少年/戦姫絶唱フェイト・シンフォギア   作:にゃはっふー

91 / 92
四期終わりにともない、五期についての相談を活動報告でご意見募集します。

お手数をおかけしますが、意見ある方はそちらでお願いします。

それではアスカの物語を、どうぞ。


63話・終わりと始まり、その後

 あの事件から三日経ち、響の誕生日会を遅れて行うことになる。

 

 事件の際、一国が神の力に対して、反応兵器なる物を使ったため、その独断がかなり尾を引いて会議になっているらしい。

 

 だがS.O.N.G.はそれよりも厄介な事実がある。

 

 

 

 神秘の扉が開いた。

 

 

 

「それは本当か」

「ああ本当さ、そもそも星と霊長の考えなんて、私からすれば気にも留めないことだから、いまのうちに言っておくのさ」

 

 そう白いローブを纏い、虹の髪の毛を持つ。花の魔術師マーリンが優雅にミカンを持ちながら、静かに語るは、神秘の物語。

 

「この世界の人は、少しばかり舐めている。神秘の世が再度訪れれば、それは神秘による滅びさ。神の傲慢、怪物が歩く世界。それは滅びの一歩なんだよ。彼から一般魔術師が何してるか聞いてるだろ?」

 

 そう言いながらミカンを食べつつ、キャロル、エルフナインは調べものの為に、誕生日会に参加せず、風鳴弦十郎は腕を組み、その話を聞く。

 

「此度の事変にて、神秘の門が開くと言うのか」

「おそらく、近く神秘の理が君らの頭を痛めるだろうね。会議の話、神の力に畏怖しながら、手にすればと思う輩に思い当たる節はあるだろ?」

 

 それに何も言わず、キャロルは舌打ちする。今回の件は、大きな流れになり、世界を揺るがす。

 

 だが対抗策として、彼もまた考え動く。

 

「緒川さんからの連絡で、パヴァリア光明結社の末端なぞ、国連と協力の下捕縛し続けています。これには彼女達の協力と説得が一番聞いてますね」

 

 藤尭の言葉に、静かに頷く。

 

「サンジェルマンさん、カリオストロさん、プレラーティさん。お三人方がこちらに協力してくれるのには助かります」

「彼奴らも最後には反応兵器に対して、活躍し、その後も協力したからな。腹の中は何考えているか分からないが」

「キャロルちゃん………」

 

 友里が少し苦笑するが、彼女達の支配からの人の解放は諦めていないとは、本人達からは聞いている。だが、

 

 

 

「あーし達はとりあえず、月遺跡の掌握で、神の力による支配からの解放は無意味だってことは分かったのよね」

「あの男、龍崎アスカのおかげなワケダ」

「支配からの解放、統一言語を取り戻しても人は支配から解放されない。見せられた多くの存在、竜のホムンクルス、正義の味方、月の新王、天文台の魔術師。その生きざま、彼らの仲間を見て、それだけでは足りないことを痛感しただけだ」

 

 

 

 そしてそれをもって、交渉の席で協力し、いまに至る。彼女達の自由は制限されているが、今現在は問題も無く、もしかすればキャロルのように監視の下なら、自由行動が可能になる日も来るかもしれない。

 

「それと響さんに神の力が宿った理由についてですが」

「まず彼女は、理想の聖杯、その中身に触れ過ぎた。それが第一さ、あれは神の力よりも強大な、生命の力だ。形有る存在よりも上になるし、それと」

「神獣鏡の光か」

「そう」

 

 破邪の光を持つ聖遺物、その光を浴びた響は、原罪、バラルの呪詛を打ち払われた。

 

 だがその光を浴びたのは、響だけでなく、小日向未来。二人の幼なじみもそうである。

 

「このことが知られれば、彼女もか」

「だけど、本当に危険なのは、今回の件でこの世界、神秘が来やすくなったことだね。私達の所為だけど」

 

 そう涼し気に言うマーリン。悪気も何も無く、事実だけ言う。

 

