Fate/Grand Order 「マシュ。聖杯ってよく拾うけど全部願望器として機能してるの?」「勿論ですよ先輩」「じゃあソロンモさんを永み─」「先輩!」 作:第2類医薬品
これでも良くできたと思ったりしてます!はい!初心者です!
ともあれ、魔神柱の名前当てをしたあなたは流石です!ご褒美に沖田さんスタンプを押してあげましょう。
とか言うのも置いておいて、BB・改心で出るとは嬉しいですね。でもぐだ男にデレるのとかは無しで、悪友みたいな感じでと思いつつロビン再臨の為の牙を集めにいく私であった。特効鯖キャットとナーサリーと兄貴とロビンしか居ない……内キャット宝具4、ナーサリー3、兄貴ロビン5で充分ですけどね!悔しくないですよ赤・嫁王とか!ギルとか!ゴリラとか!
──ここにあったのか。
「……嫌だ……嫌だ……嫌だ……」
──漸く……漸く貴様の魂を見付けたぞ。ここまでの忍耐を誉めよう。ここまでの抵抗を誉めよう。本当に人間とは思えないその精神の強さは今まで見たことがなかった。だが、それもここまで。今ここに私の“報復”は完遂する。
何もない広大な空間。そこにうずくまったぐだ男に黒い靄がかった何かが近付いていく。
ここはぐだ男の精神と言う外殻に護られていた魂のある場所。ぐだ男という人間を為す核と言っても過言ではない物だ。
「……痛い……熱い……苦しい……怖い……嫌だ……嫌だ……」
──さらばだ、人理を修復した者よ。貴様の魂はここで死に、2度と目を覚ますことはない。
黒い何かが武器のような物を振り上げ、首へ真っ直ぐ降り下ろした。
「させません!」
─!!!!
刹那、ガィンッ!!と硬質な音が空間に木霊した。黒い何かの武器は突然目の前に割り込んできた巨大な盾によって弾かれ、その腕を強く痺れさせる。
──馬鹿な!お前は廃棄した筈!
「私は貴方の術式の一部ではありません!私は先輩を助けに来た……先輩のサーヴァントです!」
割り込んできた影……それは戦闘状態になったマシュがぐだ男を守るように盾を構えていた。
──……っ、現実から介入して来たかッ!
「先輩!確りしてください先輩!」
──ふざけるな……!ふざけるなァァァ!!私の報復を、復讐を!こんなふざけた事で邪魔されてたまるかァァァ!!
咆哮をあげた何かの姿がボコボコと音をたてて変質していく。人のサイズだったのが嘘のように体が膨張し、やがて柱のように高さを増す。靄が無くなって、巨大な肉柱が金切り音のような咆哮をあげながら縦に切れ込みが走った。そこから押し出すように現れた真っ赤な眼球。それらが激しい復讐心を帯びた眼でマシュとぐだ男を見下ろしていた。
「きゃっ!」
「我が名はモラクス!ソロモン七二柱が一柱、序列二一位!伯爵モラクス!!貴様らの血を捧げよ!貴様らの命を捧げよ!その血肉を我が贄として捧げ、醜い命乞いをするがいい!貴様ら人間の醜き生き様を晒すがいい!」
「モラクス……!あの戦いで溶鉱炉ごと消滅していなかったんですか!」
「我は呪いなり!我は残滓なり!我はとうに死んだ、最早生きもがく理由は無けれども報復する故に今の我は存在する!」
「呪い……やはり貴方が先輩をこんな目に!」
「あと少し、あと少しなのだ!我だけではない!我らの悲願をここに果たす!邪魔立てをするというならもろともに死ぬがいい!」
一瞬で禍々しい空間へと上書きされた地面から炎が立ち上がる。狙いは勿論マシュを含めたぐだ男。
「くぅ!」
爆ぜる地面に巻き込まれながらぐだ男を最優先で守るマシュだが、単独でしかも物言わぬ屍も同然のぐだ男を庇いながらでは分が悪すぎた。
軽々と体が宙にまって強かに地面へと叩き付けられる。衝撃で肺の空気が押し出されて、思わずぐだ男を手離してしまった。
「せん──!」
「オオオオオオオオオ!!」
『何を……諦めているんですか!』
「──ヌウッ!?貴様は!」
声と共にモラクスの眼球が1つ潰れる。次いでまた1つと眼球が破裂したように潰されていき、甲高いモラクスの呻き声がその場にいる全員の鼓膜を震わせた。
「……ぅ、あ……」
「「先輩!」」
ぐだ男とマシュのもとへと駆け寄る少女。モラクスを怯ませたその少女は男性用魔術礼装カルデアを纏ったもう1人のマシュだった。
