Fate/Grand Order 「マシュ。聖杯ってよく拾うけど全部願望器として機能してるの?」「勿論ですよ先輩」「じゃあソロンモさんを永み─」「先輩!」   作:第2類医薬品

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───イベント走らないと!!!林檎林檎………




Order.24 スーパーカルデアロボット大戦GO Ⅲ

 

 

 

目が覚めると私の意識はここに居た。

暗くてやや冷たい場所だ……体が動かない。何かに固定されているのか?

 

「──aa……」

 

声が聞こえる。女の声か……?

 

「……誰だ」

 

声は出せる。

 

「Aaa、aaa」

 

「──どういう事だ……何故貴様がここに居る。ビーストⅡ(ティアマト)

 

私の隣には七つ目の特異点で屠られた筈のティアマト、ビーストⅡが居た。

コイツはコイツで面倒な相手だ。先ず言うことを聞かない。そこで待てと言っても少し目を離すと何処かへ行っているし静かにしろと言っても歌を歌い始める。近所迷惑だと何度他の住民(ビースト)に怒られたか。

 

「Aaaaa」

 

「あれだけ暴れておいて最後の最後に倒されるとは、貴様も人間をナメていたのか?」

 

「あ"?」

 

「………………私も似たようなものだ。皮肉にも、本当に最期に思い知らされた。簡単には死ねんとな」

 

ついさっきまでのように感じる我が神殿での戦いとその顛末。

悔しい。そんな感情が私の中から溢れてくる。

 

「Aaaaa!」

 

「何だ?光が──」

 

突然目の前が明るく光る。もしやこれが所謂サンズ・オブ・リバー(三途の川)か……。

 

 

「金時。貴方はまたそんな危ないことをしようとしているのですか?こんなに母を心配させて……」

 

「い、いや……オレは大丈夫だから放してくれよ瀬光の大将。コイツならライダーの時より安全だし、現に大将も乗って戦ってんだぜ?大将が大丈夫ならオレも大丈夫な筈じゃん……?」

 

「まぁ!またそんな事言って!」

 

「何をしているマスター!もっと前に出るんだ!当たらなければどうと言う事は無いんだ!」

 

「アーチャー。観戦も楽しいですが、私のお弁当はどこですか?」

 

「私のボストンバッグに青い手拭いで包まれた弁当がある。くそぅ!オレだって参加したかったなぁ!」

 

「アーチャー。私のもお願いします」

 

「ランサーのセイバーのはセイバーの下にあるものだ」

 

「見て見てジャック!皆楽しそう!私も参加したかったわ」

 

「ナーサリーのアレはロボットじゃないの?」

 

「ジャバウォックは駄目よ。アレは“強すぎて”つまらないわ」

 

「……君達。ここで観戦するのは良いんだけど、頼むからシミュレーターの邪魔だけはしないでくれるかな?」

 

カルデア管制室等で使われる戦闘シミュレーター……今回のはそれを更に大きく、高性能に改造された特殊なシミュレーターでロボット同士の戦いが繰り広げられている。

本来ならばリソースの関係で何十機が同時に戦えるような空間の作成は不可能。しかし、外界が回復してライフラインが完全に復活した今、禁欲状態から解放されて暴走したかの如く天才達がこれを成した。

最早今のカルデアの1日の消費電力は人理修復前の状態、1周間分は超えている。

 

「余も参加したかった……」

 

「ロボォォォォォ!!」

 

「ネロさん、貴女ロボなんて持ってました?」

 

「持ってない!だがすぐに作れるぞキャス狐。ロボも芸術だからな!」ドヤァ

 

「はぁ……。ところで、嫁ネロさんはどこに?珍しく見かけませんが」

 

「さっき()はぐだ男の所に行くと行ってたぞ」

 

「そう言えばランスロット卿が居ないようですが、何か知りませんか」

 

「彼なら戦いに行きました王よ。宝具を使えば余裕だそうで」

 

