Fate/Grand Order 「マシュ。聖杯ってよく拾うけど全部願望器として機能してるの?」「勿論ですよ先輩」「じゃあソロンモさんを永み─」「先輩!」 作:第2類医薬品
SN勢のモーションがリニューアルされたのは嬉しいですね。
特に兄貴は良く使うんでありがたいー!
「んっうぅ……」
眩しい。先ず初めに感じたのはその感覚。
レイシフトでは肉体と意識が乖離するような感覚を一瞬覚え、直ぐ様全身が光の先へと強く引っ張られる。マシュや他のサーヴァント達はそんな感覚は無く、後者に至っては召喚されるときに座から引き寄せられる感覚とにていると言う。うん、分からない。
「ここは……」
「へぇ。こりゃあ冬木みてぇなデケェ都市じゃねぇか。何か見覚え無いのかマスター?」
「同感ですぞ、アルスターの光の御子よ」
「やはりクー・フーリン殿も覚えておいでか。……あの時は貴殿の─」
「心臓を貰われたってな。何だか実感がねぇけどな。何しろ、あの冬木での俺の死にパターンってもっとあったような……」
「『自害せよ』でしょう?貴方達ランサーの輝くところって」
「ひでぇ!」
兄貴達は冬木で色々接点があるらしい。
「うーん……多分だけどここは─」
『皆無事にレイシフト出来たみたいだね。ぐだ男君、辺りに何か居たりしそうかい?こちらでは何の反応も掴めないけど』
「何も居ません。だけど……冬木みたいに街が燃えてる訳でも、エネミーが跋扈しているわけでも無いです。寧ろ平和な感じがします」
「『何の反応も掴めない』って事は人も居ないってこと?」
「そうだねマルタ。もしここが俺の知る場所なら、ここら辺にはもっと人が居る筈なんだ。日は出ているから寝静まっている訳でもない……ハサン」
「承知」
人っ子1人居ないここは明らかに異常である。いや、そもそもここが特異点となっている時点で正常も異常もあったものではない。
荒れた様子もなく、ただ異質な静寂が辺りを包む。……直感だが、危険な臭いがする。ならば先ず偵察を行い、少しでも情報の収集と確認を急がなければならない。そこで隠密行動を任せられるのがアサシンだ。気配遮断:A+を持ち、風避けの加護を持つ彼なら適任なのだ。
因みに百貌も静謐も同じく気配遮断:A+だが、前者は今日の夕飯担当に含まれているのでパス。後者は俺の部屋で何故か寝ていたのでそっとしておいた。
「……戻りました」
「お帰り。何か収穫は?」
「これといって。しかし、ここら一帯には罠等の類いも無く、生物の気配が全くありません。街だけがここに存在しております」
「……聖杯か」
『その様だね。取り敢えず探索を進めてくしかないみたいだ』
俺達が居る場所は日本のとある都市。その駅前の広場だ。
目の前に特徴的な蒸気機関車が鎮座しているそこから少し歩くと世界的に有名なジャンクフードの『M』が見えてきて、オルタの性か邪ンヌがえらく反応を示している。
「行くよ。帰ったらエミヤに作って貰お─お?」
「何?」
「いや、ちょっとね。少し待ってて」
ここら辺で感じる違和感の1つと言えば、自動車が1台も見当たらない事。それこそ自転車も全くだ。
だが目立つライムグリーンのフルカウルがそこの駐輪場に停まっていた。
「あんなところにバイク……?」
「おぉ、あれは。かつての2人目のジャンヌが乗っていた物と似ておりますな。確かバイクと……」
「2人目のジャンヌ?」
「おーいマスター。そりゃ一体何なんだ?」
「これは……俺のバイクだ」
◇
カワザキkenja400R。ライムグリーンとメタリックブラックカラーのそれは、スポーティなフルカウルで見た目だけでも速そうな印象を与えてくるMTバイク。
機体の所々は純製品ではなく破損や傷の為に付け替えたりされているから、自分のだとすぐに分かった。
「先輩バイクに乗ってたんですね。格好いいです」
「ありがとうマシュ」
今すぐにでも跨がり、エンジンを唸らせてやりたいと思う反面、えもいわれぬ悪寒を背に感じた。
バイクに対してって訳ではないが、たまにある嫌な予感が何かしらほぼ的中したときだ。マシュやハサンはそれを危険感知スキルって言ってたな……。
「ぐだ男殿。その機械からは罠の痕跡は出ませんが、何者かが使用した痕跡が見られます。離れた方がよろしいかと」
「あ、あぁ……ありがとうハサン」
「しかし良いもんに乗ってるじゃねぇか。俺も出前の金稼ぐためにちぃっとばかし働いてた時期があったが、結構頑張ったんじ─下がれ!」
『ごめん!流石にここからだと反応が中々掴めないけど、サーヴァントの反応だ!そこの店から出てくるぞ!』
「ちょ、ま!うぶぇっ!」
「ぐだ男殿。焦りは禁物ですぞ」ズリズリ
「ありふぁほ……」
