少年/戦姫絶唱フェイト・シンフォギア   作:にゃはっふー

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61話・バースデー

 暗闇の中だった。

 

 だが、

 

「邪魔だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 振るうは理想、担い手は理想を叫ぶ。

 

 その身は愚かにも血を流し、それでもなお、

 

「神風情がッ、彼奴に………響に………触れてるんじゃねぇぇぇぇぇぇぇッ!!」

 

 暗闇の中もがく中、だが、

 

「響ィィィィィィィィィィィィ」

 

 剣士は剣を振るう。

 

「!」

 

 そして一人の少女を見つけ出す。何も纏わず、胎児のように丸くうずくまった少女を抱きしめ、迫る力の奔流に、無限の幻想を吐き出す。

 

「Aaaaaaaaaaaaaa―――――」

 

 少年は静かに、聖杯の中身と同調し出す。

 

 

 

 ―――???

 

 

「だから絶対に何もしない方がいいよ」

 

 なぜかサンジェルマン以上に拳銃を向けられた男、花の魔術師マーリン。仕方ないなと思いながら見ていた。

 

 そしてそこに風鳴弦十郎が現れる。

 

「協力者に対して何をしている。銃を下ろせ」

「で、ですが」

「なにかあったとしても、俺が動きづらい。なにより白い方はそれで止まるような男ではない」

「話の分かる人が来た」

 

 そうにこやかに微笑むが、奏経由で話を知っているため、とある初代並みに睨まれたが、いつものことなので気にせずに、手を振る。

 

 だがサンジェルマンと言う方に協力の礼など言ったりと、花の魔術師は無視された。

 

 そこに、鎌倉から連絡が入る。

 

 モニター越しに風鳴家独自が、災害認定した神の力を処分する気で、国連介入する話やら、危険な兵器を使用する。

 

 なかなか熱く語るが、

 

「いやあれに変な事したら世界滅ぶよ」

 

 ものすごく空気を読まず、花の魔術師はお菓子をどこからか取り出しながら呟いた。

 

「アァッ? どーいうこったよ」

 

 クリスが菓子を取り上げ、マーリンは渋々大人しくしながら、

 

「いまあれは神の力、っていうか、まあ莫大なエネルギーを取り込んだだけじゃなく、龍崎アスカを取り込んだからね。もしも何かして、動き出したら」

 

 

 

 滅ぶよ、世界。

 

 

 

 それでもモニターの男は国連介入を断固として阻止するため、軍事を動かすが、側にいた奏が襟をつかむ。

 

「おい、マジか」

「本当さ、だって、あれは世界そのものだよ? 世界が世界と戦って何が残る?」

 

 その言葉に、全員が青ざめ、急いで作戦を移行する準備をする。

 

 無論、これを持っていく奏であった。

 

 

 

「いやだからやめておいた方がいいって言ったのに」

「だな。くそっ」

 

 神の力が攻撃を受け、繭から攻撃形態へ移行し、その様子に呆れていた。

 

「せっかく私が神封じの術して、一日くらい平気に保てるようにしてい」

 

 オペレーター全てを含め、その話を聞いた全ての人間が、

 

 

 

『そう言うことは早く言えッ!!!!!』

 

 

 

 全員が叫び声を上げたため、マーリンは耳を押さえ、耳栓を外して頭を痛める。

 

 日本政府の指揮下の者たちは、サンジェルマンが戦えない理由を与えつつ、セレナたちは盾などを構える。

 

『よしッ、響くんのバースデーパーティーを始めるぞッ』

 

「ケーキの無い状態じゃ本人嫌がると思うよ?」

「いいから手を貸せ、防人の剣がその首を取らないうちに」

「先輩、私らの分も残してくれ」

 

 全員が同意見で、全員動き出す。

 

「じゃじゃ馬ならしだッ」

 

 作戦はアンチリンカーの応用で、神の力と彼女らの適合率を下げてはぎ取る。

 

 その為に全員が動き、動きを封じる。

 

「さてと、私も。慌てず、騒がず、ゆっくりと。噛まないようにね」

 

 そう言いながら、植物の蔦などが神の力を縛る。

 

 バカ力ではあるが、妙に弱々しい。

 

「ふむ、やはりか。中で彼が気合い入れてるね」

 

『よしッ、セレナくん、奏ェェッ!!』

 

「真名を開放しますッ」

 

