Fate/Grand Order 「マシュ。聖杯ってよく拾うけど全部願望器として機能してるの?」「勿論ですよ先輩」「じゃあソロンモさんを永み─」「先輩!」   作:第2類医薬品

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アナスタシアのストーリーは泣けましたね。
各々の主張と力が主人公を揉みくちゃにしてましたからね。流石に辛い選択ですよね……。

そして新サーヴァントの数々!中でもサリエリの格好よさは異常!アヴィ先生もイイ!アタランテは相変わらず抱き締めたくなる!子供作ろう(ド直球)!
アナスタシアはマイルームセリフだと本人から別人だと言ってくれるので救われる!
イヴァン雷帝……どう声を聴いてもフェルグスですわ貴方。頭にカラドボルグ2本付いとるで。

そしてガチャ!ふっふ!こちらは今回良かったですよ?
30連でアヴィ先生は宝具5、アタランテは宝具3、アナスタシアはあまり眼中になかったので当たってませんがノーダメージ(震え声)。
サリエリとイヴァン雷帝はさっき10連したら一騎ずつ来ました。もう石がありません。何だか運を使い果たしたような気が……




Order.51 獅子の欲求

 

 

「先日は大変でしたね先輩」

 

「ホントだよ……でもアルトリアが令呪を使って来たからてっきりどうしても人手が必要なのかと思ってたけど、実際は身の回りの世話とかだからね。まぁ、それでもかなり動き回ったんだけとね……」

 

「シミュレーターにも行かれたと聞きましたが、アルトリアさんは先輩を連れて何故シミュレーターに?」

 

「え?──ぃあや、そのぉ……何て言いうか、うん」

 

先日、ルビー肆号機に『元気になるクスリ』とやらを投与されてスゴくゲンキになった俺はアルトリアの令呪によって絶対服従の側近騎士をやっていた。

側近騎士の内容は意外にも戦いとかではなく、アルトリアと常に一緒にいて彼女の身の回りの世話役みたいなものだ。

何をするかって?……何でもだ。

 

「……先輩怪しいです。何かあったんですね」

 

「いやぁ……そのですね……ぇえと」

 

詰め寄ってきたマシュに気圧され、廊下の壁に背がついた。

後ろは硬質な壁で前は軟質なマシュマ──いやそうではない。兎に角、あまり説明しないのも余計に怪しまれる。

 

「は、話すから」

 

話せば長い。だから俺はマシュと俺の部屋でお菓子でもつまみながら、と思って先ずはマイルームへと向かった。

 

 

「これが令呪の強制力……体が勝手に動く」

 

鈍い痛みが腕を走る。しかし俺は「大丈夫」と言った手前痛いと言うことは出来なかった。

痛みを悟られないよう表情を歪めず、俺は恭しくアルトリアに頭を垂れる。体勢は片膝と片手を床につけてしゃがんだ状態。

鎧を着ていればそれは正しく騎士とその王の様子になっただろう。

 

「申し訳ありません。ですが、先を越されると厄介なので……兎も角一度顔を上げてください」

 

「厄介?」

 

「何でもありません。…………やはり騎士なら鎧が無いとですかね」

 

「鎧かぁ。流石に持ってないけど……別の()になれるのならあるよ」

 

「サー・ぐだ男になれるのですか?」

 

ちょっと違う。円卓の騎士の○○卿になるのではなく、宇宙の星間戦争の○○卿になれる代物だ。

着れば魔力が上昇し、フォースを使えるようになる。

 

「そ、それは……」

 

「コー……ホー……コー……ホー……I'm your knight」

 

所謂、暗黒卿だ。

 

「流石にそれは……著作権的に敵わない敵を呼ぶので止めましょう。他には無いのですか?」

 

「NOOOOOOOOOOOOOOOO!!」

 

どちらかと言うとアルトリアとモードレッドで成立しそうなネタだが、あまりふざけない方が良さそうだ。

令呪まで使って来てるのなら尚更だ。彼女は真剣に側近騎士を欲しているのだから。

 

「ごめんふざけた。流石に騎士らしいのはないよ。だからそうだなぁ……騎士だけど、アルトリアの側近を重視してこれにしようと思う」

 

