Fate/Grand Order 「マシュ。聖杯ってよく拾うけど全部願望器として機能してるの?」「勿論ですよ先輩」「じゃあソロンモさんを永み─」「先輩!」   作:第2類医薬品

14 / 82
かなり間が空いてすみません。
ちょっと忙しい時期でしたもので……内容もかなり酷くなってます……
誤字とか多いかもしれませんが、自分でもまた確認しておきます


Order.14 スポーツ!Ⅱ

 

 

 

「マスター。先刻の攻防……何をした?」

 

「私も気になります先輩。あのスカサハさんからボールを奪うなんてとても先輩に出来るとは……」

 

「……まぁ、俺にそんな実力なんてな……」

 

「あ、いや、そんな事はないです先輩!」

 

「さてともかく。さっきのはスキルを使用しただけだ」

 

「スキルを?」

 

「そう」

 

簡単な話だ。

先ず、俺は瞬間強化をかけた後すぐに緊急回避と必至を使用した。緊急回避は師匠の防御(の余波から生まれる攻撃)を掻い潜るために。必至はボールへとターゲットを選択して必中状態になってボールを奪うために使った。

かなりバフを盛ってやっと、師匠からボールを奪うことに成功した。

正直な話、途中の魔境の智慧は予想外。もし師匠が無敵化を使ってたら今頃ベッドの上だ。何しろ無敵貫通スキルを持ってないからな。

 

「やっぱり先輩は凄いです。私はボールを止めるので精一杯なのに、キングハサンさんやスカサハさんに立ち向かっていくなんて」

 

「一応キャプテンだしね。それに優勝特典で破滅したくない」

 

「マスターは誰の要望を恐れているんですか?」

 

「良い質問だギル。皆が想像する不特定多数の問題英霊達の要望全てだ」

 

「うわー。難儀ですね」

 

そうだろう。と返すとジャンヌ・サンタ・リリィが……何か簡単な呼称は無いものか……取り合えず彼女は邪ンヌ・リリィと呼ぼう。

 

「トナカイさんトナカイさん。ボーッとしてません?」

 

「っとごめんジャンヌ。それで、挙手してどうしたの?」

 

「えっと、後半戦はどう動くのか訊きたくて」

 

「そうだなぁ……もう師匠に同じ手は効かなかったしカルナも『真の英雄は眼でドリブる!』とか言ってちょくちょく上がってくるからキツくなったよな」

 

警戒すべき相手はフィン、師匠、キングハサン、カルナ。その四強を相手にどう立ち回れば良いのか分からない。

こんなんだったら魔神柱相手に単独で突る方がずっと楽だ。

 

「兎に角得点は何とか稼いだ。が、8対6でこちらが劣勢……後半戦で3得点無失点を叩き出さないといけないからかなり厳しい戦いになる!だから滅茶苦茶な指示を出すかも知れないけど最後まで諦めるな!」

 

とは言ったものの、サーヴァントのパワーが乗ったボールを受けるマシュが限界を迎えている。これでは無失点は無理だ。どうする……?

 

「……ネロ。少し良いか?」

 

「む?どうしたぐだ男よ。余であればいつでもそなたの言葉を待ってるぞ」

 

「ぉ、おぉ……何か待たせてたみたいでごめん」

 

「謝るでない。確かに、前話で余の登場は名前のみ。しかもメンバー紹介の時以降で全く触れられなかったのはちと物申したかったが……それはそなたの意思ではない。あのソロモンとやらを一頁で終わらせるつもりと豪語する作者と呼ばれる者が─」

 

「メメタァァァァァアアアッ!!メタいからマスターストップです!」

 

「ぬぅ?良いではないかぐだ男。あのソロモ─ん?何だと?そろ……んも?」

 

「ところでご主人。後半戦からはポジションの変更が宜しいと思われ。マシュが無理ならご主人がバフの重ねがけでゴールを死守するしかないナ」

 

キャットが差し出したメモには俺にかけられるべきバフの一覧と各サーヴァントによるボール威力。空気抵抗やらベクトルやらでびっしりと埋まっていて、相当な計算が成されていることが伺える。

お前はバーサーカーではないのか?

