Fate/Grand Order 「マシュ。聖杯ってよく拾うけど全部願望器として機能してるの?」「勿論ですよ先輩」「じゃあソロンモさんを永み─」「先輩!」   作:第2類医薬品

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よくよく考えたら、レイシフト先の怪我は肉体に反映されなかった気がしましたが、そもそもこの創作じゃ肉体もろとも跳んでるって体でしたのであまり気にしないでネ!

あとこの後にぐだぐだをツッコむ予定ですが、最近のイベントの時系列が訳分かんない事になってるので、一気に明治維新と聖杯奇憚もやっちゃいますね。


Order.61 影の国チキンレース

 

 

 

 

──チキンゲーム。

車輌に乗った者同士がお互いの度胸を試す、日本では主にチキンレースと呼ばれるそれだ。

師匠はそれを皆でやると言い始めたのだ。

 

「はぁ……じゃああそこの高台でやります?」

 

「いいや。それではつまらん。舞台はわた──違った。ケルトの美女から借りた宝具、死溢るる魔境への門(ゲート・オブ・スカイ)を越えた影の国だ」

 

「それは……死刑宣告か何かで……?」

 

「ふ……安心しろ。今回の為だけに出力を調整してある。門を通る時の即死判定も今はお主達に私の(・・)許可を有効にしてあるから安心して通るが良い」

 

ボロが出てるよ……。

 

「ただし、覚悟しなさい。今回の影の国の凍てつく寒さは生半可な霊基じゃ耐えられないから。特にそこのマスターは危険。だから特別に私のこのぬいぐるみを──」

 

「こんな事もあろうかと思って用意してきた甲斐があったな。今回ばかりは私の勝ちだタマモキャット。ありがたく受け取れご主人様!」

 

何て態度のデカいメイドなんだ……!と、それは兎も角。

アルトリアが自分のシートの横に置いてあったシルバーのアタッシェケースを投げてきた。い、一体何なんだ?

 

「まさか!ご主人の部屋に無いと思ったらお前だったか新人メイド!」

 

「新人ではない、プロだ。私の直感スキルがそれを持っていけと訴えるのでな。ご主人様の衣服の管理も出来ずしてメイドは語れない、そう言うことだ。ありがたく思うが良いご主人様よ。そして今回の初仕事の報酬は壁の保管庫にあった和菓子で受け取っておいた」

 

いや、今のライダー状態じゃ直感持ってないでしょ。

それより俺の和菓子……は仕方がない。取り敢えず、これは何なのだろうか?

ロックを指で弾いて開けると中には茶色い布が。

 

「……こ、これは!」

 

「そうだご主人様。いや、トナカイ(・・・・)。お前にはそれが有る限り、例え成層圏の彼方だろうが影の国だろうが走破できる筈だ」

 

アタッシェケースに綺麗に畳まれて収まっていたのは、毎年クリスマスでトナカイをする時に着るトナカイスーツ。

 

「まぁ、可愛いトナカイの魔術礼装」

 

「いや、あれは魔術礼装ではない。ただのコスプレ衣装だ」

 

「嘘ぉ!?そんな事したら凍え死んじゃうんじゃ」

 

「ならば問うてみよう。ぐだ男、そんな装備で大丈夫か?」

 

トナカイスーツのチャックを閉め、角カチューシャを兜を被るように装着した俺は真っ赤なお鼻を自身の鼻にグリグリと押し付けながら格好良く振り返った。

 

「大丈夫だ。問題ない」

 

「そんな、嘘でしょ……え?何ヴィイ?耐寒能力が600%に上昇?最近貴方が言っている事が分からないわ……」

 

「流石だ。では往くぞ!貴様達の命、そこで散らすことの無いように足掻いてみせよ!死溢るる魔境への門(ゲート・オブ・スカイ)!」

 

兄貴が言っていた、カルデアには持ってきていないと言う宝具。

話には聞いていたし、メールアプリのアイコンが仰々しいこの宝具にしていたからあまり驚くことは無いと思っていたが……いざ空から大きな門が冷気を撒き散らしながら降りてくると背筋が凍る。