漲る暗黒面パワーを御して魔術礼装を脱いで側近を重視した魔術礼装を取り出す。

暗黒卿礼装と同じ黒い見た目のそれ。長袖に長ズボンの黒い靴。サングラスも用意すれば正に側近、又はボディーガードと言った装いになる魔術礼装『ロイヤルブランド』だ。

彼女の時代とは合わないだろうが、カルデアならさして問題にはならない。寧ろお姫様を護る現代の騎士として非常に画になる(少女漫画並感)。

 

「お、お姫様……ッ?」

 

「(おや?これはこれは……)えぇ。これより我が身は御身の物。何なりとお申しつけください姫」

 

「んなっ……///」

 

謎の瞬間着替え術により一瞬でロイヤルブランドを纏った俺は再度彼女の目の前で方膝をつき、手をとってそう出来うる限り最高のイケボでそう囁く。

流石のアルトリアもこれには赤面。だが若干取り乱しながらも俺の手を握り返すと、直ぐ様表情を王にした。

 

「ふ……。では私は今から散歩に行こうと思っています。ついてきてくれましゅ()か?」

 

「……」

 

折角決めたのに噛んでしまって威厳も何もあったものではない。

しかし彼女は赤面しながらも表情をあまり変えず、俺の返答を待っている。ここで笑うのは彼女に大変失礼だろう。

 

「はい。仰せのままに我が王」

 

「サー・グダオ」

 

「おっと、これは失礼致しました。我が麗しの姫」

 

最早何を目指しているのか分からなくなったが、堂々とやっていれば恥ずかしくも何ともない。

俺は静かに立ち上がり、彼女の手を引いてマイルームを後にするのだった。

 

 

「おや。お目覚めでしたかぐだ男。丁度これから様子を見に行こうとしていた所でしたが、何故その様な格好で?」

 

「おはようございます、サー・ガウェイン。今私はひ──我が王の散歩の付き添いにございます。サー・ガウェインのお心遣いのお陰でこのぐだ男、ご覧の通り頗る快調に御座います」

 

「?一体その口調は……」

 

「ガウェイン」

 

「はっ。何でありましょう我が王」

 

令呪の影響か、すっかり騎士に成りきっているぐだ男を不審に思ったガウェインをアルトリアが制止する。

彼女が事の次第をかい摘まんで説明すると、ガウェインは「成る程」と納得した様子でぐだ男に同じく騎士として接し始めた。

 

「事情はおおよそ伺いましたサー・グダオ。貴方は我らがマスターなれど今は我が王の一騎士。1日限りではありますが、貴方も我が王に認められた円卓の騎士として恥じぬ働きを期待します。モードレッドが騒ぐと思いますが、その時は私が抑えましょう。何せ今日はご覧の通り晴れです」

 

「繰り返し感謝いたします、サー・ガウェイン。必ずや円卓の騎士の務めを果たします」

 

「あーぁ。何か面白い事ねぇかなぁ……あ?何だガウェインにぐだ男、と父上じゃねぇか。こんなとこで何──」

 

まるで登場するタイミングを伺っていたのではないかと疑問させるほど完璧なタイミングで曲がり角から出てきたモードレッド。

彼女はロイヤルブランドで腰にネクロカリバーを差したぐだ男とその手を握るアルトリアを見た途端にみるみる顔を強張らせて、クラレントを握った。

 

「どういう事だぐだ男。父上をエスコートしてんのは分かるけどよ……その父上の顔が赤いのは何でだ?いくらお前でも、父上に何したかによっちゃあ斬る(KILL)ぜ」

 

「落ち着けモードレッド。我が王はただ単にぐだ男にエスコートされて恥ずかしく頬を染めt」

 

「ミニアドォォォォォオオオッ!!」

 

通常の3倍の太陽の騎士が、アルトリアの言って欲しくない所まで踏み込んだ事でカルデアの外の遥か彼方までブッ飛んだ。

 

「は、恥ずかしいのなら止めようか……?」

 

「ぃいえ!そんな事はありませんっ!そ、それよりも役目を忘れましたか?」

 

「これは……大変失礼致しました。姫」

 

「──何?ぐだ男テメェ今……父上を姫って呼んだな?」

 

