Fate/Grand Order 「マシュ。聖杯ってよく拾うけど全部願望器として機能してるの?」「勿論ですよ先輩」「じゃあソロンモさんを永み─」「先輩!」   作:第2類医薬品

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何かと誤字報告有難うございます。
私も見直しを行っているのですが、やはり他の人から客観的に見た方が見付けやすいんですね。どうも見直しても間違えてるとは気付けず……

あと更新遅くてすみません。ちょっと多忙で仕事が終わランスロット状態なので中々……まぁそれはそれとして。
柳生さん渋くて格好いいですねぇ。頼光さんとか酒呑ちゃんはどうでも良いから柳生さん欲しくて三万ぶっ混みましたよ。結果的に柳生さんの宝具は2になりましたが、なぜか別に狙ってもいなかった酒呑ちゃんが3枚も……なんでさ。




Order.39 剛胆

 

「犯人は貴女でしたか……レオナルド・ダ・ヴィンチ!」

 

「ダ・ヴィンチちゃんと呼んでくれたまえ。所で、何の事かなマシュ。今回のぐだ男君幼児化の犯人は私だとでも?」

 

「無論、1人ではありません。清姫さん、静謐さん、頼光さん。貴女達3人も被疑者に含まれていると自覚してください!」

 

「そんな事を言われましても……」

 

「我が子が幼子になりたいと言ったのですから、母としてうんと甘えさせてあげたくなっただけですけど?」

 

「私は百貌の人格(ちびハサン)がぐだ男様ともっと仲良くなれるかと思って……」

 

「静謐さんの動機が想定外で否定できません……!」

 

カルデアにとんでもない尼が召喚されたとも知らず、マシュが今回の騒動の原因と思われる被疑者4人に詰め寄っている。

清姫の前である以上、嘘はつけないのだが否定はしていないレオナルド。その他の3人はハナから隠すつもりも無く早々に打ち明ける。

 

「どうして先輩を子供にしようとしたんですか?」

 

「彼が『あー、幼児になりて』って言ったから叶えてあげたのさ。彼も色々心労が溜まっていただろうし、ここらで気分転換でもして貰おうとささやかなプレゼントさ」

 

「いや、気分転換も何も先輩の記憶が都合よく改竄されていたので元々の心労が癒されるわけでは無いかと……」

 

「人は時に、何かを得るために何かを手放さなければならない。つまりはそう言う事だよ」

 

「つまりどう言う事ですか」

 

個よりも多をとった(楽しそうな方にした)

 

「そんな事で……ドクター。危険なサーヴァントには令呪の睨みを効かせておくと言うエミヤ先輩の教えを忘れましたか?」

 

「そうは言われても困っちゃう訳で……忘れてると思うけど、彼は自分の複製人形をマスターと言い張って現界しているんだ。令呪の使用権は彼自身にしか無い。仮に出来たとしても範囲が広くて効果が薄いんじゃないかな」

 

そう。忘れがちだが、レオナルドはカルデアに召喚された最初の3騎のサーヴァントの1騎だ。

1番目のサーヴァント、ソロモンは聖杯を獲て人間(ロマニ・アーキマン)に成り、こうしてカルデアでデスマとネットアイドルに明け暮れているしマスター以前にサーヴァントではない。

2騎目のギャラハッドはマシュと融合し、デミ・サーヴァントのマシュのマスターがぐだ男となっている為他のサーヴァントと同じ。

つまり、カルデア内で唯一令呪の縛り無く好き勝手できるサーヴァントなのだ。

 

「ところで、どうだった?ぐだ男君の無垢な幼児時代の姿は?こう、母性的なものを感じたんじゃないのかい?」

 

「確かに……こう、いつも以上に守ってあげたいと思いまし──ってそうじゃありません!もし特異点が発生したらどうするんですか!」

 

「その時はほら、マスター固有スキルの主人公補正:EXで乗り切るだろうから」

 

「何て無責任な発言!」

 

「まあ、落ち着いて。今すぐに何かある訳じゃ──」

 

「レオナルド!大変だ!魔術協会がぐだ男君を時計搭──協会本部に寄越せと言ってきたぞ!」

 

インカムに届いた情報から驚きの余り、言葉としてはアウトプットしてしまったロマニ。

魔術協会が本部に召喚命令……困った事に、単独でやってこいと言うのだ。これも、カルデア内のデータ改竄がバレて情報の信憑性が問われる事から起きた事態。情報の信憑性を求めるなら、本人に訊いた方が確実だからだ。魔術や薬を使えば言わずもがな。