根本的に違う。他の宝具とかとは一戦を画した、圧倒的な異境感。本当に力を持つものしか立ち入れないそこへ俺達はマシンごと引きずり込まれる。

 

「さぁ……影の国チキンレースの始まりだ」

 

「さては暇して動画見まくってました?」

 

「見てた」

 

 

そんな事が今から1時間程前にあって、今こうして影の国を疾走している。

実は、師匠が言っているチキンゲームとは、皆が想像したであろうあの映画のそれではない。とんでもなく強い怪物が跋扈する魔境ならではのゲーム……各所に存在するベル・ラフム5体分に匹敵する怪物から逃げ続けるスーパー鬼ごっこだ。

ルールは簡単。

相手は本気で殺しに来てるから、殺されない。マシンを破壊されない。そのどちらかになった場合は問答無用で師匠達にレースへの参加権を明け渡す。

やばいと思ったら支給されたルーンストーンで安全圏に離脱可能。

制限時間は無しで、師匠アナスタシアペアが最後まで生き残っていたら最初に離脱したチームから参加権を剥奪する。

 

「他の皆は大丈夫かな……」

 

「通信は遮断。頼れるのはガソリンが少なくなったカワザキとアタシ。そしてご主人のドラテクだけだ」

 

「これは師匠が有利じゃな──来た!!」

 

ズドンッ!と山が落ちてきた──訳ではない。

全高約20m、ドラゴンか人か海魔か……またはそれらが全て混ざったような怪物が遥か後方から跳躍してきたのだ。

巨体に似合わぬスピードで俺達を握り潰そうとこれまた大きな掌を広げて襲ってくる。

 

「くあああっ!怖ぃぃぃぃいい!!」

 

車体を右へ左へくねらせて攻撃を回避。

怪物の死角になるように敢えて腕の下や足元をすり抜けて危機を脱するとギアを最大にして脱兎のごとく逃げたした。

流石の怪物でも0-100km/hがコンマ5秒のスペックには敵わないようで、かれこれ1時間は逃げ仰せている。

 

「ふぅ……あ、ノッブ達だ」

 

ミラーで尚も追ってくる怪物を横目に見ながら空を見上げると、ノッブ達のマシンが空を飛んでいた。

イシュタルの監視がないから自由に飛び回ってるけど、たまに対空性能高い奴が居るから気を付けて貰いたいものだ。

ほら、今あっちの方で巨神兵みたいな奴が口から陽電子ビーム撃ってる。執拗に狙われてやがる……飛びすぎたんだ。

 

「因みに陽電子は物質と触れると対消滅を起こすので、対象の破壊を主とした運用は向かないのだな。それに大気中での対消滅による減退も激しいので射程も威力も劣悪で、おそらく魔術で補助してやっと成立するぞ。あれは最早構造が別物故に完成させているが……そう言えばご主人のガンドにこれを採用してはどうだろうか」

 

「ちょっと何言ってるか分かんない。けど、そう言う科学理論とかすっごい好き。あとキャットのたまに超博識になるのも好き」

 

取り敢えず、今は逃げる。シェラさんのチームが物凄く心配になるが、きっと早々に離脱しているだろう。

頼光さん達は……生き物だもんなぁ。すっごい心配。

 

「あ」

 

「ふむ、離脱したな。あれだけビームを撃たれたなら、さもありなん。流石のキャットだって狐だけど兎のように逃げるワン」

 

「今の一文に物凄い矛盾があった気がするけど、全てを体現してる気がする……」

 

しかし、この様子だともうそんなにチームは生き残っていないのでは無いのだろうか。

一見敵無しに思えた空中でもあれなのだ。俺もガソリンがあまり無いし、時間の問題だろう。

 

「ほぅ!やはりまだ残っていたかぐだ男!」

 

「XとEX!そっちこそ!」

 

いつの間にか隣を並走していた謎の美女Xと謎の皇女EXチームのマシン『ゲイボルカー』からその2人が声をかけてきた。

えげつない尖り方をした朱のマシンで、名前通りゲイボルクを車にしたような物だ。

中の2人は仮面を着けたままフルフェイスのヘルメットを被っていて、見てるこっちが鬱陶しくなる。ミラーシールドとかにすれば良かったのに……。

 