 

「俺があの並み居る強者達のボー─ん?何これ」

 

「き、キャットさん!私はまだ大丈夫ですから、先輩は司令塔として……先輩?」

 

「んぁ、ごめんごめん。何でもない。えーと、で……ネロ。さっきの続きなんだけど、マシュをスキルでカバーして欲しいんだ」

 

「おぉっ、そう言うことか。任せよ」

 

「ジャンヌも宝具で攻撃はしなくて良いからマシュにバフを。マシュも自分にスキルを使ってガチガチに防御を重ねてくれ。後は俺達が先に3点をソッコで取って耐えるだけだ。頑張ってくれ皆!俺も死ぬ気で頑張る!」

 

 

「おうおう。あちらさんはかなりやる気があるみてぇだな。んで、どうするよフィン」

 

「マスターは私の予想を上回る動きを見せています。まぁ、分かっていた事ではあるが!」

 

「分かっていたのならそれを阻止すべく動かんか。……確かにぐだ男相手では中々予想通りに動かないものだが、それでもな」

 

「そうだよなぁ。ぐだ男相手じゃ流石のフィンも親指噛みっぱなしじゃねぇのか?」

 

「絵面的にはただのおしゃぶりしてるイケメンにしか見えないな」

 

後半戦に入る前のインターバルで、チーム『DHA』もぐだ男の土壇場の底力にどう対抗するべきかを考えていた。

例え物理的な力で遥かに勝ろうとも、強靭極まりない精神の持ち主相手では覆されてしまう。

例え宝具に昇華した分析力で遥かに勝ろうとも、咄嗟の機転が大概予想だにしない相手では覆されてしまう。

彼らが相対するのはそういう男─人類最後のマスターなのだ。

 

「エリンの守護者よ。その力に頼っていては契約者には勝てぬ」

 

「“山の翁”殿……我が王よ。このディルムッドがマスターと一騎討ちを行います。私の宝具であれば彼の自己強化スキルを無効化させる事が可能です」

 

「……指を噛まずして、か……よし。であれば今一度乞う。影の国の女王よ。その慧眼や知識、経験をもってして不甲斐ない私の代わりに司令塔をお願いできないでしょうか」

 

「聞き受けたぞエリンの守護者、フィン・マックール。その実力、衰えてはおるまいな?」

 

スカサハが口角を上げた。

 

 

ホイッスルと共に後半戦が開始される。

スカサハとフィンの読み通り、マシュにバフを重ねがかけた『グダーズ』。後半戦中間までも読み通りだった。

しかし、バーサーカーである筈のキャットの読みも当たっており、『DHA』も攻めあぐねいていた。それにより互いの点数は変わらず、体力だけが削れていった。

 

「バーサーカーとは一体……」

 

「言うんじゃねぇディルムッド。特にあの猫だか犬だか何だか分からねぇナマモノに関しちゃ常識なんて効かないからな」

 

「キャプテンが師匠に変わってからもっとキツくなった……けどキャットの読みがこうも当たると……」

 

「やはりあの生き物はオリジナルのように若干世の理から外れてる気がしませんこと?」

 

両チームがキャットのスペックに再度驚きつつもボールを奪い合っていると、不意を突いたかのようにホイッスルが鳴る。

 

『あ。クー・フーリン(術)選手がファウルです。ペナルティエリアでギルガメッシュ選手相手にファウル』

 

『あれかな?ギルガメッシュ選手の挑発に乗りすぎたのかな?』

 

「来たッ!PKだ!集合、全員集合!」

 

フィールドの誰よりも早くメンバーを集合させるぐだ男。

一方のスカサハは分かりきっていた挑発に乗ったクー・フーリン(術)を審判が目を逸らした隙にどつく。

 

「ゴルゴーン、お願い」

 

「断る」

 

即答。

 

「……だよね。いくらゴルゴーンでも緊張して恥ずかしいもんね」

 

「違うわ!」

 

「じゃあやってよ」

 

「へ、ヘラクレスで良いだろう!コイツの筋肉を見てみろ!」

 

「じゃあこれを見ろぉ!……刮目せよぉ!」

 

「何故2度言う!?」

 

大事な事を言うので2度繰り返したとぐだ男。ベンチから持ってきたタブレットを見ると、そこには各サーヴァントの名前と顔写真が羅列している。

あいうえお順のそれを筋力順にソートすると、筋力:A+のヘラクレスを差し置いて筋力:A++のアステリオスをトップにゴルゴーンが続く。

全サーヴァント中、そのステータスを持つのはこの2名しかいない。

 

「ぐっ……私はそんなに筋肉質では……!」

 

「黙らっしゃい!現にこのステータスが全サーヴァント中トップだと語っている!」

 

「……いい加減にしろ。せめて優しく殺してやろうと思っていたが、気が変わった。早く死にたいとせがみたくなるよ─」

 

「令呪を以て命ず。従えゴルゴーン」

 

「このサディストがあああああああ!!」

 

結局令呪でゴルゴーンをキッカーに指名してPKが始まる。

 

「覚えていろマスター……」

 

「ハハッ!流石にマスターには逆らえませんでしたか!この前私を石にしたような眼力は何処へいっ」

 

