Fate/Grand Order 「マシュ。聖杯ってよく拾うけど全部願望器として機能してるの?」「勿論ですよ先輩」「じゃあソロンモさんを永み─」「先輩!」 作:第2類医薬品
申し訳ありません……全然時間が無くてかけません!
1日が終わる。
カルデアの復旧で私は先輩のお側に居ることは出来ませんでした。しかし、キャットさんが先輩の面倒を見てくださっているて言う事なので心配は無さそうです。
それでも……先輩の事を考えると食事も進まないし胸が苦しくなる。何故なんでしょうか……?
「およ?マシュ氏箸が進んでおらぬ様子で」
「黒髭さん……何でもありませんっ。何かしたのなら弁護は他の方にあたってください」
「オゥフwww。いきなりの突っぱねでござるか。しかし、今回拙者がマシュ氏に近付いたのは下心とかそんなのはマジで無く、ぐだ男殿の事で気になる事がありましてな。今から拙者がマシュ氏の意見とか全く訊かずに話を進めるんでヨロシク!」
「え?は、はぁ」
「まず、ぐだ男の目が覚めない理由はただの昏睡状態だからじゃねぇ。恐らく魔神柱の残滓やら思念やらで“夢に囚われている”状態ってオチだ。どんな状況になっているかは予想つかねぇが、このままだと流石のぐだ男もピンチってのには変わりねえ。でも夢になんてどうやって干渉しろって言うんだ?魔術は使えないスキルも使えない。でも抜け道は在る。俺達サーヴァントとマスターの契約だ。これによって俺達との間には互いの記憶や経験を夢として見ることがある。これを利用しない手はないだろう。だが夢なんて予測できるような物でもないし簡単に干渉できるものでもない。だが、想いは別だ。マシュのぐだ男に対する想いはそんじょそこらのサーヴァントよりもマトモで一途な想いのマシュの方が回線が開きやすい訳だ。てことは後はどうするか分かるよな?2度も言わせるなよマシュ」
黒髭が珍しくおふざけモードから真面目(というよりはカリブ海を荒らし回った海賊としての黒髭)に変わってマシュにぐだ男の危機を知らせる。
そんな黒髭にマシュは驚いたが、1度はパイケットで見た事だ。すぐに黒髭がふざけないで話してきた事の重大さに気付いて表情が変わった。
「……どうして黒髭さんに分かったんですか?貴方は特殊なスキルを有していない筈ですが」
「まぁ、ぶっちゃけ勘でござるよマシュ氏。実はぐだ男殿からあるフィギュアの製作を頼まれていたんだが──」
それは今から3時間程前の黒髭マイルームにて起きた。
「グフフwww流石ぐだ男殿。暗号化されたファイルに依頼通りのブツ。徹底してるでおじゃるなぁ」
黒髭は部屋のパソコンでぐだ男から先週届けられていた極秘の画像ファイルがあったのを見て変な笑いを溢した。
暗号化されたファイルを特殊言語で解凍し、開くと総数20枚程の写真が羅列した。
「ほぅほぅ……この角度も中々……流石と言わざるを得ませんな」
鼻息荒くしながら眺めているのはエウリュアレの写真。ぐだ男が黒髭に頼まれて撮った物だ。勿論、黒髭がなぜこの写真を求めたのかはぐだ男も良く知っている。
「やはりエウリュアレ氏を……女神を造形したとなれば拙者のサーヴァントライフはまた1つ潤いを獲る。ぐだ男殿にはちゃんとお礼をせねば」
パソコンを閉じ、部屋の片隅に置かれたキャビネットから大事に取り出したのはロボットのフィギュア。実はぐだ男が形状のデザインをして、設定は黒髭が考えた究極の 対魔力装甲搭載汎用人型人理継続補償戦機
伊達に機械・機構系の学校を目指していただけあってメカ系の絵は上手いぐだ男。たまたま落書きのように書いたラフに黒髭が興味を引かれてそこから立体化まで到達したのが今回のこれだった。
「フィギュア作成:A++をナメてもらっては困──」
ポキッ。と嫌な音がして黒髭が固まった。次いでコツンとリノリウムの(っぽい)床に落ちた樹脂の頭部が真っ直ぐ黒髭を見ていた。
「……なんたる不吉!これヤバめ?また接合して合わせ目消してサフ吹いて……まぁ余裕っしょ。黒髭には大した問題では無かった マル。さーて直すでござる直すでござる!気合いチャージ。ティウンティウンティウン──」キュピィィィィン!(NTの音)
口に出している効果音とは別の効果音が黒髭の脳に電流を走らせたかのように作用する。
「ナヌ!?これは」
「──て言う経緯であった。拙者が製作したフィギュアはスキルの恩恵で自然に壊れることはないんで危険事態と察知したでござる」
「黒髭さんにそんなスキルが……?兎に角、ドクターに相談してみます!ありがとうございました黒髭さん」
「人生を楽しめ乙女」
マシュが立ち去ったのを見送った黒髭が小さな声でそう呟いた。
◇
「ゴブッゥ」
また死んだ。この痛みと恐怖にはそう簡単に克服出来るものでは無い。しかし、克服しなくても構えることは可能だ。いつどこで殺されるか分かったものではないが……。
──つまらない。
暗い暗い海の底。光も届かない地上の生物には死の世界で嫌と言うほど聞いた声が頭に直接流れ込んでくる。
──その異常なまでの精神の強さは何だ?何が貴様をそこまで支える?
