Fate/Grand Order 「マシュ。聖杯ってよく拾うけど全部願望器として機能してるの?」「勿論ですよ先輩」「じゃあソロンモさんを永み─」「先輩!」 作:第2類医薬品
???「あれ?もしかして忘れられてる?茶々忘れられてない?」
「カルデア~~あるある言いたい~~♪」
「どうぞ。と言うかさっきからそればかりで何も進んでないじゃないですか。巻いて巻いて」
「何も分かっとらんな沖田ぁ!これはネタ!」
「分かったんであるある言ってどうぞ?」
「チッキショー!ぐだ男が何かと夢の中にトリップイン!してしまう訳じゃ!アンダスタァン!?」
「あるあるですね」
「だからそうだと……ッ!」
「五月蝿いわ阿呆共!!」スパァーンッ!
ギルガメッシュ(術)が黄金のハリセンを取りだし、五月蝿くネタを披露している織田と沖田をぐだ男の部屋からひっぱたき出した。
それもその筈。現在ぐだ男が意識不明になってから大分経過したが何をしても目を覚まさないのだ。
何らかの魔術に他ならないとキャスターがあらゆる手を試しても、だ。
「で、君の力を借りたいわけだ源頼光。君が持つぐだ男君専用の令呪で起こせないか試して欲しいんだ」
「分かりました。愛する我が子の為ならこの頼光、何でも致します。……令呪をもって貴方に命じます。起きて母にうんと甘えなさい」
「………」
頼光が先日手に入れたぐだ男専用令呪を使うが、令呪が弾けただけでぐだ男自身に何の影響も出ていない。
「ギルガメッシュ王……先輩は……」
「慌てるな。……相も変わらず面倒事に巻き込まれる男よな。おいダ・ヴィンチ。これは中身が別世界に跳ばされているぞ」
「それはまた……つまり彼があっちで死ぬとこっちも死ぬやつか」
「あ、慌てますよ!?どうやったら先輩は起きますか!」
「だから慌てるな」
ぐだ男はわりとその手の夢はこなしてきているが、今までマシュに話したことは無かった。報告もしていない。だから初めて目の当たりにしたマシュは取り乱す一方だった。
その後、メディアやクー・フーリン達のお陰で何とか落ち着きを取り戻したマシュは一度席を外すよう言われて部屋から出されてしまう。
「何や昼間から騒々しい。……まぁ、青鬼みたいに真っ青になってマスターはんどうかしたん?」
「貴方と同じ鬼だなんて冗談は止めなさい」
「おー怖い怖い。ほんまに鬼なのはどっちなのかね……それにしてもこの感じ、魔力が…………いや、やっぱし何でもあらへんわ。おーいぐだ男。早う起きな頭から食べるで」
頼光の強烈な殺気もしれっと受け流し、ぐだ男の頬をつついてみたが、やはり反応はなかった。
◇
「えー、
「折角絵本を読んでもらおうと思ったのに残念だわ」
「何の絵本ですか?」
「これよ。『
「私が知っている金太郎とは大分違いますね……」
「でも困ったわ。折角ゴールデンが作ってくれたのにこれじゃあただの読書だわ。誰か読み聞かせてくれる人が居れば良いのだけれど」
「……やれやれ。そう瞳で訴えられたら断れまい。まぁ、坂田くんの事だ。子供相手にそんなに難解な内容に作る筈も無いだろうし私が読み聞かせよう」
「やったぁ。ありがとうエミヤおじさん」
「ではお菓子でも食べながらが良いかな?ただし、ちゃんと手を洗ってきた子だけだぞ」
食堂で絵本の読み手を探していたナーサリーのするエミヤ。同じく食堂で晩御飯の下準備をしていたブーディカやキャットも居たが、ナーサリーは内容がゴールデンだと察知したため、イケボに任せることにしたようだ。
内容がゴールデンとは何か?要はオノマトペが多かったり金時の語り口調だからブーディカのお母さん的音読では絵本のスペックについていけない、と言うことだ。
「そっか。いつもはその手の絵本をぐだ男が読んであげてるんだ。私は彼の絵本を読んだことはないな」
「私も流石に彼お手製の絵本を読むのは初めてだ。しかしイケボなら問題無いだろう」
「ご主人もイケボだが、高笑いに特化してるゾ」
「カルデアもいい声の人が多いしね。あ、そう言えばさっきぐだ男は寝てる筈なのにイシュタルと一緒に居るのを見たって聞いたよ」
「何?」