「………星と霊長、アラヤとガイヤは、我々の世界で、理想の聖杯を創り出す気だと言うことだが、自分達の世界でしなかった理由を聞こうか」

「答えは分かるだろ? 危険過ぎるからだよ」

 

 理想の聖杯は、世界が有る限り永久的な魔力を所持できる。

 

 魂の無い聖杯を創り出せば、どのようなことが起きるか。少なくとも良い事は無い。だからこそ、異世界を選んだ。壊れてもどうなってもいい世界を。

 

「いまだに彼らは、龍崎アスカと聖杯の融合を目論み、完全に聖杯になれば、魂の無い身体を英霊の座に登録し、理想の聖杯を使用できる状態にしようと考えてる。かなり遠回りだけど、あれはそれくらいしないと危険な品物だからね」

 

 触れれば神秘を殺せる武器、エネルギーである理想の聖杯。その力も神秘だというのにそのような概念の塊であるそれ。

 

 それを聞きながら、やることは変わらないと、息を吐く。

 

「俺は子供達を守る、彼らよりも歳を取り、自らこの道を進んだ者としての責任だ」

「そうかい、私はハッピーエンドを望みながら動くよ。だから頼むよ」

 

 それは敵にも味方でもあると言う宣言。それに文句を言う前に、いつの間にか友里に花を贈りながら、静かに去っている。友里はすぐに藤尭に渡した。

 

 

 

「調、また少し作るよ」

「うん」

「手伝いますね」

 

 セレナと調と共に、誕生日会の料理を作りながら、みんなでわいわい楽しむ。

 

 翼が食器洗いを進んでするが、すぐに無理矢理抑え込み下がらせた。

 

 奏は翼をあやしながら、響と切歌はすごい勢いで料理を食べ、いまはいまの結果に満足する。

 

「できればサンジェルマンさん達とも、こうしたかったんですけどね」

「響、これ以上マリア系を増やそうとするな」

「マリア系ってなにッ、サンジェルマンと私って似てるってことなのアスカ!!」

「………」

「な、なにか言いなさいっ」

「まあまあ姉さん」

 

 そんな会話の中、アスカはその様子を見て、なごんでいた。

 

 

 

「はあ」

 

 家に帰ると一人であり、色々なことがあり、頭の中をリセットする。

 

 分かっていることがある。

 

「………知らない知識がある」

 

 爆弾解体など、少しばかり前世、前の記録が残っている。これは危険なことだと知りながらも、どうにもできないし、する気は無い。

 

「それはそれでどうかと思うけど」

「いたのかマーリン」

 

 そう言いながら、静かに座り、ジュースで我慢して飲んだりしている。

 

「この身体に魔力回路ができただろ」

「分かるかい? ああできたね」

 

 魔術師、いや使いの方での知識で分かる。それより多いが………

 

「今回の件で俺の身体は、魔術師として改造された。みんなは気づいてないが」

 

 また普通より遠ざかったこと、響には知られたくないと思う。

 

 そう言いながら手製の薫製料理の余りを食べながら、静かに考える。

 

「このまま戦えば、オレはきっと自分を聖杯に変えて、響達を守るだろうな」

「そして私達は聖杯を手に入れると、まあそういう計画らしいよ」

「ずさんな」

「いいや、君は人の為なら命なんていらない存在だよ。グランド・セイバー」

 

 何も言い返せない。

 

 いつだって、いまだって、自分よりも他人の命。

 

 己を犠牲に、全てを救う選択肢しか見えない。

 

「だから君って、誰も好きにならないのかい?」

「………なんのことだ」

 

 話を急に変えられたが、それにはそっぽ向きながら、缶ジュースを飲む。それに、

 

「昔の記憶があるから、昔の女………アルトリアのことが忘れられないのかい?」

 

 確かに一番強くある記憶ではあるが、それはアニメを見ている感覚だ。

 

