Fate/Grand Order 「マシュ。聖杯ってよく拾うけど全部願望器として機能してるの?」「勿論ですよ先輩」「じゃあソロンモさんを永み─」「先輩!」   作:第2類医薬品

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ペースが遅くなってきました……何とか暇を見つけて書いてはいるんですが、イベントも忙しくて中々……

あぁ、そうそう。今回の水着ガチャで諭吉2体をリリースしてサモさん狙ってみましたが駄目でした……。代わりにワンワンの宝具が2になりました。ワーイ

え?まだまだ時間はある?いやいや……これからはもし次の新しい水着サーヴァントが出たときのために取っておきます。
水着武蔵ちゃんとか出ないかなぁ……。いっそドレイク船長の水着をですね……。




Order.29 神話降臨

 

 

 

 

 

「我の願いは円満夫婦ライフ……マスターは生憎我の好みではなかったし、そも男ではなかった。同じく伴侶に餓える売れ残りのケーキよ。しかし、聖なる杯であれば我の願いも叶えることは容易かろう。その為に我は弱き術師ではなく、敢えて槍兵で現界した」

 

ランサーのサーヴァントはそう言って薙刀の石突きで足元の小石を砕く。

一方、傷を負いながらもサブマシンガンを構えるアーチャーは鉄塔からそのランサーを見下ろしている。ランサーはその状態にムッと眉根を寄せるも、すぐに表情を戻して再び声を張った。

 

「我は強いぞアーチャー!何しろ愛に飢えているからな!」

 

「……」

 

「つれない男よな。だが、それもこれまで」

 

ランサーが「よっこら」とおじさんじみた動作でしゃがんだその時、丁度その真上を黒い影が飛び越えていった。

 

「ほら来たぞ。そなたが狙っていた獲物が」

 

「ぬぉ!?サーヴァントが増えているぞぐだ男!ええぃ、どっちが相手だ!?」

 

「ランサーは俺がやる!ゲーティアは補助だ!」

 

「任された!」

 

飛び越えた黒い影から白い影が鉄塔の天辺目掛けて飛び出し、着地した黒い影──バイクからは槍を持った男とその使い魔らしきものがランサーへ相対する。

 

「……ランサーだな?」

 

「如何にも。そなたも槍兵のようだが……その得物、呪いを感じるぞ。もしや同種か?」

 

「?」

 

「そう言うことか。成る程な。ランサー、お前は頭にロウソク立てなくて良いのか?」

 

「?ゲーティア何言ってんだ?」

 

「馬鹿!誰があんなダサイ格好するのよ!頭にロウソクなんて付けてたら目立つしロウが髪の毛痛めるでしょ!」

 

「??」

 

「はっはーん。まぁ、ランサー適性なのは釘打ちって位か?どっちかと言うとキャスターっぽいけどな」

 

「???」

 

取り残された男、ぐだ男はゲーティアと突然口調のみならず纏う雰囲気までもが変化したランサーを交互に見て頭に疑問符を浮かべるばかり。

ゲーティアはなまじ長いこと人類史に介入してきた為、知識が非常に豊富だ。それ故に、僅かなサーヴァントの言動で真名を看破することが可能なのだが……勝手に独りで看破して独りで納得して独りで進めていこうとするためこうしてぐだ男が置いていかれる。

ティアマトも全ての母なだけあって地球外生命体以外であればノータイムで口に出来る。ただし、ちゃんと喋れればだが。

 

「ぱぱ。あんさーけーき!」

 

「ランサーがケーキ?どゆこと?」

 

「そこのちんちくりんは黙ってなさい!」

 

「まぁ、そう息を荒げるなよランサー。いや、五月姫」

 

「!」

 

「分かるか?」

 

「俺だって知ってるぞゲーティア。五月姫……平将門の遺児。復讐に走ったそれの又の名を──滝夜叉姫」

 

滝夜叉姫。あまり触れられない人物だが、丑の刻参りで有名な妖術使いだ。

 

「だから呪いに気付いたと……それにしても口調が」

 

「五月蝿い!マスター、手伝って」

 

滝夜叉姫が呼び、妖術で見えなくしていたのか虚空より女性のマスターが現れる。

 

「さぁマスター、コイツを倒すわよ。後少し勝ち続ければ私も貴女も人生の勝ち組になれる」

 

「え、えぇ!そうよ!私を馬鹿にしてきた皆に目にもの見せてやるわ!」

 

「……多分、聖杯もゲンナリするような願いなんだろうな……」

 

「言ってやるなボス。婚期を逃すとああなっちまうのは良くある」

 

「「婚期逃した言うな!」」

 

 

