Fate/Grand Order 「マシュ。聖杯ってよく拾うけど全部願望器として機能してるの?」「勿論ですよ先輩」「じゃあソロンモさんを永み─」「先輩!」   作:第2類医薬品

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言ったそばから明治維新が復刻。





Order.54 知性、心、力

 

ひょんな事から発覚したシミュレーター悪用事件。

首謀者が分からない以上、直接犯人に訊いてみるしかないとアルターエゴにレジスト関係の三騎士+αを連れてレオナルド──はシステムに介入中で忙しいので、トレーニング終わりのマシュが殺生院の部屋に赴いた。

 

「あら、マシュさんこんにちは」

 

「……」

 

服装は……普段の尼の物だ。果たしてこんな煩悩をモリモリさせるような格好が尼であるかの議論はさておき、パッと見た限りでも肌の色ツヤは増していた。かくじつに なにか した。

しかし一応ステータスの確認はしなくてはならないので、サーヴァントの気配等を察知できなくなってしまったマシュに代わり、ランサーのクー・フーリンがちょっとしたルーンで殺生院の状態を調べる。

 

「単刀直入に訊くが、シミュレーターで何をした?あんたがシミュレーションルームから出ていくのを見た奴が居てな。見たところ、大分霊基の具合が良いじゃねぇか」

 

「まあ……名器の具合が良いだなんて、照れますね」

 

「霊基だよ!!?無理矢理間違えてねぇ!?」

 

「き、気を付けてください皆さんっ。あの人、私やメルトを殺せるくらい強いです」

 

「リップの言うとおりよ。この女、不意討ちとは言え、リップを素手で一突きした“山育ち”よ。この間のも、ぐだ男が許しても私は絶対に許さないから。少しでも変な動きしたら今度は貴女の霊核を一突きするわ。今度こそ、私の目で死んでいく様を見てやるわ」

 

「落ちいてメルトちゃん。あのエッチな人がどれだけ嫌いか分からないけど、きっと仲良くなれるわ。私どダーリンだってこんなに愛し合ってるもの!ね~、ダーリン」

 

「そうだネー。誰かさんに見事なウデマエで殺されても仲良いよナー」

 

相変わらずのスイーツ脳っぷりを披露するアルテミスのそれが、自分の一部には混じっていない事を祈りつつ、メルトリリスは魔剣の踵を苛立たせたように床と打ち鳴らす。

 

「そんなにカッカしなくてもお教えしますよ。それよりメルトリリス、もしや生r──」

 

「殺す!」

 

「わわっ。待ってメルト!」

 

「離しなさいリップ!こんな奴今すぐマナプリにしてやるわ!」

 

「お、落ち着いてくださいメルトさん……えーと、殺生院さん。お話していただけますか?」

 

「えぇ。あれはそう……ぐだ男さんの言い付けを守ってお預けプレイを続けてきた私の下腹部がうずき始めたある夜中で──」

 

「おい、キリエライト。もう撃って良いか?」

 

宝具発動5秒前のデミヤを何とか抑えつつ、マシュの必至のお願いで漸く普通に語りだしたのはそれから5分後の事だった。

殺生院は一切を隠すことはせず、イシュタルに誘われたこと。

今尚眠っているぐだ男を襲いたくなる衝動を抑える為、偽のぐだ男で欲求を発散したこと。

別にカルデアをどうにかしようとする気は無いことを話した。

どうにも彼女の言葉を信用できない一同だが、イシュタルの名が出てきた事でそっちにタゲ集中。無敵貫通礼装の配付待ったなしの状況になった。

 

「やはり彼女か……あれ程迷惑はかけるなと……」

 

「しかし何故イシュタルさんはこんな事を?」

 

「私には何とも。ですけど謝礼金をやたらと求めていましたね」

 

「それか。そう言えばこの前金が無いと言っていたな。周回だって出来ただろうに……いや、これが彼女なのか」

 

「でもお金を集めて一体何をするつもりでしょうか……」

 

「ハッ。決まっているだろう元雑種(デミ)。イシュタルは多少丸くなってはいるが所詮は邪神。(オレ)の知るかぎり、アレに波長が合う者など悪魔しか考えられんわ。その悪魔邪神が思い付く事など(オレ)には分からんが、良くないことに決まっている」

