Fate/Grand Order 「マシュ。聖杯ってよく拾うけど全部願望器として機能してるの?」「勿論ですよ先輩」「じゃあソロンモさんを永み─」「先輩!」 作:第2類医薬品
ところで福引きガチャ……やりました?
「チキチキ!サーヴァント大クッキングバトル~!」
「「「嫌だああああああ!!」」」
カルデア食堂に響く野太い悲鳴。この日、カルデアの食堂ではぐだ男が不在の為、暇をもて余したサーヴァント達が暇潰しに料理バトルの会場を作っていた。
「えー、本日。我等がマスター、ぐだ男は新たに発生した特異点へと赴いた。いよいよ明後日と迫っていたお別れ会だが、今回の特異点から予想するに今後も我々の力が必要になってくると思っただろう。故に、我々はこれからもぐだ男に力を貸したいと思う。なればこそ、マスターへの慰安も必要になる。そこで、今回は我々の料理でぐだ男をもてなそうではありませんか!」
マイクを片手にシェイクスピアが大仰な身振りでキッチンへライトを向けさせる。
エミヤ達料理担当サーヴァントのサンクチュアリと化していたその場所に、普段なら絶対に立つことが無いであろうサーヴァント達が光に照らされて会場をざわめかす。
「エントリーナンバー1番!カーミラ!」
「よくてよ」
「エントリーナンバー2番!モードレッド!」
「うっし。やってやるぜ!」
「エントリーナンバー3番!黒髭!」
「いくでござるよー」
「エントリーナンバー4番!ブリュンヒルデ!」
「困ります……」
「エントリーナンバー5番!アルテミス!」
「頑張るわねダーリン!」
「そしてラスト!エントリーナンバー6番!ランスロット(狂)!」
「……」
メンバーそのものが混沌としている。人選はそもそもくじ引きであるから仕方がないが、それにしてもマトモに料理が出来るのか危ういのしか居ない。
だからこそ初めの野太い悲鳴だったのだ。
「そして審査員の方々の紹介です」
その野太い悲鳴の発生源、そこには椅子に縛られて身動きをルーンやら魔術やらで完全に止められた男達の姿だった。
「右からアンリマユ、巌窟王、天草四郎、クー・フーリン(槍)、ロビンフッド、ジークフリート、ジキル。以上7名に加え、緊急用の
「離せぇぇぇ!!」
「飯など要らぬ!!」
「助けて!!」
「あー……戦闘続行つけるの止めるか……」
「オタクら殺す気か!?」
「頼む……マトモなのを頼む……」
「薬を寄越してくれないかな?後はハイドに任せるから」
そんな審査員という名の生け贄が騒ぐのをスタッフやサーヴァントが止めさせるため口にガムテープを貼っていく。その様子を見たカーミラやモードレッドがキッチンを乗り越えてシェイクスピアに詰め寄る。
「貴方、失礼じゃなくて?私だって料理くらいちゃんと出来るのよ?」
「そうだぜキャスター!あまりの美味さにぐだ男だってこの前気を失ってたんだからな!」
それは絶対に別の理由で気絶したとはシェイクスピアも敢えて言わず、宥めながら定位置へ戻す。そして準備は整ったと言わんばかりにマイクを投げ捨て、試合開始の合図を告げた。
「では喜劇を始めましょう!」
ボワァァァン!
定番のドラが叩かれ、各々が料理へ取り掛かる。お題は得意料理。
制限時間は1時間。そしてそれは同時に生け贄へ告げられる死のカウントダウンに等しい。
「んんーー!!」
「見てろよ。オレはぐだ男を唸らせた肉じゃがだぜ」
ぐだ男は決して美味さに唸ったのではなく、不味さに悶絶していただけだが、そんな事は知るよしもないモードレッドがジャガイモを取り出す。
カルデアで栽培された大きめのジャガイモ。育てた人である太陽の騎士のお墨付きだ。最近は外に出荷して一儲けしているらしい。
「よっと」
包丁を慣れた手つきで扱い、皮を向く。皮の剥き方もエミヤが「ほぅ」と感心するほどの手際の良さ。だが──
「……なん、だと」
エミヤが絶句する。
モードレッドはジャガイモの芽を取らず、そのまま半分ほどに切って終わりにしたのだ。ジャガイモの芽は毒。ましてやサーヴァントが育てた野菜のもの。それの結果を知らない生け贄達ではない。
「ん”ん”んんーー!!」
「待ってろって。すぐ食わせてやるからよ」
「ほら。もう1品完成したわよ」
ゴトッ。
カーミラが既に1品仕上げた。ここまで早い料理など何があるだろうかと場の観客が考えているとモニターに映し出されたそれを見て波が立つ。
──鉱石だ。
そう、それは紛れもない鉱石。しかもゴーレムからドロップされる八連双晶他ならない。
「食材を強化素材に……?」
「は?何言ってるのかしら?強化素材な訳無いでしょ?ハンバーグよ」
「「「「ハンバーグ!!??」」」」
肉の面影どころか料理されたという事実すら置き忘れた物だが、カーミラの1品目はハンバーグ(自己申請)として完成している。故に、カーミラは次の料理に取り掛かりはじめた。
