誤字等がありましたら教えてください。
作者も一応確認をしましたが、見落としがあるかもしれません。
それでも言い方は、続きをどうぞ。
「ラグビー興味ない!?」
「将棋やったことあるでしょ?」
「日本人ならやっぱ野球でしょ!」
「水泳ちょー気持ちいいよー!」
そこら中から部活の勧誘を呼びかける声が響く。
季節は春、今日から新しい新学期が始まると同時に新しく新入生もやってくる。そんな新入生たちを、どうにかものにしようと積極的に勧誘活動を続ける学生たち。
「賑やかだなぁ……」
そんな喧騒が鳴り響く中、一人の男が桜の木の上で大きな欠伸をしながら、眼下に移る部活動の勧誘活動を眺めて物思いにふける。
「そう言えば、昨年もこんな感じだったな」
青年は苦笑交じりに小さく呟きながらその光景を眺める。
この光景はある意味どの学校でも恒例行事のようなものだろう。そして、新入生がこれに巻き込まれるのも毎度の事だ。かくいう青年も去年の入学時は悲惨な目にあったりしたりする。
青年がこんな桜の木の上にいるには理由がある。
一つ目は勧誘活動をサボるためだ。青年は口下手であまり人と話すのは得意ではない。基本的に遠慮せずに言葉を述べる性格もあり、第一印象は余り好意的に思われなかったりすることの方が多い。青年は自身が厄介事を持ち込まないようにする為に、部員の目を盗み桜の木まで逃げてきたのだ。
二つ目はその目立ちすぎる容姿だ。青年の髪色は日本では珍しい銀色の髪だ。髪型はアシメントリーのようになっており、左目が前髪で見えなくなっている。それに加え、青年自身もなかなかの美形に入る部類であり、女生徒から声をかけられることも少なくはない。事実、ここに来るまでに新入生の女生徒に声をかけられることがたびたびあった。
そう言った理由があり、青年は桜の木に避難もとい、サボりをしているのだ。
最も青年の部活動の部員たちは彼がいなくなったことに気づき、激怒している事を彼は知るはずもない。
青年はこの喧騒が収まるまで桜の木の上で隠れているつもりだったが、そこから面白いものが見える。思わず彼も二度見するような光景だ。事実、彼も目を細めてその光景を注視している。
「慎二の奴……何やってんだ………?」
そこには、彼の所属している部活の部員である者が、猫の首元を掴むようにしながら180cm後半の男に連行されている様子が見えた。
「あれじゃあ、どっちが新入生かわかったものじゃないな」
青年は溜息を吐きながら桜の木から降りる。流石の青年もあの光景を見て見ぬ振りができるほど薄情ではない。青年は自身の所属する部活動のブースに向かって歩き始める。
★
「ひー、ふー、みー……今のところは入部希望者10人か。う~ん、今後の事を考えるともうちょいほしいかなぁ」
「まあ、今の人数に比べたら全然多いんだし、それに有望そうなやつも居そうだしいいんじゃないか?」
入部希望用紙を数えながら愚痴を零す女性徒。それに応える眼鏡をかけた男子生徒。
二人は現在、部活動のブースにて入部希望者の対応を行っている。しかし、女生徒の方は、思っていたより人数が集まっていないことに愚痴を零しているようだ。
「つーか、あの野郎……!いつの間にかいなくなりやがって!後でぜってぇシバく!」
「確かに私達に仕事を任せて自分だけサボろうなんて良い度胸してるわね……これは連帯責任でランメニュー倍よ!」
「ゲッ!そりゃねぇよ監督ぅ………」
眼鏡をかけた男子生徒は、自身の不用意に発した言葉を、後悔しながら元凶である銀髪の男を恨みながら今までの入部希望者の書類を纏める。
「ま、とりあえずあいつは後でシメるとして、勧誘の方はどうかしらね?有望そうなの連れてきてほしいんだけど」
女生徒が勧誘に向かっている部員に期待を寄せているところに、こちらのブースに向かってくる部員、否、連れてこられている部員を見て目を丸くする二人。当の本人は半ば半泣き状態で、二人に視線を向ける。
「か、監督ぅ~……連れてきました~……」
この時二人は思った。
(いや、どう見ても連れてこられたの間違いだろ!)