そんな事は言うまででもない。ただ諦めたら死んでしまうなら生き延びるために諦めないだけだ。俺が死んだら人理も終わるから。
生きていたい。また誰かと笑い合いながら話をしたい。馬鹿なことして盛り上がって、思いでになって、また新しい出会いをして……そんな楽しい事がこれからまだ起こるというのに、簡単に死んでやるものか。
──貴様が駆ける人理修復の旅は終わった。それでもまだ駆けるというのか。
ハッキリ言ってソロモン……ゲーティアを倒したことで俺の仕事は終わった。後はカルデアの外の世界が混乱を起こしながらも今回の事件の処理をしていくだろう。
だけど、皆にまだお別れを言ってないしマシュとの契約がある。だからまだ死ねない。この俺の残り少ないのかもしれないカルデアの生活を駆けていきたい。
──……それが、生きようとする力か。貴様に幾度となく起こした奇跡の理由か。
きっと奇跡なんかじゃない。
皆偶然……俺が廊下で目を覚ましてマシュと会い、自室に行ってドクターに会い、爆発で崩れゆく中死が直前に迫っていたマシュと契約して、特異点を越えていって……英霊達の力を借りてなんとかこれた。諦めそうな時もあった。けど、諦めずにもがいた。もがいてもがいてもがいて、そしてピンチをチャンスに変えた。
無限とも思える並行世界があるように、一瞬一瞬にも無限とも思える可能性がある。決して零ではないがほぼ零のものばかりだろう。それでも、それを掴みとって。
──僅かな可能性を求めて足掻いた結果の必然……貴様はそう言いたいのか?
分からない。必然ではないのかも知れない。でも奇跡でもないのかも知れない。
──だがそれでも貴様はここまで来た。我らを倒し、魔神王を倒した。そればかりは素直に誉めよう。
そりゃありがたい。
──だが私とて最期の最期に生への渇望を得た。貴様達が我々を容赦なく蹂躙していく様をみて、初めて生きたいと感じた。しかし、これでもかつては邪神として伯爵の階を得ていた私だ。そう簡単に逃げるわけにも行くまい。であれば、残る全魔力を以てして呪いをかけるのが貴様を苦しませながら殺すのに最適だと感じたのだ。
成る程。例え俺が勝っても負けても死ぬようにと呪いをかけたのか。と言うことはやっぱりお前もあの採集戦……あそこにいた魔神柱の一柱か。邪神……伯爵……生憎ソロモン七二柱は詳しくないから誰かは分からない。
──さぁ、歯を食いしばれ。目を見開け。必死に息をしろ。恐怖から逃げ続けろ。死を体感しろ。貴様にはその権利が有り余っているのだ。
権利なら断る事も可能だろう。義務ではないし。
──断る権利など貴様にはない。あるのは死だけだ。
「──っはぁ!……っく、また……」
瞬き1つで変わって周りの風景。
また始まる死へのカウントダウン。いつどこで殺されるか分からない恐怖をまた感じなければならない。
これで何度目だったか……もう数えるのが辛くなった。
「クソッ……何も出来ないのか!」
何をしても結局は死ぬ。何度か自殺をしかけた時もあった。だが、それは許されないらしく、その時は惨い殺され方をされたし見せられた。
「ぐだ男ー。マシュさんが来てるぞー」
「……今行くよ。どのみちすぐに逝くから」
呼ばれ、階段を重たい足取りで下りていく。もう嫌だ。痛いのも、苦しいのも、怖いのも、熱いのも、冷たいのも、何もかも何もかも何もかも何もかも何もかも何もかも何もかも何もかも何もかも!!
