位に踊り出るのは充分可能な筈だ。

 

『さぁて。いよいよ最後のコースよ。ここでは今までのチェックポイント到達タイムの結果から スタートの順番が決まるわ。今まで遅かったチームもあると思うけど、ここは何もない直線コース。逆転は充分可能だから最後まで諦めず、己がマシンを信じて走り抜きなさい』

 

「ガソリンは無くなって俺の魔力で動かしてきたけど、カワザキも良くここまで耐えてくれた。最後の直線、気張れよ!」

 

「いざとなったらアタシの魔力も使うのだご主人」

 

『では──ゴー!』

 

各々のマシンが発進する。

ただひたすらスピードを上げて、熱が、音が、震動が各マシンの全力だと言わんばかりに轟く。

そして間もなく全長何kmあるのか分からない大橋へ差し掛かった。

その時、突然大橋の上に大きな影が現れた!

 

「何!?」

 

まさかここにまで何かあると思っていなかった俺達は、逆光で姿が見えないそれが武器らしい物を振り下ろす様を見ていることしか出来なかった。

一部ハッとして我に帰ってブレーキをかけるが、間に合う筈もない。

大橋はその影によって真っ二つに分断される。

急いで戻ろうとしたが、落ちる速度の方が速いし他のマシンとの接触を恐れてどうにも出来なかった。

 

「うわあああああああっ!!」

 

『落ちる余!』

 

『今こそわしらの本領発揮じゃ!え?この角度じゃ崖に突き刺さる?是非もないのぉ!!?』

 

『私としたことが……パラシュートを搭載していませんでした……』

 

『知っているかね?地球の重力、すなわち1Gとは9.81m毎秒毎秒で物体が落下している速度なんだ。我々は大地に立って、歩いたりしているが、実際は常に地球の中心に向かって落ちているのさ。だからこれは何も驚くことはない、地球上での法則なのだよフラン』

 

結構皆余裕だね!?こっちはカワザキが壊れるのを怖がって格納庫に戻っちゃったから大変だよ!

 

「むっふっふ。慌てては事を仕損じると言うもの。故にアタシは慌てずご主人を抱き寄せ、密天で難なく──」

 

「強化ッ!!!」

 

そうは言うキャットだが、普通に間に合わなかった。

どうやら地球上での法則はここでは少し違ったようで、落ちる速度は遥かに速かった。

全身に強化を施し、かつキャットのギリギリ密天のクッションで地面に激突。

当たり所は悪くなかったが、意識が一瞬飛んだ。

 

「──っか、ぁ──」

 

「ご主人!!」

 

バイクでも1度猫を避けてコケた事があったが、それと似たような激痛。本当はもっとヤバいのだろうけど、感覚が鈍くなってて良かった。

殴打系の痛みと切傷系の痛みとでは個人的にこっちの方が辛い。切り口を押さえて圧迫すると幾分かマシなのに、こっちはどこを押さえても余計痛むし嫌いだ。

しかも全身を強く打ったらどうしろと。

 

「ぅぅ……みんなぶじ?」

 

「大きな問題はない」

 

「だ、大丈夫ですとも!冥界の神たる私がまさか大地に落ちて痛がるなど!貴女も大丈夫ですか?」

 

「は、はぃ……っ、し、しし死ぬ……と、ありっ……ございまっ、す……っ」

 

「誰か治療が出来る鯖は!?ご主人の肩があっち向いてホイッ!」

 

「だ、大丈夫だよキャット……そんなに痛くなくなってきたから……」

 

段々と痛みが引いてきて上体を起こすと、右肩の感覚がおかしいことに気付いた。

そもそも、キャットの言うあっち向いてホイッ、だがそんな事が──

 

「はぁぁぁあっ……ホイッてる……!」

 

肩が背中の方に向いてて、腕もおかしな事に!あわわ!見ると痛くなってきた!