「ふむ。下は始まったか。で、アーチャー貴様は手負いか。悪いが、余も帰るべき所がある故な。全力で行かせてもらうぞ」

 

「……ッ」

 

ネロはアーチャーが手負いであっても手を緩めない。

暫くカルデアでの生活が長い為か、正々堂々とした戦いが周りに溢れていてついその意識をしてしまう。しかし、本来の聖杯戦争となれば正々堂々などあったものではない。それを貫こうとするサーヴァントも居るだろうが、基本的に皆生死がかかっている。

今回もそれと同様、目前のアーチャーのように暗殺もあればそんな悠長なことは出来ない。

 

「マスター!令呪で私を喚べ!」

 

『大丈夫だ!今下に居る!』

 

「よし。ならば──」

 

「させぬ!」

 

ネロが果敢に攻め入る。

スナイパーライフルとサブマシンガンしか無いアーチャーではネロの攻撃に反撃できず、ただ避けているので精一杯。だが、ネロは気付いていた。既にアーチャーが宝具を発動しているのを。

鉄塔の一部から氷がそれらを包んでいき、冷気が下へと流れて行く。ネロの手足も刺すような寒さに戸惑いを隠しきれない。対してアーチャーは白いギリースーツの端から白くなってきた背景に溶けるように輪郭が薄れていく。

 

「寒っ!何だ!?」

 

「不味いぞ!宝具だ!」

 

下で騒ぐぐだ男達と合流しなければ。そうネロが思った瞬間、アーチャーから押し寄せた吹雪によって鉄塔なら投げ出された。

氷の冷たさが肌を攻撃し、視界も悪い中、ネロは何とか体勢を立て直してぐだ男の横に着地する。

 

「ネロ!」

 

「気を付けろ!宝具だ!」

 

「やっちまえアーチャー!」

 

ブワッ!

鉄塔の上から吹雪が押し寄せてきて地上もあっという間に凍り付いた。辺りがどんどん白くなっていき、遂には寒さで震えるレベルまで気温が下がる。

 

「──そうか!これで分かったぞ!あれはやっぱりシモ・ヘイヘか!」

 

「今更だろ!この宝具は固有結界とは別の物だ!だが固有結界の一種だ!」

 

「でもシモ・ヘイヘは魔術師じゃないでしょ?」

 

途中からバイクの影に一緒に隠れ始めた滝夜叉姫とそのマスターがゲーティアに問い掛けてくる。

切り替えの早さにどうこう言うことも出来ず、ゲーティアはそのまま続ける。

 

「奴が魔術師じゃなくても、この丘で殺された奴等の怨嗟が呪いとなって固有結界モドキとして成立している!簡単に言えば自身に対する対人宝具!殺された奴等の記憶だ!使えば奴も呪いを受ける!」

 

「だから周りから呪いの気配が……でどうするのあれ」

 

「他人事のようにぃ……!」

 

「落ち着けって。兎に角、あれがシモ・ヘイヘで証明されたならこれは“あの丘”な訳だ。てことは不味いぞ」

 

「何がだ?」

 

「少しでも気を抜いたら──蜂の巣か眉間に風穴があく」

 

 

「と言う訳だから、良い加減離してもらえるかな?」

 

「マーリン。貴方がどう歩いていくのかは分かりませんが、解決法を持っているなら迅速に提示することをお勧めします。でないと他の私が何をするか」

 

「分かった分かった。誤魔化してた事は謝るよ。だからほどいてもらえるかな?」

 

「よし、ジャック。このキャスターを解体してしまえ」

 

「解体して良いの?」

 

「止めてもらえるかな?」

 

「まーりん、しゃべらないと……みんな、おこるよ」

 

「早くゲロしちまえよ花の魔術師さんよ。何なら俺のルーンで吐かしても構わねぇぜ。……アンタが喋ってくれないと俺達だって危ねぇ……」

 

「しょうがないなぁ……じゃあ話すとしよう。その前にほどいてくれるかな?」

 

「任せな」

 

花の魔術師とうたわれ、あのケイオスタイドも無害な花へと変えて見せたあのマーリンが見るも情けない、ロープでぐるぐる巻きの状態で逆さ吊りになっている。

その隣では白目を剥いてピクリとも動かない弓のギルガメッシュ。更にその傍らには宝物庫から引きずり出されたのであろう、様々な宝具が散らばっている。

 

「それで、解決法は?」

 

「聖杯で行くのもありだけど、それをすると後始末が中々大変だからね。ボクが歩いていこう。あぁ、連れは要らないよ」

 

「待ちなさいマーリン。貴方は確かに優れたキャスターです。ですが貴方の言うとおり“あちらの世界”で聖杯戦争が行われているのなら、他にも連れていくべきではないのですか?」

 