当然ながら電話を受けていたスタッフが同行者を許可しないなら駄目だと突っぱねていたのだが、協会の怒りを買ってカルデアが解体されればサーヴァントは契約を保てないし皆ここを出ていかざるをえなくなる。ともすればまだまだ身の危険があるぐだ男を守るものが無くなってしまう。突然彼が消息を絶つ、なんて事もあり得た。

 

『──だから彼を守るためにも、彼を協会本部に向かわせるしか無いんだ。その為に何人かサーヴァントを付き添いで選びたい。他にも決めたいことがあるし、1度戻ってきてくれ』

 

「分かった。カルデアが解体される事はまだ無いだろうけど、用心するに越したことはない。戻るよレオナルド。で、ぐだ男君を戻す方法は?」

 

「薬と同じさ。時間が経てば効果はなくなる。一日限りだろうね」

 

「ところで、君達ならすぐぐだ男君の所に行くと思ったんだけど、どうしてここに?」

 

「実は──」

 

頼光ならすぐにぐだ男を我が子のように接しに行くのでは無いかと思っていたロマニ。それはマシュも同様らしく、ロマニに頷きながら頼光の言葉に耳を傾けた。

 

 

 

時は昨夜。

ぐだ男の部屋の形骸化したセキュリティを排除し、部屋へと侵入した3人は先ず誰が注射器を扱えるかで悩んでいた。

 

「私の時代には注射器はまだ存在していなかった。使い方こそ分かりますけど……」

 

「日本にもありませんでした。兎に角これを旦那様(ますたぁ)の柔肌に刺すのは気が引けますが……」

 

「ですがこれも我が愛する子の為。母とは時に子の為に己を犠牲にしなければならないのです」

 

最早柔肌と表現して良いのか分からなくなったぐだ男の腕を捲り、取り敢えず一番太い血管を探すことにした。

幸いにも、薄暗い中でも視認できるレベルで血管が筋肉に押し上げられて隆起していたので長い夜這い経験で培った、ぐだ男が絶対に起きないレベルの力で腕を鬱血させる。

 

「で、誰がやります?」

 

「正直、怖いですね。うっかり刺しすぎてしまったり針が折れたり等……」

 

「では私が……。職業柄手先は器用なので」

 

「毒その物の貴女が薬を打つという珍妙な絵面になりますね」

 

「……いえ。やっぱりここは私が。この頼光、不器用ではカルデアの厨房を担えませんので必ずや成功させてみせましょう」

 

「でしたら私も、妻として夫の治療くらい出来なくては」

 

結局誰がやるか意見が別れ、平行線のまま時間が過ぎて行く。流石のぐだ男もその五月蝿さに目が覚めたのか、重たい目蓋を擦りながら身を起こした。

 

「……誰だよこんな遅くにぃ……」

 

「はっ!いけません!まだ眠っていてください旦那様(ますたぁ)!」

 

「んげぁっ!?え、何!?きよひーどうして!?」

 

寝起きの頭で必至に現状の理解を試みるぐだ男。しかし、どうにも上手くいかずされるがままにベッドに押し倒されて腕を押さえられる。

それを見た頼光と静謐のハサンもすかさずぐだ男を押さえるために飛びかかった。

頼光は両足を。静謐のハサンは注射器を持っていたので倒れたぐだ男の腹に馬乗りになってぐだ男の動きを封じる。

 

「な、何で皆がここに!?」

 

「すみませんぐだ男様。これも貴方の為なんです」

 

「何が!?」

 

明かりが少ない部屋で僅かに視認できた注射器。ぐだ男は即座にバックに居るであろうレオナルドの存在を導きだし、ここ最近のレオナルドと自分の発言から関係がありそうなのをピックアップ。恐らく自分を子供にでもする便利な薬なのだろうと秒で導きだした。

 

「くっ!デスマ後だと力が出ない……ッ!」

 

「首には太い血管がありますから、そこに刺せば広がるのが早そうですね」

 

ブスッと雑に刺さる針。慣れることのない嫌な痛みを首に感じと、やや体温より低い液体が流れ込んでくる感覚。

下手に頭を動かせば思わぬ怪我をする恐れもあり、ぐだ男は大人しく動かないようにするしかなかった。

 

(薬……!効いてきたか……ッ、もう手、遅れか?いやッ!カラダもってくれよ!)

