Fate/Grand Order 「マシュ。聖杯ってよく拾うけど全部願望器として機能してるの?」「勿論ですよ先輩」「じゃあソロンモさんを永み─」「先輩!」 作:第2類医薬品
キャット「遂に貯めに貯めた石210個が火を吹く時が来たようだぞご主人。
「分かっているさキャット。行くぞ全国のご主人諸君。石の貯蔵は充分か?
「マスターが目を覚ましたぞ!!」
カルデアに全館放送でそんな声が響いた。
声の主が誰だか分からないが、皆そんな事よりもぐだ男が起きたと言う事にサーヴァント、スタッフ問わず歓喜した。
「
「何で私がアイツの寝起きなんかに立ち会わなきゃならないのか理解できないんですけど。行くなら1人で行ってきなさいよ」
「そんなんだからこの前
「はんっ。お子様には分からないでしょうけど、その前のツーリングで満足したから私から誘いを断ったのよ。おこぼれに与って満足しているようじゃサンタなんてのも大したこと無いわね」
「ふふん。知っていますよ成長した私。実はそのチームへの誘いを
「はぁ!?どこで聞いたのよそれぇ!」
「まぁまぁ。リリィもあまりオルタをいじめるとマスターに怒られますよ」
「そうでした!本来の私に感謝してくださいね」
「アンタは私の幼女化でしょうが!それにコイツに感謝なんてゴメンね!」
「今謝りました?」
「ウッッッッッザ!!」
「何を騒いでいる。貴様らは静かに喧嘩くらい出来ぬのか?」
騒ぐジャンヌズの後ろから大きな影が見下ろしていた。高圧的な声音と目を合わせるとすぐにでも石化してしまいそうな魔眼を持つそれは邪ンヌの後輩アヴェンジャー、ゴルゴーンだった。
あのゴルゴーン三姉妹とランサーとは中の人が同じとは思えない攻撃的な声音にリリィが若干ビビっていると、同じアヴェンジャーとして抵抗が無いのか邪ンヌがマルタのレディース時代もたるや、凄まじい形相でメンチを切った。
「誰かと思えばデカいメドゥーサですか。何です?喧嘩なんて騒いで当然のモノでしょう?」
「それにしたとしても五月蝿いと私は言ったのだが?同じアヴェンジャーとしては些か頭が足りぬと見える」
「はぁん?そう、アンタは頭足らずだと思っている訳?なら訊くけど、アンタはそんな阿呆みたいに露出のある格好で出歩いてて恥ずかしくないの?アンタいっつも酔うとやれ身長が大きくて嫌だのかやれ小さい私が羨ましいだの言ってたわよ。なのにそんな男共の目を惹くような格好をしてるってことは要するに自分の姿に対する自信の現れでしょ。この前あのクソムカつく女のランサー見て鼻で笑ったの知ってるから」
「なっ、違っ、違う!こんな姿に自信などあるわけがない!大きいだけで邪魔なだけだ!醜いこの姿を姉様達に見せたくないだけだ!」
「……大きくて邪魔……?チッ」
「リリィ?どうしたんですか?」
「何でもありません。兎に角成長した私を置いて
リリィがジャンヌの手を引いてその場から立ち去っていこうとすると、ゴルゴーンがそちらにターゲットを変えた。
「ぐだ男の元へ行くのか?貴様ら3人でか?」
「そうですよ。そしたらオルタが恥ずかしがって行かないって言うものですから喧嘩になってしまって」
「ちっがうから!!」
「くははははは!アヴェンジャーともあろうものが何と情けない姿を晒しているか!これは見物だな、
「ブッチ!頭っキタァ!!」
一触即発。すぐにでも戦いが始まらんとお互いが戦闘態勢に移った瞬間、廊下の暗がりからまた人影が姿を表した。
「あーあー、五月蝿ぇよアンタら。少しはマスターに迷惑かけない喧嘩は出来ないの?」
頭を掻きながら歩み出てきたのは全身に刺青のような模様がびっしりと見られる大先輩アヴェンジャー、アンリマユだ。
「先ずさ、邪ンヌはマスター好き好きなのは分かるからそれを指摘されて怒るのとか面倒臭いからマジで止めてくれ。そっちのデカヴェンジャーもこれからマスターの所に行こうとしてたのに少し邪魔だからって変に攻撃するの止めろよ。ただ『退いて』って言えば良いだけの話だって分かんないのかなぁ?変に攻撃するからこうして話が拗れて中々マスターの所に行けなくなる訳。お分かり?」
ただでさえ爆発寸前の爆弾の前で大変な火遊びをしているようなものだが、アンリマユはお構いなしに続ける。
「だっ、誰がマスター好き好きよ!!」
「貴様っ……この私を知っていての発言か?」
「悔しかったらそれこそマスターにキスでもしてみ?」
「「何故(何で)そこでキスになる(のよ)!!」」
(流石にからかいすぎたか?)