「分かっているけど、ボクはただ歩いていく訳じゃないよ?」

 

「それを聖杯で何とかするんです」

 

ランサーのアルトリアがレオナルドから受け取(うば)った聖杯を掲げる。

先の採集決戦にて神殿への召喚へ使われた聖杯はその機能を殆ど失っている。時間が経てば力を取り戻すようだが、そうすぐには使えないと言う。だが1つだけ、使われることの無かった聖杯があった。以前黒髭が拾った謎の聖杯だ。

採集決戦時に何故かそれだけが魔力を出すのを渋って結局保管庫にブチ込まれて居たのだが……。

 

「あー、その聖杯か……まぁ、それなら使えるかもね。でも良いのかい?」

 

「何がですか?もしや偽物と言うことですか?」

 

「それは本当の願望器だよ。そう、皆の願望器さ」

 

意味深に繰り返すマーリンに首をかしげて居ると後ろでアポクリを鑑賞していたアストルフォが手を挙げて発言する。

 

「はいはーい!要するにそれってボク達の願望の塊な訳でしょ?」

 

「そう言うことだね。ボク達サーヴァントはこのカルデアで100騎を越える。中には神まで居るじゃないか。それにカルデアには聖杯が幾つもある。となると図らずとも特殊な願望器が生まれてしまうわけだ。皆の大小様々な願望と聖杯からほんの少しだけ滲み出る魔力とかでね」

 

「ではこの聖杯は私達が生み出したと……?」

 

「心当たりが無いわけでも無いけど、それにしたって極端な話だね」

 

「ビリーの言うとおりだ。極端過ぎだろ」

 

「分かってないねぇ。例えばほら、カーミラ君とかさ」

 

「何かしら?」

 

「アサシンなのに何時まで経ってもキャスターじみたモーションを何とかしてほしいとか、アタラナイ君m\アタランテだ!!/「ごめんごめん。彼女もアニメが始まったのにモーションままとか、一杯あるだろう?」

 

(((あぁ……そう言う……)))

 

誰もが納得する。

悲しいことに、どんな英雄や神であっても少なからずああしたい、こうしたいと願望を抱えている。それが長いこと積み重なった結果の産物がこの聖杯。カルデア聖杯くんなのだ。

 

「じゃあ誰が行くか決めてくれるかな?ボクは少しばかり用意してくるから」

 

マーリンがそう言った途端、部屋のあちこちから積極性のあるサーヴァントが飛び出して武器や拳をぶつけ合う。

 

「やっぱりここでも戦いが始まってしまうんですね……」

 

「仕方ないさマシュ。でもそれだけ皆が彼を心配しているって事じゃないかな」

 

「そうですね。皆さんあんなに一生懸命になって」

 

「ふっ!!」

 

X・Xオルタ「「カリバーー!!」」

 

旦那様(ますたぁ)にはわたくしが!!」

 

「いえこの私が」

 

「愛する我が子に駆けつけずして母ではありません!」

 

「ヤベェ!矢避けだ!」

 

クー・フーリンs「「「応ッ!!」」」

 

「これは面白くなってましたな!しかし被害を受けるのは御免こうむりたい!」

 

「同感だ。とっとと部屋に戻って原稿を進めるとするか」

 

「解体♪解体♪」

 

「こんなのは良くないと思うわ」

 

「同感です。論理的に解決するべきです」

 

「……一生懸命……」

 

かくして今日もカルデアの修復班がセイヴァーが如く悟った顔で破損したところを無心で直していくのであった。

 

 

「シモ・ヘイヘの有名な話の中で、300m以内なら確実に当ててみせたってのがある。それにこれがあの丘の再現なら現代のレオニダスだ……こう言う時レオニダスなら何て言うだろう……」

 

『良いですかマスター。こう言う寒い所でも筋肉を鍛えていれば寒さは凌げるのです!ましてや敵はスナイパー。お互い持久戦になることは間違いありません。尤も、これも筋肉を鍛えていれば何とかなります。鍛えた脚力で弾丸を掻い潜り、敵の懐に入り込んで一気に攻め落とす!これこそが!計算し尽くされた戦略!これこそが!スパルタだぁぁぁあああ!!』

 

「──と、なる訳か。駄目だ」

 

「そもレオニダスの名前が始めから出た時点で駄目だろ」

 

「言うなゲーティア。ネロ、宝具いけそう?」

 

「出来るが、アーチャーを領域内におさめられるか分からぬ。無駄打ちと言うことになりかねないな」

 

「確かに……」

 

アーチャー、シモ・ヘイヘの宝具が発動してから未だに攻撃は来ていない。バイクの影だから狙えないのか、それとも他の理由なのか様子も見られない。

もしもここで飛び出したら恐らくその瞬間にこの雪原に真紅の華を咲かせることになる。

何とか出来ないかと唸っていると──

 