突然の警告に驚いてポールに足を引っ掛けてしまう。
「来るぞ」
「何者ですか!」
「……ん?何?僕に何か用?」
「メアリー……?」
「そうだけど、キミ達誰?」
店からフライドポテトをくわえながら出てきたのはライダーのサーヴァント、メアリー・リードだ。本来ならもう1人、アン・ボニーと2人1組で行動しているのだが、今は違うようだ。
にしても、さっきメアリーはアンと一緒に部屋でネットの海を航海していたからここに居る筈がない。と言うことは大体想像がつく。
「……この特異点の原因である聖杯はどこにある?ここの聖杯に喚ばれたサーヴァント」
「生憎僕は忙しいんだ。別の奴に訊いてよ」
戦闘の意思はなし。寧ろ面倒臭がっているようにも見える。
てっきり戦闘になるかと構えていたこちらは、相手の態度に思わず手をこまねいてしまった。一方のメアリーはこちらを一瞥しただけでステステと歩いていき、おもむろにkenja400Rに跨がった。
「あ!それ俺のバイクなんだけど……」
「は?何言ってるの?これは“マスター”のだからキミのな訳ないでしょ」
「……何?」
「じゃ」
小柄な体でありながら、華麗にバイクで翻るとそのまま走り去ってしまった。
「宜しかったのですかマスター?」
「行かせたこと?いや、良くはない」
「どうするの?今から追うつもり?」
「一度整理しよう。彼女はあのバイクの持ち主をマスターと言った。しかしバイクは間違いなく俺の。そしてここは俺の地元だ」
「ここがマスターの……」
「うん。まだまだ仮定でしかないんだけど……誰かが俺に成り済ましているかも知れない」
仮定にしても些か根拠も少ないし弱い。最早勘とも言われてしまいそうなものだ。
「兎に角追ってみりゃ良いんじゃねぇか?こんだけ静かな街だ。まだまだエンジンの音が聴こえるぜ」
「そうね。あれが貴方のであってもなくても、彼女が何かしらこの特異点に関係している筈」
「そうだね。じゃあマルタ、タラスクに乗って上から探せる?」
「えぇ、勿ろ─なんです?」
「え?いや、この中で空飛べるのマルタだけだし」
「……私が飛べるわけじゃないんだけど……良いわ。タラスク!」
そう言うとマルタがタラスクを召喚して跳躍。タラスクの背に乗った。
「ごめんタラスク。上から探すだけで良いから」
やや疲れたような様子のタラスクは静かに頷き、甲羅の中に体を収納すると大怪獣宜しく回転しながら空へと舞い上がる。
毎度思うのだが、あの高速回転する甲羅の上で腕組して平然と立っているマルタはどういう仕組みなのだろう……。
「……俺達も追おう!」
◇
「ただいまマスター」
「お帰りメアリー。さぁ、おいで」
「よいしょっ。あ、マスター。さっきサーヴァント連れた変な奴に会ったんだけど、マスターのバイクを自分のだって言い張ってるんだ」
「……来たか……聖杯よ。せっ─んんっ。我が願いを叶えたまえ……!」
◇
「お、マルタからだ。もしもし?見付けた?」
『ちょっと、マナーモードにしてたでしょ?何回かけたと……』
「……ごめん」
『─あぁっ、いえ!そうではなく……バイクは見付からなかったわ。代わりに妙な物を見付けたんだ……んんっ、ですけど』
「妙な物?」
『何て言うのかしら……空間の歪み?』
空間の歪み……それは文字通り空間という概念が強大な力によってねじ曲げられた状態。特異点で観測されるのは希だ。因みにブラックホールも大質量の星が極限まで縮んだ結果、超重力点となって空間を歪めてあらゆる物が“落ちて行く”。
「ドクター聞いた?」
『あぁ。今マルタ君の反応を基点にして周囲のスキャニングを行っているんだけど……ん?おかしいな』
『マスター!何か空間の歪みが拡がってる!』
『─いや、これは不味いぞ!物凄い勢いで歪みが拡がってるんじゃなくてそこの“特異点が縮んでる”んだ!すぐにレイシフトを!』
「ドクター!間に合いません!」
ドクターがレイシフトを行おうとするが、遥かに遅かった。いや、ドクターは恐らく今出来うる最速で行おうとした筈だ。ただ単純に縮む早さが─
「マスター!」
「くっ─!」
一瞬だった。水銀のような、かといって物質ですらないような“壁”が迫ってきて何も出来ない俺達を呑み込んで、そこで意識が途絶えた。
◇
「……ター。マスター……」
朦朧とする意識の中、確かにその声は聞こえた。
聞き慣れた声、多くの苦楽を共にしてきた大切な仲間の声。
「ん……くぁっ……」
目を開け、意識を深い闇から浮上させるとそこに居たのは─
「おぉ、お目覚めか我が主よ」
「……ジルか……っぁ……どうなった?」
満面の笑みのジルだった。正直マシュとかが良いって思いはあるけど、何かこれはこれで良い気がしてきた!