アンリマユも命の危険を感じ取り、逃げの雰囲気を出し始めたその時、またも人影が2名姿を現した。今度は走ってくる小さな人影。ゴスロリ幼女とパンモロ幼女だ。
「あら?喧嘩かしら?」
「解体する?」
「解体しない。で、どうしたちんちくりん共?」
「ちんちくりんだなんて失礼ねアンリ。でもいつもお茶会来てくれるから許してあげる。ねー?ジャック」
「うん。アンリ解体の仕方上手だもん」
「「「………」」」
「いや、オレを変な目で見るなよ。これでもマスターが大変にならないように気を配った上での事だからな?まぁ、解体が巧いのは認めるけどな」
子供に変なことを教えているんじゃないだろうなと無言の攻撃がアンリマユの冷や汗を加速させる。そんな事は知る由もない幼女2名はゴルゴーンと邪ンヌを見上げて手に持っていたコロンをシュッと一吹きした。
「ちょ、何よ?」
「良い匂いだな。貴様のか?」
基本身内と幼女には優しいゴルゴーンがナーサリーの持っていたコロンを見やる。と、そこで目の良い彼女はラベルを見て表情を強ばらせる。
ラベルには『ダ・ヴィンチちゃん特製 超強力正直薬』とデカデカとプリントされていた。テヘペロしたSDレオナルドイラスト付きで。
「貴様!?これを……くっ!?」
「な、何なのこれ……!」
「皆嘘ばっかり言って喧嘩とかするじゃない?だから喧嘩を無くそうと思ったのよ。ね?」
「うん。皆正直になればもっと仲良くなれると思ったの。清姫も大喜びしてたよ」
「うわぁ……またヤバいの作ったなぁ。じゃあオレはトンズラさせてもらうわ」
「私達も行きましょう」
「うぃ!」
わーい。と2名の幼女は次なる獲物を求めてカルデアの廊下を駆けて行く。
アンリマユも元来た道を逆再生よろしくそそくさと逃げた。一方、コロンを吹き掛けられた2名は四つん這いで咳き込んでいたまま硬直し、粗い鼻息のまま床を一点見している。
「あのー……」
「~~ッ!もう駄目!無理よ!ああそうよ!私はぐだ男が心配でしょうがないわよぉ!今すぐ起きるところ見に行きたいからぁ!!」
「わっ、わた、私は……っ!ぬぐ、ぐぅぅぅぅッ!そうだ!契約者、ぐだ男の所へ行って勝手に死んでいないか見に行きたいのだ悪いかぁ!?こんな醜い私でも対等に接して姉上達とも巡り会わせてくれた彼に会いたくて悪いかぁぁぁ!?」
「うーん、この効力……清姫さんがこれをテロよろしく散布したらカルデアは大混乱に陥りますね」
「流石本来の私!冷静な判断力が羨ましいです!」
「「うあああああ!!」」
眼がグルグルしたツンデレアヴェンジャーが当初の目的であったぐだ男の眠るメディカルエリアへと疾走していく。少し遅れる形で後を追うリリィとジャンヌは想像以上にカルデアが既に混乱していることに、この時はまだ気が付かなかった。
◇
一方、安静室では目を覚ましたぐだ男にマシュ、レオナルド、ロマニが面会していた。
管理が厳しいこのメディカルエリアはナイチンゲールの固有結界も同然。例え本人に確かな意識があっても面会時間が決められており、取り敢えずは記憶の混濁や欠落していないかの簡単なチェックと大まかな夢での話を聞く程度だった。
「じゃあその魔神柱はもう倒したんだね」
「元々あの時間神殿で死にました。でも呪いは違ったみたいなんで」
「うん。それでマシュが何とか君の夢と同期して事なきを得た流れだね。それで、体は魔術・スキルが使えるようになったから綺麗になったけど……」
「はい……後遺症ですかね……」
「そんな……」
傷跡こそ残るが綺麗になった顔と腕。カルデアの復旧で魔術・スキルが使えるようになってすぐに治したものの、後遺症が残る形となってしまった。
顔は右半分の動きが鈍く、視力もほぼ失い、左腕はかなり酷くやられていた為に筋力はがた落ち。可動域も大幅に減少した。マスター復帰は可能でも以前のように前線でバリバリ戦うというのは無理だろう。
「まぁ、これからは皆には悪いですけど後ろからマスターっぽく指示を出すようにします。日常生活にも支障無さそうですし」
「いえ。先輩は先の夢と時間神殿での戦いのダメージがまだ残っています。支障が無いなんて事は有り得ません。ですから私が先輩の補助として付き添います」
「そんなに弱ってないって。左目はちゃんと見えてるんだからさ。真のマスターは気でサーヴァントの気配を察知するんだ」
「そこは気と言うより魔力で良いんじゃないかな?」
「兎に角、マシュも連戦したんだから俺の事より休みなって。最悪誰か助けてくれるから」