「この宝具は呪いなんでしょ?なら、私にも一家言あるから何とかなるかも」

 

「大丈夫なの?」

 

「呪いの耐性はあるし、ましてや相手を怨んだりするタイプの呪いなら私の宝具で干渉できるわ。もしそれで駄目ならもう1つ……」

 

「成る程……じゃあ任せる。俺達はそれの補助だ」

 

「任されたわ。……貴船明神の荒神よ。我に力を……我に呪詛を……」

 

滝夜叉姫が宝具発動のものか、呪いのものかの詠唱を始めた途端、バイクのガソリンタンクに弾丸が弾かれた。

バイクも宝具だからそうそう壊れることは無いけど……。

 

「ごめん!耐えてくれカワザキ!」

 

2秒と経たず再び弾丸が車体に火花を散らす。

余りにも静かな状態だと言うのに、射撃音が一切しない。リロード音もだ。やはり雪が音を吸収しているのか……厄介な!

 

「くっ……中々ドえらい呪いの集合体ねこれ……暫くかかるかも」

 

「──!シモ・ヘイヘが移動してるぞ!」

 

来るだろうとは思っていたが……シモ・ヘイヘが雪原の移動を開始したのがバイクの火花の散る位置で分かった。

バイクも自分で狙撃方向を予測して盾になるように振る舞うが、やや間に合っていない。後ろに滝夜叉姫とそのマスターが作業中なのも痛い。

 

「ぐだ男!俺達がまたお前を補助するから奴と撃ち合え(・・・・)!」

 

「ごめん聞き間違いかな?」

 

「間違いじゃない!ガンドでやりあえって言ってるんだ!」

 

「そんな無茶なぁ!」

 

「そうよ。どうやってガンドで……」

 

「ぱぱやって!どろあそび(ケイオスタイド)するぉ!」

 

「それは勘弁!」

 

さっきのように狙撃しあえと言うのがちんちくりん共の主張。確かに、こちらに遠距離攻撃手段が無い以上、俺のガンドでやりあうしか無いのだろうが……相手は狙撃の伝説が具現化したサーヴァント。少しでも頭を出せばその瞬間に眉間がえらい事になりかねないだろうか?

 

「防御はネロ公に任せて狙撃に集中すりゃいい!」

 

「む?余が防御か?ぬぅ……自信は無いがやってみせるぞ!」

 

「本人自信無いじゃないですかヤダー!」

 

「黙っててよ!呪われたい!?」

 

「あ……すみません……くっそぉッ、こうなったら自棄だ。ゲーティア頼む!」

 

ゲーティアとティアマトからの魔術を受けながら自分もスキルを使っていく。

いつもの魔術礼装カルデアなら特別なもので、スキルを3つセットできるスロットタイプの礼装だから好きに出来たのだが今回は何の特別性もない魔術礼装。使えるのはお馴染みの応急手当や瞬間強化等だ。ガンド?あれはほら、もう俺の宝具だから。

 

「緊急回避を1回で位置が分かれば……」

 

「もしアイツに当てられたならそれだけでこちらは充分よ。この宝具も止められる」

 

「頼む。すぅー……はぁ……。ウオオオオオッ!!」

 

震える脚をひっぱたいてバイクから飛び出す。

飛び出したタイミングはシモ・ヘイヘがバイクに撃った瞬間。どれだけ離れているかは分からないが、そこまで遠い距離ではないこの空間内でサーヴァントの宝具ともなれば発射と着弾はほぼ同時の筈。ほら、ドレイク船長の銃だってちっちゃいのにおかしな火力だし。

兎に角、強化に強化を重ねた鷹の目もビックリの超視力で木々の間や雪原の僅かな動き、雪の流れを素早く確認していく。

 

「──っぶ!」

 

撃たれる。迫る弾丸の刻印が視えた。それを認識するとの身体が勝手に回避したのは同時。そして弾道の先に視えた。

雪原の一部に同化したシモ・ヘイヘが。そのライフルの先端の僅かな光の反射が!

 

パゥッ!

双貌より解き放たれる魔力。それは先のガンドよりもより速度を上げたもの。その分攻撃力は凄まじく減ったが、スタンは健在だ。

即ち、マッハ3の高確率スタンガンド弾がアーチャー、シモ・ヘイヘを貫く!