 盾の歌を歌い、自分のギアになっている力を開放する。

 

「祖はブリテンに語られる、栄光を囲む力ッ!!」

 

 セレナは巨大化した盾を、とあるデミ・サーヴァント。彼女を真似るように掲げる。

 

(あの人たちを守る力を、貸してくださいッ)

 

 大地へと突き立て、無数の城壁が現れ、神の力を囲み、

 

「奏さんッ」

 

 星の光を集め、一柱の塔を生み出す。

 

「真名解放………」

 

 それを静かに掲げると、輝く白馬がいつの間にか側に、

 

「力を貸してくれるのか?」

 

 白馬は天へと吠え、それにまたがり、槍を振るう。

 

「アスカ………響ィィィィィィィィィィィィィィィィィィイ」

 

 光の柱が神の力を閉じ込め、それに悲鳴を上げる神の力。

 

「旦那ッ」

 

 

 

【aaaaaaaaッ】

 

 ―――アスカ、響―――

 

 意識が飛びかけた時、

 

「みく………」

 

【a………】

 

 ―――響、アスカッ―――

 

 声が聞こえた。

 

「未来、私の………私達の陽だまりっ」

 

 ―――響っ、私のおひさまっ。アスカ、私達の、大切なひと―――

 

【………みく………そこだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ】

 

 剣を捨て、二人でそこへと手を伸ばす。

 

 

 

「はあはあ………あぶねぇぇ」

 

「アスカっ、響っ!!」

 

「響は無事だ」

「みく………アスカ」

 

 気を失いかけた響をお姫様抱っこしながら降り立ち、血まみれのアスカは笑う。

 

「アスカ、また………」

 

 悲しそうな幼なじみ二人に、笑う。

 

「気にするな、これが俺達なんだよ」

 

 側に来た時、未来に響を渡しながら、身体を休める。

 

「その姿、成りかけてるね」

「悪いが、中身にも英霊にもなる気はねぇ」

「それでいい、ああ。やっぱりハッピーエンドはさい」

 

『太平洋より発射された高速の飛翔体を確認ッ、これは』

 

「えっ、なに?」

 

 マーリンがそう呟くと、

 

「なにかあったか?」

「やばい兵器が発射されたらしい」

「マジで?」

 

 未来と響が驚き、アスカは頭をかく。

 

「どうにかするか」

「はあ、バカだね。っていうか、タイミングが悪いね」

「なにのんきなことを言ってるんですかッ」

 

 その時、三人の歌が歌われる。

 

 それは、

 

「サンジェルマン、カリオストロ、プレラーティ」

 

 三人の錬金術師が歌う。だが、それより気になることが、

 

「飛来物より、何よりも」

「ああ、私もこっちが恐ろしいし、君も出るんだろ?」

「………ハハッ」

 

 聖杯の力をまだ引きずり出そうと血流が流れる。

 

「いや、違うか………」

 

 そう呟き、

 

「響、未来」

「「アスカ」」

「オレは、あの三人組を助けたい」

 

 いまここに撃たれた物を止めようとする三人へ、アスカはそう呟く。

 

「………うん」

「アスカ」

「ああ………この身は」

 

 

 

「「「無限なる夢幻の担い手」」」

 

 

 

 爆発する魔力回路、意識が聖杯に飲まれかける。英霊の座に登録されかける。

 

 だが、

 

「たわけッ、この(オレ)に余計な手を使わせるその愚業ッ、万死に値するぞ雑種ッ!!」

 

 黄金の鎧を着こむ男が激高しながら、とある剣を取り出す。それは天地を裂く剣。

 

「犠牲を出さず、世を守る者へと向けるその蛮行………首を出せぇぇい」

 

 死の闇を吹きだす、死の代行者。

 

「ふむ、なるほど。あれを拡散せずに破壊すればいいのだな」

 

 太陽を背に、施しの英雄は槍を構える。

 

「なら、全力で宝具を放てばいいのでしょう。問題ありません、この世に英霊以上の兵器なんて、存在しませんから」

 

 そう言うは、聖剣に選ばれた、栄光の騎士をまとめた、騎士の王。

 

「その決断、貴様らは余達を怒らせた」

 

 太陽を呼び起こし、神より生まれし者と名乗ったファラオが太陽を呼び出す。

 

「ふむ、少しは本気を出すか………」

 