「困りました……私、料理はそんなに得意では……」
と、本人は言うがバレンタインでは眼鏡の形をしたチョコを見事に作ってみせたブリュンヒルデ。包丁を持つととてつもなく似合う(意味深)彼女なら或いは……。そう思っていた生け贄達はブリュンヒルデの取り出した食材を見て目を見開いた。
──目玉だ。
いや、正確にはゲイザーの類いだろうエネミーだ。
さぞかし新鮮なのだろう、触手が元気に抵抗している。決して食われてたまるものかと、ブリュンヒルデを攻撃するが、所詮はアーチャークラスのエネミー。ランサーであるブリュンヒルデには大したダメージも与えられず呆気なく真っ二つに切り分けられた。
眼球の内部構造は基本的には人等と同じだ。故に、眼球の内部に詰まっていた硝子体と呼ばれる透明なゲル状物質がドロッとキッチンの床まで流れ落ちる。
「ぅぇっ」
「あぁっ……困りました。勿体無いです……」
言い忘れていたが、彼女が作ろうとしているのはカレーライスだ。困ったさんのカレーライスとはこれいかに。
「さぁて、拙者も」
黒髭は慣れた手つきで肉、野菜を切っていく。かなり細切れになったそれを一旦端に集め、卵を出したり米を出したりとテキパキ動く。
「あまり見てても面白くないので次を見ましょう!」
「え、ちょ、それひ「見ててねダーリン!」
「あーうん。頑張れ」
アルテミスが自信満々に取り出したのはソウルイーターの首。脳天に深々と刺さった矢がトドメだったのだろう。因みにその矢はアルテミスのではなくアタランテのだったりする。
「因みにお前何作ろうとしてんの?」
「たこ焼き」
「これのどこにたこの要素が!!??」
「よいしょー」
ドスッとソウルイーターの頭が切り分けられていく。
初心者以下の実力と知識なのにオリジナリティを出して異臭が漂う。
「……」
そして食材を前に微動だにしないランスロット。悲しいことに、周りの面子がある意味強すぎて誰も彼を見ていない。
「「「んんんんんん!!」」」
◇
そして遂に1時間後。審査員──もとい生け贄の前に各々の料理が並べられた。
1品目はカーミラの
「──」
「これは……うん」
「オタクさ……料理の腕に関しちゃアレからちっとも変わってないのな……いや。ある意味成長したのか……」
「ジキルテメェェェェェェェ!!」
「さぁ!実食タイムですぞ!」
高筋力値サーヴァント達が生け贄の頭を押さえて無理矢理口に料理?を押し込む。
「ホワァァァァ!!」
「うおおおおお!!」
◇
続いてモードレッドの肉じゃが。
見た目は普通の肉じゃがだが……?
「あばばばばばば!!」
「ヴァヴァヴァヴァ!」
◇
3番目は黒髭。
料理はオムライスだ。見た目も普通。そして味も普通。
これはシェイクスピアとしては何とも面白くなかったが、生け贄達が歓喜していた。
「うめぇえええ!!」
「ケチャップなど要らぬ!!」
「悪いねハイド!」
◇
4番目はブリュンヒルデ。
料理はカレーライス。困ったさんのカレーライス。大切なことなので2回言った。
ネバネバで糸をひく。具材がグロテスク。何故か紫色。
「貴方はシグルドじゃない……けどシグルド。ほら、食べて」
「すまない!オレはシグルドじゃない!だから許してくれすまない!」
◇
5番目はアルテミス。
料理はたこ焼きの筈だった。
「……おい。んだよこれ……」
「光ってんぞ」
「奇蹟ですか?」
「要らぬ!!」
「動くぞ!?」
「先ずはダーリンに味わって貰うわね。はいダーリン」
「ぃやめろおおおおお!!」
まだカーミラの
それが今オリオンの口へ押し込まれる。小さな口一杯に大きすぎる物体X。オリオンは咀嚼どころか瘴気が食堂を通ってきた段階で全てを噴き出した。
目や鼻、耳……穴という穴全てから全てをだ。
「え!?ダーリン!?どうしたの急に!」
「やめろって本人が言ってたでしょお!?」
「えぇー……まぁ取り敢えず皆も食べてよ」
「やめろおおおおお!!」
「どーぞ!」
「うおおおおあああああ!!」
◇
最後はランスロットだ。しかし、皆その料理が何なのかなんてどうでも良かった。ただ終わらせたい。その一心で息をしている。
「……」スッ
ゆっくりと差し出される皿。そこにはパスタがあった。
「……ラン……スロ……ト」
パスタがフォークに絡まり、一口で食べやすいサイズになって虫の息となったアンリマユの口に優しく入れられる。
「──!!!んまああああああああい!!」
「Arrrrrrrrrrrrrrrrthurrrrrrrrrrrrrrrrrrrr!!!!!」
「素晴らしいですランスロット!ここまで繊細な料理を作れるとは!見直しました!」モグモグ