 

「ぬぐっ!?」

 

「当たった!!」

 

「よしきた!これで──どう!?」

 

貫くと言うのは嘘だが、余りにも研ぎ澄まされた視覚と聴覚によってシモ・ヘイヘが苦悶の声をあげたのが聞こえた。そして俺のガッツポーズを合図に滝夜叉姫が仕上げにかかった。

直ぐ様辺りの雪が解けていき、元の大地が姿を表す。そして次々と雪の下から人の死体が姿を現した。

 

「うぁ……これは確かに強力な呪いな訳ね。まさか死体からとは思わなかったわ」

 

──呪え──

 

──呪え──

 

──白き死神──

 

──白き死神──

 

──見よ。死神が倒れたぞ──

 

──見よ。死神が倒れたぞ──

 

──呪え、呪え、呪え、呪え呪え──

 

──呪え呪え呪え呪え呪え呪え呪え呪え呪え呪え呪え呪え呪え呪え呪え呪え呪え呪え呪え呪え呪え呪え呪え──

 

「な、何だよこれ……」

 

「宝具のリバウンドね。これはアーチャー自信に対する対人宝具。普通に使ってれば少しずつ呪われていくので済んだ筈なんだけど、私がそれを無理矢理かき混ぜたからそれの反動がアイツに来たのよ。悲しいものね。彼も自分を、自分の家族を、国を守るために戦ったのにこうして殺した敵から呪いの宝具にまでなって恨まれるって言うのは……」

 

──殺せ!殺すのだ!──

 

──死神を殺せ!死神を殺せ!──

 

辺りから響く怨みや怒りの籠った声が倒れるシモ・ヘイヘへと殺到する。

 

「シモ・ヘイヘも退場か……?」

 

「無理よ。呪いの強さこそあれども殺すまでには至れない。だって、それほど彼らとアーチャーの力の差があってこそ、宝具という枠組みを作ることになったんだから。コップの中の水が自分でコップを割れないみたいにね」

 

「成る程。その圧倒的戦力差での勝利した逸話がが昇華された宝具に、シモ・ヘイヘへの怨み辛みが形となった宝具……これらの複合宝具なのか」

 

「砕いて言えばね。で、どうするの?」

 

「倒す……しかない」

 

正直、サーヴァントを倒すのは慣れていない。シャドウならなれたものだけど、どうしてもサーヴァントに槍を突き刺したりするのは腰が退けるし、ましてや見知った顔のサーヴァントにそんな事はしたくない。

今回は全員見たことないサーヴァントだ。その分攻撃するのに抵抗は無いけど……。

 

「余がやるか?」

 

「いや、私がやるわよ。この呪いが宝具な以上、呪いに強い私がトドメを刺したほうが何かあっても対応できる。流れでだけど助けてもらったし、それくらいはやるわよ」

 

滝夜叉姫が地を蹴って飛び上がる。

その装いからは想像できない膂力によって地面が捲れ上がり、僅に残った雪を巻き上げる。

 

「アーチャー逃げるぞ!」

 

その瞬間、アーチャーの側にマスターが現れて令呪が刻まれた手の甲を構えた。

逃げるつもりか!

 

「させぬわ!小童!」

 

「令呪──」ゾブッ

 

「「「!!」」」

 

アーチャーが、そのマスターが、滝夜叉姫が、俺達がその音で動きを止めた。

パタタッとアーチャーのマスターの足元の雪が紅い斑点でじんわり解けていく。そのマスターは己の身に起きた自体を理解するのは叶わず、腹から飛び出していた手刀によって上半身と下半身が別々の場所に放られた。

その際に飛び散る血や臓物の破片を浴びながら、その残忍な所業を行った者が挨拶をしてきた。

 

「君がアーチャーか。見付けるのに苦労したよ」

 

「……くそッ……バーサ……カァ……!」

 

「君も頂きたかったのだが……どうにも呪いを受けたものはあまり食べたくなくてね。単純に死んでもらうことにしたよ」

 

ゴシャッ!

半ば消えかけていたシモ・ヘイヘの頭を踏みつけ、トドメを刺した。それによって完全に辺りの雪や死体が消滅する。

 

「ハンニバル・レクター……!」

 

「私の真名を知っているとは。偉く有名になってしまったものだ」

 

「は、ハンニバルってあの!?人喰い……!」

 

「滝夜叉姫、マスターを連れて逃げろ。さっきの恩はこれで返す」

 

「……勝てるの?あれ、どう見てもマトモじゃないわよ」

 

滝夜叉姫の言うとおり、ハンニバルはマトモな様子ではない。

全身の筋肉は前見たときより明らかに膨張しており、スーツはパッツパツ。更に瞳は真っ黒になっていて視線が分からない。表皮の至る所にも脈動する紅い血管のようなものが張り付いていて見るものを威圧する。

 

「あぁ、勘違いしないでもらいたい。私はアーチャーを殺しに来ただけだ」

 

「だったらアーチャーだけやればよかっただろう……何でマスターまで殺した!」

 

「……ィヒ、キヒヒ……はぁ、失礼。中々これ(・・)を保つのは難しくてね。で、何故かって?邪魔だからだ」

 

コイツ……ッ!!