そう、服装は変わったが本物のマシュがさっき出会った彼女だ。
「助けに来てくださったんですね!ありがとうございます!」
「いえ、それは私も同じです。貴女が介入した事で術式に綻びが生まれました。私はその綻びから穴を拡げてすり抜けてきただけです。
「え?」
「おのれぇ……!おのれぇぇぇえええ!!たかが我が術式如きが!我に反抗なぞぉぉぉ!!」
「魔神柱モラクス!私は確かに貴方の術式の一部です。ですが、“私”を術式に組み込んだのが貴方の間違いです!」
夢の方のマシュが魔術礼装の上着を翻し、先程眼球を潰した得物ゲイボルクと半分ほど欠けている盾を構えて声を再び張る。
「私はマシュ・キリエライト!遥か別の次元で先輩を失ったデミ・サーヴァントです!」
◇
私はマシュ・キリエライト。魔神柱モラクスの呪いのベースとなった並行世界の住人。
元々、私の世界でも冠位時間神殿ソロモンを攻略することは出来ました。そこまではこの世界の先輩と同じ流れでした。しかし、可能性というのはあらゆる場面から無数に広がっていきます。
恐らく、あのソロモン──ゲーティアを先輩が倒すのがほぼ全ての並行世界で存在している筈です。勿論、全てな訳がありません。私の世界のように、失敗するケースも少なからず存在するのです。
それは先輩がゲーティアを倒して私も生き返った直後。
「早く……!早く………!!」
「先輩!手を!手を出して下さい!」
「──あぁ……良かった。生きてたんだねマシュ」
崩れゆく神殿から走ってきた先輩は満身創痍。今にも倒れそうなその体を抱き締めたい。いつも温かいその手をまた握りたい。けど──
「……ごめんマシュ。無理だった」
「え──」
先輩の悔しい、悲しい、嬉しい……あらゆる感情を窺える表情を目にした途端、巨大な瓦礫が私と先輩の間に落ちてきた。その瞬間、残っていた僅かな足場は全て崩れ落ちて先輩も姿を消してしまった。
何が起きたか理解できなかった。理解したくなかった。でもレイシフトのゲートを保てなくなって私はカルデアへと弾かれた。
「う、そ……?せんぱ……い?冗談ですよね……またいつもの、悪ふざけですよね?」
「各員すぐにぐだ男の捜索に当たってくれ!ロマニもこんな結末は望んでいない筈だ!」
「ダ・ヴィンチちゃん……先輩が居ないんです。ドクターもあれから帰ってこないですし、2人でどこか行ったんですか?」
「──マシュ。ロマニは消滅した。それは君も目の前で見ただろう?ぐだ男は今探してる。大丈夫、まだ彼は生きている筈だ。こうして彼と契約したサーヴァントが消えていないのが何よりの証──」
「あ、あぁ……何で……あああああああああああああ!!!!」
それから数週間、先輩は見付からなかった。サーヴァントの皆さんも全力で探してくれました。何度もアンサモンも試しました。
でも結局結論が出てしまった。
「私達で観測を重ねた結果、ぐだ男は
「ちょっと!アンタ万能ならアイツを見付けられる筈でしょう!?何簡単に諦めてるのよ!!」
「お、落ち着いてくださいオルタ!今ここで騒いでも彼が見付かるとは──」
「じゃあ黙ってアイツが死んだって受け入れろっての!?ふっざけんじゃないわよ!」
「マスターさんが……マスター、さんがぁ……ぅぅぅっ」
「泣くんじゃないわよリリィ!アイツは死んでなんかいないわ!あのクソしぶとい男が死ぬ訳がッ」
激昂する邪ンヌの目尻から涙が線を引く。それに気付いた他のサーヴァント達も次々と涙を流し、嗚咽し、悔やんだ。皆同様に「人間としても、マスターとしても惜し過ぎる者を失った」と。
「皆落ち着きたまえ。私だってこのままKIAで済ますつもりもない。だからまだ捜索は続けるよ」
レオナルドがモニターに映したデータ等を説明していると、部屋の後ろから何かを引き摺ったマシュが無言でレオナルドの目の前へとそれを放った。
「ダ・ヴィンチちゃん、あの特異点も外れでした。見付けたのは魔神柱の死骸の一部のみ。次の特異点をお願いします」
「……マシュ」
ぐだ男の魔術礼装カルデアを身に纏い、背には欠けた盾。右手甲に魔術刻印を宿した彼女は機械のようにそう述べ、レオナルドの言葉を待っている。
