Fate/Grand Order 「マシュ。聖杯ってよく拾うけど全部願望器として機能してるの?」「勿論ですよ先輩」「じゃあソロンモさんを永み─」「先輩!」   作:第2類医薬品

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まさかの禁忌、オリジナルサーヴァントを投下。
これにより辺りは火の海とかすぞ……ッ!(特に意味は無い

兎に角、思い付きで作ったオリジナルサーヴァントですが、真名は追々出していきます。ステータス等も真名判明と同時に出すので、それまで誰だろコイツみたいな感じで見ていただければと。
そこまでディープな人達ではないので、調べれば即出ると思います。

イベント頑張るぞい。重くてかなわんぞい。



Order.25 漂流

 

 

 

 

 

岩山が音を立てて崩れる。

 

「ハァッ!!」

 

『殴り甲斐のある!』

 

大地が割けて砂が舞う。

 

「まだ行けるだろぅ!プレマスト!」

 

『AAAAAAAAA!!』

 

『まだだ……もっと……もっと、もっと寄越せデンジャー!』

 

既に半ばから断ち斬られたチェーンソードをパージし、ゲーティアとティアマトが駆るビースト・デンジャーがぐだ男のプレマストに走り出す。

1歩1歩が必殺の破壊力をもつそれが駆けた後は捲れ上がった地面と蹴られ、舞った岩が弾丸のように大地を穿つ。対してプレマストは最大出力でカタールとは言えないレベルまで剣身が延びたそれで果敢に立ち回っていた。プレマストのそれもまた必殺の破壊力をもっており、ビースト・デンジャーに確実にダメージを与えていく。

両者の実力(ロボットコントロールスキル)はほぼ互角。ロボの性能ではプレマストが圧倒的に劣るが、それを感じさせない戦いがそこにあった。

 

「腕がぁ……!」

 

「私の腕を!今すぐ接続しますので待ってください!」

 

「駄目だ!」

 

「でも……!」

 

左腕の力感覚が失せてきたぐだ男だが決して代わろうとはしなかった。

左腕で足を引っ張るなら他の手足でそれを補う。右重心の動きが多くはなるが、機動が劣ることはない。そうやってぐだ男は(ロボットでという大前提はあるが)自分で倒そうとしていた。

 

『ふははははは!!良いぞ!やはり貴様は素晴らしい!私が今一度人の様に楽しいと思えるとは!』

 

「理解のある敵で助かるよ!」

 

『どこまで余裕を見せていられるか!』

 

ゲーティアの言った通り、ぐだ男は時折余裕を見せるような発言をすることがある。当然ながら今のぐだ男に余裕なんてものはどこにもないが、そうやって自分を騙すような真似をして精神的に余裕を得ていたのは確かであった。

 

「ちぃ!」

 

「えぇいもどかしいぞ!もっとこう、しゅぱっ!とどぉーん!とか出来ないのか!?」

 

「ちゃんと捕まってて下さいネロさん!」

 

嫁ネロがまるで犬が車の助手席の窓から頭を出しているような緩さで必死の形相のぐだ男を揺らす。マシュも補助席から振り落とされないように嫁ネロを制止するが、えらく興奮した様子の彼女に非常に手を焼いていた。

 

「このままじゃ……!」

 

『ぐだ男!リアクターの燃料が無くなってきたぞ!お主の貯金(QP)はどこだ!?』

 

「燃料──それだ!黒髭!俺の倉庫から全財産(QP)と聖晶石を持ってきて!」

 

『な!?良いん!?』

 

「背に腹は代えられない!急いでくれ!」

 

『り!!』

 

「あぁー!ぐだ男!余のスキルレベル上げる為のQPも使うというのか!?」

 

「頼むから大人しくしててよ!」

 

素材はあってもQPが足りない。いくら貯めても気付けば残り僅か……そんな状況はきっとどの時空のカルデアでも起こる必然だろう。だからこそ常に手元に7千万は残しておきたかったぐだ男だったが、このまま出し惜しんでやられてしまっては全くの無意味だ。

