Fate/Grand Order 「マシュ。聖杯ってよく拾うけど全部願望器として機能してるの?」「勿論ですよ先輩」「じゃあソロンモさんを永み─」「先輩!」   作:第2類医薬品

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はじめまして。

今回、妙なテンションで書き始めたFGOの二次創作ですが、自分は素人です。
全くの処女作ですが、Fateシリーズは原作からやって(読んで)きましたので、流石のド素人ではないと思います……。

まぁ、別に他のシリーズを弄るわけではないのでFGO世界をテンション高めに書いていこうと思います!

因みに本作のぐだ男は

対毒:EX
危険感知:B
コミュニケーション:EX
(話によってスキルの追加も有り)

がデフォでお送りします。




Order.1 ぐだ男、ゲイボる

 

 

 

 

 

「いくぜ!」

 

土から生えてきたような手のエネミー。

それは掌を上に向けて炎と結晶を浮かべていて、全く無知の人間でも近付けば危険だと分かる。

 

「これぞ兄貴直伝!」

 

俺はそのエネミーに向けて中腰で槍を構え、気持ちを落ち着かせる。

 

「おぅおぅ。随分胴に入ってるじゃねぇか。こりぁ想像以上に良い出来だな」

 

「クー・フーリンさん……先輩は大丈夫でしょうか……?」

 

「安心しろ嬢ちゃん。ルーンが入った槍とここ数週間の地獄の特訓があるんだ。腕の1体や2体何て事ねぇさ」

 

「フォウフォーウ!」

 

後ろで何か話しているが俺は一瞬たりともそれに意識を向けてはならない。

俺の眼に映るのは目の前のエネミーただそれのみ。

兄貴ことクー・フーリンから教わった必殺の一撃(の劣化版)を今ここで叩き込む!

 

「その心臓、貰い受ける─!」

 

決め台詞を腹の底から絞り出して駆け出す。

 

刺し穿つ若棘の槍(ゲイ・ボルク)!」

 

捉えた!

俺が突き出した槍は寸分違わずエネミーのど真ん中を貫いた。貫いたのだが……。

 

「あっちゃぁ……倒しきれなかったか」

 

「あぁ……やっぱり心臓を貰い受ける(ゲイボる)ことは出来ないんですね……」

 

「ぐっ……それはこっちの心臓に来るぜ嬢ちゃん」

 

「フォウ……」

 

「それよりも助けてぇぇぇ!おぐぅ!?」

 

今度は俺の腹ど真ん中に炎の塊が飛んできて爆散する。

うっほぁぁぁ!クリティカル入ったぁぁぁ!

 

「先輩!」

 

「フォーウ!」

 

「うっ……うぅ……ひっく……」

 

あぁ……そもそも何で俺はこんな事になっているのだろうか……。

 

 

当時、本当にただの一般人であった俺の所に黒い背広の人達がやって来た。

その人達が言うには、俺が魔術師になれるとの事だった。

確かに、前に駅前で『魔術師募集中』何て訳の分からないことやってたから、遊び心で受けた記憶があるけど……新手の詐欺かと疑い、警察を呼んで対処してもらおうと思ったがその人達が『カルデア』と名乗った所で警察は手を引いてしまった。結局呼んだ警察からも背広の人達についていくべきだと促され、渋々俺は了承した。

それからと言うもの、兎に角色々な事態に遭遇した。

やれ人類焼却だ、レイシフトだ、マスターとサーヴァントだ─もう余りにも目まぐるしかった。

 

「でも……慣れたものだよなここにも」

 

「?どうしたんですか先輩」

 

「あぁ、いや。ただの数合わせで来ただけの俺がまさかマシュのマスターになって、それどころか色んな英霊を召喚して人理修復目指すとか……前じゃ想像もつかないような事をしてきたんだなぁと思ってさ」

 

「確かに先輩は何の知識もないのに突然魔術の世界に放り込まれた訳ですからね。でも、そんな先輩だったからこそ私も共に成長できたんだと思います」

 

色々事態の中で、ここ『人理継続保障機関・カルデア』で動けるマスターは俺しか居なくなってしまった。

他のマスターは皆とある事故が原因で今もコールドスリープみたいな状態で沈黙している。

 