マシュはこの数週間でえらく変わっていた。今までの自室からぐだ男の部屋へ移り、マスターの代わりを勤めるようにサーヴァント達と接し、戦うときにはいつも盾とぐだ男のゲイボルクを用いていた。右手甲に魔術刻印があるのは令呪の模倣とぐだ男の宝具──ゲイボルクとバイクを召喚するための物だ。
最近は専ら極小の特異点でも何でも、僅かな異常があれば赴いて解決とぐだ男探しに没頭している。
「おい嬢ちゃん。悪いが今のお前はちとヤバいぞ。寝る間も惜しまず何処へと行ってはあまり休まねぇ……死ぬぞ?」
「大丈夫ですクー・フーリンさん。この体は半分サーヴァントです。それに……先輩はこんなのよりももっと辛いのを味わっていた筈。今もそうなっているとしたら、私が休むわけにはいきません」
誰が言ってもマシュは決まってそう答える。
半分サーヴァントだから。先輩はもっと辛い筈だから。そうして彼女は自分の精神を知らずにゴリゴリと削り落としていた。
「特異点はまだ見付かっていない。だから君は一読休んだ方が良い。ぐだ男は君が無理するのを許容してたかい?」
「……分かりました。では部屋で休息をとっていますので何かあればすぐに呼んでください」
それから5時間後。マシュが眠りについた時に異変が訪れた。
彼女が珍しく夢を見たのだ。待ち焦がれたぐだ男との再会。優しい声と温かい手。それらが彼女の疲弊した精神を潤した。だが、運が悪かった。
マシュが持ってきた魔神柱の死骸、モラクスはしっかり保管されていたが、別の次元のモラクスの怨嗟の感情を受信してマシュの夢へと干渉してしまったのだ。
そしてその怨嗟の発信元こそがこちらのぐだ男を苦しめるモラクスだった。死ぬ間際にマシュの夢と接続したモラクスはマシュを捕らえて呪いの術式に組み込んだ。そしてその呪いをぐだ男が受けて今に至る。
つまり、別の次元のマシュもぐだ男と同じ様に夢から覚められないでいるのだ。
◇
「ハァッ!」
「じゃあ貴女は並行世界の……」
「兎に角!早く先輩を起こして下さい!私1人では流石にキツいですから!」
「は、はいっ」
自分に叱られるのもおかしな感覚だと若干混乱しながらもマシュはぐだ男を膝に寝かせて胸に耳を当てる。
弱々しい心音であるけれど、ぐだ男が生きていると分かると思わず安堵して息を吐いてしまう。状況が状況だけにそんな落ち着いて居られないのだが、何処か強い安心感を得ていた。
「取り敢えず、先輩はどう起こせば……」
ふと、頭の中にアンデルセンの声が聞こえた気がした。
──安いシナリオを書くようで癪に触るが……良いか?大抵眠れる女を起こすのは苛立つ程完璧な奴のキスだ。だが眠れる相手が男だったらどうする?残念ながらそんなクソつまらん話を書く奴の気が知れないな。
「魔力の……瞬間譲渡……」
魔力供給と言うのは基本的にマスターからサーヴァントへ拒否しない限りは行われているパッシブスキルのような物だ。もしそれをサーヴァントが断たれた場合、現界を維持するために
「つまり、粘膜接触……」
デミとは言えサーヴァントと然程変わらないマシュでもその方法は知っている。
要するに人工呼吸だ。決して他意は無くて応急処置であってやましい事ではない。何故だか頭の中がぐだ男の唇の事で溢れかえってしまいそうになるのを堪えてマシュは口に溜まっていた唾液を嚥下した。
「先輩……先輩はキスは初めてはないですよね。ケツァールさんや清姫さん、静謐さんや頼光さん……一方的にではありますけど、経験は何度かおありでしたね」
再び唾液を嚥下して顔を少し近付ける。
「経験豊富な先輩に……何だか胸が苦しくなります。でも、先輩が全くそう言うことに興味が無いと言うのも何だか嫌で……この気持ちは何だか良く分かりません。ですが、これがきっと誰かを好きになると言うこと何だと思うんです。だから先輩……私は貴方が──大好きです」
◇
「ははは。そうか。じゃあそっちもきよひーが大変なんだ」
「まぁな。多分どの世界の俺達に聞いてもきよひーがヤバいのはどこも同じでしょ」
「それ。いやぁ、まさか夢の中の夢で別世界の自分と会えるとは思わなんだ」
「俺も自分が死んでなかった事に驚きだよ」
「自分に言うのもなんだけど、無理しすぎて死ぬなよ?別世界とは言っても自分が死ぬのなんてもう見るのは御免だからな」
