Fate/Grand Order 「マシュ。聖杯ってよく拾うけど全部願望器として機能してるの?」「勿論ですよ先輩」「じゃあソロンモさんを永み─」「先輩!」   作:第2類医薬品

18 / 82

まさかのぐだぐだ明治維新がシリアスな展開になるとは思わなんだ。
そんな事より、キャットのフィギュアが来年1月発売予定とな?これは全国のご主人諸君も楽しみなのではなかろうか。あ。あと誤解が無いように言っておきますと、私猫は嫌いですがキャットは好きという。


Order.18 夢の間に

 

 

 

 

 

「ハー……ハー……」

 

「凄いよ彼は。あのゲーティアを1人で打倒して、五体満足で帰ってくるんだから」

 

「はい。マスター……先輩は、世界一のマスターです」

 

「そう言うマシュもゲーティアの宝具から彼を守りきれたんだ」

 

「──はい。ですがドクター。私はあの時、確かに死んだ筈です……でも、何故かよく覚えていないんですが、誰かに『死者の完全な蘇生』と……」

 

「いくらなんでも魔法ですら到達しえないそんな奇蹟のような事が起こるのかな……。でも、現に君はここにいる。理由はよく分からないけど、それならそれで良いじゃないんかな?あのままゲーティアに勝てたとしても、君の命は……」

 

「3日も無かった筈です」

 

「それが今では体は生まれ変わったんじゃないかってくらい強くなって……その様子なら、短い寿命に悩む事も無さそうだしね」

 

「はい。こうしてまた、このカルデアに戻ってこれた事。先輩のお側に居られることがとても嬉しいです」

 

「うん。それをぐだ男君にも言ってあげると喜ぶよ。目を覚ましたら君が一番最初に側に居てあげてくれないかな」

 

2人はそう言ってガラス越しに眠っているぐだ男を見やる。

 

「ハー……ハー……」

 

「先輩……」

 

帰還から丸1日が過ぎた。未だ目を覚まさないぐだ男は痛々しい姿で沢山の管に繋がれている。

普通ならサーヴァントによるスキルや魔術で治療がなされるのだが、今回は無理な召喚による反動か、そういった類いが一切使えなくなっていた。

だが単純な技術までもが使えなくなった訳でもない。ナイチンゲールを始めとした医療に知識のあるサーヴァントやカルデアの医療スタッフで18時間の大手術を行い、左腕と顔の右半分は何とか原型を取り戻していた。

しかし──

 

「マシュ。実はぐだ男君の左腕と右半分の顔面は姿こそ良い方にはなったけど、恐らくその機能は果たせないと思う……」

 

「──そんな!では先輩は目を覚ましてもマスターとしては……」

 

「このままだとマスター復帰は無理だ。レオナルドが義腕とか考えてくれてるけど、正直サーヴァントのスキル復活を待った方が確実だ。だから今はカルデアの復旧に駆り出してるよ」

 

「……ドクター。私も手伝わせて下さい。ただ待ってるだけなんて、最後まで独りになっても戦った先輩に合わせる顔がありません」

 

「マシュ……分かった。早速幾つかお願いするから、来てくれ」

 

「はい!……先輩。待ってて下さい」

 

 

夢を、見ていた。

 

「行ってくんね」

 

「帰りは?」

 

「夕方ー。長引いたら電話するから」

 

「はーい」

 

俺は大きいバッグを背負って家を出た。

やや重量があるそれには高校で格好いいと思ったから入った部活、アーチェリーの道具一式が詰まっている。

中学の時はスポーツが嫌だったから漫画研究部でダラダラと過ごしていたけど、この部活は割りとこなしていた。走り込む必要もあまり無いし、運動部としては動かない部類のものだったからだろう。

とは言え、真面目にやっている訳でもなかった。普通にやって普通に帰る。時には友達とサボって帰ることもあった。休日の練習も行くには行くけど75mを1時間程射って後は後輩の面倒を見るだけ。成績も中の下か中。