「私にも分かりかねます。皆同様にアレに呑み込まれ、ここに倒れていたのです」
「……他の、皆は?」
「鉄拳のジャンヌを探しに行かれましたぞ」
「鉄拳の……要するにマルタね……。しかしここは……」
辺りを見回す。 ついさっきまでの都市風景はどこへやら、周囲は一面の背の低い緑の草原。柔らかく、暖かい風が頬を撫でる、間違う事なき草原だ。
「何だこれは……」
「固有結界ではありません。恐らく聖杯によるものでしょう」
「そうか……まぁ、動くのも危険だからドクターと連絡─はお決まりのパターンで出来ないと」
「それよりも電話がなっておりますぞ我が主よ」
「お?……マルタ?大丈夫か?」
『良かった。無事だったのですね。私は大丈夫ですが、いやこれを大丈夫と言えるのかしら……』
「?」
『兎に角、皆も集まってるので一度こっちに来て下さい。タラスクの火を空に上げますから』
間髪入れず後ろの方で火柱が立った。タラスク火吹けるんだ……。
「ジル。集まろうって言うから行こう」
何もない草原だから、遠くの方でタラスクが着陸するのがなんとなく伺える。そこを目指していけばすぐに─
「!?ぐあっ!」
「むぅ!?これは……!?」
突然、全身に激しい痛みが走る。
前に第五特異点で榴弾を受けた時よりも痛い!全身の皮膚が裂けるような─ジルも膝をついて苦しんでいる。
「─っうああああああ!!」
「で、気付いたら裸だった」
「なんでよ!?」
「大丈夫。何故か知らないけど、大事な箇所は隠れる全方位視覚ジャマーがあるから気にしないでよ」
「「気になるわよ!」」
女性陣には悪いが、どうしても身に纏う物が見当たらないのだ。俺の
そして全方位視覚ジャマーは“前後”をしっかり黒いモヤがあらゆる視点から見えちゃうのを阻止してくれる。あらゆる力をもってしても剥がれない……最早世界の理だ。
「あ、あの……確かにマスターは鍛えてますから、体を見せたくなるのかも知れませんけど……その」
「いや、マシュ。俺が露出したい訳じゃないからね?」
「悪いなマスター。今渡せるモンこれしかねぇや」
おもむろに兄貴が取り出したのは、白と朱が不規則に混ざった槍だった。お?これ兄貴が俺に作ってくれたやつだけど……あぁ、そう言うことか。この前風呂場で師匠に呼ばれた理由はこれか。
「ありがとう。昨日師匠に呼ばれた理由ってこれ?」
「あぁ。スカサハの奴、『マスターに中途半端な物を渡してどうするんだ。あやつが修業を望むと言うならわしも協力せんとな。それでだ。お主が作ったゲイボルクを渡せ。マスターの修業に適した物にしてやる』って妙に張り切りやがって……それで改造されたゲイボルクなんだが、スカサハが『これで誰の助けも借りず
「……ごめん、聞き間違いか見間違いかな?何かルビがおかしかった気がするんだけど?」
「……そんで『仕込んだルーンで倒せたかどうか分かるから取り敢えず10体は倒してこい』ってさ」
「いや、そこまでの修業を望んだ訳じゃ……」
「ちょっと!重要なのは得物じゃなくて服でしょ!?アンタどうすんのよ!裸で居られるとこっちが困るのよ!」
「確かに俺も少し恥ずかしいしなぁ」
「少し!?」
「フォウ!」
「お、フォウ君もちゃんと来てたのか」
フォウ君には何も異常は無いのか調べようと近付くと「ファッ!?キァー!フォォォォオッ!」と滅茶苦茶嫌がられた。結構傷付くぞフォウ君……。
「まぁ、俺が裸なのは置いといて」
「置いとくの!?」
「さっきマルタが大丈夫じゃないみたいな事言ってたけどどうしたの?」
「ぅえっ!?あ、そうですね……。実は私達の霊基が─」
ぐだ男のステータスが更新されました ▼
宝具がランクアップ
擬似宝具
↓
擬似宝具
スカサハの槍改修により、少しだけ威力が上がった。それでも心臓を貰い受けるのは難しい必中(笑)の槍。