Fate/Grand Order 「マシュ。聖杯ってよく拾うけど全部願望器として機能してるの?」「勿論ですよ先輩」「じゃあソロンモさんを永み─」「先輩!」 作:第2類医薬品
真面目なキャラだからこそ馬鹿な事もやり通しちゃうのも良いね。
この勢いでクリスマスにはノッブと柳生さんがダンスしちゃっても良いと思うの。
この間のデスマが効いたのか最近の記憶が曖昧な中、ドクターから呼び出しがかかった。
「協会本部に呼び出し……報告書の赤ペンならPDFでお願いしますってちゃんと書いたんですけど」
「いや、そんな事じゃないんだ。と言うかそんな事報告書に書いたのか……兎に角どうするつもりか分からないけど、余りに危険と判断したんだ」
「そこで私が同行することになったのさ。正直現代のロンドンは良く知らないから留意しておくようにネ」
「モリアーティは胡散臭いけど頭が回る。いざとなったら彼に頼れると思うんだ」
「ねーねーロマニ君。私も悪の親玉だけど臭いとか言われるとショックなんだよネ。ねぇ、聞いてる?」
「教授はとても頼れるよ。悪いこと考えるのは仕方がないけど、それは
教授……アラフィフは時々寂しくなると拗ねちゃうからこうして素直に良くも悪くも思ったことを言ってあげると、NPが
「ロンドンは私も良く知ってるよ。だけど今のロンドンは良く知らないから許してね」
「ジャックは羨ましいのだわ。私だってロンドンに行きたいのにお留守番何て不公平だわ!」
「仕方がねぇだろロリッ娘。切り裂きジャックってのはイギリスで知名度ボーナスが見込めるからいざとなったら強いんだよ。コイツ、本気で霧を出したら強ぇからな」
「でも
「ジャック。ぐだ男には宝具は殆ど効きませんよ。何しろ私の宝具を受けても服が剥がれる程度で済む男だ」
ランサーのアルトリア・オルタがロンゴミニアドを示しながらジャックに説明する。
そう言えばこの間宝具を食らった時の話だ。アルトリアの言う通り礼装が吹き飛んだが体に重傷は無かった。強いて言うなら火傷とかの全身に渡る中小の怪我くらい。あぁ、因みに然るべき場所には抑止力が働いて見えないようになってたから大丈夫。
「じゃあ改めて確認するけど、同行するサーヴァントはモリアーティ、ジャック、モードレッド、アルトリアかな」
「ドクター。念の為アサシンは2人連れていきたいんですけど良いですか?」
「
「んー……来てくれるのかなぁ。まぁ、取り敢えず訊いてみようか。駄目だったら呪腕を連れてくからね」
「うん!」
今の編成でも充分すぎるのだが、何かあったときに『死の概念を付与できる』力は頼もしい。まぁ、そんな事が無いことを兎に角祈るしかないな。誰にかって?ほら、いっぱい神サマ居るし、ティアマトでも良いかもね。
「一緒に行けず済みません先輩。ですがこのマシュ・キリエライト、完璧なサポートをしてみせます!」
「頼もしい。けど、無理は禁物。フォウ君。マシュをお願いね」
「フォウッ」
◇
翌朝。
まだ早朝過ぎて暗い中、俺は山を降るための完璧な装備をしていた。
カルデアとは高い雪山の上。常に吹雪で協会の人達も一苦労する過酷な場所だ。そこから降りる方法は2つ。
除雪車みたいな雪上車両でゆっくり降っていくか、ヘリか。
生憎カルデアの車両は最近協会の人達の運搬で調子が悪いし、吹雪でヘリが使えた試しは2、3度しかないらしい。ならば1つしかないだろう。
俺がトナカイになるんだよ!!
「お待たせしましたドクター。他の皆は霊体化してもらって俺は滑って──」
「イヤイヤイヤ待って!おかしくないかい!?どうして魔術とかレイシフトとかの方法が出ないでトナカイなのか分からないよ!?」
「スキーだと面倒臭いじゃないですか。ゴーグルつけたり板つけたり。でもこのトナカイスーツを着れば雪山程度大した事は無いですよ?伊達に2年のトナカイをこなしてませんから」
「流石私のトナカイだ。その意気や良し」
「
そう。これはただのコスプレだ。
多少破れにくいとは言え、茶色い布一枚と赤い鼻。トナカイの角カチューシャ。程度ではこの寒さは耐えられないだろう。
だが!