心の中でそんな事を思おうと、目の前の大柄な新入生は、そんな事情知ったことじゃないと言わんばかりに自身の聞きたいことを質問する。
「バスケ部はここで合ってるか?」
「……う、うん」
あまりに衝撃的な光景に呆然としながら女生徒は、新入生に説明をしていく。しかし、当の本人はそんなことはどうでもいいと言い、入部希望用紙に名前だけを書きその場から去って行った。この一瞬は二人にとって、まさに嵐のような時間だった。
「こ、こえぇー!あれで一年かよ~」
「いや、それよりも何でコガが、首根っこ掴まれて連れてこられたのか知りたいんだけど」
首根っこを掴まれて連れ来られた男子生徒は今までの恐怖と精神的疲労が噴き出したのか、椅子に座り机に突っ伏す。今の彼のこの行動に誰も注意はできまい。
「小金井君、伊月君達は?」
「伊月達ならもう少ししたら帰ってくると思うよ?流石に新入生たちも減ってきたし」
小金井の言う通り、すでに新入生たちの多くはその場を後にし、帰宅している者も多くいる。それ故にこれ以上の勧誘活動はあまり効率的ではない。
「そうね、じゃあ、伊月君達が帰って来たら始めましょうか?」
「始めるって何を?」
女生徒の言葉に疑問をぶつける小金井。その疑問を当たり前のように答える眼鏡をかけた男子生徒。
「決まってんだろ。あのサボり野郎をシメに行くんだよ」
「あ、そういやあいつ居ないじゃん!」
とても今更なことに今気が付く小金井。
「あのやろ~。俺が一年に首根っこ掴まれている間にあいつは呑気にサボってたのかよ!」
「全く、どこに雲隠れしたのかしら」
「お、噂をすればなんとやらだな」
話している間に噂の男が勧誘組と一緒にこちらに来ているのが見える。
「あ、慎二無事だったか?」
「第一声がそれ!?」
男の容赦ない言葉に小金井の心を的確に抉る。
「あら、随分とのんびりしていたのね……
女生徒は笑顔で白銀に話しかける。いや、これは笑顔何て生易しいものじゃない。何せ目が一切笑っていないのだから。彼女の雰囲気から相当怒っているものだとわかる。だが、それに怯むような白銀ではない。
「ああ、少し面白そうな一年と話をしていて遅くなった。後これ入部希望者の用紙」
女生徒の皮肉をたっぷり込めた言葉に答えた様子は全くなく、そんなことはどうでもいいと言うように用紙を差し出す。その様子にムッとした表情になりながら用紙を受け取り目を通す。そして、彼女は次の瞬間、目を見開き驚きの声を上げる。
「てっ、帝光中学バスケ部出身!?」
「はあ!?」
「マジで!?」
「帝光に抵抗する、キタコレ!」
「伊月、少し静かにしていようか」
予想外のことに驚きを隠せない部員たち。それもそのはずだ。帝光中学校のバスケ部と言えば、部員数は100を超え、全中3連覇を果たした超強豪校だ。そして、今年の新入生、つまり今年の一年生には10年に1人と言われる天才が5人同時に現れ、全中で猛威を振るったキセキの世代と同世代という事になる。この帝光中学を、バスケをやっていて知らない者は居ない程のレベルだ。
「ちょ、ちょっと白銀君!これどういうこと!?」
「みたらわかるだろう、入部希望書だ」
「そう言うこと聞いてんじゃないわ!」
彼女は白銀を問い詰めるが、白銀は偶々知り合って少し話しただけと言うだけだ。しかし、部員たちは既に、その帝光中学出身の生徒に興味津々だった。
やれどのくらい強そうだとか
身長は高かったかだの
真面目そうだったかと言った的外れな質問ばかりだった。
第一、一目見ただけで相手の強さが分かったら苦労はしない。真面目そうか真面目じゃないかと言ったことも答えられるわけがない。
だが、しいて言うなら
「見たことない面白い奴」
白銀からはそうとしか言えなかった。
物語が進まない件について…………