ゴールキーパーのレオニダスが喋り終わる前に怪力スキルも乗った1球がゴールごと約100m後方へブッ飛ばした。

 

「やりすぎだろ」

 

「ふんッ。これくらいサーヴァントなら誰でも出来る」

 

ぐだ男に睨みをきかしたゴルゴーン。ぐだ男は目を合わせまいと下を向き、ディフェンスに戻るよう指示をする。

 

『ちょっと試合続行は難しいかな?フィールドの形変わってるし』

 

『レオニダス選手は大丈夫みたいだけどゴールがね……』

 

「取り合えずこっちで何とかしてみます」

 

『流石ぐだ男君。無人島を開拓しただけの事はあるね』

 

試合を中断。ぐだ男は過去に無人島を開拓したメンバーを集めてせっせとフィールドの整備とゴールの修理を始める。ルーンを使い、道具を使って終わらせていく。

ものの5分でボールを始めとした要具とフィールドが元通り。

数分の間を置いて試合が再開される。

ディルムッドがドリブルで上がってきたのをぐだ男が立ち向かう。

 

「マスターお覚悟を!破魔の紅球(ゲイ・ジャルグ)

 

「くぉッ!?」

 

右足で蹴られたボールがぐだ男に当たる。するとぐだ男が自信にかけていた強化魔術が全て掻き消される。刹那、ディルムッドの後ろから姿を現したフェルグスが声を張った。

 

「やっと出番か!では遠慮なくいかせてもらおう!虹霓球(カラドボルグ)!」

 

「グボォアッ!!??」

 

ボールがぐだ男の腹にめり込む。最早宝具とは名ばかりの強烈な間接攻撃。これならファウルにはならないとは言え、やっていることはどこぞの超次元サッカーと変わらない。

そして当のぐだ男はボールと同じ回転をしながら戸惑うマシュが居るゴールへと一直線。これでゴールすると勝ち目は無くなる。終わりだと何人かが思った時、事態が急変した。

 

「─ふんっ!!」

 

ズンッ!と地面に足が埋まる音とボールがテンテンと跳ねる音がフィールドに静寂を呼び寄せる。

 

「……せん……ぱい?」

 

「驚かせてごめんマシュ。もう大丈夫だ」

 

「マスター……?」

 

「おいマスター。“あれ”使っただろ?」

 

「うへぇ。オジサンそれ使われるとツラいわ」

 

クー・フーリン(槍)とヘクトールが警戒を最大にする。理由は突然変わったぐだ男の体格。身長こそ違わないが、身に纏うオーラと筋肉が既に敵対者へと集中している。

1歩踏み出す度に腓腹筋……所謂ふくらはぎが皮膚を押し上げ俺を見ろと言わんばかりに自己主張をし、爪先が土を抉る。ただ歩くだけで異様なまでのプレッシャーを放つその男は─筋肉(マッスル)だった。

 

「ムァスタァの筋肉ぅ!が戦いの熱に悦びを感じている!?」

 

「あれを使いやがったな!離れろディルムッド!フェルグス!」

 

「は─」

 

呆けるディルムッドとフェルグスに悪寒が走る。

それが危険信号だと分かり、後ろを振り向いた時には既に遅かった。

ぐだ男から放たれる濃密なオーラが2人を押し退け、先刻のぐだ男と同じように宙を舞う。

 

「筋系、神経系、血管系、リンパ系……疑似魔術回路変換、完了」

 

ぐだ男がぶつぶつと何かを呟くと、体中に魔術回路のような模様が浮かび上がり、心臓が脈打つように鳴動する。

筋肉も少しばかり隆起して更なる圧力を生む。

 

『何だいあれ!!??』

 

『あれは『錠剤P(友人のおくすり)』を飲んだ事でパワーアップしたぐだ男君だね。以前種火を飲んだときあったろ?それを更に改良した結果、カレイドルビーと巧いこと魔力パスを一時的に繋いで無尽蔵の魔力を補給。そして筋力アップに出力を回して第二形態のFの如く─』

 

後半戦開始直前、ぐだ男がキャットから渡された紙を見たときに一緒にあったもの。それがこの『錠剤P』だった。

 

『訳分かんないなぁ!!』

 

『さぁてぐだ男さん!準備は良いですか?』

 

ぐだ男と魔力パスを繋いだからか、ルビーの声が頭の中に響く。

それに無言で頷き返すとルビーから注意事項が付け加えられる。

 

『因みにですけど、コレぐだ男さんの体の強度上長くはもちません。ですので勝負はお早めに』

 

「ん。はぁ……行くぞ」

 