「もう残っているのは私達だけだ。さぁて、私達のマシンが壊れるかお主が離脱するか、楽しくなってきたぞ」

 

「本当にあの格好で耐えてる……」

 

「お陰様で。で、謎の美女X達は離脱しなくて大丈夫?」

 

「分かっておるだろう?私達がレースに参加するには最後のチームになって、生き残らなければならない。離脱なんぞ、ハナから勘定には入っておらぬさ」

 

「だろうね。じゃあ大人しくやられて下さい!」

 

「断る。私とて、願いがあるからこのレースに参加したかったのに、受付期間はたったの1日足らず。折角セタンタからこのマシンを奪ったと言うのに……その日の私は掃除当番だった。どこかのマスターが掃除に魔術等の使用は禁止にするから、1日かかってしまった」

 

「可哀想……」

 

それは勿論可哀想だとは思うが、俺が魔術やスキル等を禁止にしたのは基本的に問題を増やすからだ。

この前はゴミを持っていくのが面倒だからと、宝具で串刺しにした挙げ句憎しみの炎を存分に使って火災警報で大変だったんだぞ。

見てみな。あのヘラクレスやスパルタクスも笑顔で箒と塵取り使ってちゃーんとやってるんだから。って皆バーサーカー以下かよ!!

 

「で、アナスタシアは?」

 

「私はお部屋の模様替えを──はっ!?いえ、私はアナスタシアじゃなくて謎の……」

 

「いつからだ?」

 

「え?あー、今分かりました。と言うよりほぼ勘だったんですけど、アナスタシアが乗ってくれて助かった」

 

「そうか。では……ここで死んでもらう!!」

 

「何で!?」

 

やっぱり恥ずかしいのか!?そうなら何でその仮面にしたのぉ!

 

「反則だと思ったか?残念だが、私は一言も他チームを攻撃してはならないとは言っておらんぞ?」

 

「まさか、他の皆も……!」

 

「いや、離脱して私が手を下すまでもなかった」

 

「ぐだ男には悪いけど……凍てつかせなさいヴィイ!」

 

「よし!漸くここでアタシの出番。炎天よ、奔れ(・・・・・・)!」

 

アナスタシアがこちらのタイヤを凍らせようとしてきたが、後ろのキャットがオリジナルと同じ様に呪相・炎天を放ってそれを相殺した。

例の事件で(5月)も密天を使っていたけど、それ以外を見るのは初めてだ。まさか、キャットもクラスチェンジを?

 

「残念ながら、アタシはバーサーカーのままだご主人。ただ今はご主人とぴったり肌を合わせている事でアタシの出力がグ~ンと鰻登りの滝登り。別に、オリジナルの技をパクってしまっても構わんのだろう?」

 

「むっ。やっぱり仮面がじゃまで良く見えないわ」

 

外せば良いのに……そうちょっと抜けたアナスタシアに思わず笑顔になる。

初めは近付くなオーラ全開で笑顔なんかも全く見せなかった彼女が、いつの間にか一緒にお茶するようになり、人間不信(英霊も該当するらしい)と聞いても嘘に思える程楽しそうにしているのだ。

しかし真っ先に仲良くなったのが師匠で大丈夫だろうか……突然、氷槍ゲイボルク!なんて言い出したらどうすれば良いか分からないぞ。

 

「だったらこれよ。ヴィイ、全てを穿ちなさい。氷槍ゲイボルク!」

 

「速い!」

 

「くっ!」

 

まさかのその通りになってしまった。

空中に鋭い氷槍を作ったアナスタシア。彼女の挙げた手が振り下ろされるとそれに従って、氷槍がこちらを襲ってくる。

咄嗟に回避をカワザキに任せ、こちらもゲイボルクをもって迎撃するが、氷槍を砕けば砕く程こちらのゲイボルクが重く、冷たくなってきた。

 

「やるなぐだ男!だが、そのまま槍を握り続ければ凍傷は避けられんぞ?」

 

「その時はその時!キャット!」

 