 

_人人人人人人人人人人人人人人人人人人_

> 令呪──三画だああああああッ! <

 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄

 

「「「!!」」」

 

 

 

「──その令呪により、私達は近付くことが許されなかったのです」

 

「どうりで……」

 

「ぐだ男様がもとに戻るまで私達は近付けません。何とかその打開策は無いかと伺っていた所でして」

 

「諦めてなかったんですね……静謐さんの動機は良いとして、皆さん自分の欲望を出しすぎです」

 

「そんなマシュに吉報だ。ぐだ男君がどうやらお風呂に入るみたいだぜ。大浴場の、しかも女湯に」

 

「エェッ!!??」

 

 

「ふははは!きゃすとおふ!」

 

「こらこら。服を脱ぎ捨てるな。ほれ、ちゃんとここに入れるんだ」

 

「はーい」

 

「すみませんアタランテさん、服脱ぐのを手伝って貰えませんか……?」

 

「汝の爪も大変だな。少し待て」

 

大浴場では既に裸のアタランテとぶかぶかのトランクスを穿いたぐだ男と脱ぐのに手こずっているパッションリップ、これからサウナに入るカーミラや武蔵……その他数人の女性サーヴァントが湯を求めてやって来ていた。

ぐだ男は女湯に入って良いラインギリかアウトかなんて問題は年相応に頭に無く、無邪気に騒いでいた。

 

「むさしちゃんこんにち!」

 

「“は”は入らないのね。それに確かな美少年ではあるけど、流石に幼すぎるかな……もうちょっと成長した方が──っと、またやっちゃった。こんにちはぐだ男君。随分傷だらけだけど、怪我したの?」

 

「これ?これはね、さいしょのとくい点のやけど!これはローマでさされたときの」

 

「……痛い?」

 

「ううん。あ、でもたまにいたいかな。でもね、ぼくは泣いちゃいけないの。ぼくよりももっと泣きたい人がいっぱいいるのに、泣けない人がいるのに、えーと……あれ?何で泣いちゃいけんないんだろ……」

 

「──酷いことをする人も居たものね。記憶が改竄されて体との乖離が起きているじゃない……ぐだ男。貴方、アメリカで手足が千切れかけたの覚えていて?」

 

カーミラがぐだ男の目線に合わせてしゃがみ、太股の辺りに走った傷痕をなぞる。

そこだけ皮膚が新しいのか色が薄く、うっすらと縫い合わせたような跡も見られる。微妙に隆起したそこを触られてくすぐったさを覚えたぐだ男だが、カーミラの問いに少し頭を捻って答えた。

 

「えーと……アメリカ……たしか、足とか手がちぎれて……」

 

「千切れてないわ。ちゃんと繋がってるでしょ。まぁ、切り落とさないと危険な状態だったけども。スプラッターなものは見慣れた私だけど、腕脚が皆明後日の方向を向いてグチャグチャなのは初めてみたわ」

 

「?」

 

「汝は拷問だからな。私とて、あんな酷い姿を見たのは初めてだ。人間の技術──科学の進歩と脅威を改めて思い知ったぞ」

 

「泣かなかったよ?」

 

「──そう」

 

「……」

 

(泣いてはいけない。誰もそうは言ってない筈だけど……そう。君はいけないと思ったのね)

 

武蔵が思っている通り、ぐだ男は泣いちゃいけないと教えられた訳ではないし強要されているわけでもない。

いつの間にか本人がそれを押さえ付け、自分にルールを課しているだけだ。

世界を救う。多くの屍を越え、前進する。命のやり取り……そう言う状況におかれた彼は自分を押し殺す事が多々あった。彼はただの一般人……なのにここまで耐えて来れたのはもしかしたら、精神が元から強すぎたのか或いは──レフによるテロの直後、最後のマスターとなってとてつもない責任が降り掛かってきた瞬間に、彼が己を殺した(・・・・・・・)のか。

流石に無いだろうとは思う武蔵だがいつもと違う無垢な彼を見てしまうと、この先が心配になってしまった。

 

「むさしちゃん?」

 

「──ううん、大丈夫。じゃあ入りますか!」

 

「うぇーい!ろてんぶろー!」

 

 

「……そうか。やはりアイツも人間と言うことか……」

 

嫌がるメルトリリスを押さえてBBが事の発端と結末を話した。

終始展開に驚いていたアンデルセンだったが、最も驚いたのはキアラにぐだ男が殺されていたという別の結末。

メルトリリスのお陰で実際はそうなっていないが、多くの特異点を生き抜いてきたぐだ男も死ぬ時は簡単に死ぬ人間だと、そう言う未来が常にあるんだと認識し直していた。

 