 

「そなたは狂っておる!」

 

「バーサーカーたる者、常に余裕をもって狂うものだ。私が本当に狂っ(気を抜い)たらもっと多くの人を殺している」

 

「何のために……」

 

「私も願いを叶えたいのでね」

 

「貴様のような外道鬼畜に叶えられる願いなぞ有るわけ無かろう!貴様はここでくたばれ!」

 

滝夜叉姫が何かを呟きながら薙刀を振るう。

刀身に呪詛のような禍々しいオーラが纏われて回避したハンニバルの足元が大きく裂ける。

呪いは物理にも転用できるのか……。

 

「はっ!その程度で!」

 

「ぐぇっ!?」

 

「ランサー!」

 

「ネロ行くぞ!」

 

「うむ!」

 

「待て待て。私はここで殺り合うつもりはない。ちゃんとステージを用意させてもらった。ここから南に3km向かった遊園地の廃墟だ。あぁ、キャスターとそのマスターも一緒だ。遅れないようにな」

 

「ッ!!待て!」

 

そんな制止を聞くわけもなく、ハンニバルは瞬時に姿をくらました。

暫く警戒するが襲ってくる気配は無く、警戒を解いた。ハンニバルが最後に残した言葉……キャスターとそのマスターも一緒だと言うなら、事態は思った以上に終わりに近づいているのかもしれない。

残りのサーヴァントはキャスターとランサーとバーサーカー。そしてうちのネロだ。そのサーヴァントが、その廃墟の遊園地に集結する。一気にカタをつけるチャンスか?

 

「それにしてもだ。キャスターとそのマスターが連れていかれているなら急がないと」

 

「何で?知り合い?」

 

「命を助けてもらってる。そっちはどうする?」

 

「……マスターどうする?私はここで彼らと殺り合っても良いけど」

 

「ランサー。彼らと協力しましょう。残るサーヴァントが1ヶ所に集まったなら、そこで恐らく全ての決着がつくわ。バーサーカーを先に倒してから、残りで勝者を決めましょう」

 

「ありがとうございます。一時的とはいえ、協力するなら自己紹介をしておきます。俺は──」

 

 

「ゲホッ!ォゴッ……|

 

「さて、キャスター。もうじきランサーとセイバーがやって来る。マスターを救いたければ──」

 

「分かっておる……」

 

「よし。では行こう。彼らが来た」

 

 

廃墟の遊園地と言うのは中々不気味なものだ。

錆びた装置。朽ちた鉄柵。伸び放題の草木。意味不明な落書き。人生で廃墟と化した遊園地に立ち入るなんてそうそうないだろう。

 

「気を付けろ」

 

「気を付けてる」

 

「ぁてっ」

 

「あぁっ、大丈夫かティアマト?」

 

「ぅし。あいじょぶ!」

 

「よし。強い子だな」ナデナデ

 

「ぁい!」

 

すっかりティアマトの扱いにも慣れた。

いくら人類悪とは言え、こんな状態じゃ小さな子供と変わらない。ちゃんと接してやれば間違ったこともしたりしない。

駄目なものは駄目とちゃんと注意し、褒めるときはちゃんと褒めてあげる。これで健全に成長していくのだ。

 

「すっかり貴様の子のようだなぐだ男」

 

「はは。そう言われると変な感じだ」

 

「しっ。貴方達ほのぼのするのは良いけど、敵さんが来たわよ」

 

滝夜叉姫が薙刀を召喚して構えに入った。

それを見たネロも原初の火を呼び出して前に出、俺も滝夜叉姫のマスターも構える。

 

「ようこそ。ここなら人への被害が出なくて良いだろう?」

 

メリーゴーランドの馬をへし折って出てきたハンニバル。

さっきより時間はあまり経過していないが、体の見た目はまた禍々しさを増していた。まさかぬらりひょんを!?

 

「安心したまえ。キャスターは喰っていない。無論、キャスターが無事ならそのマスターもだ。キャスター出番だ」

 

「ぬら──キャスター!」

 

霊体化していたぬらりひょんがハンニバルの横に現れる。

その手には宝具であるらくらくふぉんが握られており、既に誰かへと電話を掛けている。それはつまり──

 

「逃げろ!」

 

「へ?──キャア!!」

 

ドスン!