「そう言って貰えると嬉しいよ。まだまだ未熟なマスターだけど、頑張るよマシュ」

 

「はい!」

 

「……でも、何だかマシュや他の英霊に戦って貰って、自分は後ろから指示を飛ばしたりするだけなんてちょっとなぁ……。俺も魔術師らしく前に出るか?」

 

「いえ先輩。確かに前に出られる魔術師の方は居ましたが、ほんの一部ですよ?」

 

確かにその通りだ。しかも俺は数合わせの為に呼ばれたようなものだし、魔術師としてのレベルは遥かに低いだろう。

戦う魔術師かぁ……あ。そういえば。

 

「マシュ。エミヤの所に行ってみよう」

 

「エミヤ先輩ですか?でしたら今日は夕食の仕込みで食堂に居る筈ですよ」

 

「そっか、今日当番だったんだ」

 

 

 

 

「……で、私の所に来たと」

 

食堂ではアーチャーのサーヴァント、エミヤが食材を切っている所だった。

 

「確かに私が生前魔術師だったことは話したが……そんなに戦っていた訳ではないぞ?」

 

「え、そうなの?おかしいな……他の人からの評価を聞くに相当やってたらしいけど……」

 

「……待て。その他の人とは誰だ」

 

「ん?えっと、アルトリアとメドゥーサと子ギル」

 

そう言うとエミヤは溜め息を吐いて包丁を置いた。

 

「おや?もう調理はお仕舞いですかアーチャー。でしたらそこの余った生ハム等を頂けると嬉しいのですが」

 

「!セイバー。いつからそこに」

 

「『よし、今日も腕がなるな。─投影、開始(トレース・オン)』とその包丁を投影したところからです」

 

我らが騎士王、セイバー、アルトリア・ペンドラゴンが椅子に座っていた。

気付かなかった訳じゃない、多分つまみ食いとかしたいんだろうなぁと思って軽く会釈はしておいた。

 

「マスター。そこのアーチャーは生前マスターとして聖杯戦争に参加していました。その時はサーヴァント相手に投影と強化の魔術で戦ってましたよ」

 

「へぇ。エミヤは生前マスターだったのか」

 

「……余り過去の事は話したくないのだがね。胃が痛くなりそうだ」

 

「別に無理に話さなくても良いよ。あ、そうだこれドクターから貰った胃腸薬。何か最近胃がキリキリするとかで大変だろうから」

 

「別に英霊に薬など必要ないんだが……まぁ、ありがたく頂くよ」

 

最近、色んな英霊が来たからか、エミヤは胃が痛いと言っていた。

サーヴァントも体調を崩すのかとドクターに訊いたら「分からないけど、レオナルドから貰った薬あげるよ。直接効かないだろうけど、元々人間なんだから気持ちだけでも軽くなると思うよ」って言ってたか─あ。

 

「あ、エミ─」

 

「先輩?」

 

「ん?変な味だな……特に喉越しがはぅ!?」

 

「アーチャー!?」

 

「大変だマシュ!」

 

あるドクターの言葉を思い出してマシュに振り返るとやや驚いた様子で目を合わせてくる。

 

「ど、どうしたんですか先輩?」

 

「あの薬……ダ・ヴィンチちゃんから回ってきた奴だ!」

 

「何と言うイベント臭!」

 

「流石デンジャラス・ビーストの嗅覚ですね」

 

「デミ・サーヴァントです!」

 

「ぐぉあああああ!」

 

「エミヤが死んだ!」

 

「この人でなしぃ!」

 

追い付かない!状況に追い付かない!

