Fate/Grand Order 「マシュ。聖杯ってよく拾うけど全部願望器として機能してるの?」「勿論ですよ先輩」「じゃあソロンモさんを永み─」「先輩!」 作:第2類医薬品
素材とかQPの需要と供給があってないんですよねぇ
アンケ書きましたけど必要数とか下がればなぁ……
「霊基が弄られてる」
マルタの口からそんな言葉が出た。
霊基を弄る……前回、師匠が無人島で何人かルーンで弄ってクラス変更とかもしてたけどそれと似たような事態か。
確かに、今皆のステータスを確認したら大分酷い事になっているのが伺える。先ず、スキルがまっさら綺麗に無くなっている。そして筋力等各パラメーターに至っても全員が等しくEランクとなっている。
「成る程。皆のクラス変更こそ無いけれど、ステータスが壊滅的だな……どうりでジルの魔術も弱い訳だ」
「何でかタラスクも弱体化してるわ。この分だと移動手段にしかならないかも」
「タラスクも……?」
物凄く窶れたタラスクの瞳が無言の謝罪を述べている。
止めてくれタラスク……!そんな哀しい顔されたらこっちまで哀しくなってくる!いや、確かに愛を知らぬとか荒れ狂うとかな哀しき竜ではあるけども!
ん?待てよ。と言うことは─
「スキルこそ残ってはいるみたいだけどよ。どうするマスター?このままここに居たって何もなんねぇだろ」
「─え?あー、確かにそうだね。だけど一帯が草原しかないから……」
「私としてはここから北東の辺りに嫌な感じがするので、そっちを見てみたらどうです?」
「邪ンヌが嫌な感じがする所に行きたがるなんて珍しいな」
「ハッ。要するに贋作の臭いがするって事よ。それも変に歪められたしょうもない贋作のね」
「……まぁ、邪ンヌも黒歴史だったけどな。『
「ちょ、マジで焼き殺すわよ!!つーか服着なさいよ!」
「ぶべら!?」
やっぱり恥ずかしいんだなあの
「全く反省してないのね!またチェスに付き合って貰うわよ!」
実は今日、廊下であった邪ンヌに謝罪をした直後、邪ンヌの部屋へと連れていかれたんだ。
初めは人前だとマスターをゴミのような扱いにするのが出来ないから自室でやるのかと肝をやや冷やしたんだが、意外にも内容はボードゲームに飽きるまで付き合わされるという内容だった。
しかし、侮ることなかれ。これには邪ンヌルールが100%適応される為、チェスや将棋。モノポリーやダ・ヴィンチちゃんが作った『マス目に書いてある指示は絶対服従。
「マスター。私もその、目のやり場に困りますので……出来れば何か……あっ、でも先輩が汚いとかそう言うのではなく!別に見たくないとかでは!」
「ありがとうマシュ。とてもありがとうマシュ。それだけでも俺の傷付いた心が癒されるよ……」
「アンタの心が傷付くとか嘘でしょ」
「おっと、心は硝子だぞ」
「いや、無いから。寧ろ鋼か何かかってくらい硬いでしょ」
にしてもどうしようも無いのだ。
取り敢えず師匠からのゲイボルクをもって歩くのもあれだから、ベルトでそれらしくしてるけど、裸にベルトと槍を装備したマスターなんて、恐らくどこにも居ないだろう。
「ま。マスターも体鍛えてるんだしよ、服なくても耐久力はあんだろ。取り敢えずその北東に行ってみるしかないな」
「だね。よし、なるべく戦闘は避けて行こう!」
◇
「……やはり手に入れたい。彼女だけは聖杯でも作れなかった……」
「あら?マスターったらまた他の女の子に目移りしてますの?」ムニュッ
「むほっ。アンs……アン、いきなりは困るでご……困るなぁ。ん?エウリュアレは何をしているんだい?」
「何よ?私が何かしてたら悪いの?」
「はっは。エウリュアレは可愛いな」
「で、どうするの?彼女」
「……彼は敵だ。その敵にそそのかされた
◇
俺達はひたすら歩いた。
特にエネミーが居るわけでもなく、人も動物も居ない。ただ延々と緑の草原が地平線の彼方まで続いているだけだ。
こうなると幾らサーヴァントでも精神的にきてしまう。ずっと同じ光景が続くし、無理もない。
「ねぇ……私が言い出したけどこれ意味あるの?」
「分かんないけど、あそこでじっとしててもしょうがないでしょ。情報は脚で稼げってね」
「だとしてもよマスター。ちと休憩しねぇか?」
「そうしましょうマスター。マスターは特に裸なので精神的な面でも相当疲れると思います」
「そうだね兄貴、マシュ。一度休憩しよう。小腹も空いたしね」
サーヴァントには本来食事は必要ないが、カルデアに召喚されてるサーヴァントは100を超す。そうなると俺1人の魔力で補える訳もない。だからカルデアの方でリソースを振り分け、俺への負担を軽減しつつサーヴァントは一時的な受肉状態になっているらしい。
だから時折お腹が減るし、寝もする。常にそうしているわけでは無いらしいけど、詳しいことは分からない。
「これから食べるって言うのにマジでその裸体止めて?いくらマスターだからとは言っても常識くらい弁えなさいよ」
「じゃあどうすれば良いのさ?」
「……ジルのマントでも借りなさいよ」
「私は構いませんが……それだと逆に動きにくくなってしまわれますぞ」
「えっと、クー・フーリンさんはルーンが使えましたよね?」
「まぁな嬢ちゃん。でもルーンは面倒臭ぇし、マスターが自分で何とかすんだろ。ま、キャスターの方なら何とかなったかもな」
「せめて獣が1匹居れば事足りるのですが……」
「タラスクを剥ぐ訳にもいかないですし」
「それは勘弁してください姐さん!」
「あの竜しゃべんの!?」
「何だ、邪ンヌ知らなかったんだ?そう言う邪ンヌの……ファブリーズ?も喋れるんでしょ?」
「ファヴニールよ!」
何だかんだ言いながらもマシュの盾をテーブルとしてサンドウィッチやお握りを食べ始める。
しかし、いくら視覚的には俺の下半身が隠されているとは言え、裸であることに変わりはない。よって、下半身が草でめちゃくすぐったい。
「……俺も早くズボンを穿きたくなってきた」
「じゃあ私がチクタクと穿かせてあげましょう!貴方の皮でですがねェ!ヒヒヒヒ!」
「「「え?」」」
頭上から聞いたことのある声がした。
やたらと笑うねっとりなボイスに、平和主義なのか好戦主義者なのか分からない悪魔のようなもの!