それに戦場では常に刹那の選択が生死へ直結する。幾つもの特異点を抜けてきたぐだ男も重々承知しているからこそ素早い決断と言えよう。

 

『ヴィンチ氏に頼んで直接転送したでござる!やっちゃえマスター!』

 

《リアクター出力向上。出力170%突破》

 

「装甲展開!排熱してリアクターを溶かすな!」

 

『むぅ!?』

 

カシュッと小気味の良い音で肩、胴体、頭部の装甲がスライドして展開する。展開した部分からは放熱フィンが姿を現し、周りに蜃気楼のような空気の揺らぎを作り出す。

そのギミックにやや驚いた様子のビースト・デンジャーだったが、すぐに攻撃を再開した。

 

『うぉぉ!』

 

「うぅっ!」

 

リアクターの出力は上がったが、プレマストの駆動系はその出力に対応するためにアジャスト途中。謂わばギアチェンジ中だ。そんな状況で無理に動いてはマニュアルトランスミッションよろしく止まってしまう可能性もある。

 

(南無三!)

 

それでもぐだ男はペダルを思いっ切り踏み込んだ。

 

 

「何!?」

 

ビースト・デンジャーの左ストレートがプレマストに当たる直前、ゲーティアは目を見開いた。

死に体のようだったプレマストが拳の寸前でバックステップ。直前までの状態は何だったのかと疑問せざるを得ないような軽やかな機動で拳を避けてビームカタールを再び展開していたのだ。

急いで腕を引き戻そうとしたが、ビースト・デンジャーはゲーティアとティアマトを右脳、左脳とした大きな肉体。普通の腕とは感覚が違う筈のそれを瞬時に引き戻すのは生物的・物理的に不可能だった。

 

『動けた!』

 

「曲げるぞティアマト!!」

 

「Aaaaaaaa!」

 

不可能であっても何もしないという選択肢はゲーティアに存在しない。以前は3000年もの時間を費やしたが、人理を焼却するという偉業を成した男だ。

 

(左ストレートはこのまま地面を抉ってプレマストがビームカタールで手を落としに来る。ではその地面ごとプレマストも殴れば良いだけの話だ!)

 

轟音。拳が地面を穿ったのだ。その瞬間、プレマストも動き出す。

 

『貰っ──』

 

「まだだぁぁ!!」

 

ストレートの勢いが生きている内に右足を踏み込む。そのまま腰から上半身を捻って横一文字に殴り払った。

 

『ぐぁぁぁああ!!』

 

「AAAAAAAAA!!」

 

「ブレストファイアァァァァァアアア!!」

 

半壊したリアクターが回転速度を上げ、前方を焼き払っう。プラズマキャノンの破壊力を更に上回る熱線攻撃。これこそがビースト・デンジャーの切り札ブレストファイヤー。ゲーティアの宝具 生誕の時きたれり。其は全てを修めるもの(アルス・アルマデル・サロニモス)程の威力は無いが、アルプス山脈の1つや2つは消せる威力はある。本来ならば。(・・・・・)

 

「やはりリアクターがやられている分威力は下がるか!」

 

「Aaa!?」(特別意訳:やった!?)

 

「馬鹿者!!それはフラグだ!」

 

「あ"ッ!?」

 

「その振り返り止めろ!」

 

『左腕貰う!』

 

センサーがプレマストを捉えてけたたましくアラートを鳴らす。そんな事は一々知らされるまでもないとアラートを鬱陶しがるゲーティアマトは左腕を落としに来たビームカタールを避けるために後ろに転倒。ぐだ男も良くやっていた、位置エネルギーを無理矢理運動エネルギーに変えて後ろに跳ねる回避方法だ。

ビースト・デンジャー程の巨体でそれをすれば付近に居る者への間接攻撃にもなりうる。

当然、プレマストのその攻撃範囲の中だが復活した斥力でことごとくそれらを回避していた。

 

「凄まじいな!それが貴様の全力かぐだ男!」

 

