Fate/Grand Order 「マシュ。聖杯ってよく拾うけど全部願望器として機能してるの?」「勿論ですよ先輩」「じゃあソロンモさんを永み─」「先輩!」 作:第2類医薬品
前に時間は作るものと言いましたが、やはり作るにしても時間が無ければ作りようがありませんでした。
寝る時間削ると仕事に影響しますし……いつの間にかスターウォーズ終わってますし。
え?スターウォーズじゃない?
ポロロン。
可愛らしくリデザインされた妖弦フェイルノートが姿に似つかわしくない殺傷力でエネミーを裂く。
魔法少女となって飛行能力を獲たトリスタンは──いや、間違えた。トリス
遂にトリスタンのフェイルノートをもってしても滑空が限界だったそれを越えたというのか。
「流石はトリスタンだ。取り敢えず全国の魔法少女に謝ろうか」
「ご主人もそこまでの脳筋魔法少女は即刻謝罪会見で泣き叫ぶしかないな」
「やっと魔法少女になったんですぅ!ファーーーwww!」
軽くボケをかます。
「流石にそのボケはセンス無いですねぇ」
「黙らっしゃい。カルデアスに押し込むぞ」
「なんてブラックなジョーク!」
何にせよ、魔法少女が4人になった。
俺のサーヴァントは最強なんだ!これなら負ける筈がない!
『ぐだ男。こっちは今奴の管理する
「まだ半分……いや!もう半分だ!」
“まだ”ではなく“もう”と考えることで精神的に己を鼓舞させる。
小学校でも教えてもらうような単純なものだが、それ故に状況を選ばない。
「ふふ。そう言う物事を良く捉える所は金時とそっくりですね」
「──成る程分かりました、では。ぐだ男さん、これで全ての魔法少女は出揃いました。今こそ力を合わせるときです! 」
「力を──」
「「「合わせる?」」」
トリスタンに加勢するために
力を合わせるだなんて、そんな日朝展開があって良いのか……?
「えぇ。皆さんの想いを1つにする時が来たのです!あの強大な敵を倒すにはそれしかありません!」
「いや、そうは言うけど割りとトリスタ──んだけで倒せそうな勢いだし」
「そんな事言ってー、本当はそんな日朝的な激アツ展開を求めてるのが丸わかりですよー?んもぉ、体は正直なんですから☆」
「も、求めてないわ!!」
「あ、今の可愛いですね。ルビーちゃんのメモリーに保存しました。『も、求めてないわ!!でも……どうして俺の体はこんなにも──』」
「おい」
「ぁ、止めてください。素でさえ人間辞める勢いで筋力アゲアゲなのに魔力放出のったアイアンクローはマジで壊れちゃいます!」
時には暴力に訴えなくてはならない時もある。
「マスター。そろそろ私のフェイルノートも疲れたと言っています。力を合わせましょう」
「え」
「まぁ。奇遇ですね。丁度私も刀を握る手が疲れてしまって」
「ンー?これは合わせた方が良いか?しかしアタシ的にはご主人のご主人になってみたいので正直他を消すのが最優先であって」
「何だそれ?」
「「「内緒です(だ)」」」
……何だか無性に嫌な予感がしてきた。
ルビーも大概な奴だからまさかとは思うけど、な。
「もー。
「……」
何というか、ルビーのこの言葉は嘘じゃない気がする。
いつもの悪い癖で、誰かをオモチャにしたくなっただけのような。
はぁ、ピリピリし過ぎか。
「今です!!」
「は──」
はぁーとため息を吐いた途端、ルビーが俺の体を操って変なポーズをとらせる。
するとそれに合わせるかのようにトリスたんが、頼光さんが、キャットが俺の周りに集まった。
皆同様に俺の体に手を当て、マジカルな感じで七色の光が俺の体を包む。
確かに、皆から魔力もとい魔法少女力が集まってきている。……来てはいるのだが……。
「……何か、例えるなら蛇口を本の少し捻ってチョロチョロ出てきてる水を溜めてる感じなんだけど」
「いやそんな事は。私は全力です。ただフェイルノートのし過ぎで魔力が無くなっているだけかと」
「はぁ……」
「私もやはり疲労が……」
「アタシは元気だとも。ところでご主人は休日ゴロゴロしながらペットと遊ぶとして、何をする?」
「唐突だな。俺、ペットは分からないけど取り敢えずお風呂入れるよね」
「なりほど。そこが勝負か」
こんな事で大丈夫なのか。敵もそろそろ体直して襲ってきそうだし、今すぐにでもチャージ完了させたいんだが。させたいんだが!