「おうさ!今ならご主人のお陰でバックファイア無しの特大サービス!タマモ奥義、呪詛・空烈大密天!時速500km以上で空気の壁にぶつかるゾ!」

 

「だったらヴィイの出番ね!」

 

キャットは直接当てるのではなく、敢えて相手の前に設置した。

何しろこの大密天は攻撃手段と言うよりは動きを封じる物。まぁ、出力を上げれば相手の周りの空気をゼラチンのようにするだけでなく完全に固定して、呼吸を封じたりも出来る。

今回は前回と同じゼラチンパターンだが、先にキャットが言った通り時速500kmでゼラチンに突っ込むのだ。

ただのゼラチンならあの鋭いゲイボルカーで難なく突破されるが、世の中にはダイラタンシー流体と言う非ニュートン流体があって──あぁ、そうじゃなかった。

兎も角、その空気の壁に対抗するには立ち上がったアナスタシアが最適だった。

彼女と契約している精霊ヴィイは特殊な魔眼を持っている。それこそが透視の魔眼。

因果律をもねじ曲げてあらゆる対象の弱点を作り出す(・・・・)それは難なくその空気の壁を霧散させ、何事もなかったかのようにゲイボルカーを走らせている。

さてはこう言うのを見越して引き連れてきたな?

 

「なぬ!?あれは反則だぞご主人!」

 

「改めて体験するとヤバイね。はっきり言って勝てないかも」

 

「お主は離脱しても何の関係も無いのだぞ?何故そこまで抗う」

 

「……そうだね。確かに、俺はここで頑張る必要が無いのかも知れない。けど、自分の都合で皆の邪魔をするのは頂けない。掃除が下手くそで参加できなかったから、他の誰かの権利を奪うだなんて、大人として恥ずかしくないの?」

 

「……痛いところを突く。確かに、私は思慮が足りていなかった。反省しよう。だが、どうであれお前達は私の条件を受け入れた。そうであるなら、最後までやらねばお前が勝つと信じて待っている奴等に顔向け出来んだろう」

 

そうだ。誰かは分からないが、俺が勝つと思ってくれている人が居る。

例えお互いに願望をぶつけ合い、蹴落とし合う関係だとしても、一緒に走る仲間が居る。

師匠には悪いけど、今回は反省してもらう為に勝たなきゃならないんだ!

 

「よくぞ吼えた!ではレーサーらしく峠を攻めるとするか!」

 

「応ッ!!」

 

 

「うーん……駄目ね。やっぱ影の国に連れていかれたみたい。参ったわね……」

 

「でも、どうしてスカサハさんとアナスタシアさんは皆さんの前に立ちはだかったのでしょうか?」

 

「単純に参加できなかったから、誰かから資格を奪い取ろうって魂胆でしょうね。別に代わっても良いのだけれど、あのパーツだけは無くさないで欲しいわ」

 

「おーい嬢ちゃん!さっきの師匠か!?」

 

一方のスタート地点では、静寂な湖だけしか映っていなかった。

イシュタルもお手上げで、取り敢えず待つしかない状態になっていると、観客席からクー・フーリンが焦った様子で駆け寄ってきた。

何事かとマシュがすぐに肯定すると、あちゃー。と頭を掻く。

 

「どうしたんですか?」

 

「いやな?今回のレースに師匠が参加するって言っててよ。マシンのアテはあんのか?って訊いたら俺のマシンをぶんどって行ったからちょっと心配なんだわ」

 

「クー・フーリンさんのマシン?何でまた」

 

「俺も良く分からねぇ。どこかのゆるーい聖杯戦争で使ってた事は分かるんだが……まぁ、それはそれでだ。俺が心配なのは師匠があのマシンの事をどれだけ知ってるかって事でよ。知ってるか嬢ちゃん。ドラッグマシンってぇのはさ……」

 

「ドラッグマシンとは……?」

 

「──曲がれねぇんだ」

 

 

影の国の山は大きいなぁ。

思わずそんな言葉が呑気にも出てきてしまう。

道中怪物を倒しながらやってきた山は意外と大きく、山道らしくクネクネしていた。

これからイニシャルなDよろしく、峠を攻める。だが既にカワザキのガソリンがかなり少なく、15m程ゲイボルカーと離されていた。

勝てるのか?この状況から……走ったことがない蛇道を高速で駆け抜けてゲイボルカーを追い抜くなんて。

 