「ぐだ男殿!」
「そぉれ!」
巨大なハサミが俺の首を切り落とす寸前にハサンに胴を突き飛ばされて後ろに倒れた。そのお陰で自分の頭と体が離れ離れになるのは回避できた。しかし、それだけで敵の攻撃が終わるわけが無かった。
「メッフィーか!」
続いて繰り出されるハサミの振り下ろし。それに対処するべく置いておいたゲイボルクを取り、自分とハサミの間に割り込ませた。
「イヒヒヒッ!流石マスター。露出も判断力も高ランクですねェ。
「何が……!」
「っらあ!」
「おおっと危ない」
ヒュゴッ!と物凄い速さでマルタの拳が空を切る。
やはりランクが落ち込んでいるからか、俊敏:Bのメッフィーことメフィストフェレスには当たらない。
「ふむふむ。やはり皆さんランクが下がっているようですねェ。しかもマスターに至っては全裸!何と言う露出サイコォォォ!」
「大丈夫!?」
「あ、ありがとうマルタ」
「マスター!私の後ろに隠れてください!メフィストフェレスさんは危険です!」
「あらあらァ?今ごろ私が危険だとお分かりに?ダァメですよマシュさん。その立派な爆弾2つを持っていると言うのに私の危険性に気付けないとはぁ……もしや本当におっぱいサーヴァントなのですか!?」
「デミ・サーヴァントです!!」
「……メッフィー。何で“そっち側”に居るんだ?」
「フフ、フフハ!流石は我がマスター。既に私が聖杯に喚ばれたサーヴァントではないと気付いているとは。メッフィー感激!」
別に気付くのは簡単だった。何しろメッフィー自身が俺の事をマスターと呼んだり、マシュの事を知っていたり、一番の確信要素はマスターとサーヴァントの魔力パスだ。意識して探せば目の前のメッフィーとの
「と言うことは大体分かると思うけど……」
「えぇ、分かりますとも。令呪ですな?私でもそうしますとも」
「……だけど、そんな簡単に令呪が行使できるような場所じゃないんでしょ?ここと今のメッフィーは」
「鋭い!鋭すぎますよォマスター。そんなに観察眼あったらメッフィー面白くありませんッ。ですが私は今、貴方と戦わなければならないのです!イヒヒヒッ!楽しいじゃありませんかマスター?何?楽しんでいない?でしたら私が盛り上げて差し上げましょう!主に爆弾とかで。爆弾とかでェ!ヒハハハハァッ!」
メッフィーが襲い掛かってくる。メッフィーがどういう仕組みで敵に従っているか分からないが、彼はカルデアの大切な仲間だ。ここで霊核まで傷付けないで倒せば勝手にカルデアに退去するだろう。
「マルタそのまま牽制してくれ!ハサンと兄貴は援護を!邪ンヌはジルと、マシュは俺とツーマンセルで動くぞ!隙を見て攻撃!」
「おう!」
「承知」
「ええ─って私杖だから!」
「了解。押しきります」
「いいのね?」
「お任せを……」
「うひッ」
各々に指示を飛ばして俺もゲイボルクを構える。最後に何か俺が指示してないのに返事した奴が居た気がするけど……。
「あぁもう!物凄く戦いにくい!─ヤコブ様、モーセ様お許しください……マルタ、拳を解禁します!」
「ごめんマルタ!杖で戦うの忘れてた!」
「でもマルタさん拳の方が強いのが真実です!」
兄貴とハサンがマルタと入れ替わりでメッフィーと交戦中にマルタは杖を置き、タラスクにそれを見ておくように指示すると聖拳マルタへと早変わりした。勿論、ルーラーになったがランクは低いままだ。それだとしても近接戦闘はしやすくなった筈だ。
やはりあの杖は拘束具だったか……。
「ナメんなっての!」
「ハァゥ!」
脇腹に受けた拳の重さはランクの低さを感じさせない、エグい一撃だ。成る程、パワーで及ばないならテクニックで補う。流石マルタだ。
「イヒヒヒッ!これはいけませんねぇ……私キャスターですので!」
「何がよ!」
「お下がり下さいマルタ殿!」
「そォーれ!お土産!」
前衛3人が下がるとメッフィーの足元が爆発した。爆煙と炎、そして土と草が舞ってメッフィーの姿を見失う。
「まだまだ行きますよォ。