「それについては私の方からも言わせてもらいたい。彼は宝具により、自身が武器と認識したものは宝具化、それを使用することが可能となる。それの1つの可能性として、セイバー。君に対する武器として料理を宝具とさせて貰った。結果は見ての通りだ。今では彼にとってキッチン用品は全て武器だ。無論、セイバーの胃袋特効のな」
「流石ですランスロット!」
「だがどうにもセイバーの方のランスロット卿ではそれは出来なかった。理性が邪魔をしているとでも言うのだろうか……」
「
「ぐっほぉあ!2重に刺さる息子からの特効!!だが良い」
「何いってるんですか?お城ぶつけますよ?」
「ランスロット、お代わりです」
「Arrrrrrrrrrrrrrrrthurrrrrrrrrrrrrrrrrrrr!!!!」スッ
歓喜するランスロット(狂)が滑らかな動きでサーブ。次の皿には見事な寿司が乗っていた。
他の生け贄も涙を流してランスロットの料理を食べ、皆同様に光の粒子を放っている。
どうやら数々の拷問の末、遂に霊基が限界を迎えたようだ。トドメは当然、ランスロットのあまりに優しすぎた味だった。
「わりぃマスター……先に逝ってるぜ……」
「すまない……オレは……」
「お代わりです!」
「Arrrrrrrthurrrrrrrrrr!!」スッ
勝者など居ない。何故なら審査員が審査をこなせないまま事切れてしまったからだ。
こうしてクッキングバトルは幕を閉じた。
◇
「暇!」
「止めてくれたまえ。君達は暇でも私達はぐだ男君のサポートで大変なんだ。それとも代わりにやってくれるのかな?」
「面倒そうだから止めておこう。それより何か無いのか?こう、おもいっきり騒いでも大丈夫な施設とか」
「ノッブさん。今はそれどころでは……」
ぐだ男が新宿出張をして2日目。管制室には暇をもて余したノッブがレオナルドに何か無いかとちょっかいを出している。
マシュもレオナルドもロマニも、今はそれどころではなかった。
『乗れぐだ男!』
『格好いいな!』
『ちょ、ワタシを置いていくのかね!?』
『生憎貴様が乗れるマシンではない。走れ』
『鬼かな!?』
「なんじゃアイツ。偉く格好ええバイクに乗っておるではないか」
『ワンワン!』
アルトリアのバイクに跨がっていたぐだ男がその鳴き声にビックリしてバイクから転げ落ちる。そしてそのまま敵に攻撃される。
『うわわわわ!いってぇ!』
『ワンワン!』
『このままでは画面にモザイクがかかってしまうよ!それでも良いのかネ!?』
『馬鹿か!それを私が許すと思うか!?』
「先輩ーー!!」
「良く考えたらぐだ男のやつ、敵に思いっきり攻撃されておるのに痛いで済むのか。頑丈じゃな」
筋肉が足りなかったかと呻くぐだ男はムシャムシャと大きな犬に咀嚼されているが、ノッブはそのくらいじゃ死なんだろうと管制室を後にする。
「んー……わしもそろそろ水着とか出してみようかの。それにしても暇!」
「あ、織田じゃない。何してるのこんなところで」
「なんじゃ。二刀流(意味深)ではないか」
「何か物凄く変な呼ばれかたされた気がするけど……」
「気のせい。で、わしが何をしていたか?暇してるに決まっておるじゃろ。何か無いか?」
武蔵とノッブ。時代こそ違えど日本英霊の彼女達は意外にもよくコミュニケーションをとる。特に沖田なんかは武蔵と小次郎に剣を教わろうとしたりと積極的に関わっていた。
実際、最近は小次郎の燕返しの原理を完全に理解して絶句したそうだ。お互い対人魔剣なのに今更か。
「これからお花見するんだけど来る?」
「いくらなんでも時期も違うじゃろ。何かこう、カジノみたいのとか」
「かじの?良く分からないけど、お花見は来ないのね?」
「うーん……」
お花見に行けば確実に暇を潰すことが出来る。しかし、ノッブが求めているのはそんな雅なものではなく、もっと騒げるのがしたいわけで──
「わしは良いかなー。テキトーにゲーセンでも行っておる」
「げーせん?ま良いわ。途中参加でも大丈夫だからね」
武蔵と別れ、ゲムセンターへと向かうノッブ。
ゲムセンターはレトロから未来のような物まで全てが揃っている。そんなけたたましい中、ノッブは1つのマシンにくぎ付けになった。
画面の上から下に流れていくバー。それに合わせて筐体に繋がったギターの弦を弾いて、対応するレールのバーが消える。タイミングによっては「excellent」の文字が。
「これは面白そうな──」
ノッブがギターを手に持つ。
しっくり来ていた。そう、あまりにもしっくり来ていたのだ。そして形容しがたい衝動に駆られ、ノッブはギターをロックのように激しく弾く。
「これは──ロックじゃな!んー……ノブナガ・ザ・ロックかのぉ!」
魔王がロックに目覚めた時、新たなイベントが──始まる。
先日ノッブの水着が出るとか聞いたので何となくノッブのお話をプラス。
そしてアルトリア・オルタの水着ですが……アーチャーにしか見えないんですけど。まさかここでキャスターにして7騎揃えるつもりじゃ──