でも大学(・・)でも何となく続けていた。

 

「おはようございます先輩。今日も宜しくお願いします」

 

家を出ると眼鏡をかけた少女が待っていた。

マシュ・キリエライト。海外からの留学生で今年で17歳だというのに飛び級で同じクラスになった。彼女はアーチェリーをやってみたかったらしく、訳あって俺が教えている。

彼女との出会い?あまり良いものではないが、入学して初めての授業の日に、学内ベンチでうっかり寝てしまっていた所を起こされたのがそれだ。彼女は何故か同学年かつクラスメイトの俺を先輩と呼ぶが……あまり気にしないで方向で固めている。

 

「おはようマシュ。待たせてごめん」

 

「そんな事はありません。私もついさっき来たばかりですので。私こそ、先輩に道具の手入れを任せっきりですみません……」

 

「大丈夫大丈夫。慣れない内はいくらでもやってあげるから。じゃあ行こうか」

 

「はい」

 

バッグをマシュに背負ってもらい、俺は庭からバイクを押して出る。

カワザキのkenja400Rに2人で跨がってエンジンをスタート。目的地はここからバイクで15分の所。

背中に当たる柔らかい感触に鼓動を早めつつも、俺は命を預かる運転者としての意識に切り換えてギアを入れた。

 

 

ガシャンッ!

 

「──あ」

 

「わ。大丈夫ジャンヌちゃん!?怪我してない?」

 

「だ、大丈夫ですっ。ごめんなさいお皿割っちゃって」

 

昼食時。カルデアの復旧作業に当たっているからか、食堂ではいつものような賑やかさは無かった。特に低年齢サーヴァントの一部にはマスターのぐだ男が死んでしまうのではないかと子供らしい反応を見せて元気がない。

今しがたボーッとしていて皿を割ってしまったジャンヌ・サンタもその1人だ。

 

「……ぐだ男が心配?」

 

「ぅそ、そんな事はありませんっ!マスターさんは大丈夫だって信じてますから!」

 

「そうだね……彼なら大丈夫だよ。正直心配だけど、マスターへの信頼を無くしたらそれこそおしまいだと思うから」

 

ブーディカが割れてしまった皿を集めながら空いている手でジャンヌの頭を撫でてやる。その優しさに彼女は我慢できなくなったのか、涙を流しながらブーディカの胸に顔を埋めた。

いくらサーヴァントとは言え、精神的には子供。しかも、存在が特異中の特異であるが故に初めてのマスターがぐだ男で先日死ぬほど怖い戦いを経験したばかり。抑えていたものが溢れだして、泣き出してしまった。

 

「マスターさんがぁ……死んじゃったらどうすれば……わぁぁぁんっ」

 

「大丈夫、大丈夫。必ず帰ってくるから」

 

その後、彼女が泣き止むまでに数分かかった。

 

 

「……?泣き声……」

 

「っ、ふぅ。先輩、どうかなさいましたか?」

 

「ぁいや、泣き声が聞こえた気がして……………気のせいか。ごめんごめん、何でもないよ。で、どうだった?結構ポンド上げてみたけど」

 

「はい。中々重くなりました。これなら、大丈夫です」

 

「あ、いつもと変わらず腕で引くんじゃなくて背中で。本体は握らずに反力で押すだけね」

 

マシュはまだ練習用のアルミ矢だが、カーボン矢に変えるのも近いだろう。こんなに上達が早いと教えている俺がその内教えられる立場になりそうだ。

 

「フォロースルーもなるべく意識してね。……そそ」

 

「先輩の指示は的確でありがたいです。こんな休日にまで本当にありがとうございます」

 

「良いよ良いよ気にしないで。どのみち家に居ても本を読み漁ってるだけだし……でも、俺はそんなに大した実力も無ければ熱意も──」

 

────。

 

「え?」

 

「先輩?」

 

「……何か聞こえ──」

 

ヒュッ。

風切り音が一瞬聞こえた。次の瞬間、俺の視界は何かを叫ぶマシュと赤色で滲んでいって──

 

「──あれ?」

 

気付けばそこはカルデアの自室だった。

何か額に痛みを感じた気がしたけど……寝ぼけてたのか?