続けて辺りに設置されていたのか、足元が連鎖的に爆発を起こしていく。今の皆ではこの宝具を一撃でも食らえば無事では済まない。
「くっ!不味い、視界が……」
「マスター!私の後ろに隠れてください!」
「良いんですかァ?そ・れ・で」」
「─ここだぁ!」
視界が悪い中、マシュの背中を確かに自分の背に感じながら声がした方向にゲイボルクを突き出す。
「……危ない危ない。私ハサミが無かったら
硬質な音が響いた瞬間、砂埃の向こうからメッフィーのちっとも危ないと思っていないような声が耳に届く。
正直、当たるかどうかも怪しかったが今のは
「って言うか、俺が死んだらメッフィーも現界が保てないじゃないか!」
「ああー確かにそぉでしたねェ。ですけど私、今が愉しめればそれで良いので!」
「もう駄目だ!メッフィー帰ったらレオニダス・ブートキャンプだからな!
ゲイボルクを槍投げの要領で放つ。この投げ方はその手で有名なヘクトールに教えてもらった物だ。伊達に槍投げ一万本こなしてないぜ。
が、それでもメッフィーは外したようでどこかに突き刺さった音がした。
「ヒハハハハァッ!幾ら私でもその槍は受けたくありません!何しろ超劣化版とは言え回復阻害の呪いが付いちゃいますしィ。そぉれ!」
「マスター!」
メッフィーの爆弾にいち早く気付いたマシュが俺を護るように盾を構える。お陰でダメージを受けずに済んだが、やはり筋力の落ち込みが影響しているのかたたらを踏んだ様子。
「くっ……ここまでステータスのダウンが辛いなんて……」
「邪ンヌ!ジル!」
「分かってるわよ」
「ご照覧あれ!」
さっきの俺とメッフィーのやり取りで大分砂埃は晴れてきた。次煙幕を張られる前にケリをつけるべくどこかに居るオルレアンコンビに声をかける。
2人は言われるまでもなくと言った様子で駆け出し、ジルは着地した瞬間のメッフィーの周囲に海魔を召喚。個々のステータスが低くても物量で押し切れるのは強力な魔導書の召喚術ならではだ。
メッフィーはそれに慌てる様子もなく爆弾で対処。やはり簡単に散ってしまうが、無論それが狙いである。
「この程度なんてこハァゥ!?」
「それに注意がいった時点で汝の道は途絶されたと知りなさい!」
黒い焔を纏った何本かの剣がメッフィーの手足を突き刺し、同時に地面に貼り付ける。
「行けマルタ!!」
「悔い改めろっての!」
「ヘェッヘヘヘヘヘヘェ!!」
ハサンと兄貴の肩を踏み台に跳び上がったマルタが動けないメッフィー目掛けて全力の拳を叩き付けた。
地面が陥没し、捲れ上がった土が壁のように反り立つ。
「ふんっ。出直してきなさい」
「ハァァァ!まったくもって敵わず!ではお先に私戻っておりますのでェ」
「……キャスター、メフィストフェレスの退去を確認。何とか勝てましたねマスター」
「うん。お疲れ皆。満足に動けなかったでしょ」
若干1名、弱体化を感じさせない戦闘力だったけど、何とか勝つことが出来た。
しかしどうしたものか。このままこの状況が続けば次敵が来たときに勝てるかどうか……。
「……皆。もし次が出てきた時なんだけど─」
◇
「やぁ、マスター。僕は戦いをしにきた訳じゃないんだ。話を─」
「食らえ!人類悪もスタンさせるガンド!」
「うわっちょ!?」
「その服─貰い受ける!」
「どういうことかな!?」
「貰ったぁ!後は頼んだマルタ!」
「ハレルヤ!」
「!!!???」
こう、鋭角にえずかせるような一撃がスタンしているアーチャー、ダビデの鳩尾に入った。
既にダビデの服は奪った後。パンツこそ残してあげたが、少しでも威力を軽減する布物は無い。そしてさらばダビデ。ここから先に出番も無い。
「ふぅ。久々に良いのが決まったわ」
「よっし。これで裸で困ることも無くなった。ダビデには悪いけど、どうせ下らない理由だから良いや」
しかしこれが最後のサーヴァントだと思えない。次来たらハサンに任せて尋問してみるか。
ぐだーずもその内英霊になるんじゃないかなと思いつつゲイボルクを磨きあげていく私。