意識を切り換えたぐだ男にモードレッドが更に詰め寄る。

今の彼女はクラレントが完全に帯電状態になっており、ランスロットのオーバーロード(宝具)と同じ様にビームとして打ち出すエネルギーを押し込んだ状態。

ましてやそれはアルトリア特攻。斬られればたちまち霊核に深刻なダメージを受けかねない。

頼りの騎士が居なくなった今……アルトリアを守れるのはぐだ男だけだ。

 

「剣を納めろサー・モードレッド。俺は別に──」

 

「そうじゃねぇ。そうじゃねぇんだぐだ男。俺が言いてぇのはよ……」

 

チャキッとクラレントを握り直し、モードレッドは兜を含めて全身に鎧を展開すると、スリットから赤い眼光を漏らしながら斬りかかる。

 

「父上を姫と呼べるのはあの白い父上(リリィ)の事だけだ!そこの父上は、騎士王なんだぁぁああ!!」

 

「ぬぅんッ!成る程……それは何者にも曲げられないお前の想いか……だが!それなら俺も今だけはアルトリアの騎士として声をあげよう!」

 

ぐだ男は鍔迫り合いになっていた状態からモードレッドの腹を蹴飛ばして間合いを開けるとスタンバイモードに移行したネクロカリバーを胸に当て、騎士の誓いの様に高らかに宣言した。

 

「姫とはただ外見に非ず!その心が姫と呼ばれるのを望むのであれば、騎士であるこの俺が拒むこと能わず!何故なら彼女は俺も姫だと思ったからだ!故に呼ぶ!それが俺の曲げられぬモノ!最早それらに善悪の区別無し!さりとて……そう易々と逃してくれるお前ではあるまい?」

 

「はんっ!一丁前に騎士サマやってるじゃねぇか。良いぜ面白くなってきた。だけどよ、1つ忘れてるだろぐだ男」

 

「?」

 

「カルデア式の契約じゃマスターとサーヴァントの距離が近ければ近いほどサーヴァントは力を増すって事だ。だからお前は自身と契約したサーヴァント相手じゃ常に何割増しってことだぜ?」

 

カルデアのサーヴァントはマスターと距離……物理的に近いとその力が増大するのだ。

勿論の事だが、物理的ではなくてもぐだ男と距離が近いと更に強さが増すことがある。それが絆だ。

 

「確かに、俺は常にマシマシの状態と戦わなければならない。だがどうした?相手が強いなら、それを越えればいい。今までそうしてきたように!ネクロカリバー再起動(リブート)オルタリウム(・・・・・・)リアクター点火(イグニッション)!セイバー殺しの極致……見せてみろ!」

 

「それは何かもう父上なのか分からなくなってきたユニバース父上のか!」

 

「そうだ。アルトリウムを燃料に、残念な天才達が新規設計した魔力炉心オルトリアクターを唸らせる。こいつは魔術礼装だから、エネルギーは全て純粋に攻撃力になる」

 

上記のように、ぐだ男は戦場において常にサーヴァントと同じ前線に立たなければならないことが多い。そこで、それを少しでも安全にこなせるようにと(表向きの理由は)作られたのがこの前の汎用人型戦機だ。

だが、結果としてあれはサーヴァントと前線に立つのは困難になった。スーパーロボット大戦みたく、マシン同士でのやりあいだから良かったものの、実際サーヴァントを相手取るとただの的でしかない。

故に計画はいつの間にか忘れ去られ、検討もされなくなっていた。しかし、それに目をつけたあるサーヴァントが居た。

 

「シェラさんには感謝しないとな。彼女が強化外骨格(パワードスーツ)の構想を完成させたからこれも存在するんだ」

 

アガルタ以降加わった、カルデアの中でも秀でた生存能力(思考)をもつシェヘラザード。

彼女はカルデアの安全がどうなっているか、ひたすら管制室で確認をしていたときがあった。その時に過去ぐだ男がどう切り抜けてきたのか。何をして来たのかを見たらしく、例のロボットに興味を示した。

大きくて危険なら小さくすればいい。だがそれは簡単には言うが実際は物理的に不可能な部分が多い。

この地球上の物理法則において、物の大小による物理的干渉力は大きく異なる。ライト兄弟もそれを実証している。

 

『ですが、それはあくまで科学分野での話。魔術分野では別です。このマシンは製作者の意図で魔術要素よりも科学要素が大半を占めています。であれば、それの比率を変えてみてはどうでしょうか?』

 