『ああ。コレが俺の全(財産)力だ。……それにしても、似てるよな。この状況』

 

「……成る程。確かにそうであったな」

 

ゲーティアとぐだ男。2人の脳裏に甦ってきたのはこの間の決戦時の事。互いに隻腕となった人王ゲーティアとぐだ男の正真正銘命を賭けた戦いだ。

 

『本当についこの間の事だというのに、えらく昔のように思える』

 

「私もだ。不思議なものだな」

 

『それも……これで終わりだ』

 

「──その通りだ。またも共通の見解を持てるとはな。嗚呼、私はこれを求めていたのか……来いぐだ男!!今度こそ私は貴様を倒す!」

 

プレマストが放熱フィンを赤熱させ、ビースト・デンジャーがリアクターの輝きを増す。

お互いに次で決めるつもりのチャージ。カルデアもただでは済まないような極大エネルギー同士の衝突。それが今起きようとしている。

 

『ゲーティアァァァァァアアアッッッ!!!』

 

「ぐだ男ォォォォォォオオオッッッ!!!」

 

あの時と全く同じ。通信越しではあるが、力を感じさせる咆哮がお互いの鼓膜を破れる寸前まで震えさせた。

プレマストの全エネルギーが乗った拳と同じく全エネルギーが乗ったビースト・デンジャーの巨拳。その2つが触れた瞬間、シミュレート空間が、カルデアが、世界が鳴動した。

 

 

「……」

 

「貴方、マスターでしょ?サーヴァントはどうしたのよ」

 

「……」

 

「それにその妙なちんちくりんは何よ」

 

「ちんちくりんとはご挨拶だな小娘」

 

「うわ。見た目のわりに良い声してんじゃないソイツ。トナカイマンとか?」

 

「誰がグランドトナカイマンじゃい!」

 

「そこまで言ってないわよ!」

 

「……」

 

どうなっているんだ。いや、そもそもその疑問は今更に過ぎるだろう。では何の疑問を把握するべきか。

頭を動かさず眼だけで隣を見やる。左にはちんちくりんの変な奴黄色。逆三角。右にもちんちくりんの変な水色。巻き角。

 

「ぱぱ。ぱぱ~」

 

「……」

 

右のは無垢な瞳で俺を“ぱぱ”と呼んでは短い手を目一杯広げて抱っこをせがんでくる。

 

「おぉい、ボスゥ。何とか言ってくれよ。何ならほら、俺のムチ使っても良いからさ」

 

「……」

 

片や左のはガチ大人のプレイ用の短いムチをどこからか取り出しては俺に使えとせがんでくる。

 

「……」

 

何だよこれえええええ!!え?訳分かんないんだけど!何!?このちんちくりん共何!?ゲーティアに至っては何中の人顕現しかけてるのさ!なんでさ!?

 

「……(だんま)りね。ま良いわ。念のため見張っておいてアサシン」

 

「了解した」

 

「……」

 

何がどうなってこうなのか整理しよう。確かそう、俺とゲーティアマトはカルデアで戦っていたんだ。

 

 

 

 

 

「ゲーティアァァァァァアアアッッッ!!!」

 

『ぐだ男ォォォォォォオオオッッッ!!!』

 

ドンッ!!と今までにない響きが全てを貫いた。プレマストの拳とビースト・デンジャーの拳。バチバチと稲妻が走っては宙に浮いた岩石を砕いて地面を焼く。

自分の声すら聞こえない状況の中、それは突然現れたんだ。

 

《──空──裂──んそ──退避をす──》

 

「───!!」

 

それは穴だ。ビースト2体分の宝具級エネルギーとあらゆる可能性が凝縮した聖晶石270個と7千万ものQP。その両者がぶつかれば、ただでさえ不安定気味だったシミュレート空間に別次元への穴を空けてしまうことは容易いことだった。

 

 

 

 

 