 

「分かるともギル。実は僕、新武装を試し撃ちしたかったんだよね」

 

その悪魔が依り代になったお陰で邪神の性格が良くなったのは言うまででも無いが、すっかりやる気の2人は武器の準備を着々と始める。

 

「流石にカルデアを壊すなよ?何たって魔術協会からの支援がストップ目前らしい」

 

「案ずるなケモミミアーチャー。所詮はハリー○ポッターに勢力抗争をくっ付けたら出来るような組織などこの(オレ)に敵う筈もない。それでも逆らう愚か者には(オレ)死の呪文(アバダ・ケダブラ)が火を吹くからな」

 

「杖が火を吹いたら別の呪文じゃないかな?例えばほら、ダンブ○ルドアの炎のあれとか」

 

「ふっ、エルキドゥよ。比喩と言うやつだ」

 

「兎に角!1度イシュタルさんと話し合いをしましょう。ヘクトールさんの保有スキルなら話し合いに持ち込めます」

 

「アイタタ……ひぃ、オジサンちょっと軟骨成分足りなくてね。あれ、グルコサミンだったっけ?兎に角膝が痛くてたまんないんだ。だから休ませてくれないかい?」

 

「それは大変です。今すぐナイチンゲールさんを呼びましょう!」

 

「アーーッ!オジサン急に元気になったわ!軟骨もうぷにぷにだよ!!」

 

ぐるぐるぐるぐるグルコサミン♪で有名な某CMのようにヘクトールが膝を回し始めた。どうやらやる気にな(らざるを得なか)ったようだ。

これには通り掛かりで見てしまったペンテシレイアも流石に可哀想なものを見るような目に。

 

「では今度はイシュタルさんの所に行きましょう」

 

「彼女でしたらシミュレーションルームに居ますよ。私が使用していたのは第6なので、そこら辺を探してみてはいかがでしょう?」

 

「分かりました」

 

「部隊編成をするよ皆。僕が先頭になるから、各騎2騎以上でパーティーを組んでくれるかな。必ず無敵貫通と神性特効は持つこと。良いかい?これはカルデアに蔓延るカビや錆の駆除と同じだ。容赦なんて、要らないよ」

 

「ふっ。流石はエルキドゥ。その切れ味は衰える事を知らないな」

 

「お願いですから落ち着いてくださーい!」

 

 

ピキィィィィンッ!「ハッ!?もしかして私うっかり(・・・・)やらかしたかしら!?」

 

『どうやらその通りですご主人様。現在カルデア内の魔力反応が1箇所に集中し始めています。主にランサーの霊基が多いですね』

 

「うっそぉ!?」

 

『おや?どうやらスカサハ様がアップを始めたようです』

 

「いやぁぁぁ!何でバレたの!」

 

「そりゃあお前、そもそも快楽天ビーストを誘ったのが間違いだろ」

 

頭を掻き毟るイシュタルの背後、特にその足元から妙に軽い声がする。

キュピキュピと何とも可愛らしい効果音を引き連れて歩くそれは、最近出番の少ないゲーティアだ。

前のように魔神王化すれば足音はギュピギュピとそれらしくなるのだが、あれ以来1度も魔神王化出来ていない。

 

「ゲーティア……何よ。私が初めから駄目だったって言うの?」

 

「あぁ。あと言っておくと、その企画書には欠点がある。見なくてもマネーイズパワーシステムは不完全だって分かる」

 

「し、仕方がないじゃない。これをあいつに教えてもらったのは去年なんだから(・・・・・・・)……女神だって忘れるわよ」

 

「だから企画書見せてみろ」

 

「はい」

 

イシュタルがゲーティアに手渡す。

自分の体の半分以上はある企画書を器用に捲り、目を通していくと、どこからか赤ペンを取り出してチェックをし始めた。

 

「…………信仰心をねぇ……で、シミュレーターで好きなことさせて、金を得て、グラガンナを召喚ね。お前、あの(キアラ)が信仰心なんて持つと思うか?」

 

「ぅぐ……し、信仰心じゃなくても感謝の気持ちとかでもいけるし」

 