「いいや、やってやるさ!」

 

「その通りだご主人。無理であっても押し通し、可能性を紡ぎ出す。そんなご主人がキャットは大好きだ」

 

「……キャットさん、凄いな」

 

「どうした?お主もぐだ男に惚れたか?」

 

「ち、違っ、そう言うのじゃなくて!別に一緒にお茶する仲なだけで……」

 

「だが、ぐだ男を呼び捨てにして壁越しで話していたのがいつの間にか一緒の部屋でお茶する仲になっている。あぁ、そうか。お主には兄弟が居たな」

 

「……えぇ。兄は居なかったけど、姉と弟が居たわ。ぐだ男は何と言うか、姉さん達みたいに落ち着いてて、けど弟みたいにはしゃいでいて……お母さんみたいに私を守ってくれる。本当はサーヴァントの私が彼を守るべきでしょ?けど彼は自ら飛び出して……嫌、嫌……!失うのはもう嫌!」

 

「成る程。かつての家族のように失うのが怖いか。それ程までの存在になったか。だが残念、あの男は言っても中々聴かん男だ」

 

「どうして……」

 

「さぁな。元々の性格か、噂に聞いたサバイバーズギルトとやらか……何にせよ、ぐだ男を大切に思うなら直接言ってやると良い。ああ見えて、涙には弱いからな」

 

「……はい!」

 

何か良く分からないが、ゲイボルカーでは気合いが入ったみたいだ。

流石のアナスタシアも峠を攻めるのは怖かった様子。それを一転、気合い注入させるとは俺には出来ない。

 

「ほぅらぐだ男!私達が最初のカーブを頂くぞ!」

 

「お先に!」

 

「駄目だ!追い付かねぇ!さっきのオイルは!?」

 

「落としたYO」

 

「ノオオオオオ!」

 

ゲイボルカーが影の国山最初のカーブに差し掛かった。

流石にスピードを落としていたが、俺は次の瞬間とんでもない光景を目にしてしまった。

 

──飛んだのだ。

 

そう。ゲイボルカーが、まるで……否、正しく貫き穿つ死翔の槍(ゲイボルク)のように、カーブを殆ど曲がれずに空へ。

 

「セタンタめッ!!殆ど曲がれぬではないかぁぁぁああッ!!」

 

「きゃあああああああッ!!」

 

「あ、あわわわ……」

 

落っこちて数秒後。下の方から爆発音と黒煙が上ってきた。こ、これはまさか……。

 

「師匠が死んだ!!」

 

「生きておるわ馬鹿タレ!」

 

「おわ!?ビックリした……」

 

どうやら間一髪でマシンから脱出して山の斜面に逃れていたようだ。

2人とも無事で良かったが、こんな呆気ない終わりかたで良いのだろうか……。

それこそこんな勝ち方じゃ皆に顔向け出来ないと言うか……。

 

「ぐぬぅ……自滅とは情けない!」

 

「死ぬかと思った……」

 

「これは俺達の勝ちで良いの……?」

 

「そうしかあるまい。私も約束を忘れる程歳はとっていないからな」

 

(だとしても相当長いこと生きてただろうし、一体何歳でボケたりするんだろう)

 

「師匠の年齢を気にするとは、随分出来た弟子だな?あぁ、私は嬉しいぞ。これは更に厳しい修行のしがいがあるものだ」

 

「あばばばばばっ」

 

「まぁ、何にせよ私達の負けだ。戻るぞ」

 

いつまでヘルメットを着けているのか分からないが、師匠はそのまま谷間からルーンストーンを取り出してアナスタシアと一緒に転移した。

モクモクと黒煙を立ち上らせて時折爆発しているあのマシンはそのままなのかと思いつつも、俺もポケットに入れていたルーンストーンで安全圏に転移し、皆と再会したのだった。

 

 





師匠「最高だ、セタンタのゲイボルカー。このスピード、たまらんな!」


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