「……」
どうせ死ぬんだ。そしてまた死ぬ。そう思えばいつの間にか気が楽になっていた。
「……やぁマシュ。今回は何の設定なの?」
「設定……?何を言っているんですか先輩!やっと見付けました。早く目を覚まして下さい!これはただの夢なんかではありません!」
「あー……今回はそう言う趣向か。はぁ……止めて欲しいな」
「先輩!?お願いですから話を聞いて下さい!でないと……」
「──ぅぶぇぁがっ!ああああ!!」
腹から下にかけて生温かい液体が赤く染め上げる。
「でないと……先輩を殺してしまいます。私を置いていかないで下さい……私を求めてください……私の手を、握ってください」
「……っぶ、ぁぁ……違うよ。君はマシュじゃない……」
「また……そう言うんですね先輩」
体から痛みが抜けていく。また“繰り返し”が起きるのだろうか?今までは完全に死ぬまで意識が保たれていたからこんなのは初めてだ。
「私は確かにマシュ・キリエライトではないです。ですが、先輩への想いはどんな形であれ同じ様に抱いています。それは現実の、本物の私も同じ。だから先輩──必ず生きてカルデアに帰ってください。私はこの呪いの一部……助けることは出来ませんが、身を案じる事は出来ます」
──そこまでだ。術式の分際で勝手は許さんぞ。
不意に足場が安定しなくなり、マシュが離れていく。彼女の悲しそうな顔は本物のそれと変わらなくて……。
◇
「……ここは……」
漂う嫌な魔力、重圧感、そして全方位耳を塞いでも聞こえる先輩と思しき苦悶の声や断末魔の叫び。
暫くこの空間に居たら精神が汚染されそうな程の“これ”はやっぱり先輩の──
「ここは廃棄孔。先輩の恐怖や痛みがここに廃棄されています。そして、不要になった術式も同じです」
「え……?」
目を疑った。突如として現れた人影……目の前にいるのは先輩ではなく、私だった。
「初めまして本物の私。いえ、本物に私と言うのが変でしょうか……それより、良く来てくれました。貴女なら必ず来ると思ってましたから」
確かに私は黒髭さんから話を聞いた後、ドクターとダ・ヴィンチちゃんに話して漸く先輩の夢と同期させることに成功し、今この夢の中に来ました。ですが、その先輩の夢の私がどうして私が来ると分かっていたのか。
「貴女は先輩の夢の私ですか?答えによっては──」
「そう構えなくても私は害を加えたりしません。寧ろ貴女に先輩を助けてほしくてわざわざこの廃棄孔に引き寄せたんですから」
「!やっぱり先輩は危ない目に!?」
「……何度と殺され、精神を削られています。このままでは先輩の精神の奥……魂が殺されてしまいます。先輩の精神は強靭ですから、精神を先に崩さないと魂が出てこないんです。ですからこんな回りくどい事を」
「……誰がっ、誰がそんな事を先輩にしているんですかッ!!教えてください!」
「残念ですけど、私はその誰かに作られた呪いの一部。その手の答えは出せません……ですがこれだけは言えます。呪いをかけた者はソロモン七二柱の一柱です」
「魔神柱……それは消滅したのでは無かったんですか!?」
「消滅しました。けど、全てが消滅した訳ではありません。中には──いえ、それよりも何故魔神柱が先輩に精神攻撃を出来ているかお話しします。要するにこの夢は呪いなんです。魔神柱の最期の魔力を以て作られたこの呪いは外部から解体は出来ない代物です。ですから内、先輩の夢の中で呪いの核、魔神柱を倒さないと行けません」
「そんな……」
「でも貴女と先輩なら大丈夫。すぐに先輩を助けに行ってください。私には手を差し伸べる事が出来なかったから……」
「──はい!必ず」
「じゃあ……お願いします」
短い対話が終わってすぐ、夢の私が強く発光して世界が真っ白になる。
遠くなる先輩の阿鼻叫喚や吐き気がするような空気。数秒に及ぶ浮遊感を得た私は、遂に探していた人……先輩の影を見付けた。
ところでゴルゴーンの豊満すぎる胸もいいのだが、お腹も凄く良いんですが分かる人居ないかな……?