シェヘラザードがそれに興味を示したのは自分を守る鎧が欲しいから。──ではなく、マスターであるぐだ男をより安全に居られるようにと思っての事だった。

 

自分が死ぬのは怖いし嫌だ。戦闘にだって出たくない。けど──それ以上にぐだ男が死ぬのは嫌だ。

しかし彼は前線に出なければならない。中でも本人が自然と前に出ている。比較的安全な後ろに下げるのはあまり得策ではない。

……であるなら、前線に出る彼を守るものを作ろう。死なせないために、戦いの道具を作る。

 

シェヘラザード自身、悶々とした矛盾を抱えながらも彼のためにと作った魔術礼装。その内の1つがそのネクロカリバーだ。

Xオルタがポチッた彼女のと同型品を改造し、アルトリウムを使用してセイバーを討つ。とは言うが実のところセイバー特攻はオマケだ。

 

「彼女は今強化外骨格を作成中だよ。なんでも、日本のアニメか何かをモデルにしてるみたいだけど」

 

「大層なモンじゃねぇか。だけどよ!」

 

「──ッがはッ!?」

 

「父上は騎士王だ!オレが目指した──オレが打倒しようとした──オレが見ていたキャメロットの王だ!父上が王であるからこそ、オレは叛逆をする!だからその父上は姫じゃねぇ。王だ」

 

稲妻の如く刹那的な肉薄から鳩尾に拳を受けるぐだ男。

その一撃で全身は一気に強張って強烈な吐き気を催す。

 

「ぐだ男!大丈夫ですか!?」

 

後方にブッ飛ばされたぐだ男は護る筈のアルトリアにキャッチされ、その豊満な双丘に顔が埋まる。

普段は鎧を脱ぎ、谷間を大きく開いている彼女のそこは心臓(霊核)がバクバクで微かに肌が上下している。それに先程シャワーでも浴びてきたのか、ぐだ男の鼻孔を柔らかい香りがくすぐる。

 

「モードレッド……ッ!貴様今一度私の聖槍の一撃を受けたいようだな!」

 

「んー!んー!」

 

「んぁっ……あまり動かないでください。安静にすれば怪我はしませんから」

 

「へ、変な声出すなよ父上!第一、ぐだ男はそれくらいで怪我なんかしねぇよ!」

 

「黙れモードレッド。それとそこを動くな。今から聖槍を抜く」

 

「……ダアッー!どっちもヤメテ!アルトリ──」

 

「姫です」

 

何とか胸から顔を離すも、姫と呼ばれなかった事で再び胸に押し当てられる。

今度は後頭部をガッツリ手で押さえられて呼吸が精一杯。筋力:B、しかも引き離そうにも視界は真っ暗ないし肌色で下手に手を伸ばせばどこに触れてしまうか分からない。

 

「姫ー!姫ぇぇぇえッ!!」

 

「な、何ですかぐだ男?」

 

「……その、とても良かったです」

 

「ッ///い、いきなり大胆ですねぐだ男……いえ!自分が守護する姫に劣情を抱いたと言うのですかッ?……イケナイ騎士ですね!(喜)」

 

(──今だ!)

 

突然の告白に緩んだ拘束を解き、モードレッドに向けてぐだ男が令呪を発動した。

 

「モードレッド!今すぐごめんなさいしなさい!」

 

「へッ、やなこった!その令呪にも余裕で叛逆してやるぜ!」

 

「ところがどっこい!」

 

カルデアの令呪では強制力が弱いのは当然だが、全く使えない訳ではない。

例えば、真っ向からやりあって勝てない身内サーヴァントが相手なら令呪の効力で“少しは”動きを抑制することが出来れば次の攻撃に繋げることが出来るのだ。

故にぐだ男は敢えて令呪を発動させた。動きが鈍くなったモードレッドに眼ドを当てるために。

 

「真のマスターは令呪を惜しまない(と思う)!眼ド!」

 

「っげぇ!マジか、ごめんなさい!」

 

「今のうちに!」

 

モードレッドを見事スタンさせたぐだ男がアルトリアの手を引いて駆け出す。

横を走り抜け、角を曲がり、丁度男性スタッフのマスタングがエレベーターに乗るところに一緒に転がり込んだ。

 

「うわっ!ビックリし──あぁ、ぐだ男君か。こんにちは」

 