騎士は(ナイト)ッ!徒手にて(オブ)ッ!死せず(オーナー)ッッッッ!!』

 

『先輩!あのやたら茄子色の機体が気に入りません!すぐに排除しましょう!』

 

『こんのぉ、穀潰しがぁあ!!』

 

「……思ったのだが、これは本来マスターのトラウマを軽減させる為の催しだったのをどう間違えたらこうなるのかね?」

 

ふと、エミヤが興奮から覚めてそんな疑問を口にした。

そう。確かにこれは本来ならぐだ男を影ながら、本人に悟られることなく自然に支えるようにするにはどうするべきかと会議から外れたモノ。

もう英霊達のやりたい放題のようになっているこれは何の意味があるのだろうと疑問するのも当然だ。

 

「第一、一部のサーヴァントだけで事を進めるつもりがまさか既に全員に伝播していたとはねー。流石の私もカルデアの情報伝達率には驚いたよ。田舎のコミュニティか何かかな?」

 

「そうでなくても見ていて分からないものではない。最近は特異点なんて物がなくなって落ち着いたから良いけど、ぐだ男様は毎夜魘されている。私達サーヴァントは戦いを知ってる。幾度となく味わってきたから忘れているだろうけど、ぐだ男様は現代の生きてる人間。根本的に戦いへの関心が違う。ましてや殆ど死にかけるなんて」

 

「……ぐだ男君の部屋に忍び込んでるね?」

 

「お側に居たいだけですが何か?」

 

「静謐よ。あまりぐだ男殿が困るような事はしないようにな」

 

「兎に角!このままマスターを参加させておいて良いのか?」

 

「今のところぐだ男君の精神も肉体にも異常は見られない。だけどいつフラッシュバックを起こすか分からないからマシュが側に居るんだ。それにもう少ししたらぐだ男君には切り上げて健康診断に来てもらうから心配しなくても大丈夫だよ」

 

「そうか……しかし、嫌な予感がする。この感じは一体……」

 

1人、小さな声で呟いたエミヤの言葉は誰にも届いていなかった。

 

 

『ぬぉぉお!?』

 

『愚か者が!力はあっても頭が足りぬわ!ハァッ!』

 

ゴールデン・バビロンⅡの斧がグレンラセンの頭を切り落とす。

戦略的、物理的に頭が足りなくなったフェルグスは「たかがメインカメラがやられただけだ」と勢い衰えずゴールデン・バビロンⅡに立ち向かう。だが攻撃は確実に当たらなくなってただただ体力を消耗する一方。

ギルガメッシュ(術)は「手負いの獣こそ危険よ。最後まで確実に対処せねば弓の俺の二の舞だな」と冷静に、的確にダメージを与えながら堂々たる様で攻撃をかわす。

 

『ぬぅ。当たらなくなったな。目がやられると言うのはこうも辛いか』

 

『──隙を見せたな!抉り落とすわ!』

 

刹那的な機動でゴールデン・バビロンⅡがグレンラセンの腕を這うように避け、リアスカートにマウントされていたロボットサイズ版エアを抜く。ウォンウォンと互い違いに回転する剣身からエネルギーが迸り、その傍目から見ても分かる超威力の一撃を遂に見舞った。

エアの剣身が触れた瞬間、グレンラセンの装甲が赤熱。融点を超え蒸発し、爆発的に増えたその空間の体積の影響で水蒸気爆発に似たものを起こしてあっという間に機体がAパーツとBパーツになった。

 

『ぬ──ぐぉぉぉザーーーーー』

 

『悪くは無かったぞ。だが(オレ)にはまだまだ及ばん』

 

「キャスガメッシュが勝ったか……。うぅ、慢心モードじゃないのは辛いな」

 

「あっちも終わるみたいです先輩」

 

『うッぐぉぉぉッんぬお!る、ルーラーに殺されるとは……!これもアヴェンジャーの定めかッ!』

 