「皆さん!心を1つにしてください!物凄く邪念が強くて淀んでますよ。それと出し惜しみしていません?」
(……ここで他の方に力を使いきって貰い、弱体化したところをポロンと凪ぎ払う。完璧です我が王。この勝利を貴女に)
(今彼女らに力を出しきって貰ってから、温存しておいた私が勝者となる。ふふ。金時と3人で田舎に住むのも良いですね)
「キャットはご主人を守りたいからこそ、力を出し惜しんでいるのはお分かりか?」
ルビーの問いに答えたのはキャットだけ。いや、他の2人も声で返していないが、その表情でいかにも出し惜しんでいますと自白していた。
「ちょ、敵が来たんだけど!」
「さぁ、ご婦人方。どうぞ私にお構い無く。私も円卓の騎士が1人。貴女方が心配するほど魔力は少なくありません。ペースについていけるのでもっと流して構いませんよ?」
「そうですか?私そろそろ魔力が底を突きそうで……」
「ダウト。その発言にはきよひーが飛び付くゾ?それこそ極上のフィレ肉を目にした
敵が俺の顔を穿つ一撃を放つ。
強化された視力でギリギリそれを眼で追いながら避け、敵の首を跳ねるようにV字に手刀を放った。
両肩から鳩尾までを綺麗にV字で刈り取られたそれは全くやられたような気配を見せない。ただやはり頭が無ければ動けないのは健在らしい。膝をつき、黒い靄をたてる断面を見せながら倒れた。
「ぐだ男の為です。惜しまないでください」
「出し惜しんでなど。貴方こそペースを合わせなくて大丈夫ですから、どんどん流してください」
「ご主人!キャットは誉めて欲しさに本気で魔力を譲渡してるが足りぬか!?」
「キャットのそう言う所好きだよありがとう……令呪をもって命ず!」
「無駄です貴方の令呪は強制力が低い。何を言われようと構いません。私は我が王の為に豚でも何でも成りましょう」
確かにカルデアの令呪は強制力が低い……が、所がどっこい。今の俺は無限の魔力供給を有している。
令呪とは所詮、強大な魔力リソース。俺はこの令呪にルビーから貰っている魔力を乗せることで、強制力を飛躍的にアップさせる。
「トリスタン、源頼光。出し惜しみはせずに魔力を譲渡せよ!」
「母に貴重な令呪を……えぇ。我が子が求めるならこの魔力、差し出しましょう」
「ぐっ……我が王の為に……!」
「……トリスタン。さっきは弾き語るとか言って結局フェイルノート弾いてるだけだったから動機が分からないけど、アルトリアの為なんだろ?彼女が何を願ったかは問わないさ。けど、マスターの俺じゃトリスタンに協力出来ないか?」
「是非お願いします」
「返しが早──あちょ、待って!凄い流れてきてるから!もう入んないから!駄目ェェェ!」
「エロいです!その台詞を苦し気な声音で言うのエロいですよぐだ男さん!もっと呂律が回らなくなった感じで、さぁ!」
「らめぇぇぇって言うわけないだろ!うっ──駄目!ホントにヤバい!」
全身に溢れる魔力。魔力放出をしようにも魔術回路がその魔力で大渋滞を起こしていて思うように出来ない。
このままだと爆発してしまう!比喩ではなく!!