突然飛び込んできて驚いたマスタングだったが、何となくいつもの騒ぎだと察すると「頑張って」とぐだ男に一言だけそう言って次の階で降りていった。

 

「3階か。んー……降りようアルトリア。あぁ、そうじゃなくて、1階に行こう」

 

「……サー・グダオ」

 

「っと……これは大変失礼致しました姫。1階のシミュレーションルームに参りましょう」

 

「何故ですか?」

 

「そこなら邪魔はそうそう入らないですし、カルデア内で散歩をなさるよりはシチュエーションをご自身の手で設定できますのでその方が良いかと思いまして」

 

 

アルトリアを連れて第3シミュレーションルームに到着した。

道中モードレッドが騒ぎ立てている音が何度か聞こえたが、何とか無事にシチュエーションを設定している。

アルトリアもよくシミュレーションルームを使うらしいから、どの様なシチュエーションにするかは任せることにした。

俺は今彼女の側近騎士だ。彼女が行きたいと言ったところには付いていくのが当然だ。

 

「……完了しました」

 

アルトリアが言うと同時に周りの殺風景だった様子がほんの数秒で広大な自然のまっただ中に変わった。

木漏れ日で明るく照らされた森のあちこち。遠くからこちらの様子を見ている鹿だかトナカイだかよく分からない動物。 清い水が流れる小川。そこはかとなく、ジブ○感が溢れている。

 

「もの○け姫みたいだな……」

 

「はい。モデルはそれですね。あの森にはマナが満ちているようなイメージを得たので」

 

「成る程。でも流石にマナまでは再現出来ないから、神秘的な雰囲気にとどまる感じだー、じゃない。ですね。それで、これから何を?」

 

「魔猪を倒します」

 

「魔猪……」

 

静まれ!静まりたまえ!さぞかし名のある山の神ともあろう御方が、何故このように荒ぶるのか!

……などと、思わず想像してしまった。しかしそれをするならエビフ山が最適だろう。

そもそも散歩なのにどうして戦闘に?そうこう疑問している内に魔猪が何匹か登場して戦闘が始まってしまった。

かなり強めに設定されている魔猪達を斬り、ガンドで足止めし、時折アルトリアの宝具が飛んで来る。何と言うか、今回の彼女は大分飛ばし気味だ。

このままだとあっという間にカルデアからの魔力供給が間に合わなくなってしまうか遮断されて俺に切り替わるかもしれない。

 

「ミニアドーー!!」

 

「ひぃ……ひぃ……い、一度落ち着き、ましょう……このままだと、魔力が」

 

「大丈夫です!これで最後!」

 

スタリオンに跨がらないで放つ宝具はセイバー時と同じくビームだ。オルタと少し似ているような感じだが、あっちは広域破壊でこっちは指定領域(誤差大)破壊だ。

ビームを空に放てば神聖円卓領域のクレーターのような破壊跡が量産されていく。

そうして宝具を撃ち続けた彼女は、案の定魔力が足りず肩で息をしている。苦しげだが、何故か彼女の口角は上がっていた。

 

「大丈夫ですか!?今俺から魔力を回し──」

 

「えぇ、えぇ。そうさせて……下さい!」

 

「ぁだッ!?」

 

駆け寄った瞬間、何故か俺の体は地べたに仰向けになっていた。

後頭部をぶつけて歯が浮くようなジーンとした痛みに耐えかねて頭を擦ろうとするが……両手がガッチリと何かに固定されていた。否、掴まれていた。

 

「あ、アルトリア……?」

 

「些か魔力が足りません。どうやら宝具を撃ちすぎたようです。カルデアの電力が我々に魔力変換されて供給されている以上、個々の扱える魔力量も決まってしまっています。それを超えてしまった場合は魔力供給が遮断されてマスターに供給源が移動する。だとしても、貴方の魔力は本当に大した量ではないので本当に緊急用。カルデア側より上限が低いです」

 

「何を言ってるの!?そんな事は分かってるけど何か問題──もしかして、それじゃ足りないのか?」

 

「足りません。これではカルデアの食糧を今日1日で食い潰してしまいます」

 

「じゃあ、別に俺は大丈夫だからどんどん吸い上げて貰っても」

 