『だから言ったじゃありませんか。こうなった(デストロイモード)ら手加減できませんよ?って」

 

この戦いでは怪我こそすれど死ぬことは決してない。そんな事は最初の説明で分かりきっていた筈の事だが、妙なテンションになったエドモンはコクピットごと潰されながらそんな言葉を口にしていた。

最終的にバッキバキに潰されてからグルグルと回され、そして荒野の遥か彼方まで投げられたエドモン。勝者は言うまでもなく天草だ。

 

「デデーン」

 

「?」

 

「ごめんふざけた今のは忘れて。黒髭、残ってる機体はどんな感じ?」

 

『大体半分近くに減った感じさね。怪我人は絶賛例の氏によって破壊と再生をされているんでマヂ南無三』

 

「破壊と再生……!」

 

それは正しく恐怖だ!そんな治療があってたまるか!

 

《空間の崩壊を確認。何者かがカルデアに侵入してきます》

 

『ぐだ男君大変だ!その空間に何かが介入してくる!逃げるんだ!』

 

「ドクターの警告よりもプレマストの方が感知早いのか」

 

「やけに落ち着いていますね先輩。目の前で空が割れているんですよ?」

 

確かに、突然のプレマストからのアラートでコクピットが赤く明滅して確実にヤバめの状況なのに俺は何とも落ち着いていた。

 

「空間が割れるとこうなるのか」

 

 

『やけに落ち着いていますね先輩。目の前で空が割れているんですよ?』

 

「馬鹿な……!そんな訳があるものか!」

 

一方の管理室ではインカムのマイクを握ったロマニがぐだ男のバイタルを見ながらそう叫んだ。

ぐだ男は落ち着いていた訳ではなく、既に混乱極まって無意識に現実逃避をしているだけ。何故そうなるのかは割れた空間の先から感知できる霊基……それを彼の体が恐怖と共に覚えているからだ。

そしてロマニが叫んだ理由はもう1つ、その霊基の反応が過去最大の敵のモノに違いなかったから。

 

「お前は消滅したはずだ!ゲーティア!」

 

空を割き、姿を現したその敵……それは鋼の色をした巨人だった。

 

 

「──なん、だよあれ……」

 

100mをゆうに越える割れ目から、それの大きさギリギリの巨人が歩み出てくる。

割れ目に対して巨人の全高は凡そ80m。1歩踏み出す度に大地が揺れ、駆動系の音がプレマストの全身を震えさせる。

 

《警告。警告。警告──》

 

「…─!──い!せん……先輩!先輩!確りしてください先輩!」

 

「ッ!?」

 

叩き起こされた様にマシュの声が聞こえるようになって、俺は慌てて回避行動をとった。

本来こんなに巨大な機体が戦えるような設計にはなっていないこのシミュレーターでは、謎の巨人を支えられる程強さはない。ましてや空間を割いてきた異常な出現の仕方をされてはその内元のカルデア内に戻ってしまう(カルデアのシミュレーターは様々な技術を応用して、限られた空間内に限りはあるが拡大した空間を作り出す。ゼルレッチの宝箱と似たようなもの)。そうなったら何か色々大変だ。

カルデアに何かあったら後で怒られるのはドクターもそうだがサーヴァントのマスターである俺もだからね!始末書だか反省文を書くのはもう高校までにしておきたいんだ!