そしてその別次元こそがここ。2000年代以降の都市であろうそこで、気が付けば“拘束”されていた。

左のちんちくりん曰く、『未だ残滓程度でも残っていた時間神殿の空間片と俺の宝具リアクターが同期でもしたんだろう。あれだけ格好良く今度こそ私は貴様を倒す!とか言って倒せてないとか、恥ずかしぃ!あ──何だろう。死にたい』とか大分イッてた。

まぁ、要するに。俺の頭で纏めた結論としては……

①カルデアに空間穴を空けてしまった。

②時間神殿を介して別次元へ。

③この次元では聖杯戦争中。

④ゲーティアとティアマトがキャラ崩壊気味。

⑤帰りたい。

 

「……」

 

「……」

 

「……何者だい?」

 

「……分からない」

 

「ふむ」

 

まぁ、当然の反応だ。俺が喋った事にはやや驚いた様子だけど。

 

「名前は思い出せるのかい?」

 

「記憶喪失とかではなくて……」

 

「ほぅ」

 

「何が何だか……だって俺は──」

 

待て。ここでこの見たことのないサーヴァントに話しても良いのだろうか?

無闇にカルデアや人理の事を話しては両脇のちんちくりん共の正体がバレて俺はどうあがいても敵の立場になるんじゃないだろうか。

 

「──何でもない」

 

「……そうか」

 

「……」

 

またの沈黙。これではアサシンのサーヴァントもどうすれば良いか分からず困っている。俺だって困ってるからどうしようも出来ない。

 

「ぱぱ、だっこ」

 

「……」

 

「ぱぱ。だっこ」

 

「……」

 

「ぱぱ。だっこ!ん!」

 

「今は待ってぇ!」

 

巻き角ちんちくりんが袖を引っ張って早く抱っこしろと抗議してくる。

止めてくれぇ!

 

「お待たせ。で、何かしゃべった?」

 

「うむ。色々と隠したいことがあるようだ」

 

「おっけ。じゃあ尋問するわ」

 

帰って来た眼鏡の少女が後ろ手に隠していた爪剥がし機を邪悪な笑みでこちらに見せてきた。

 

「マジか!2人とも掴まれ!」

 

「ん!」

 

「掴まるってどこよ?あれか?アンタの突起にか?良いけど、ちゃんと掴まりやすくしてくれよ?」

 

「お前はどうなっちまったんだよぉ!!!」

 

兎に角、俺はアサシンとそのマスターである悪趣味な服装の眼鏡少女を相手にしながらちんちくりん共を気にかけてやらないといけない。

……無理だよ!このちんちくりん共全くもって戦えないんだよ!?それに手足の拘束魔術も解かないといけないし!

 

「逃げるのは無駄だから。逃げたかったら、そうね。そのちんちくりんを置いていきなさい。何て名前?」

 

「……オスギとユウコです」

 

「見た目のわりに随分日本人みたいな名前ね……」

 

「油断するな愛。どうやら、相手もやる気になったようだぞ」

 

手足を拘束していた魔術だが、どうやらそんなに強いものでもなかったらしい。四肢に力を込めて引きちぎれば呆気なくそれらは霧散した。

 

「──へぇ」

 

「待ってよ!戦うつもりはないんだ!だから……許してくれ!」

 

埒が明かない。だから俺は戦いはせずにここから逃げ出す事を選択した。両脇にちんちくりん共を抱え、詠唱なしで眼ドを撃つ。両の眼1発ずつでアサシンと悪趣味眼鏡をそれぞれスタンさせた。

これは決して殺傷性のある攻撃ではない。少しの間痺れてもらってその間にトンズラさせてもらうだけだ。

 

「ガンド!?何これっ!動けない!」

 

「眼からッ!?」

 

「ごめんなさぁぁぁい!」

 

2人を横切り、部屋から飛びだす。

どうやらこの家は一軒家みたいだ。俺はちんちくりん共を両の脇腹に抱えて目の前の階段を飛び降りる。

 

「~~!」

 