 ご丁寧に知られたくない箇所は欠落している。他の記憶も。

 

「オレはどっちかと言うとモードレッドかアタランテのようなのがタイプだが」

「全然真逆じゃないかふざけてるのかッ!?」

 

 少し怒鳴るが、そう言われても、

 

「装者達の中から選べってことだろ? 確かにみんな可愛い、一人除けばお嫁さんに来てほしい」

「ん、その一人はアイドルの子だろ。一番面倒見てる子だろ」

「………オレはできれば料理作ってくれる人がいいんだ」

 

 そう言いながら、卵の薫製を食いながら、

 

「だけどまあ、オレのことを好きな奴としか、んなこと考えられない」

 

 それにマーリンがこの世の絶望を見たと言う顔でアスカを見る。

 

 そして、

 

「あっ、ああうんそうかそうか………君は全員分の無自覚が詰め込まれたようなものか」

「? なにを納得してるんだ」

「いや、いまサーヴァントごっこしてる、ボクのマスターである彼、天文台の魔術師並みではあ………いや、彼はギャラハッドのホムンクルスとラブラブだから、彼より酷いのか」

「だからなんの話だ」

「君は最低だッ、みんなにチクってやるッ!!」

 

 そう言って帰っていった。

 

 なんなんだと思いながら、作り置きの料理を食べ続けた。

 

 

 

「………へえ」

 

 とある子が一斉メール送信。

 

 アスカ、私達のこと女の子と見てない件とタイトルを付けて………

 

 

 

 理想の聖杯を置かれた場所で、グランド・セイバーは静かにしている。

 

「よおセイバー」

「ビーストⅣか、どうした」

 

 白い耳と尻尾を持つ、アストルフォのような白い髪の少年。ビーストⅣがグランド・セイバーに取り込まれた結果の姿で現れ、文句を言いに来た。

 

「このままでいいのか? このままじゃ、あの世界に神秘が流れ込む。そうなれば全ての物理法則が壊れるぞ」

「それはその世界の結末だ」

「君は動かないのか、全く」

「いつの世も、俺は動かず、生者たる現世に生きる者に全てゆだねるのさ。破滅も救済もな」

 

 けして興味なく、生きてる者が決めることだと受け入れる。

 

 なにより、

 

「もう一人の俺、龍崎アスカに全て託すさ。なにかあれば、俺の力を貸す」

「それが問題になるのにか?」

「それも、彼奴が決めたことだ」

 

 そう言う性格なのは知っているため、何も言わずその場に座る。

 

 無限にそこにあり続ける夢幻。

 

 何もかもできるのに、何もできない彼は、幸福か不幸か分からない。

 

 信じる事しかせず、信じる事しかできない。

 

 最強であり最弱である彼は、結局何があろうと変わらないのだ。

 

「君はずっとそうしてろ、僕はいくぞ。できることがあるかもしれない」

「ピースト故か?」

「ああ、僕は人類悪。比較するⅣの獣だからね」

 

 そう笑い、静かに帰ろうとする。時だ。

 

 空間にヒビが割れ、二人は戦闘態勢に入る。

 

「この空間に侵入者だとッ」

「誰だッ」

 

 そこから、紅い眼光と、銀色の髪が見える。

 

 

 

「待っててくださいませ………旦那様………♪♪」

 

 

 

 二人は別の意味で戦慄した。

 

 空間を急いで補強するが、彼女は壊し始めている。

 

 どんどん侵食し出す彼女に、

 

「すまない助けて」

「無理言うな」

「お前も食われるぞッ」

「無理言うなぁぁぁぁ」

 

 泣き声と悲鳴が交差する。

 

 彼女の笑い声だけは、静かに響いた。




白銀の騎士「助かったな」

アスカ「ふう」

騎士王の騎士「………これって結局、彼奴が捕まれば捕まってないか?」

きよひー「安心してくださいね、旦那様方………」

理想の転生者達『―――――』(白目

お読みいただきありがとうございます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。