 

「何者ですか!」

 

「……あのロボット……あんな巨大で一体何と戦うって言うんだ……」

 

『──この声……マシュ・キリエライトか?』

 

「!!杉t──」

 

「ゲーティア!?貴方は先輩に倒された筈では!」

 

やや被せ気味のマシュはこの声をゲーティアと言った。

そう、確かにこの声はゲーティアだ。嫌と言うほど覚えている……。マシュを殺して、俺が倒した筈の──。

 

「ぁ、あれ?何だ?」

 

ガタガタと音が五月蝿いと思っていたら、俺の右手が大袈裟に思える程入力装置を震えさせていた。手だけではない。意識はハッキリしてるのに視線が定まらなくなって脚も震えてきた。歯もガチガチ音を鳴らしはじめて……まるで自分の体じゃ無いみたいだ。

 

「おかっ……しぃな?何でっ?」

 

「ドクター!」

 

『マシュ頼んだよ!!』

 

「先輩すみません!」

 

「うわっ!?」

 

マシュが俺に乗り掛かりながら入力装置から手足を引き離して操縦を代わる。

出来うる限りの最大出力で後方に跳躍。一気に距離を取って脱兎のごとく逃げ出す。

 

旦那様(ますたぁ)!大丈夫ですか!?』

 

『皆も下がってくれ!あれはゲーティアだけじゃないぞ!』

 

『Aaaaaaaa──!!』

 

「ティアマト!?ッ!先輩捕まってて下さい!」

 

『逃がさんぞ!』

 

マシュが再び跳躍しようと体勢を変えた瞬間、ゲーティアとティアマトのロボットが体の各部に備え付けられたスラスターから火を吹き、轟音と共に宙に浮いた。

僅か1秒でロボットは200m程の高さに届き、太陽の光を遮った。

 

『Aaaaaa!!』

 

『ロケットパァァァァァァンチッッッ!!!』

 

上空への運動エネルギーが位置エネルギーへと変換され、再び運動エネルギーに変換される。

大質量のロボットが右拳を握り締め、上半身を捻りながら落下してくる。位置はドンピシャ俺達の位置だ。

 

「斥力展開!最大出力!」

 

ドンッ!とプレマストが車に轢かれたように跳ぼうとしていた方向とは真逆に弾かれる。その瞬間、巨大ロボットの右エルボーもブースターを点火させて更なる加速力を生み出し、寸前までプレマストの居た位置を殴った。

地面が捲れ上がり、衝撃波が周りに居た他の機体と岩山を吹き飛ばす。プレマストも例外ではなく、数秒激しくシェイクされて何も分からないまま気付くと辺りが更地になっていた。

 

「これは……!」

 

『い、今のはカルデアにもダメージが来たぞ!君達大丈夫かい!?』

 

『うわぁぁぁぁぁあああ!!接写のフィギュアが大変でござるぅぅぅ!!』

 

『いやぁぁぁぁぁあああ!!私のイアソンワールド・ジャパンがぁぁぁぁ!!』

 

『フセロォォォォォオオオ!!』

 

『ふっ。甘いな君達は。私なら食堂の食器棚を全て耐震のに変えさせて貰っているが?何、日本英霊の知恵だよ』

 

『アーチャー。私の部屋の冷蔵庫は耐震ですか?』

 

『──しまった!何故気付けなかったんだ私は!』

 

『皆冷静だね!?』

 

『Aaaaaaaa──!』

 

「くっ!何故貴方は!!」

 

『私はあの時、ぐだ男に倒されてやっと人間を理解した。他の魔神達も各々何かを見出だして散っていっただろう。英霊と議論を最期まで交わすもの。英霊の盾になったもの。最期まで戦ったもの……(みな)があの戦いで何かを感じ、それを理解しようとした。私は確かにあの時に死んだのだろう。その男の愚直なまでの人間らしさに負けたのだ。だが!私は負けたままでは悔しい(・・・)のだ!それが人王として一時の生を得た私の、譲れないものだ!』

 

巨大ロボットが拳を引き抜き、ゆっくりと立ち上がる。

リアクターの音が砂埃の向こうから大きくなってくる。

 

「……ゲーティア。やっぱりお前なんだな」

 

『そう言う貴様は何だ?感じるぞ貴様の弱々しさを。よもやただの一度死にかけただけで怖くなったのか?貴様はそんな程度か!!』

 