「良いかジャンヌ。人は時に論理的には説明できない力を持つことがある。ぐだ男もそうだ。2年のトナカイ期間を経て、コイツは本物になったのだ。雪だろうが氷点下だろうがものともしない──本物のトナカイにな」
「動物になっちゃったの!?」
「逆に人の定義とは何なのでしょうかロマンさん。現に
「訳が分からないや……」
「分からなくても良いのさロマニ。寧ろ分かったら君もトナカイだろうさ。無論、私は分かるけどね!」
「分かるんかい!」
賑やかな見送りでありがたい。変に心配されてもこちらも行き難いと言うもの。
俺は「私も行きたいと」せがんでいたナーサリーの頭を撫で回し、真っ赤なお鼻を装着して外への扉を開ける。
今日もいつも通りの良い天気。あまり遠くが見えない吹雪が今日も眩しい。
「……ほ、本当に行くのかい?すぐに車も出せるよ?」
「ドクター。もしも途中で車が壊れたらどうするんですか?あの空間の中に閉じ込められ、凍えるなんて御免です」
「いや、生身の方が圧倒的──」
「行ってきます!」
「「「いってらっしゃい!」」」
「もぉぉぉ!何かあったら問答無用で連れ戻すからね!」
◇
それが今から3時間程前の事だ。
途中襲ってきた正体不明の雪男っぽいのや熊っぽいのやらを薙ぎ倒し、まさにサンタの歌にある風のように!時には木々の間をバイクで駆け抜けた。気持ちいいぜ!
「いやぁー。楽しかった」
『所でぐだ男君。ちょっと良いかな?暫く回線を閉じてる間に何があったのか知らないけど、その飛行機はオーストラリア行きだよ?』
「なん……だとっ……!?」
『しかもそのトナカイの格好で良く通せてもらえたね?』
「何か『あぁ、お客様はトナカイでしたか。ではこちらへ』って案内されて乗ったんですけど」
『凄いなー。へー凄いなー。トナカイに見えたのにイミグレ通すのかー』
ドクターが何だか疲れた様子で覇気の無い言葉を並べる。
変だよなぁ。オーストラリアにトナカイは居ないでしょうに。あれか?日本がパンダを借りているみたいにオーストラリアもトナカイを借りるつもりなのかな?
「幾らなんでもそれは有り得ねぇだろ。まぁ、良いじゃんか。オーストラリアに行けばサーフィンが出来るからな!」
「でもロンドンには今日中に着かなきゃいけないし……」
『仕方がない……オーストラリアを降りたらすぐにロンドンに向かうんだよ?協会に連絡はこっちからしてるから』
「分かりました。ついたらすぐに事情を話してみます」
『で、ぐだ男君。英語喋れるの?』
「何を今更。英語どころかオジマンとかが使う古代っぽいエジプト語もウルクで覚えたメソポタミア語だかシュメール語だかも喋れますよ?」
『あー……そうだったね。じゃないと会話出来ないしね』
そうそう。
なんでもコミュニケーションをとるには言語が必要だ。カルデアに喚ばれるサーヴァントは皆現代の知識が組み込まれているから日本語だって全く問題ないけど、それじゃあ折角の機会が勿体無い。だからちょくちょくサーヴァントの母国語を用いて指示や会話をするのだ。
お陰でどこに言ってもテキストが日本語なんだ!凄いね!
「契約者よ。この映画を観てみるがよい」
「え?この映画?突然どう──」
じぃじが後ろの席から俺の頭上から前のモニターを指差す。
それに合わせて視線を変えると、鑑賞可能な映画の一覧の中に『スーパーカルデアロボット大戦GO』と言うあらゆる言語翻訳を網羅した映画が異常な存在感を放っていた。
今年2月に全世界で公開され、日本だけでも興行収入500億円を突破。日本第1位とされる約300億円の『○と○尋の神隠し』を上回った。
「まるで直流と交流と蒸気が同時に脳を刺激した様に素晴らしい映画だった」
「地球史上最高のSFアクション映画」
「本物みたいなリアリティ」
等々の高評価を獲て、映画監督であるエドワード・ティッチ氏が「こんなにも世界で観ていただけるとは、拙者もうれちい。ぶっちゃけ全部拙者と天才3人の懐に売り上げが収まるんですけど、まぁ、拙者もお世話になってる人とか居るんで?そこは黒髭、カルデアの運営資金に全金額回させていただきました」とコメントしている。
「カルデア」等の世界観の作りが非常に緻密であり、多くのイケメン、美女のキャストは明らかになっていないが、そう言った謎などもウケの理由にもなっている。
……と、映画の詳細に書かれていた。
「マジか……」
一体魔術協会は神秘の秘匿をちゃんとしているのかどうかを疑問視せざるを得ない物だった。
◇
「ようこそカルデアのマスターぐだ男さん。さぁ、こちらに」
飛行機で超大作を観て感動し、降りたらすぐに事情を話してロンドン向かう為に再び飛行機。1日と少し消費して漸く時計塔に着いたと思ったらすぐに中の案内が始まった。
一応本部からは1人でと言われているから霊体化した皆がついてきてはいるが……果してどこまで通用するか。
「へぇ……学校みたいになってるんですね」
「おや。ご存知なかったのですか?時計塔とは巨大な学園都市。これだけ大きな所ともなると知名度は極東でもある筈ですが……」
「カルデアでもあまり聞かないもので……」
俺はてっきりあのビッグベンみたいのを想像していたのだが、来てみたらどうだろう。ロンドン郊外にあるそこは40を越えるカレッジに100を越える学術棟……確かに1つの街だった。
時折変な目で見られるのは日本人が珍しいからだろうか?周りを見ても今のところ日本人どころかアジア圏が少ない気がする。
「あの、日本人が珍しいんですか?」
「え?……ぁ、ああ。そうですね。どうしても魔術の思想的に呪術等の中東圏とは仲が悪いんですよ。でも日本人が少ないのも国の大きさもそうですし、日本も科学に特化していますから、魔術や信仰等の根付きが弱いんですよ。それ故なのですかね。少数故に実力が高い。発想もやることも変態な国ですよ」
「あー。確かにHENTAIな国ですよ日本は」
(──いや気付けよ!?いい加減自分がそんなトナカイみたいな格好で居るから見られてるって気付けよ!?本当にHENTAIなのか日本人は!?)