幸いにも着地が成功して体を一瞬硬直させるだけですんだ。

降りた先はすぐ玄関で、やはり日本だからか靴が揃えて置いてあったので自分のを履いて一目散にその家から逃げおおせる。

2階から何か喚いてる声が聞こえる限り、まだスタンが継続していると言うことだ。

 

「何なんだよぉ!」

 

「わーい。はやい」

 

「ちょ、ぅん。あふっ、そこっ!ぁあいぃ!」

 

変態じみてるオスギを強く締め付けて黙らせて、俺は人目のつかないところを目指してひたすら駆けた。

 

 

「あぁん!もう!最悪!アイツ一流の魔術師じゃない!」

 

「しかしそんな感じはしなかったが」

 

「私の拘束魔術を簡単に解除したのよ?あれ、ただ者じゃないって」

 

「そうなのか。それでどうする?俺は一応アサシンではあるが近接戦闘しか出来ないぞ」

 

「分かってるわよアサシン。念のためアイツには位置報せの魔術を付けといたわ。眼からガンドとか、無手で魔術引き千切るとか、あれほどの実力ならもう気付いてるでしょうけど、警戒するに越したことは無いわ」

 

「分かった」

 

 

「はぁ!はぁ!はぁ!」

 

「もっかい、もっかい」

 

「いやぁ、気持ちよかったぜボス」

 

ひたすら走り続けて5分。俺は人気の少ない森で息も絶え絶えだった。

ちんちくりん共の体重はかなり軽かったからここまで走れたけど……もう立てない。

 

「はぁ!はぁ!──はぁ、はぁ……」

 

左手首のブレスレットをつついてみる。いつもはこれでカルデアと通信を行ったりしているのだが、時計機能をスタートさせる位で通信は一切機能しない。

スマートフォンもひらいてみたが、圏外と表示されていて自分が使える電波が飛んでいないことが伺える。

 

「……はぁ、はぁ……参った……誰か居ないのかよぉ……」

 

あの時、裂け目に巻き込まれたのは俺とちんちくりん……ゲーティアとティマトだけではない筈。高確率でネロとマシュも引きずり込まれたと思うんだが、如何せんいくら魔力パスに神経を集中させても誰も見付からない。

あるとすれば何故か俺の魔力がこのちんちくりん共に流れていること。勝手にぃ……。

 

「まぁ餅つけよボス。俺達が居るじゃないか」

 

「いや、落ち着くのはお前だろ。餅ついてどうする……取り敢えず、今は味方ってことで良いのか?」

 

「味方?甘いぜ。俺達はフレンドだ!獣フレンズだ!」

 

「ふれんずー」

 

「──そ、そうか。まぁ、あれだ。突然『小癪ぅ』とか良いながら巨大化しないでよ……」

 

「まぁ、どのみち無理だからな。大人しくしてる」

 

ゲーティアは比較的話が成立する。しかしもう片っぽはどうだ?俺をぱぱと呼んでは幼児のような状態。あと抱くと角が痛い。

 

「しかし参ったな。このままじゃ俺意味消失しちゃうんじゃ……」

 

「それは大丈夫だ。お前の存在はこの世界でも確立されている。安心しろ」

 

「?どうい──」

 

「見付けたわよ。こんな森に誘い込む(・・・・)なんて、何のつもりかしら」

 

「!尾行られた!?」

 

もう聞きたくないと思っていた少女のやや高めな声。それが自分の上から降りてきた。

もう全身の筋肉に酸素が足りていないが、それでも体はちんちくりん共を抱え、立ち上がる膂力を絞り出した。

 

「……何故俺を狙う」

 

「さっきまではとっとと貴方のサーヴァントをおびき寄せて倒そうと思ったんだけど、気が変わった。貴方ほどの実力なら仲間(・・)として心強いわ。私とこの聖杯戦争、戦わない?」

 

「──え?いや、無理」

 

「──え?」

 

「え?勝手に仲間とか困るし、俺帰らないといけないし……」

 