「──ッ!マシュ交代だ!」

 

「はい!」

 

「何がトラウマだ!そんなもの、命を懸けて戦ったアイツ(ゲーティア)に失礼じゃないか!」

 

手足の震えをひっぱたいて無理矢理落ち着かせる。意外にも、こういった荒治療が効くときもあるのだ。あぁ、勿論“本格的で荒い”治療とは別だ。

 

「わざわざロボットで来てくれるとはありがたいね!ティアマトもありがとう!正直2人で1つの方が良いからさ!」

 

『Aaaa!』

 

『良いぞ……良いぞ!そうでなくてはなぐだ男よ!行くぞティアマト!』

 

《敵機名称開示。ビースト・デンジャー》

 

ビースト・デンジャー。それがあの巨大ロボットの名前か。確かに今更ながら胸のリアクター、シンプルな人型でマッチョな感じは魔神王ゲーティアを彷彿とさせる。ふむ……2人で1つならどこにティアマト成分が入っているのだろう?

 

《敵機接近》

 

「何て考えてる暇はないか!」

 

「他の皆さんは下がっててください!私達は斥力で衝撃波をやり過ごしましたが、皆さんは無事ではない筈です」

 

『そうさせてもらう。どのみち(オレ)達が手を出すべき事では無いからな。皆下がるぞ!』

 

『分かりました。御武運を旦那様(ますたぁ)

 

『ちょ、皆何を言っているんだ!ぐだ男君も今すぐ下がって皆に任せるべきだ!ゲーティアとティアマトだぞ!?君のその体で大丈夫な筈がない!』

 

『止めなよロマニ。この戦いはそんな無粋な真似をして良いものじゃないぜ』

 

『レオナルドまで!この状きょ』ブッ

 

「心配はありがたいけど、今は駄目なんだ」

 

「お任せします先輩!」

 

「ああ!」

 

マシュとのリンクを切って自分の腕で操縦をする。

当然ながら満足に左腕が動くわけもないが、それでも最高とも言えるパフォーマンスを叩き出している。巨大な拳を風圧の影響も受けないようにしながら避けて機関砲で剥き出しのリアクターを狙う。しかし、撃って弾はリアクターに着弾するや否やその熱量で融解してダメージには至らない。原子力……否、あれは宝具か!

 

『うぉぉぉおおお!!』

 

『AAAAAAAAA!!』

 

「ぬぁぁぁあああ!!」

 

ビームカタールでビースト・デンジャーを少しずつ攻撃していく。正直、これくらいの火力では倒すのに時間が掛かってしまう。そうなったらプレマストの稼働時間なんかよりもカルデアへのダメージが心配だ。こうなったら短期決戦しかない!

 

「黒髭!アレだ!」

 

『り!』

 

とてつもなく短い返事の直後、プレマストの目の前に何かが転送されてきた。

全長がプレマストの2倍はある銃だ。正確には斥力式特殊破杭射出兵器 厳弩(ガンド)。特殊な物質(鉄にルーンを織り混ぜて作られた謎の金属)で作った5mの杭をプレマストにも搭載されている斥力発生装置でマッハ50で押し出す(・・・・)超兵器だ。因みにマッハ50となると太陽の重力を振り切れる第3宇宙速度を超えてたりする。

当然こんなのを使えばソニックブームだけで並みの機体は大破してしまう。だから使わなかった(使えなかった)のだが──

 

「1発限りでも!」

 

腰だめに構え、何とかしてビースト・デンジャーから距離を取りつつチャージを続ける。

 

『こちらもプラズマキャノンを使う!』

 

ビースト・デンジャーの右手が変形する。人のように5本あった指は3本に纏まって三角形の頂点を表すように位置をずらす。掌はそれに合わせて開き、奥からプラズマを発生させるものなのか、青白く輝く円筒状の物が頭を出す。熱放出の為なのか腕の装甲も開いてお互いに必殺の一撃感が場を支配した。

そして!