「確かに。そっちも気をつけろよ」
「おう」
──先輩。
「……ん?マシュ……?」
「──ぁぁ、良かった。聞こえるのか、彼女の声が」
「そう、みたいだね。そっちの俺は?」
「……何も聞こえないよ。何の温もりも、感覚も」
「……あー、なんと言うか大丈夫だよ」
「え?何が?」
「そっちの俺がカルデアに帰れるかどうかってこと。だから大丈夫。何となくだけど、何か自信がある」
「……そうか。そうだな。自分が言うならそうなんだろう」
「ああ。だから俺は行くよ。こっちも可愛い後輩が待ってるしさ」
「行ってこい行ってこい。さっきの言葉を返すようだけど、お前も生き急ぐような事は止めろよ?あと必ずその魔神柱を倒してマシュの所に戻ってやってくれ」
「OK。んじゃ」
「「頑張れよ」」
全身の感覚が蘇っていく。
プールのそこから力を抜いて浮かび上がるように、意識が浮上していく。光が差す所を目指して。
◇
「……駄目……?」
「無駄だ!そいつの魂は既に我が呪いにて瀕死だ!そんな魔力譲渡程度で起きる筈が無いのだ!」
「キャッ!」
「くっ……私も加勢します!はぁぁぁっ!」
ぐだ男を寝かせてこちら側のマシュも加勢する。流石に自分同士と言うだけあってコンビネーションはバッチリだ。だが、それでも魔神柱──特に手負いの最期まで力を出し切らんと猛攻を続けるそれにおされて劣勢へと追い込まれていく。
「先輩!力をお借りします!」
あちら側のマシュがぐだ男のバイク宝具を召喚してゲイボルクと共に単騎で突っ込む。
「
「っ、あがっ……ゴホッ!」
「お……お、オオオッ──オオオオオオオオオ!!負けぬ……!負けられぬ!我は!」
モラクスが血を、怨嗟を、魔力を撒き散らしながらも立て直し、倒れたマシュへ魔力を集束させる。
「間に合わ──」
「我はああああああ!!」
「──ガンド!!」
バチィッ!と魔力を集束していたモラクスが一瞬痙攣して動きを止めた。
「モラクス……悪いがマシュは殺させない。たとえ俺の知らないマシュだろうとも、それは許さない」
「……あぁ……先輩……っ」
「ありがとうマシュ。声が聞こえてやっと起きられた。まだ夢の中だけど……助かったよ」
「……はいっ……はい……!漸く先輩──ほんと、にぃ……良かった……!」
「泣かないでマシュ。それはこいつを倒してちゃんと目を覚ましてからだ。悪いけど……俺はまだ動きが鈍いからあっちのマシュを助けてくれる?」
「はい!」
「……ぜ……何故……何故だァァァ!!何故貴様は!!何処までもしぶといのだ!!最早呪いだ!貴様のそれは呪いだ!!」
「そうかもしれない。俺自身呪いとも思ったことはあったよ。だけど、それで良い。俺が諦めたら全てが終わる。だから諦めることは出来ない。これまでも、これからも!」
ぐだ男もゲイボルクを召喚して穂先をモラクスに向ける。
「せん、ぱぃ……よく、無事で……」
「ありがとう。あっちのマシュ。後は任せてくれ」
「先輩!私も戦います!」
「ああ。行くよマシュ」
あちら側のマシュに応急手当スキルを施してぐだ男とマシュ、2人並んで痺れがとれかかっているモラクスへ歩く。
「行くぞモラクス!!」
「オオオオオオオオオ!!」
「ハッ!」
駆け出した2人を凪ぎ払うように巨大な触手が迫る。
マシュがそれを盾で完全に防ぐとモラクスは続けて挟み撃ちの要領で反対側から触手を凪ぎ払う。
「マシュ!」
ぐだ男がマシュの腰に手を回した刹那。眩しい光と共にバイクが召喚されて触手から超スピードで逃げる。
「頼む!」
「はい!」
ただ「頼む」の一言で全てを理解したマシュがぐだ男と交代してハンドルを握り、更にスピードを上げてモラクスへと向かう。
地面から吹き上がる炎や触手を轢き潰して肉薄するとマシュがハンドルから手を離した。
「!!」
バイクがモラクスに激突。爆発を起こしてモラクスを文字通り根本から倒した。
「グオオオオオオ!!こんな──」
「もう終わりだモラクス。お前のしぶとさも、恐ろしかった」
倒れるモラクスの目の前にぐだ男がゲイボルクを構えていた。呪いの核、モラクスの中にあるそれを刺し穿つためにゲイボルクを“2本”。
「先輩ーーーーー!!」
「──おおおおお!!