「ルビーィィィィッ!」
「放出が間に合いません!こうなったら……やむを得ません!特攻ですぐだ男さん!」
「うわぁぁぁああああっ!!」
成す術なく、俺はトリスタン達の間をすり抜けて敵の胴体にしがみついた。
丁度その時に敵も再生を終え、腰にしがみついている俺を執拗に攻撃してくる。
「ご主人が爆発するぞ!」
「そんな!」
「私は悲しい。ですが、彼なら必ず生きて帰ると信じています。それが、彼への愛でもありましょう」
「愛……?そうです、私は我が子を愛しています。ならば、その程度の爆発耐えられると母は信じています!金時も宝具は爆発ですからね」
「これが……愛!?サーヴァントの愛が、こんなにも……爆発するぅ!!」
「防御は任せてください!さぁぐだ男さん。今こそ、貴方が花火と成るのです!!」
「うぉぉぉぉぉぉっ!駄目だぁぁぁぁぁ!ホントに爆発するぅ!少しでもギャグ補正を────
──その日、カルデアに
「素晴らしい!我が叛逆の同盟者も遂に愛を知ったか!叛逆とはすなわち愛である。マスターよ、お前の愛は私にも届いた。その
「ステラってそうじゃないんだけどな……。まぁ、ぐだ男が楽しそうならそれで良いか」
「ぐだ男の霊圧が……消えた……?」
「?何言ってんだ師匠。それよりもありゃなんだ?」
彼の最期を見たものはその人類史に残る去り様に敬礼し、見ていなかったものは教室の窓から見える空に敬礼をした。
「空にあんなデケェぐだ男あったか?良い笑顔過ぎて死んじまったみてぇだ」
空に浮かんだ巨大な半透明のぐだ男。
それはとても満足したような安らかな笑顔で手を振っていた。
◇
「後半の超展開で死んだかと思った!!」
メディカルルームで全身に血の滲んだ包帯を纏わせた俺は白目を剥いて眠りこけていた状態から跳ね起き、いの一番にそう悲鳴をあげた。
「まぁまぁ。ぐだ男君のカミカゼアタックのお陰であれのプログラム中枢に入り込めてデリート出来たわけだし、終わり良ければってね」
「いででッ……」
「無理はしない方が良いよ。本当なら五体四散していた位の怪我をしていたからね。
「サイバイマンは自分でしたが……因みにその写真あったりは?」
「黒髭辺りが撮ってたよ。無茶しやがって……って嬉しそうに連呼しながらね」
「後で貰お」
すっかり普段の調子で会話。
あれだけの自爆をしたのに直前の記憶がちゃんと残っていたり、言葉がうまく出てこなかったりは無い。
ドクターは脳へのダメージを気にしていたが、暫くの会話でそれは大丈夫だと判断して部屋を後にした。
彼もシミュレーター半壊やカルデアのシステム修復等の問題が山積みのようだ。
「……ルビーのやつ、一体何が目的だったんだ……」
戦闘の記憶を振り返っていると、何でわざわざ怪我人である自分を魔法少女にしたてあげ、更に他のサーヴァントも魔法少女とは名ばかりの戦闘兵器にしたのか分からなかった。
ルビーはオモチャ探しとは言っていたが、確実に何か他にも目的があった筈だ。
問いただそうとも思ったが、どうやら俺が死んでいた(比喩)間に急用が出来たとかで元の世界に帰ってしまったそうだ。仕方がない。魔法少女になったトリスタンや頼光さん辺りに訊いてみるか。
「それはですねー」
「どぅばらっしゃい!──何だルビーか……ビックリしたぞ。え?ルビー?」
「はい。私、量産型ルビーちゃん肆号機です。割りと真面目に急用が出来たオリジナルに代わって説明しちゃいましょう」
そうか。そう言えばコピー個体を幾つか作ったと言っていたっけ。
「はぁ……そのー、お願い」
「今回、カルデアのログの中で5月に数秒間、妙なノイズを確認しました。これが何なのかはホームズさんでも分からなかったのですが、これを参照してカルデアのシミュレーターデータベースに誰かが仕掛けをしたみたいで。詳しくは省きますがそれにより、シミュレーターで倒されたNPCの
5月……それは虚数事象にされたあの出来事があった月だ。
まさかBB──いや。流石にいくら暇だからって彼女がやるだろうか?感覚的に、彼女はもっと面倒臭い事にすると思うのだ。
「サーヴァントを電脳化させてダイブさせる手もあったのですが、既にそれはカルデアの殆どの制御系を掌握していたのでサーヴァントに割く電力リソースもストップ。下手に手を出すとどのサーヴァントも瞬殺の可能性大。緊急時用のエジソン・テスラ発電機で何とかしていたんですけど、やはりサーヴァントではマトモに戦えるものではありません。そこで、魔法少女としてぐだ男さんを守りつつ敵も倒すと言う一石二鳥を思い付いたのです」