 

『ッ!』

 

こちらのチャージが終わるのよりも早くプラズマキャノンが撃たれた。狙いは間違いなくコクピットだろうが、正直このレベルの出力だと大した狙いを定めなくても致死は避けられない。諦める?馬鹿な。

俺は何とかして斥力で自分を真横にズラしてかつ防御に回して直撃は免れた。そして同時に標準がかなりズレたが厳弩を撃つ。

零距離で爆発をもろに受けたような衝撃と鼓膜を破りかねない爆音……それよりも早くビースト・デンジャーの右肩から脇腹にかけてが木っ端微塵になる。

 

『ぬぐぉ!!』

 

『Aa!?』

 

「ぐぁぁぁああ!!」

 

「きゃあああ!!」

 

プラズマキャノンの熱で駄目になった左腕と左脚、更に不安定な体勢から厳弩を撃ってせいで踏ん張りが効かず遥か後方に吹き飛ばされた。

右腕も反動で大破。コクピットのモニターも亀裂や砂嵐で視界が悪いしアラートが五月蝿い。それでも俺は立ち上がらないといけない。相手がまだ立っているんだ!

 

『このビースト・デンジャーの装甲を貫くどころか木っ端微塵とは……!リアクター(宝具)もやられたか』

 

『Aaaaa!』

 

『うむ。チェーンソード!』

 

リアクターが半分以上欠けた筈のビースト・デンジャーだが……残る左腕から蛇腹剣のチェーンソードを展開。動きこそやや鈍くはなっているが……!

 

「くっ!何でだ!」

 

『よく見ろぐだ男!アレのリアクターは露出してはいるが1つではない!ビースト2体分の宝具がそいつには搭載されている!お主のそれは弾切れか!?』

 

「弾切れです!どのみちこの状態では持つことすら──」

 

《リアクター出力低下。斥力展開不可能。左大腿骨ユニット反応ロスト。左上腕部損傷大。右腕全体反応ロスト。機体全体損傷率72.8%》

 

「せ……先輩っ……血が!」

 

「掠り傷だよ……参ったな……」

 

ビースト・デンジャーは歩みを止めることはない。

ロボットの損傷率が7割突破したという事はもう虫の息といった所だろう。人とは違って根性とかはマシンに無いから。だが!諦めるわけには!

 

「起きろプレマスト!お前はこんなもんじゃ無いだろう!見せてみろ!カルデアの天才達が作り上げたお前の力を!!」

 

気合いでなんとか出来る筈もない。その筈だったが、プレマストは俺のその声に答えるようにメインカメラに光を灯した。反応がロストした脚が動き、駆動系が悲鳴を上げながらも立ち上がろうと動き出す。否、悲鳴と言うのは間違いだろう。装甲や駆動系が擦れるこの音は、己を奮い立たせる雄叫びのようだった。

 

「うぉぉぉおおお!!」

 

『これで終わりだ!!』

 

『AAAAAAAAA!!』

 

「んぅ……何だ騒がしいな……」

 

「ヴぇ!?ネロさん!?寝てたんですか!?ここで!?どこで!?」

 

「そう慌てるでないマシュ。余はどんな所でも寝れるでな。そんな事より状況が読めぬ」

 

「こっちが読めんわああああああ!!」

 

もうビースト・デンジャーに跳んでしまった以上、どうしようも出来ない!ゲーティア達は攻撃を止めることは無いだろう……えぇい!ままよ!

俺はビームカタールを最大出力にしてチェーンソードにぶつけた。

 




ビースト・デンジャーが出現する前。


ゲ「ブレイン・ハンドシェイクだ。お前は私の記憶に入ってこい」

テ「Aa!」

ゲ「良いか?ウサギ(記憶)を追うんじゃないぞ。戻れなくなる」

テ「A──」

ゲ「追うなと言っただろう!!」

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