 

「マスター!アーチャーが……」

 

「うっ……ぐ……………あれ?セイバー?」

 

「アーチャ……シロウ、なのですか?」

 

シロウ?そう言えばエミヤはどう見ても知識や立ち振舞いが日本人だった。なるほど……。

 

「そうだけど……何か前後の記憶が……あ、マスター俺何を」

 

「り、料理……」

 

「!そうだった!急がないと」

 

口調も一人称も変わったエミヤが再び戦場(調理場)に戻る。俺もマシュもアルトリアも唖然としたまませっせと夕食の仕込みでもう話し掛ける隙もない。

 

「……まぁ、何とかなるでしょ」

 

「結局前に出るコツを訊けなかったな……」

 

 

食堂を後にしてトレーニングルームに向かうと筋肉と筋肉と筋肉がいた。

 

「アッセェェェェイ!!」

 

「むんぬぅあ!むぁだまだぁぁぁ!」

 

「ゴォォォォルデン!!」

 

「ここ暑苦しいです先輩!」

 

「フォォォォウ!」

 

「むん?マスター!今日も良い筋肉ですな!」

 

「おお大将。もしかして大将も筋トレのクチか?」

 

「アッセェェェェイ!!」

 

飛び散る汗と漢達の筋肉に対する情熱。

うーむ……ここはまだ俺には早かったようだ。

 

「皆やってるね……実はさ─」

 

 

 

 

「─成る程。マスターも前に出て戦いたいと」

 

「皆ばっかり戦わせるのも悪い気がしてさ」

 

「大将はそのままで良いと思うけどな。ま、大将がそう言うんなら協力するのが俺達サーヴァントじゃん?」

 

「それもまたアッセイ!」

 

「フォッフォウ!」

 

スパルタクスはマスターらしい振る舞いをすると喜んで反逆してくるからかなり気をつかうな……。

 

「マスターはどのような得物が得意なのですか?」

 

「弓と槍」

 

弓が得意な理由はかつてアーチェリーをやってたから。

槍は……ごめんなさい小さい頃に少し習っただけです。でも何もしてない武器よりかはましに扱えるぞ。

 

「成る程。ランサーの私にぴったりではありませんか。では1度に幾つも教えるのは大変ですので槍だけにして他のランサーも呼んできましょう」

 

「……良いんですかレオニダスさん?」

 

「……確かにマスターのお願いとは言え、危険なのは承知しています。ですが本人のやる気を無下にすることはできません。─いえ、正直に申しましょう。マスターが筋肉に目覚めるなら私は大歓迎ですとも!健全な魂は健全な筋肉に宿るのです!マシュ殿も筋肉を付けてマッスルサーヴァントになりましょう!」

 

「デミ・サーヴァントです!」

 

 

そして集まったサーヴァントがレオニダスと兄貴とヘクトール。その3人に槍術を基礎から叩き込まれる。

 

「駄目ですマスター!もっとしなやかに!筋肉のように強靭でしなやかに槍を扱うのです!こぉのよぅに!」

 

「槍に限った話じゃねぇがよ。長物を扱うときは長い分あらゆる距離を掴めなきゃ話にならねぇ。だからどの長さの槍がテメェに合ってるかを調べねぇとな」

 

「オジサンは確かに槍を使うけど、どっちかってぇと投げる方なんだけどねぇ……」

 

それからマシュに心配されながらも3日間、手にマメを作りながらも槍術の特訓は終えた。そこからが、地獄の始まりだった。

 

「ほっ!はぁっ!いやぁぁぁああっ!」

 

「凄いです!先輩が見違えるほどランサーっぽくなりました!」

 

「確かにどこかのドラバカランサーよりかよっぽどランサーらしくはなったわな」

 

「ありがとう兄貴!」

 

「しかぁしっ!マスター!貴方には圧倒的に足りない物がある!」

 

「ぇっと……筋力……とか?」

 

「そのとぉぅりです!どう足掻いても貴方はやはりただの人間。サーヴァントではない故に筋力が足りてない」

 

「でも筋トレはゴールデンと一緒によくやってるよ?」

 

そんな言葉が出てきたが、意味がないのは分かっていた。結局俺はただの人間。サーヴァントと共に前に出て戦うには全てのステータスが足りていないのだ。

でもそればかりはどうしようもない─訳ではない。実際魔術師の中には自身に強化魔術を用いて戦闘力の向上を図ったこともあったらしい。

エミヤ曰く、「とある男が居てな。そいつはとあるキャスターの強化魔術だけでとあるライダーを殺害したことがあるぞ」とのこと。でも俺にそんな優秀な強化魔術は……。

 

「確かに筋肉はついています。ですが足りないのです!なのでこちらのパラケルスス殿に頼んで種火を人用にして貰いました。何やら同じ理系だからか他人の気がしないので」

 

「さぁ、新たな実験を始めましょう」

 

「P!?」

 

「アッセイ!」

 

「スパPじゃない!」

 

しかし何だって!?種火を人用に!?