 

「そう言えばゲーティアを倒して……」

 

そこからの記憶が曖昧で思い出そうとすると頭が痛くなる。兎に角、誰かに話を訊こうとベッドから起き上がり、自室から出た。音があまりしないから、夜なんだろう。それでも誰か起きている筈。

 

「……」

 

ドアを開けると言葉を失った。目の前で起きている事が理解できない。否、理解を拒んでいた。

静かだったのは夜だからではない。音を立てる者が誰も居ないからだった。

鼻を刺す血と焼ける匂い。視覚に容赦なく飛び込んでくるサーヴァント、スタッフの死体。無惨な殺され方で、俺は思わず吐き気を催して膝をついた。

 

「な、何がどうなって!」

 

右を向いた時、俺は死を感じた。

巨大な影が、誰かの首を持って立っているのだ。燃え上がる炎のせいで姿を良く見ることは叶わない。だが、左手の首は見えた。見えてしまった。

 

「……マ……シュ?」

 

嫌だ。嫌だ……嫌だ……嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!!

 

「──あああああああああああああああああああッッッッ!!!!」

 

 

「ん?」

 

ぐだ男の点滴を取り替えに来たナイチンゲールが何かに気付いた。

素早く点滴を取り替えてぐだ男の首に指を当てて、一気に顔を険しくする。

 

「何て事……!」

 

布団をひっぺがし、服をはだいて心臓マッサージを開始。一方、ガラス越しに見ていたネロ(嫁)と清姫がそれの意味を察して卒倒した。

 

「貴方はまだ死んではいけない!そんな若さで死ぬ必要などありません!」

 

 

何回殺された?

 

何回死んだ?

 

分からない。どうしてこうなってる?

 

分からない。

 

何回コろされた?

 

何回死ンダ?

 

コロされた。しんだ。コロ、サレタ。シンダ。

 

何回?なんかイ?ナんカイ?ナンカイ?

 

カゾエルノモ、バカバカシイクライコロサレタ。

 

──苦しいか?

 

クルシイ。

 

──死にたいか?

 

モウ、ナンカイモシンダ。イマサラシニタイトカ、バカバカシイ。

 

──もう終りにしたいか?

 

オワリ……?オワリカ……。

 

ふと思い出した。何回と死んでゆく中で、必ず側に居てくれた彼女の事を。

 

モウ、アエナクナルノハ……イヤだな。

 

──失う辛さはもう味わいたくないだろう?

 

「イいヤ……いいや!オレは……俺はまだ終わらない!やっとハッキリしてきた……お前が誰だか知らないが、生憎俺の取り柄はしつこさだ!そう簡単に死んでたまるか!」

 

──やはり、貴様にはまだまだ苦しんでもらうしか無さそうだな。あと二万回……死んでもらうぞ。

 

「じょ、上等だ!よくよく考えればさっきので101回目だったが、あと二万も変わらないね!」

 

──いや、滅茶苦茶違うんだが……。

 

「五月蝿いわ!101匹ワンちゃんの気持ちになってみろ!」

 

──訳が分からん。だが!貴様が再び死を味わうことには変わり無い。確実に、精神が音を上げるときが来る。その時まで待ってやる。

 

……正直二万なんて耐えきれる自信がない。100回越えてさっきのあれだったのだ。まぁ、是非もないよネ!人間だもの!