1本のゲイボルクを投擲し、分裂したそれが全ての眼を潰す。そして残る2本目、朱色の魔力を帯びた槍がモラクスへと突き刺さった。
「オオオオオオオオオ!!」
「おおおおおおおおお!!」
モラクスの攻撃と血飛沫を受けながらもゲイボルクを更に刺していく。
そして穂先に強い魔力を感じ取った所でぐだ男の令呪が弾けた。
「ここだああああああ!!」
「オオ──」
パキンッ。
モラクスが、空間が音を発するのを止めて静寂が訪れる。そしてモラクスの体が段々と薄くなっていく。
「かはっ……はぁ、はぁ」
──我の……負けか……。
「俺の勝ちだ。お前の復讐はこれで終わりだ」
──ふん。忌々しいほど落ち着いたが、貴様を殺せなかったのが私をまた狂わせそうだ。だが、それも無理だと分かってしまう。……嗚呼、これが我の悔しいと思うものか。惜しい……実に惜しい。呪いに過ぎない我が本物と同じくして、死の間際にこの様な感覚を得るとは……。誇るが良い我等を踏破したマスターよ。貴様はそのしぶとさで生を勝ち取ったのだ。だが心しろ。脅威は常に存在すると言うことを──
魔神柱モラクスはそう言葉をぐだ男に送り、静かに消えていった。
それによって空間も存在を保てなくなったのか至る所から亀裂が走る音が響き始めた。
「……終わったね。だけどゆっくりもしてられない。2人ともすぐに帰るんだ」
「先輩はどうするんですか?」
「ここは俺の魂の保管庫みたいな所だ。ゆっくりしてても出られる。でも2人は別だ」
「でも……私は帰ったところで……」
「大丈夫だよ。そっちの俺もカルデアに行くってさ」
「──え?」
「走れ走れー!崩れるぞー!こっちのマシュはあの光。そっちのマシュはあの光ね」
「ま、待ってください!行くってどういう」
問おうとしたマシュの足元が崩れる。流石に訊いている暇はないと駆け出して、光の元へ向かう。
「はっ……はっ……」
「元気でな、マシュ!」
「……はい!!」
背中に投げ掛けられるぐだ男の声。例え別の次元のぐだ男であっても、声や心の温かさは同じ。溢れそうな涙を流すのはまだ早いと堪えつつひたすら脚を動かした。
◇
「……ぁ」
目を覚ますとそこはいつものカルデア。その先輩の部屋の天井だった。
さっきまでの長い長い悪夢が嘘だったかのように軽い体を起こし、頭もとの時計を見る。時刻は深夜2時。日付は最後の記憶……その日の次の日だ。つまり、私が囚われてから数時間しか経っていない。
「……」
見回しても先輩は居ない。もしかしてあれは本当はただの夢で私のただの願望だったのでは……。
そう思い、布団を捲って起きようとした時、自分の目を疑った。
「──せん、ぱい……?」
ベッドの下、自分が降りようとした足元に先輩が倒れている。
私はすぐにベッドから飛び降りて先輩の首に指を当てると指先には力強い鼓動を感じて大粒の涙がボロボロと溢れかえってしまう。
「…………良かった……生きてる……先輩!」
「ぁぅ………、っくぁ、ま……しゅ……?あぁ……漸く、会えた……」
「~~~ッ!!ハイッ!そうです!マシュ・キリエライトはここにいます!先輩も、ここに!」
先輩の服装はかなりボロボロでも、体は無傷。ただ右目の大きな傷跡一点を除いて。
「迷惑かけたね……マスターの代わりを勤めるのは、大変だったでしょ……」
「えぇ。やっぱり、先輩でないとっ……」
「ごめんね。不甲斐ないマスターで……」
「そんな!そんな事はありません!」
「……マシュ、本当に突然だけど今言わなきゃ行けない気がする……こんな俺だけど、君を好きで良い……かな?」
「──え、あ……好き……?えと、あぅ……」
「マスターだからサーヴァントだからとかじゃなくて……うん。好きだ、マシュ」
言葉が出てこない。頭が真っ白になって、とっても嬉しくて心臓の鼓動が早い。顔がものすごく熱くて……何を言えば良いのか分からない。けど、口は正直な気持ちを考えるより先に言葉にしていた。
「──はい。私も……」
貴方の事が……
「好きです」
確認読みしてみたら戦闘描写下手くそすぎて萎えた作者。