「あれ?あそこに居るのは……」
「彼をご存知なのですか?」
「はい。ロード・エルメロイ……の二世で間違いないですか?」
「そうです。彼は現代魔術科の
擬似サーヴァントでウチにも居ますから!とは言えず、カルデアで写真を少しだけ目にしたことがあると説明。
何だかカルデアに居た彼とは変わらないように見える。きっとイスカンダルにあったら泣き出したり、アルトリアにあったら怯えだしたりするんだろうな。
「ではこの部屋でお待ちください。……あと、そろそろその格好はどうかなと思うんですが……」
「え?あ!すっかり忘れてましたよ。カルデアから急いで来たので着替えてる暇もなくて……すぐ着替えますね」
「はは。じゃあ私はこれで」
(コイツすっげぇ変人だ。カルデアってどんな所なんだよ……)
案内してくれた人がドアを閉めてすぐにソファに実体化したジャックと教授が腰掛ける。ジャックはソファの柔らかさにはしゃぎ、教授は部屋の本棚に収まった本や魔術の道具などを興味深そうに見ている。
「ここまではバレてなさそうかな?」
「さぁ、どうだろうねぇ。これだけの規模の魔術の学舎であれば、私達の存在を感知できる者の1人や2人は居るだろうし、何らかの魔術で感知も可能だろう。尤も、今のところそれは無いのだがね」
「一言目は一体……」
「ねぇねぇ
「2人とも補正は高い筈だよ。お陰で安心してこのソファにも座れるよ」
正直、いつどこで何をされるか分からないし警戒するばかりだ。
何しろこの少しの間歩いてきただけで何かしらの敵意や敵視を感じとることは出来た。他にも見下しや嫌悪、拒絶……特に気にする事でもないが隙を見せる訳にはいかない。特異点とはまた別の緊張感……組織を相手にした緊張感は嫌だな。
「まぁ外にはモードレッド君もアルトリア君も居るし、キング君も
「うん。充分すぎる」
「では私達はまた霊体化してるよ」
「また後でね
教授が霊体化したのに続いてはしゃいでいたジャックも霊体化する。するとすぐに扉の向こうから足音がしてきた。
さて……誰がくるのやら。
◇
「という訳で先輩が帰ってくるまでの間に誕生日パーティーの準備をします。去年居なかった方も今年は自分達の誕生日だとも思って楽しみましょう」
「去年は何をしたの?」
「えーと、エリザベートさんとネロさん
「ふぅん。でもアイツの喜びそうなものって何?まだ想像つかないのだけれど」
「んな事気にしなくても坊主なら何でも喜ぶぜ。だから気持ちを込めてやんな」
ぐだ男がロンドンの時計塔に到着した時点であらゆる通信を切断した事で後は本人とサーヴァントに任せるしかない。
カルデア側ではどうしようも出来ない為、そろそろ訪れるぐだ男の誕生日パーティーについてを話し合っていた。
去年よりサーヴァントが多くなり、色々あったが世界を無事修復することが出来た事もあって今回はかなり盛大になりそうだ。
「僕達英霊は誕生日の概念が無い者も居れば、長い時間の内に忘れてしまった者が大半だ。祝えるサーヴァントは祝うがそうでない者は祝えないと言うのが、ぐだ男にとって引っ掛かった部分であるようでね。そこで、どうせなら皆纏めて1年経ったというのをお互いに祝おうではないか。としたのが事の発端だ」
「私もアマデウスもサンソンもデオンも、皆お誕生日は覚えてるわ。けど、皆で一緒も良いと思ったの。皆で歌って、踊って、プレゼントを交換しあって、辛い事も苦しい事もその時は忘れるの」
「そうだねマリー。それに、彼はまだ20にも満たない。精神的に強いとは言え、こうして大袈裟過ぎても彼の精神的な負担を和らげるには良い。僕達サーヴァントはいずれカルデアから去る。だが彼はその後もこの世界で生き続けていく。ふとした時に、この辛い戦いの中の、心に残った楽しかった事等を思い出して欲しいんだ」
「成る程ね」