「あ、私知ってます。シミュレーターとかでイシュタルさんが……」
ジャンヌ・サンタが手をハンカチで拭きながら述べたそれを聞いたエミヤは途端に眉根を寄せて深い溜め息を吐いた。
「今度はどんな問題を起こすつもりだ……」
◇
カルデアには古今東西多くの英霊が居る。有名な英雄から悪名轟いた犯罪者、果ては世界を滅ぼしかねないうっかりをやらかす
そんな彼らもマスターのぐだ男が悪を否定しない男だからちょっとした悪事なら許されているが、それを何でも許されると勘違いをしてしまう時がある。それが今だ。
「デュッフフフww流石は燕青殿。どんな人にもなれるとか反則過ぎて拙者興奮せざるをえない」
「はいはい。興奮するのは良いから、真面目に手は動かしなさいよ。私こう、ハイテクなのどうにも弱くて……依り代のせいかしら」
「うーぃ」
「ちょっと?幾らアンタよりハイテクに弱くても、私は女神よ?もうちょっと敬意をもって接してもらいたいわね」
「おおっとこれは失敬ww」
「そのwを止めなさいって!」
シミュレーターで好きなサーヴァントを模写するというのは前々から当然のようにある技術だ。今までも何度かフェルグスが夜じゃなくても発散(性)の相手に出来ないかと試したりもしていた。
だが実際はシステムに制限が掛かっており、そうした行為は即座にシミュレーションが終了する設定になっているのだ。これは過去、これを危険視したぐだ男による対応の1つだ。
マスター権限で1つ目のロックがあり、次にレオナルド権限、次に所長権限と各々生体認証で厳重だ。だが、そんなのをもろともしない新宿のアサシンこと燕青の力でそれらを突破して、現在イシュタルと組んだ黒髭が設定を書き換えているのだ。
「じゃ、拙者とイシュタル殿はフリーパス発行しておk?」
「そうね。で、最高権限を私にしなさい」
「成る程。最高権限をもってして、欲求不満なサーヴァントから金を巻き上げると。ンンー、正に邪神wwぐだ男氏が警戒するのも頷けますぞww」
「アンタねぇ……ッ!」
「おやッ、良いので御座るかぁ?拙者をここで切り捨てると誰がここからのプログラム書き換えを行うと?拙者こう見えて01のデジタル世界の航海も得意でぇ、しかもこの計画の数少ない理解者だと言うのに」
「分かってるわよ!後で女神の天罰食らいたくなきゃ黙ってやりなさい!」
普段、イシュタルはそんなに女神だから崇めろみたいな事は言わない。扱いが雑になってくると嘆きのように良く言う事はあるが、どうにもこの黒髭とは上手く付き合えそうになかった。
でも技術力が高いのは彼女に認められたようだ。でもなければこんなぐだ男の怒りを買うような重大なミッションに連れてきやしない。
「来ましたぞ来ましたぞー。拙者のハーレム未来がぁ!これで──どうだ!」
最後のコードを撃ち終え、エンターキーを叩く。
幾つも開いていたコンソール、ウィンドウが順々に閉じていき、数秒して漸くシミュレーション設定画面が姿を表す。
「……何も起きないわよ?」
「デュフフww何も起きていない?」
黒髭の笑い顔にムカついたイシュタルがマアンナから降りて腰だめに拳を構える。
書き換えが完了した今、最早目の前の海賊は不要。今まで散々不敬を働いてきたコイツにどう拳を抉り込ませようか。そう考えながら今一度拳に力を込めたその時、イシュタルの目の前に空中投影のウィンドウが姿を表した。
「きゃぁあっ!?」
『お帰りなさいませ、ご主人様。本日は何をなさいますか?』
「な、何なのよこれぇ」
尻餅をついたイシュタルの目の前にはウィンドウ内で指示を待つメイドの姿。声は甲高い訳ではなく、かといって媚を売るような声音ではない。所謂美少女としてキャラデザされた2次元のメイドがウィンドウからこちらを覗き込んでいる。
『ご主人様?』
「わ、私の事なのかしら?」
『そうですよぉご主人様。さぁ、何をするか選んでみて下さい』
「何だか、ムカつくわねその喋り方。常に語尾にハートがついてるみたいで」
『ひ、酷いですぅ……』
「え!?泣くの!?ちょ、待ってよ!何か私が悪いみたいじゃない!」