「まぁ、私は覚えていないんですけどね。道理でメルトリリスが私にずっと殺意を向けてくる訳です」

 

「そうでなくても向けるわよ。何なら今すぐ殺してあげるわ」

 

「じゃあ私がキアラさんの召喚者なのでマスターですね!では早速──」

 

「馬鹿かお前は?他人のアプリデータでガチャして当たった鯖はどう足掻いてもそのアプリデータの持ち主の鯖だろう」

 

「な!?」

 

「ルール改竄が得意なら先ずルールを把握しろ。あとお前(キアラ)は帰れ。レアプリズムになって貢献しろ」

 

「そう息巻かなくても良いではありませんかアンデルセン?先ずはぐだ男さんに面会など……」

 

BBを置いて、キアラが好き勝手に出歩こうとするのを阻止しようとするメルトリリスと文句を垂れるアンデルセン。

足元には2つの聖晶石と袋。それらを拾ったBBは「扱いひどくありません!?」と叫ぶのであった。

 

 

その日の夕方。

夕食を頬張っていたぐだ男のもとにキアラがやって来た。

エミヤがぎょっとし、デミヤもぎょっとし、パッションリップはぐだ男を守ろうと立ち上がり……彼女を知るサーヴァントは揃って警戒した。

当然ながら突然の登場にぐだ男の隣に居たマシュは混乱。オロオロしているとぐだ男が咀嚼していたご飯を飲み込んで開口一番こう言い放った。

 

「ケンカはだめだからね」

 

それはキアラに向けて言ったのもあり、周りで警戒していたサーヴァントに向けても言っていた。

ぐだ男自身も相当驚いていた。だが、カルデアに召喚されるのは力を貸してくれる者だけ。この間は殺し合ったが、今はそうではないと理解した彼は既に受け入れていた。

 

「……成る程。これがカルデアのマスターなのですね……」

 

「分かっただろう?コイツはお前には扱いづらい男だろうよ」

 

アンデルセンが去ると警戒していた他のサーヴァントも多少気にはしつつも雑談や食事に戻る。

何だか取り残されてしまったキアラは周りを一瞥してどうしたものかと短く息を吐く。すると──

 

「キアラさん。そこすわって」

 

ぐだ男が自分の目の前の空席を指差して座るように促す。

 

「はい。どうしましたかぐだ男さん?」

 

「カルデアにきたらまずお話し。すきなこと、きらいなこと、いっぱい話すんだよ。だからキアラさんもお話ししてみんなと仲よくしようね」

 

「──」

 

何でぐだ男が幼くなっているのか事情は知らないが、あの深海で殺しあいをしたとは思えないコミュニケーション意欲。

まさに昨日の敵は今日の友とは言ったもの。そんなある意味剛胆なぐだ男に思わず口角が緩んだキアラは先ず自分の好きな事から話すことにした。

 

「そうですね。私の好きなことは──」

 

その数秒後。内容が段々とR規制がかってきて正義の味方2人に止められたのは言うまでもない。

 




次回はロンドン!

カルデアはどこの国なのか分からないが、取り敢えず山を降りて空港へ向かう!

ロマニ「良いかい?海外では特異点とは違う危険があるからね」

ぐだ男「おっけぃドクター。とっとこロンドンに行ってさっさと帰ってきますよ」

新茶「ンー。この警戒心の無さはわざとか素なのか分からないね。兎に角、私も付いていくから安心したまえ」

JDASL「飛行機が何で飛べるのか論理的に知りたいです!」

切裂ロリ「えーとね、確か翼の形が流体力学ではお馴染みのベルヌーイの定理とかで揚力を発生させる設計になってるのと、鉄じゃなくてジュラルミンとかのアルミ系を使ってるからしなやかで軽いし──」

ロリ本「アルミニウムには1000から7000番に分けられててそれぞれ純度や製造法が違うのよ?」

JDASL「何だか色々おかしくありませんか!?」

叛逆娘「それを言うならぐだ男の眼からビームが出る時点でおかしすぎるだろ。絶対ぇ協会でビビられるぜ」

ぐだ男「よし!いざ行かんロンドン!」

万能の人「所でぐだ男君。何で乗れたのかは分からないけど、その飛行機はオーストラリア行きだよ」

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