こんな展開初めてだが、兎に角あまり関わらないようにしたい。

何しろここは別の次元だ。特異点でもないのに俺が変に干渉してここの聖杯戦争に影響を及ぼすのは避けたい。それに人のこと拘束しておいて急に仲間になれとか横暴すぎる。

 

「悪いけどもう俺に関わらないでくれ」

 

「……ムカつく。ムカつくムカつく!アサシン!」

 

「はぁ。済まないね。俺んとこのマスターは癇癪持ちで」

 

「いや、何だかこっちも申し訳ない……」

 

アサシンは謝りながらも1歩歩み出てきた。

……どうやらこのまま逃してはくれないみたいだ。

 

「俺の近接戦闘術だと少し状況が違うんだがな……」

 

「それはありがたいな!やっちまえボスゥ!」

 

「無茶言わないで!」

 

カルデアにいるアサシンならまだしも、全く見たことがない相手ではどうしようもない。

日本人でも無さそうだし、服装から大分現代のサーヴァントみたいだけど……。

 

「やるしかないか……!」

 

右尻の魔術刻印が唸りをあげ、俺の隣に物体を召喚する。

久々の登場、カワザキだ。召喚その物は可能みたいで、一緒にゲイボルクもついてきた。よっし!これで逃げられる!

 

「……って、何?その目……」

 

「いや、流石にサーヴァントを呼び出してくるとばかり思っていたんだが……まさかマスター自身が戦うとは」

 

「……頭来たぁ!!」

 

「──今だ!行け!」

 

「言われずとも!行くぞカワザキ!」

 

カワザキには意識がある。こいつだけで走ることも出来るのだ。そのカワザキが俺の声に答えるようにエンジンを唸らせ、雄々しく咆哮を上げる。

俺は即座にカワザキに跨がり、ゲイボルクを右手にちんちくりん共を肩に捕まらせてアサシンへと肉薄する。

 

「む!」

 

アサシンも立ち向かうべく拳を構えたが、俺の狙いは全くアサシンではない。その後ろで激おこのアサシンのマスターだ。

アサシンは俺の視線だけでそれを感じたのか、すぐに飛び退き、マスターを守るべく抱き抱え、地面へ転がり込む。

マーヴェラス!正しくそれを待っていた!

 

「カワザキ!」

 

カワザキが再び応える。

マスターへ向かっていたのを直角よろしく急転回し、埃を巻き上げながらタコメーターの針が振り切りそうになるまで回転数を上げた。

 

「逃げろ!どっか取り敢えず逃げるぞ!」

 

「ばいばーい」

 

俺の目的はハナから戦闘ではない。逃げて状況をしっかりと確認し、カルデアに戻るのだ。その為にはマスターを狙うと見せかけてすぐには反撃できなくなった所で、カワザキのフルスロットルで逃げ出すのがベストだ。

見事成功し、遠ざかっていくアサシンとそのマスターのわめき声を尻目にゲイボルクをカワザキの側面ホルダーにマウントさせる。

 

「はやーい」

 

「公通法は無視するべ?」

 

「どうせナンバーも無いしカワザキに任しておけば事故はないさ。それよりも先ずはネロかマシュを探そう」

 

「マシュは来ていないぞ。いや、来れなかったと言うべきか。彼女の魔術回路が沈黙しているのは知っているだろう?」

 

「……あぁ。やっぱりそうだったのか」

 

「ここに来れるのはあの状況ではネロだけだろう。今はネロを探せぐだ男」

 

「分かったけど……」

 

「安心しろ。俺はフレンズだ」

 

「フレンズ、ね」

 

兎に角今は藁にもすがる思いだ。ネロを探し、この聖杯戦争とは関わらないようにしつつ、カルデアに帰る手段を──

 

「──聖杯戦争……聖杯……」

 

まさかとは思うがこの状況はもしかして……。

 

「いや、止めるんだ俺。そんな事は無い筈だ」

 






先ずはアサシンが登場。

キーワードは「現代」「近接戦闘術」「日本人ではない」

もう答えが出そうですが……

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