 

「うわだっ!これは余も見るのが怖い!切り傷とは違って皮膚がこう、異常な形に膨らんでるのは何とも形容し難い恐怖だ!」

 

「情けない。それでも皇帝か。取り敢えず元の位置に戻すしかあるまい」

 

「あ、成る程。アタシも焦って忘れていたが、人体の構造は良く知っている。野生だからナ。という訳でご主人、かなり痛むが我慢してくれ」

 

少しと言わない辺り妙な気遣いを感じる。

取り敢えず早く何とかして欲しいのでブンブンと頭を縦に振った。

先ずは壊れた人形の腕みたいになったそれを正しい向きに直さないといけない。

幸いにも、皮膚は捻れていれば良く分かるので、これは俺でも一緒に出来た。続いて外れた肩を戻す作業。

ここは歯を食いしばってキャットに任せていると意外とあっさり元の位置に収まった。

 

「ふぎぃ……助かった……」

 

「流石ご主人。かなりの痛みだったがまるで感じていないようだった。もしやコタロー忍術だナ?」

 

「え?単にキャットが巧かっただけだよ。ありがとう」

 

「……成る程。あい分かった。取り敢えず腕は安静にな」

 

「あぁ、何て痛々しい!キャットさん、私のスカートをご使用下さい!ぐだ男の為にどうか!」

 

「ガッテン」

 

頼光さんが黒いスカートをキャットに手渡し、即席の三角巾にして腕をぶら下げることになった。

何と言うか、スカートを使うことに抵抗を感じてしまうのはやはり男だからだろうか……まぁ、何にせよ皆無事みたいだ。

 

「かなり深い。よくあの高さから落ちて無事だったものだ」

 

「えぇそうね。流石と言うべきか、異常と言うべきか。まぁ、兎に角無事なら良いじゃない。で、2人ともマシンの様子はどう?」

 

「「完璧だとも」」

 

「皆マシンに大きな不具合は無さそうじゃな」

 

「その様ですね。では私達も自慢のロケット推進力で──」

 

「そーはさせないわよ!」

 

ドズンッ!

良く聞く声が上から落ちてきた。と言うより、その声の主と何かが一緒に着地してきた。

大分深い谷底に落っこちてしまったからやや暗くて良く見えないが、突如大きい影はピーポーピーポーと赤い光をパトランプのように回し始めた。いや、そもそもパトランプその物だった。頭が。

 

「ロボ!?警帽を被って……ヘシアンに至ってはパトランプが頭に……」

 

「いや、違うぞ。あれはただ憎しみを模倣しただけの偽物だ。だが力は本物だ。いや、それを凌ぐか」

 

「ほぉ……で、グリフィン博士は居るの?」

 

ヘシアン・ロボに問うと、意外にも反応を示した。

ヘシアンは辺りをキョロキョロと(?)見回して分からないとジェスチャー。ロボはちょっと鼻を動かしただけだが、思った程悪い反応ではない。

しかし博士は透明人間だから一緒に居るって思ってたけど。

 

「あぁ、その事ならプロフィールにこそグリフィン氏の情報が入っているが、私が彼に組み込んだのは氏の霊基だけだからね。ちょっと私も真っ裸で彷徨かれると怖かったし」

 

「ちょっと!私を無視するなんてふざけてるの!?」

 

「ん?あ、メイヴだ。成る程ね。彼女もここのサーヴァントか」

 

「へぇ、私の事を知っていながらその態度だなんて、いい度胸してるじゃない。気に入ったわ。特別に『メイヴちゃんサイコー』としか言えないようにしてあげるわ。全員牢にぶちこんでからね!」

 

ピシッも変な格好のメイヴが鞭で地面を叩くとパトランプのヘシアン・ロボが襲い掛かってきた。

皆も薄々戦闘になるのは分かっていたらしく、直ぐ様応戦したが……敵の強さは予想を遥かに越えていた。

しかも満足に動けない俺を庇って皆瞬く間に倒されてしまう。

どうやら相手さんは殺すつもりは無いみたいで、やられたサーヴァントは気絶している。

 

「私のコノートにこんな変なテクスチャ貼って、好き勝手に走り回ってるのなんてお見通しよ」

 

「テクスチャ……?」

 

「ヴォウッ!」

 

「ぶぐ──ッ!?」

 

何の事だと疑問するのもほんの数瞬。

眼ドを撃つ前にロボの前足に蹴飛ばされ、俺はたまらず意識を失ってしまった。

 




博士はカルデアで真っ裸で過ごしている設定にしようかと思いましたが、滅茶苦茶扱い難いので
ライダーからアヴェンジャーに変わる為の起爆剤扱いにしました。
だって、ねぇ?真っ裸の博士彷徨かせてどうしろと……

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