「それも持つわけないだろう。まったく……企画書とは名ばかりの、子供の落書きと同じだ。良いか?先ずグラガンナを喚ぶならこの土地じゃ足りない(・・・・)。もっと広大な場所を選べ。後は魔力だ。それを……そうだな。例えば大地に召喚陣を描いてやればやり易いだろう。その時に大地に魔力を染み込ませ、このパワーシステムで金を巻き上げつつお前の神格を上げて喚び出せば良い」

 

「成る程……その手があったのね。でも……多分グラガンナはそれでも喚べないわ。何となくだけど、あれどっか別の場所に引っ張り出されたのか、他の私(・・・)にくっついてるんだと思う」

 

「逆に考えるだ。喚べないなら2号機を作ればいいさと考えるんだ」

 

「それだわーーッ!」

 

『お話中のところ申し訳ありませんが、既にシミュレーションルームの外に敵が陣取っています。交渉しますか?』

 

言われ、モニターを見るとやや気怠そうに槍を遊ばせているクー・フーリンを始め、女神と戦えるのを実は楽しみにしているのが駄々漏れなスカサハ、今か今かと笑顔がヤバいエルキドゥetc……交渉が出来ない気がしてきた。

 

「怖ぁぁぁいっ!説明不要ッ!!」

 

「るしゃい」

 

「ぁいたぁッ!!?何よ急にぃ!」

 

「母上ー!駄目ですぞ暴力を振るっては。特にこの女神にはなりませぬ。末代まで金銭に困りまする」

 

「ぅい」

 

「このラフムゥ……!って、何であんた達がここに居るのよ」

 

「ぱぱ!」

 

ティアマトがモニターを指差す。

第2シミュレーションルーム、外の状況を知らずに『冠位魔術師 マスク・ド・カルデアス』の撮影中だ。

敵役の天草四郎、アンリマユ、主人公であるぐだ男と共に戦うジャンヌ、そして第14話『戦友(とも)との再会。マスク・ド・エール』で初登場。ベディヴィエールが日常パートを演じている。無論、ぐだ男は寝てるので本物ではなくVぐだ男だ。

 

「あれは偽者よ?」

 

「んっ。ぱぱ、ふぇいかーでもいい」

 

「フェイカーって……ギルガメッシュの言葉を覚えてまぁ……」

 

「あー、成る程。おい駄女神。こいつはぐだ男の偽者でも遊んで欲しいんだと。子供だからサービスしてやってくれ」

 

「偉そうに言うわねあんた……あ。じゃあ代わりにお願い聞いてくれるかしら?」

 

「うぃ!」

 

「うわぁ、今ので何させるつもりか判ったわ」

 

「自己改造ってEXよね?」

 

 

一方、シミュレーションルームの外では一部のサーヴァントが電子音声と格闘していた。

 

「だから、大人しく女神サマを差し出せばそれで丸く収まるんだって。かしこまり?」

 

Negative(ノー・かしこまり).そのOrderは受理出来ません』

 

「マジしつこいんだけどー……」

 

『貴女には敵いませんよ』

 

「むっかぁ……」

 

『いい加減ご理解下さい。ご主人様は崇高な目的のために──おや?』

 

「「「?」」」

 

シミュレーションルーム包囲から約10分。一貫して塩対応だったメイドがインターホンの画面から外れた。

まるで誰かに呼ばれたように席を立った彼女はヒソヒソと話すと30秒程で画面にまた現れた。

 

『予定変更です。お望み通りシミュレーションルームを開放しましょう』

 

「いや、そっちじゃなくて──」

 

『ただし。中に入れる方は3名までとします。そして中でバトルをしていただきます』

 

「何故だ?」

 

『通常のクエストバトルは3ウェーブ。つまり3回勝負です。知性、心、力。それらを競ってもらいます』

 

スカサハの問いにも耳を貸さず、メイドは機械的に話し続ける。

 

『その3回勝負を突破できたら、ご主人様を差し出します。そうしたら煮るなり焼くなり霊基変換なりご自由にどうぞ』

 

「力、知性、心……どうしたものか」

 

「力と知性は良いけどよ、心って何だよ」

 

『知性と心、その両方は単純なゲームですがスキル・宝具禁止。理性がない方には難しいかも知れませんね。あと力は──え?流石にそれは駄目ですか?かしこまり。では皆さん。3名を選考し、再びインターホンを押すことをお待ちしております』