「えぇ。なので一番手っ取り早い手段で魔力を供給させて貰います。どんどん吸い上げても構わないんですよね?」

 

あ。これは不味いパターンだ。

流石の俺でもこの眼は知っている。夜に忍び込んできたきよひーやたまに見せる頼光さん達のそれと同じだ。

 

「ぉ、おお、おおおお落ち着いてッ!?俺の部屋に食べ物あるからそれで──」

 

「令呪を、忘れてませんか?」

 

「ぅぎッ……こ、こんなので良いの!?無理矢理俺を従わせてなんて!」

 

「構いませんとも。それに、私としてはこの方が余計盛り上がります」

 

「ま──」

 

抵抗を許さない俺の体。それどころか、令呪による力で寧ろ唇を重ねてきた彼女の背に腕を回し、更に体を密着させる。

普段のアルトリアからは想像も出来ないその姿はある意味獅子。しかも獅子とは言っても狩りをする雌のほうだ。

 

「……ッ!ッ!?」

 

この前の頼光さんのキスとは違う、本気で獲物を逃がさんとする超攻め気のキス。

頭の中がグルグルのぐちゃぐちゃになって、魔力が凄い勢いで持っていかれて……魔力……?そうか!

 

(魔力が異常に流れてくる。あぁ、これが本当の魔力供給なのか)

 

こんな状態でも魔力を特定の誰かに垂れ流すことは可能だ。そしてただでさえ大した魔力量のない俺なら数秒も要らずに昏倒することができ──

 

「──っはぁ……では大詰めにしましょう。……え?ぐだ男?……そ、そんな……!どうして、どうしてこういう時に気を失うんですかぁ!!」

 

 

「ってマーリンから聞いた」

 

「マーリンさんから?」

 

「うん。途中、とは言っても押し倒されて頭打った所からかも。そこら辺記憶が曖昧で……だからもしかしたらマーリンが適当に話してるかも」

 

「しかしアルトリアさんの様子は至って普通だったんですよね?」

 

「そう。今朝は起きたらいつの間にか部屋だったし、アルトリアに直接訊きに行ったけどシミュレーターで戦ってたら頭を打って気絶したって。だからマーリンの悪戯だと思うんだ」

 

「そ、そうなんですか……あっ、いえ……」

 

マーリンさんはどこまで真実を述べたのでしょうか。

もしアルトリアさんが嘘をついていて、先輩が本当にそんな……き、キスをしていたら……こんなに胸が苦しいのは、きっと私も先輩と──

 

「マシュ?」

 

「はわっ、何でもありますせんだせとも……!」

 

「メチャメチャ噛んでる……まぁ、分からなくもないよ。俺だって自分と仲がいいサーヴァントが他のマスターとコンビネーション抜群だったり仲良くしてるの見ると、別人だと分かってても動揺するしね」

 

その例えは的を射ていないですけど……。

 

「でもマシュは俺の一番のサーヴァントだから」

 

「──はいっ!」

 

「よし。じゃあ今度は武蔵ちゃんから貰ったお団子を食べようか」

 

「あ、そう言えばその武蔵さんの事なんですが、数日前から姿を見かけませんね。彼女の事はまだ知らないことが多いので是非詳しいお話などしたいのですが……」

 

「そうか。武蔵ちゃんも自分もよく分からないからって話さないからね。そう言えば初めて会ったのは年明けだったなぁ。鋭い一撃で鬼を倒して……」

 

お団子を取り出してきた先輩が記憶を探りながら話す。

話によると突然レイシフトしてはまたしてを繰り返して元の世界に帰るべく旅をしているとの事ですが……。

 

「それから……それ、か……あれ……?」

 

「先輩?」

 

「なん……こ、れ……」

 

「え?先輩!?しっかりしてください!」

 

何故か先輩が白目を剥いて倒れてしまいました。

お団子に毒でもと思いましたが、そもそも先輩には強力な毒耐性がありますし、何よりお団子にはまだ手をつけていなかった。

これは一体……もしかして後頭部のダメージが?兎に角、一度落ち着きましょう。こんな時、先輩も落ち着いて行動される筈!

 

「先輩待っててください。今ドクターを呼んできます」

 

先輩をベッドに寝かせ、私は管制室のドクターを呼びに駆け出した。

 




流石にもう1年前の内容になるのでここから加速装置。

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