ヒックヒックと泣き始めたメイド。AIではないのではないかと疑いたくなるようなリアルな動きはデジタルに詳しくないイシュタルを慌てさせるには充分すぎた。
そんなやり取りが漸く落ち着いて、イシュタルはやっとこさ今回の改造の結果を目の当たりにすることができた。
『はい。これがご主人様が求めていたモノになります』
「確かに本物そっくりね……喋るの?」
「勿論だよイシュタル。君の権限なら俺をどうとでも出来るぜ。て言うことは簡単に言えば肉ど──いや、それは語弊があるか。まぁ、何でも言いなりの肉人形だね」
「ブッフォwww」
「えー……アイツこんなこと言うかしら?」
「んー、微妙なラインだよね。俺は限り無く思考も行動も本人に似せてるけど、結局はイシュタルの所有物で誰かの言いなりって核で作製されてるから、思考時の優先度とかが違うんだ」
『でもご主人様的にはこれくらいの方が扱いやすいんじゃないですか?』
メイドが言う事に少し考えたが、イシュタルとしては確かにこのヴァーチャルぐだ男(以下Vぐだ男)の方が扱いやすい。
彼女は首肯し、早速Vぐだ男に指示を出してみる。
「じゃあ先ずは……うーん……私に絶対服従するって誓って、アンタの金庫の番号を教えなさい」
「俺は
「じゃあそれで良いわ。教えてちょうだい。で、聖晶石もそこなの?」
「そうだよ。えーと、そうだな。俺は番号幾つも作るの苦手だから……同じにするよな。だから番号はvol.9640──」
「あぁ、言わなくても良いわっ」
まさか本当にそんな大切な番号を言うとはまだ信じていなかったイシュタルが慌てて言葉を遮った。
幾らイシュタルとは言え、そんな泥棒はしたくない。するならちゃんと条件を相手と結んだ上でぼったくるのだ。だから本当に番号を知りたかった訳ではなく、どこまで自分の言うとおりに動くのかを知りたかっただけなのだ。
「え?まぁ、良いけど。今のはまだ候補の1つだから、多分本物の金庫に番号打っても空くとは限らないけどね。でもどうして俺がイシュタルに大切な番号の1つを打ち明けたか分かる?」
「へ?何で……かしらね?」
「イシュタルはいきなり人の物を盗むような女神じゃないって知ってるからだよ。やるならちゃんと誓約書とか書いてから、だもんね」
「……はぁ……やっぱりアンタもぐだ男ね。そう言う所、本物その物よ」
「実感無いけどね。で、本題に移るとしようか。俺をどう使って一儲けするつもり?」
「話が早くて助かるわ。今ね、オリジナルの貴方は寝てるの」
「あー……またそんな感じかぁ」
流石ほぼ完璧なコピー。寝ている、のそれだけで自分がまた夢の世界にJET GOしているのを察して溜め息を吐いた。
「にしても、そうか……また皆に迷惑かけてるのか俺」
◇
翌朝。やはりぐだ男が目覚めること無く夜が明けると、いよいよカルデアの
馴染みの深い赤い外套のアーチャーに迷惑事だけは起こすなと昨夜釘を刺されたが、今回はコンピュータ関係を全部黒髭にやって貰った。そうそう霊基に強く刻まれた
「はぁ。退屈ですね……もっと刺激は無いものでしょうか」
そんな彼女が最初の客として目をつけたのがカルデアの禁欲ビースト。殺生院キアラだ。
カルデアに来てからは禁欲(と言う名のお預けプレイ)の日々を送っている彼女だが、いつぐだ男を襲ってその命を奪うか分からない、金欲の女神的にも強く警戒している。しているのだが、如何せんちゃんと女神として接してくれるし話せば性的な物を除いて良識のある女性なだけに気付くと仲良く話していたりする。
「お困りのようね殺生院」
「あら?これはイシュタル様。お早う御座います」
「おはよう。で、もしかして刺激が欲しかったりしない?」
「……お恥ずかしい。やはり聡明な女神には隠し事は出来ませんね。えぇ、私、刺激が欲しいのです」
「その望み、私なら叶えられるわよ?」
「謝礼はいかほどに」そう続けた殺生院に、イシュタルは自分の口角が上がっているのに気付かなかった。
京都なまりは一応調べたので凄い間違えてるってことは無いと思いますが……
因みに、
vol.9640……ヴォルデモート.クルーシオ