 

「……で、どうするか」

 

集まったサーヴァントは輪を作って互いに意見を投げ合う。

「構わん。やれ」「丸ごと吹っ飛ばす」「馬鹿馬鹿しい」色んな意見が出るが、過半数は無理に付き合う必要もないと纏まった。

後でごめんなさいするからここら一帯を破壊する流れだ。

 

『あ、言い忘れていましたが強行手段に出るのでしたらすぐに魔力供給をカットします。それか召喚システムの応用でぐだ男との契約を切ります。今私の権限は最高位なので』

 

「はぁ……仕方あるまい。大人しく選考しよう。誰が行く?」

 

「知性は……フィンかな?ほら、もりもりがあるじゃないか」

 

「うーむ、私もそう思ったのだが宝具の使用は禁止であれば少し難しいかも知れないな」

 

「何も、ランサーで縛られる必要も無かろう。頭が良い奴は居らぬか?」

 

「作家系はやりたがらねぇだろうな」

 

「あの、モリアーティさんはどうでしょうか?」

 

「おやおやマシュ君。この悪の天才をお呼びかな?名探偵を差し置いて天才の代名詞になっちゃったかナー?」

 

「いえ、本当はホームズさんにお願いしたかったですが忙しいようなので」

 

「まさかの補欠!だが──安心したまえ。何せ私なら勿体振ったりはせんよ」

 

あのホームズが最後は物理で解決せざるを得なかったほどの天才。良く良く悪巧みをしているような雰囲気を醸し出して信用ならないと良く言われているが、その実やる時はやる男。

結論だって前置きが長いこともあるが、頼まれればスパッと答えてくれる。そう言った面ではホームズよりも頼りやすい男だろう。

 

「では知性はお主に任せよう」

 

「任せたまえ。同じ年長者(・・・・・)として格好良い所を──」ドゥン(即死

 

ちょっと余計な一言も多いのか、ボケているのかは置いておいてだが。

 

 

ピンポーン。

 

『来ましたか。では3名、中にどうぞ』

 

2度目のインターホンが鳴ったのは20分後。

メイドはスライドドアを開けて入ってきた3騎のサーヴァントを見やる。

 

1騎目──モリアーティ。知性。

2騎目──パッションリップ。心。

3騎目──ケツァル・コアトル。力。

 

概ね予想通りだ。

モリアーティはカルデアの中でも頭の良さが宝具・スキル無しでも1、2位に位置する。同格のホームズが動かない以上、彼が来ることは9割方確信していた。

パッションリップは候補の1人であった。ただ、それは力に当ててくると思っての事だった。

リップのid-esスキル『トラッシュ&クラッシュ』は電脳空間ではないFGO世界においては強力な攻撃力アップと即死付与等の複合効果スキルに落ち着いているが、何故かシミュレーター内で使用すると何故か月と同じ様に発動する。

故にほぼカルデア最強の攻撃力に躍り出れるのだが……心に当ててきたのは予想外だった。

そして力には堂々のケツァル・コアトル。素で馬鹿げた戦闘力なので予想は安易だった。

 

『では知性から順番に戦って頂きましょう。挑戦者、前へ』

 

「……」

 

モリアーティが前に出た。

リップの可愛らしい応援を背に受け、暗い空間にポツンと置かれた椅子に座る。

刹那、シミュレーターの本領発揮で周りにホログラムが作成されていく。

リノリウムの床が一面に広がり、コンクリート打ちっぱなしの壁、規則正しく並んだ蛍光灯が窓1つも無い殺風景な部屋を明るく照らしている。

 

守護者(ガーディアン)、前へ』

 

「承知」

 

「ほぅ。君が私の相手のようだね」

 

「その通りで御座います。教授殿。某、こう見えて知性には自信があります故な」

 

「これは楽しめそうだねぇ」

 

根岸がモリアーティの向かいに座り、トランプを取り出した。

ニョロニョロした不安定な手なのに器用にそれをシャッフル。ジョーカーを含めた全カードをテーブルに綺麗に並べると両腕を広げてすし○んまいのようなポーズをとった。

 

「先ずはお手並み拝見、神経衰弱と参りましょう」

 


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