突如目の前になにかが落ちてきて俺たちを吹き飛ばした。状況を即座に理解して頭を庇い、何とか地面を転がって己の身を守る。

伊達に幾つもの特異点を乗り越えてないさ。命の守り方なら体に染み付いている。

 

「皆大丈夫か!」

 

「無事!」

 

「大丈夫!」

 

「五体満足だ!コイツ(ビーストⅡ)もな!」

 

「余もここだ!しかし何が起きた!」

 

「お前さん達……すまんの……儂も辛いんじゃ」

 

アスファルトを球状に凹ませた何かの正体は砂埃でまだ見えない。しかし、ぬらりひょんの辛そうな声は確かに俺の耳に届いた。

マスターが人質に取られてしまったようだ。ぬらりひょんはマスターである新堂を孫のように可愛がっていた。例え自分が死ねばマスターが助かると言われても、絶対の無事が確認できないならそれを拒否するだろう。恐らくは既にその状態だ。

兎に角、新堂とぬらりひょんの無事は確認できた。後は……。

 

「コイツだな……」

 

段々と煙が晴れてくる。すると、意外にも凹みの中心には小柄な人影が。もっと重量のある奴が落ちてきたのかと思っていたけど……。

と、警戒を怠らずに居るとそれが口を開いた。

 

「我が名は日本武尊。此度、キャスターことぬらりひょんの要請にてセイバーとして参上した。──して、問おう。汝らが、我が敵であるか?」

 

「おいおいおいおい……ヤベェぞぐだ男。この明らか日本な国で超有名人が再優のセイバーで来たぞ……知名度補正って知ってるか……」

 

「知ってるよ……」

 

「不味いわよあれ……アイツならあのバーサーカーも瞬殺れるわよ絶対」

 

それは思う。何しろ、日本の伝説で最も有名な内の1つが日本武尊、ヤマトタケルだ。

皆大好き天叢雲剣こと草薙剣(3種の神器の1つ)を持つ日本神話のスーパースター。日本での知名度補正でいったら最上級レベルだろう。それが(当然ながら)セイバーで出てきた。敵として。

何てモン召喚してくれちゃってるんだぬらりひょんんんんんんんんんん!!!

 

「ほぅ……あれがニホンの伝説。凄まじいな」

 

「汝は……成る程。余程外道の者と見えるが、汝が敵か?」

 

「いや。私はキャスターの味方だ。そうだろう?」

 

「す、すみませぬ日本武尊様……儂は……」

 

「言うな。そう言うことなら仕方なし」

 

日本武尊が腰から剣を抜き、此方へと歩いてくる。

──何て化け物じみた魔力の圧!全盛期のゲーティアやティアマトには及ばずとも、今まで出会ったサーヴァントの中では間違いなく最強角!師匠といい勝負しそうだ……。

 

「許してくれ我等が未来の子達よ。そう言う宝具なのだ」

 

「くっ……やるぞ!ネロ!ランサー!」

 

「待て!」

 

「ゲーティア?どうしたいきなり」

 

「日本武尊。貴様はこの場の全てのサーヴァントを圧倒している。し過ぎている。だが、それはサーヴァントならだ」

 

「ゲーティアお前──」

 

「ハァァァァッアアアア!!」

 

ゲーティアが発光し、今度は光で視界が奪われる。

だがすぐに俺の全身は鳥肌を立てて状況を知らせてきた。日本武尊に劣らぬ圧倒的威圧感と魔力の圧力。これをよく知る俺だからこそ、すぐにゲーティアが何をしたのか分かっていた。

 

「──汝は何だ?」

 

「ふ……フフハハハハハ!答えよう、我が名はゲーティア!人理を焼却せんとした、魔神の王!魔神王ゲーティアである!」

 

「ゲーティア……?」

 

「ふむ。貴様等に分かりやすく言えば──ビーストⅠとでも言っておくか」

 

「人類悪……だと!?」

 

巨躯。以前のように魔神王となったゲーティアが俺を退かし、日本武尊の前に立ちはだかった。

そして──

 

「さぁ、構えるが良い日本武尊。戦いの準備は──充分か?」

 

刹那、拳と剣が衝突しただけの現象で大地が鳴動した。

 





日本武尊を突然出してみたくなったので登場。
確かそんなに強いような話は無かったような気がしましたが、このうっすらな記憶だけで日本武尊を日本最上級レベルサーヴァントとして召喚させました。
ステータスとかは特に考えてないので詳細は出すことは無いかもしれません。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


ランサー:五月姫


属性:混沌・善


時代:?