 

「へっ……頑張るか……」

 

また始まる死のオンパレード。俺は頬をひっぱたいて気合いを入れた。

 

 

ピッ……ピッ……ピッ。

 

「という訳で彼が心停止になったので心拍計を導入しました。今回は心停止から数秒かどうかというレベルでしたので事なきを得ましたが、これからは管理体制を見直して少しの異変も逃さないようにお願いします」

 

「それならば私がぐだ男様のお側で──」

 

「貴女の毒は今の彼には良くありません。いくら対毒か耐毒を有していてもその体が弱っているのでは話になりません。却下です」

 

「それならばこのは──」

 

「貴女は看護という言葉を吐き違えています。まったく……そんな甘い考えだからバーサーカーになるんです」

 

「ではわ──」

 

「貴女は論外です。話になりません」

 

患者の、しかもマスターの命を危険にさらした事が彼女の狂化スキルを更にパワーアップさせたのか、夜ぐだ男の部屋に侵入してくるトリオをバッサバッサと切り伏……切開していく。特に清姫に対しては5文字以上の発言を許さないほどに当たりが強い。

 

「うむ。それならばこの余が!ぐだ男の世話係として付き添うしかあるまいな!異論は無かろう鋼鉄の天使よ」

 

「大有りです。貴女は何が出来るのですか?」

 

「勿論、愛を華をとこの余の膝の上で甘やかぁ~すのだ!時折リンゴを切って食べさすのも良いな」

 

「却下です」

 

「な、何だとッ!?」

 

「ナハハハ。よもやご主人大好きローマですら敵わないと来た。これは野生に身を任せて極楽浄土に看護するしかないナ。という訳でご主人のペットはア・タ・シ。このキャットが管理するしかないという事だ。やはり管理にはExcelが有効か」

 

「その手足、髪、尻尾の消毒・殺菌を今すぐ行いなさい」

 

「残念だが既に手遅れ故な。ここに入る直前に処理済みだワン!」

 

「心得はあるのですか?」

 

「任せろティーチャー。キャットとは野生の獣……野生とはすなわち弱肉強食。生きるか死ぬかの戦いは日常茶飯事。ならば命を管理する心得は本能に刻まれている。因みにご主人がたまに美味しそうに見えるのも本能故な。許せ」

 

「では貴女に任せましょう。ここにスケジュールが書いてありますのでそれ通りに」

 

「ガッテン」

 

キャットの野生パワーはOKだったようで、割りとあっさり管理者にされる。

しかし、よりにもよってバーサーカーばかりが有能なのかはカルデアの謎だ。このナイチンゲール然りタマモキャット然り。

何にせよこれによりぐだ男の安静室に殺到していた管理者候補も抗議しながら散っていく。ここでもまた、戦いが終わったのだ。

 

「では私はこの件をドクターロマンに報告しなくてはならないので後をお願いします」

 

「任されたゾ。と言いつつ着替えを始めるキャットであった」

 

看護と言えばキャット。キャットと言えばナース。ナースと言えば看護。このウロボロスのような関係性は世の理だナ。とはキャット談。

その言葉通り、ピンクのナース服と聞いたら万人が思い浮かべるようなそれを着こなしたキャットが犬の手足はどこへやら。人の手で慣れた手つきで体温等をチェックしていき、点滴を取り替えて満足げに胸を張った。

 

「しかし看護とは奥深いな。こうして大義名分を持っておけばご主人に何をしても許されると言うもの。ここは野生の本能に従うが(キャッツ)

 

何をしても許される訳ではないし本能に従うのはGoodではない。しかし、そんなツッコミをかませる者はいない。カーテンも閉めている以上、外からどうなっているかの目視は出来ない。

それを知ってか知らないでかはこのナマモノのみぞ知る(Cat only knows)

 

「という訳で汗拭きだぞご主人ー!」

 

このあと滅茶苦茶綺麗になった。

 





毎回キャットの不思議な言い回しとか特徴が上手く表現できなくて詰まるんですよね……。もうちょっとキャット語が上手くなりたい。
因みに私の所のキャットはレベル100の宝具4なので無課金でなるべく宝具5にしたいがぁ……!て言うかバーサーカーがもっと来ないかなぁ。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。