ドリブル。軽く蹴られたボールは凄まじい回転でその場で留まり、ぐだ男に蹴られてやっと前進できる。

スパイクが踏み出される度に地に食らい付き、足が地から離れる瞬間にそこを足の形に抉りとる。振られる腕は常人が眼で追える速度なのに風を斬る。筋肉が成せる技とは無限なのだ。

 

「無茶苦茶だ!」

 

「行かさん!」

 

クー・フーリン(槍)とスカサハが戦車となったぐだ男の前に立ち塞がった。

ケルト組の中でもトップクラスの2名ならば─と誰かが思った。

いくらマスターとは言え─と誰かが思った。

しかし現実は違った。

 

「─!」

 

パゥッ。とぐだ男の両目が某巨大人造人間のように煌めいて2人共に膠着した。

 

「馬鹿な……私の無敵化を貫通するとは……」

 

「ヤバすぎんだろ!こいつ人間やめちまったんじゃねぇのか!?」

 

「マスターが人間やめた!」

 

「この人でなし(パラケルスス)!」

 

「我が往くは筋肉の彼方─筋肉よ、隆々と盛り上れ(マッスル・シャトーディフ)!!」

 

ぐだ男がとあるアヴェンジャーよろしく稲妻の尾を引きながら複数人に増えた自分へとパスを回す。実は分身している訳ではなく、残像が残るスピードで移動しているにすぎない。要するにこれは、ドリブルと変わらないのだ。

やがてボールが青白く光り、掌から同じ色のビームを発射したぐだ男。そのアヴェンジャーも白眼を剥きそうな再現度だ。

ゴールキーパーのレオニダスも宝具を発動して対抗するが、召喚された300人の兵士がことごとく吹き飛ばされ、レオニダスの三角筋をボールが掠めた。

 

『えげつな。ゴールネット破ったし』

 

『訳が分からないよ』

 

伝説の超次元サッカーでさえゴールネットを破ったのは数回あるかどうかというゴール最強補正をも貫通するシュート。いや、そもそもこれがシュートであるかないかの議論が生まれるが置いておこう。

 

「これで……同点……」

 

パリンと何かが弾けた。それと同時にぐだ男が倒れ、敵味方問わずサーヴァント達が駆け寄っていく。

凄い、大丈夫か、どうしたと各々が様々な質問をしてくる中、ぐだ男の意識は真っ暗な海へと沈んでいった。

 

 

先輩が担架で運ばれて10分くらいした後、試合が再開しました。

私たちのチームはキャプテンである先輩が居なくなったので、副キャプテンであるキャットさんが代わりに。さっき「ご主人が倒れた以上、夫と妻の関係にあるアタシが頑張らないと駄目だナ。よぉし、キャットはここで狂化を解くゾ♪」と言ってから的確すぎる指示を飛ばしてきます。

観客席の玉藻さん(オリジナル)が「相変わらず全くもってキャラが安定してませんねあのナマモノ。まぁ、流石私の分身と言いますか」と変に感心してる。

 

「マシュ行ったぞ!」

 

「はい!」

 

フィンさんが単騎で突撃してくる。ヘラクレスさんとゴルゴーンさん相手に無謀だと思います。けど、彼は一切躊躇なくボールを操り、すり抜けてくる。

 

「いざ華麗に!」

 

「先輩が繋いでくれた1点……無駄にしません!」

 

シュートをパンチングで弾く。ボールは再びフィンさんの元へ。

 

「まだまだ終わらんよ!」

 

「■■■■!!」

 

シュート体勢へ移行した瞬間にヘラクレスさんが間に割り込んでそれを阻止する。

大きな体でありながらボールだけを器用に奪うと子供のギルガメッシュさんにパスをする。

 

「ととっ。さぁ決めちゃいましょうか。しかし、こんな物をここで出せるとは思いませんでした」

 

「黄金の……靴!?」

 

「こんな使い道の財宝もあると言うものです」

 

炎門の守護者(テルモピュライ・エノモタイア)ァァァァアアアア!!」

 

某少年コミックの探偵シュートよろしく極限まで歪んだボールが一閃。300人の兵士達を薙ぎ倒していく。

しかし、2度目はないと兵士達も眼を爛々と輝かせてボールへ立ち向かう。時間にして7秒、半数の兵士を消費したが追加点を阻止。

その後も両チーム共に激しい攻防が続き、遂に試合終了のホイッスルが鳴り響いた。

 

「……すみません……先輩」

 

「■■……」

 

「むぅ……力及ばずか……」

 

チーム『DHA』得点9点。チーム『グダーズ』得点8点。

先輩の決死の攻撃もむなしく、私達は敗北しました。

 

 




この話からサーヴァントがぐだ男に対する呼び方をマスターで大体統一していたのを変えていきます。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。