地域:日本


筋力:A
耐久:E
俊敏:A
魔力:A+
幸運:E
宝具:D


宝具:丑の刻参り C+

「此れ即ち呪詛なりて。此れ以てして我は将門公の怨念を晴らさんと欲した。しかして其は叶わず」

呪詛。対魔力等に呪術がフィルタリングされないのと同じく、これは確実に敵単体を呪う。
嘗て程の力は1度改心しているため無いが、それでも強力な呪いはサーヴァントであっても耐えきるのは難しいだろう。呪詛を受けて1日目には目も耳も口もきけず、2日目には足先から死んでゆき、3日目には心臓(霊核)が活動を停止する。
ただ、サーヴァントないしマスターによる打ち消しは可能な為、ディスペル系スキルや魔術等会得している相手との戦いには向かない。どちらかと言うとキャスター時に多用する宝具。



宝具:復讐の夜叉は相馬の城 A

「楽しいね蜘蛛丸!」

「えぇ。またこうして姫と共にあれるとはね」

小柄で純粋無垢な少年の姿で戦を愉しむ夜叉丸と冷静に状況を見極め、適切に相手を斬り伏せる成熟した女性の姿の蜘蛛丸。
この2人は言うまでもなく嘗ての反乱を起こした五月姫の手下、その2強。
システムはイスカンダルの宝具と似たもので、固有結界に閉じ込めた後、生前の手下全員がサーヴァントとして召喚される。中にはかの有名な「がしゃどくろ」も召喚されて腰が痛むと言いながらも頑張る。
日本版アラララララララララララァァァァイ!!


固有スキル
・妖術 A:自身の防御力をアップ&ダメージカット状態を付与(3ターン)。敵単体のクリティカル威力ダウン(3ターン)。

・カリスマ C+:味方全体の攻撃力アップ(3ターン)。

・結婚への焦り EX:そのターン自分にスタン。1ターン後、攻撃力・宝具威力アップ(3ターン)&アタックプラス(3ターン)&自身にターゲット集中(3ターン)


クラススキル
・対魔力 B



平将門その遺児。美しい女性の姿で現れ、強力な妖術(呪術とはまた似たようで異なるもの)と呪いを操り、呪いの藁人形で有名な丑の刻参りも行った伝説上の妖術使い。

又の名を──滝夜叉姫。


「と、格好良くプロフ纏めてみたんですけど、どうですか?」

「うーん、分かんないや!」

「もっと呪いに満ち満ちていても良いのではないでしょうか?」

「えー、嫌よ。だって昔改心しちゃったし、言うほど呪詛もキマッたこと無いし」

「怒れ!怒るんだ!姫!将門公が殺された時の事を思い出せ!」

「ぐっ……ぬぬぅ!」

「穏やかな心を持った姫が怒りのパワーによって目覚める。それがスーパーサv──」

「あ、流石にそれ以上は駄目よ?」

「ところで聖杯への願いは?」

「私にピッタリの旦那が欲しい!誰かの為に命張れたり、私を守ってくれたり?」

「そんな都合の良い男が居るか!」

「別の二次創作で主人公にでも召喚されてください」

「あえての逆ハーレムもアリよ?」


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アーチャー:シモ・ヘイヘ


属性:秩序・中庸


時代:1905年~2002年


地域:フィンランド


筋力:C
耐久:C
俊敏:B
魔力:F
幸運:B
宝具:A



宝具:死神は殺戮の丘に(キラーヒル) A


冬戦争中、コッラーの戦い。その丘陵地を巡る戦いでシモ・ヘイヘを含むフィンランド軍32人が4000人の赤軍を迎撃、拠点防衛に成功した。
彼は狙撃のみならずサブマシンガンでも殺害記録を伸ばし、敵兵は原形を留めていない姿で発見され、敵に恐怖を植え付けた。
辺り一面が白銀の丘に変わり、敵全体に強力な攻撃を得意のサブマシンガンで雨のように浴びせる。たちまち相手は蜂の巣にされるだろう。逃げることも可能だが、その時にはサブマシンガン以上の注意を払わないと嘗ての兵士のようになるだろう。
そして白い死神の代償も──


固有スキル
・白い死神 EX:無敵貫通状態を付与(1ターン)。3ターンクイックカード性能をアップ。3ターンクリティカル威力アップ。

・狙撃 A++:通常攻撃に高確率の即死効果を3ターン付与。


クラススキル
・単独行動 C

・気配遮断 A


元々は猟師、農民として働いていた。20歳の頃に民兵組織「白衛軍」に加入。射撃の大会にもたびたび参加し、彼の家にはその腕前によって得た多くのトロフィーが飾られていたそうだ。
亡くなったのが2002年であり、英霊の中でもかなり新参。世界的に有名であるため、知名度補正はどこでも期待できる。特に自国で召喚された時には相手にもよるが3日もあれば勝者が決定するだろう。
聖杯への願いはない。彼もまた必要とされたから召喚に応じ、「やれと言われたことを可能なかぎり実行するまでだ」と述べている。

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