「コピーの理由は?」
「人類の為です」
「嘘だぁ?」
「あー!信じてませんね!?これは戦争ですよ!」
「何故!?」
「コピーを作って新たな魔法少女を生み出し、私の欲を満たす。すると私は更なるやる気を得て皆さんに協力するのです!延いてはカルデアの、人理の為になります!」
……まぁ、兎も角だ。
動機はどうであれ俺はルビーに助けられた。俺だけでなく、カルデアも。だったら言うことなんて決まってる。
「ありがとうルビー。どんな理由であれ、俺達は助けてもらった」
「いえいえ。それはお互い様です。私こそ、面白いものを見させていただきました。まだまだカルデアにも魔法少女候補はたんまり居ますから、コピーではありますがこれからもよろしくお願いします」
「魔法少女候補……ルビー。他のコピーはどうしたの?」
「……残念ながら、ぐだ男さんの自爆からカルデアを守るために力を使い果たしてしまい、大破してしまいました。ですので、カルデアに残っているコピー個体は私だけ。いやぁ、大変でしたよ?皆さん好き勝手やりだしたコピーの条件を呑んで魔法少女になっていたので、令呪を寄越せ寄越せと──」
「……何だって?」
「あれ?聞いてませんでしたか?魔法少女として戦い、他の魔法少女を下したらぐだ男さん専用の令呪を一画プレゼントって」
初耳だ。
「本当は魔法少女同士己の野望のためにぶつかってほしかったのですが、状況が状況なので3名には各々一画ずつプレゼントしました。だから私現在最低出力モードで動いてるんですよ?」
「なんて事を……厄介事の匂いしかしないじゃん」
「お邪魔します!」
「はぅぁッ!?」
バーンッ!とオートスライドのドアを力で捩じ伏せ、アルトリア。のランサーが妙に力みながら入ってきた。
焦った……早速ムチャぶりが来たのかと思った。
「な、なんだアルトリアか」
「む。何ですかその反応は。それにその焦りよう……私じゃなかったら不味い事でも?」
「いや、単純にアルトリアだから良かったなって。ちよっとムチャぶりがく──」
「はぅっ」
(アルトリアだから良かったなって──)
(アルトリアだから良かった──)
(アルトリアだら良いっ──)
(アルトリアなら良い)
「──良いのですか?」
「ん?」
何だろう。アルトリアの、と言うかこの場の空気が変わった。
例えるなら、よく特異点で遭遇するキメラが敵意殺意で襲ってくるのとは違う。奴らが食欲で襲ってくる時の雰囲気と似ている。
まさか、アルトリアお腹が減ったのか?いくら俺でも食堂の守護者達を強制させることは出来ないなぁ。いや、もしかして俺の部屋の
「所でぐだ男。体はどうですか?」
「え?ぁあ、体は大丈夫だよ。大分魔術で体弄ってるみたいだから包帯はあれだけど傷自体は殆ど無いから」
「そうですか!あ、いえ……んんっ」
「ん?アルトリア、もしかして何か言いことある?」
「え?その、良いでしょうか……?」
どうやら俺の勘は当たったようだ。
濁る彼女だが、他と話してるのを見てもそんな様子は滅多に無いんだよなぁ。と言うことは何か重い悩みなのでは?
「実はぐだ男にお願いが」
「お願い?」
「えぇ。疲れているところ申し訳無いのですが、私の言うことを何でも聞く側近騎士になっていただけませんか?」
「なん……でも?」
何でも、か。この言葉を聞くと非常に悪い意味に捉えてしまう。
でも、彼女は王だ。少なくとも俺は彼女がおかしなことをしたのは見たことがない。食欲は除くが……変に他のサーヴァントが言うようなものとは違って他の意味も含まれてはいない筈だ。筈だ……駄目だ嫌な予感がする。(危険感知:B
「ちょっと、難しいかな……なんて」
「そう言うと思いました。ですのでこちらを」
「こちら?」
「こちらです」
彼女は俺の言葉を分かっていたかのように頷くと、左手の甲を見せてきた。
そこには槍を象った黒い令呪が一画。恐らく、彼女の象徴である聖槍ロンゴミニアドなのだろう。
一見複雑で凝った形状だが、見ればすぐに槍と分かるそれを掲げて彼女は令呪を発動させる。
「令呪をもって命じます。ぐだ男、私の言うことを何でも聞きなさい」
「──!」
トリスタンが言っていた王はこのアルトリアだったか!
そう理解したときには俺の体は既にベッドから降りており、彼女の横に方膝をついて頭を垂れていた。
「問おう。私は貴方の何だ?」
「……俺は、貴女の騎士であり、貴女のサーヴァントであります。
面倒な事になる。分かっていたが、何故か俺の中には彼女の次の命令を待っている俺が居た。
この後無茶苦茶側近した。