そんな予測不可能な事、誰がやるものか!だったらまだダ・ヴィンチちゃんの訳のわからない薬やら魔術で身体強化するよ!

 

「面白そうじゃねぇかマスター。ヘクトールも押さえろよ」

 

「へいへい」

 

「ああ!?ヤメテ!らめぇぇぇぇえ!チョコになっちゃぅぅぅぅ!」

 

「それはアーチャーの方です先輩!」

 

「フォーウ!」

 

レオニダスの筋力で開かれた俺の口に角度で色が変わる液体が流し込まれる。

頭を動かすことも出来ない為、喉が呼吸をせんと勝手に液体を飲み込んでいく。

 

「おっ……おぉ!」

 

『大変だマシュ!ぐだ男君のバイタルが急にあり得ない数値を示し始めた!』

 

「ドクター!先輩がパラケルススさんの薬でおかしくなっていきます!」

 

『止めたげてよぉ!』

 

「ぉオオオオ!むん!ぬぅん!」ムキィ!

 

「おお!感じますぞマスター!その溢れんばかりの筋肉の輝きを!」

 

「おお、圧政者よ!」

 

「うわぁ……流石にやべぇ気がしてきた。オジサン部屋に帰ってるわ」

 

「ルーンの方がよかったか?」

 

気付くと俺はシャツがピッチピチの筋肉になっていた。

 

「ドフォーウ!?」

 

「せんぱーい!」

 

それからレオニダスの「キメラに一騎討ち」と兄貴の「矢避けの特訓」とヘクトールの「槍投げ一万本」を経て、俺は遂に種火クエストに乗り出したのだ。

 

 

「で、結果は1体しか倒せず撤退か……まぁぐだ男君がただの一般人だった頃と比べたらとんでもない進歩だよ」

 

「そうですよ先輩。私も負けないように努力します」

 

「しかし人の体に種火かー。流石、対毒スキル:EXは違うね」

 

「フォウ」

 

「頑張ります……」

 

ドクター、マシュ、ダ・ヴィンチちゃんにフォウくんに励まされて気持ちが落ち着いた。体の変化も落ち着いて元に戻ったし、何だかんだ槍術を体得することは出来たから、これからの特異点で役に立つこともあるだろう。

 

「あ、ドクター。そう言えばその種火クエスト先で聖晶石拾ったから召喚してみても良いですか?」

 

「お、丁度良かった。実はこっちでも新たな“縁”を確認できたからそれの確認をしてみたいと思ってたんだ。是非とも頼むよ」

 

「私も同行して良いですか先輩?」

 

「じゃあ折角だし私も行こうかな。どんなサーヴァントが来るか楽しみだ」

 

皆でコタツから抜け出し、温まった体の熱を少しでも無駄にせんといそいそと靴を履く。

 

「次はどんな英霊と会えるのかな」

 

俺が背負った使命はとても大きい。だけど背負った以上投げ出すなんて許されない。

だから俺は前に進む。敵に抗う。

巻き込まれた形とはいえ、俺はマスターなんだから。

 

 

 






ぐだ男のステータスが更新されました ▼


追加スキル 矢避けの加護:C-

擬似宝具 刺し穿つ若棘の槍(ゲイ・ボルク):E

アルスターの光の御子、ランサー、クー・フーリンこと兄貴から教わった必中(笑)の槍。複数のランサーのサーヴァントの教えもあって、もう世界大会なんかも行けちゃいそうになったぐだ男ではあるが、やはり越えられない壁があった。
兄貴が何かの怪物の骨に、ルーンを込めて作った槍は兄貴のに遠く及ばないが、英霊でもない人間が用いるには充分すぎる代物だ。種火クエストより弱めのエネミーだったら心臓を貰い受ける事も出来る。……かもしれない。

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