余裕でしょ?と左手で立て掛けてあったゲイボルクを握ってみせる。ぐだ男自身としてはかなり力を入れた筈だったが、腕全体が震えて力を込めども込めども穴の空いた風船に空気を入れてるかのように抜けていく。単純な握るという行為にすら一苦労する始末だ。
「はぁ……素直に辛い」
「マシュ。ぐだ男君をお願いしても良いかい?ボク達はまだやることが一杯有り余ってて構ってあげられないから」
「勿論そのつもりです。先輩はお任せください」
「頼もしいじゃないか。じゃあ私達は色々やらなきゃいけないから戻るよ。この機会にゆっくりしたまえ」
「ありがとうマシュ。夢といい時間神殿の時といい……あぁ、そう言えばマシュとこうして話せるもの不思議な感じだ……もう死んじゃったと思ってたから……」
「確かに1度死亡しましたが、この通り元気です。でもあの時、先輩を守ることが出来て良かったです。……あの夢の私も先輩に会えてると良いですね」
「会えてるよ。絶対にね」
夢で共闘した別世界のマシュとぐだ男の事を思って沈黙していると、部屋の外で遂にサーヴァント達が痺れを切らしたのかナイチンゲールを押し退けて部屋へと侵入しようと暴れ始めたようだ。
『何故だ!?何故ドクターロマは良くて余達は駄目なのだ!』
『風水のドクターみたいな言い方は止めてほしいかな!』
『黙りなさい。今の彼には貴女達の接触は良くありません。怪我人の前で暴れるようなバーサーカーは下がっていなさい』
『バーサーカーはそなただろう!』
『減点』
『うっ……』
どうやらナイチンゲールの前では並み居る問題児達もある程度大人しくなるらしい。流石設備が足りていない時代かつ戦場で数多くの兵士を救って決して己の意思を曲げなかった鋼鉄だけの事はある、と感心したのも束の間。再び騒がしくなって若干楽しみつつも聞き耳を立てると先刻とは違う騒ぎかたになってドアが悲鳴をあげ始める。
『むぁすたぁ!』
「レオニダスかな?」
「字面だけならレオニダスさんですが、この声はジャンヌさんですね。オルタかルーラーかは分かりませんが」
『そこを退けぇぇぇ!!』
「──って、先輩!何を悠長に構えているんですか!これは確実に良くない騒ぎかたですよ!」
「いや、もう間に合わないし動けないしどうしようもないかな」
逃げようとしてもどのみち動くと婦長が飛んできてベッドに叩き付けられるから無理と悟って瞑想のように瞑目する。そして遂にドアがおかしな音をたてて周りの壁ごと壊された。
「「はぁっ!はぁっ!」」
「ゴルゴーンさんにジャンヌ・オルタさん……?一体どうしたんですか?」
「ゴルゴーンに邪ンヌ?何で?」
「──ぐだ男!アンタ何で起きるって前もって言わないのよ!勝手に死んだりしたら許さないって前に言ったでしょうが!」
「いや、死んでな──」
「私も許さないぞぐだ男!貴様の最期は私が見てやると言ったのを忘れたのか!前に私の胸を鷲掴みにしたのはただの遊びだったのか!」
「先輩!?」
「待てぇぇぇ!!あれは事故だから!ギルのホッピング原典で遊んでたらタラスクinマルタに轢かれてその勢いで触っただけだから!それに俺死んだつもりないからね!?」
「「五月蝿ぁぁぁぁい!!」」
「ふぅん。このカオスな感じはご主人の危機なのだな。しかしアタシ達獣は余計な争いは好まぬ。これも生き抜くための術故な。という訳でご主人、今度のコラボイベでは活躍してやるから今回はツンデレなフレンズ達とも獣の如きじゃれ合うが良いゾ。キャットはケモノのフレンズと言うには些か元が判らぬ」
「先輩!ゴルゴーンさんにセクハラしたんですか!」
「馬乗りもしたのに、ナイスキャッチゴルゴーン。だけで胸を揉んだ感想は無いのか!私1人頬を赤らめて馬鹿みたいではないか!」
「……あぁ、何だか良いな……こう言う馬鹿みたいに騒ぐのがやっぱり」
漸く還ってこれたと実感したぐだ男。騒がしい喧騒の中でも自分1人だけの世界に入って窓から外を眺める。
今日のカルデアの外は、珍しく晴れていた。
デデドン!
「行くでござる行くでござる!」
立ち上がる巨大な影。
「これこそが、
それは男の憧れ。男のロマン。
「ロボは良い文明」
「ふはははは!雑種ごときに
「いざ!遥か万里の彼方まで!余は帰って来たぁぁぁ!!」
男達(?)の暑き戦いがここに現界する。
「天元突破カラドボルグ!」
「そりゃアウトだ!叔父貴!」
「行くぞ。汝らもファクターならば戦うしかあるまい」
「やるしか無いようね」
「やってやるぜ」
「ファクターとか完全アウトじゃろ!?中の人だけども!」
カルデアに鋼鉄の旋律が響き渡る。
次回Fate/Grand Order 第22話『スーパーカルデアロボット大戦GO』!
「ハイテンションだね、分かるとも!」