「じゃあ私達も一緒に祝おうよメルト。私達も先月だったけどお祝いも何もしてないし」
「その方が彼も喜ぶと思いますよ」
「メドゥーサさんは何をあげたんですか?」
「私は魔力を込めればすぐに眠りにつけるアイマスクです。レイシフト先やカルデア内で戦闘の後や騒いだ後に眠るのは興奮状態から抜け出さないと難しいものですから」
メドゥーサのバイザーと全く同じデザインのアイマスク。いや、最早同じデザインであればアイマスクと言うよりはバイザーの方が適切だが……そこは使う場面等で変わるもの。寝るときに使うそれはアイマスクで良いのだ。
ともあれ、メドゥーサと仲良くなったパッションリップやメルトリリス。何やら意味深な笑顔で会話に参加するBB達はそちらでどうするべきかを検討し始めている。
これだけのサーヴァントも同時に誕生日として祝うわけだが、プレゼントは別だ。
ぐだ男はちゃんと皆から。サーヴァントは誰彼関係無くプレゼントの交換会となっている。それだけに、他と被らないようにするのに皆頭の中をグルグルさせる要因になっている。
「白い私は何を贈ったんですか?」
「あの時は皆さんと一緒に料理を振る舞いました」
「成る程。黒い私はどうするんですか?まさか……自分自身をプレゼントに!?やりますね……!流石は私です!」
「何勝手に納得してんのよ。私は何も贈らないわよ。どうせアイツだって私からのプレゼントなんて望んでないでしょ。適当に盛り上がってなさいな」
「流石は歪みに歪んだ私。本当は何にすれば良いのか頭の中一杯な癖に素直になれず、突き放すと言う癖を出していますね。悲しい事です……」
「て、
非常に的を射ている方の
「誕生日……去年は失敗してしまいましたが、今度こそ
「その熱を特異点修復に向けていただきたく!」
「子供ってどうやって出来るんですか?」
ジャンヌ・リリィの汚れの無い眼差し。それを受けたジャンヌは「コウノトリが運んでくる」と笑顔で誤魔化すが「搬入経路ではなく出現の原因です」と跳ね返されて矛先が邪ンヌに向く。
当然贋作英霊とは言えそんな事を知らない彼女ではない。ジャンヌのように何とか誤魔化して凌ぎたいところだが……残念ながら「出現の原因」を求められてしまっている。キャベツ畑も通用しないだろう。
「はぇッ!?し、知らないわよそんなの!私も
「む?確かにそうですね。子供が居た方なら知ってる筈ですね。その論理的な説明、少しは見直しました」
「……」
「という訳でブーディカさん教えて下さい!」
皆の視線が一気に集中したブーディカが、どうするべきか全魔力をもって思考する。
教えて良いものなのか?しかし教えるにはまだ早いか?だが自分は答えを求められている。変に誤魔化しては余計面倒なことになりかねない……どうする!!
とブーディカは2秒で決断を下した。
「キスをすると出来た……かな?」
「え?じゃあケツァルさんは
ぐるん!とブーディカへの視線がケツァル・コアトルへ変わった。
ある者は嫉妬を、ある者は驚愕し、ある熊は実体験的に女神に好かれると
「ヤァ、恥ずかしいネー。私は確かによくぐだ男にキスしてますが、まさかそれで子供が出来るなんて知りませんでした。だから私最近お腹が……(大嘘)」
「それを言うなら私も
「私もぐだ男様とキスしてます」挙手
「我が子の子を身籠ると言うのはアリなんでしょうか!?」
「わ、私も!先輩とした事(モラクス戦)があります!」
負けじと主張してきた外野。どのみち誰1人としてぐだ男の子を身籠ってなぞいないのだから、黙っておけば良いものを。ジャンヌ・リリィは周りを見回して主張してきた何名かを見た後、更に疑問符を浮かべて問うた。
「それなら何でどこにも赤ちゃんが居ないんですか?」
「「「「……」」」」
「やれやれ……」
ケツァ姉さんは、何か、そう。とても良い。(語彙力