 影の国を纏める、神代のルーンを知る女王が紅き槍を構えた。

 

「ふっははははははは」

 

 高笑いするは、世界を征服すると豪語する王の雷鳴。

 

「ローマとして………裁きを下す」

 

 ローマの歴史が、一つへと放たれようとする。

 

「………ほんとオーバーキルってレベルじゃねぇぞ」

 

 そう言いながら、中へと語りだす。

 

「おい俺、生前もその後もどーせ使われる身なんだ。だがいまは違う、ああ違う。そう宣言する一撃を、俺達(おれ)が選んだ道はッ、結局俺達(おれ)が選んだ道だと宣言する為に………」

 

 光を全て、あの場所で一人いる自分へと告げる。

 

「オレは英霊の座に行く気はねぇッ。聖杯の中身はオレだと言うのなら、オレが使い切るッ。神も世界も、オレの道の前に出るんジャネェェェェェェェェェェェェェ」

 

 それに、聖杯を唯一振るうことを許された幻霊が、笑った。

 

「幻影の投影を開始するッ。祖は投擲を初め、射貫く概念宝具をリストアップッ」

 

 いまここに全ての槍、矢、貫く意味を持つ全ての武器が現れ、矢へと変えられる。

 

 弓は夜闇を思わせるもので、矢は禍々しいデザインの物。

 

 身体から魔力が吹き荒れ、矢へと集まる。

 

「形態の幻想、エミヤシロウ………借りるぞ。錬鉄の英雄」

 

 その一撃が砲撃のように鋭くなる中、他の者達の宝具も、

 

「………司令、オーバーキルレベルの宝具が発射されるから、錬金術師の方々の退避を。誰一人考えてない」

 

『なん、だとッ!!?』

 

 マーリンが連絡して、セレナは他の装者達と共に周りを確認して規模を考える。唯一宝具解放による規模が分かる故に、顔が引きつっている。

 

 眼が紅く竜の瞳になりながら、それらは、

 

『真名解放』

 

 その瞬間、全員が爆発し、拡散しかけたミサイルの中身を抑える錬金術師達を無理矢理どかし、そして、

 

 

 

 

 

 光がありとあらゆる全てと言う全てを飲み込み、世界に轟いた。

 

 

 

 

 

「………やりすぎか」

「「やりすぎだよ」」

 

 幼なじみ二人から、そう呟かれた。

 

 

 

「サンジェルマンさん達、無事ですかっ」

 

 響が叫び、翼達も驚いていた。

 

「キモが冷えたぞアスカッ」

 

「いっや~んッ、死ぬかと思ったわよっ。死ぬ気だったけどっ」

「有り得ないワケダ」

「ああ………」

 

「初めて聖杯を使えるところまで使ったからな、やっぱ使い方わからねぇ」

 

「当たり前だたわけッ、世界その物と言っていい聖杯と言う名を借りた力だぞ!! 本来なら我が蔵に納めるべき秘宝を使いおってッ」

 

「あっはっは、使えるものを使ってこそっ。気にするとは懐が狭いぞ英雄王っ」

 

「抜かせッ、砂漠の王程度が、我を計るな」

 

 サーヴァント達が叫び合いながら、それを無視して、これどう隠そうかと思いながら、まだ飛び交う神の力を睨む。

 

「英雄王、その辺にある神の力上げるから、それで許してくれ」

 

「チッ、そんなものいらぬは雑種ッ」

 

「そうデスっ、神の力」

「分離した神の力」

 

 調が周りを見たとき、空間からヒビが入り、一つの腕に集まる。

 

「あの腕は」

「あの男の腕なワケダっ」

 

 二人が忌々しく叫ぶと、

 

「感謝しなければ………君たちに」

 

「ローランリスペクト変態野郎ッ」

 

 空間から現れる男、アダム・ヴァイスハウプト。

 

 その腕に神の力を集める。

 

「………」

 

 その姿に、アスカは、

 

「………殺すか」

 

 爆発する魔力を纏う。

 

「行くぞ響ッ」

「応ッ」

 

 アスカは竜の翼、響はブースターで飛ぶ。

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」

 

 翼達を止めたアダム。そして二人に気づき、アダムが叫ぶ。

 

「近づけないよ神殺しッ」

 

 だがその足に、

 

『アダムっ』

 

 ティキが張り付き、身体を倒してしまう。

 

「響、その力は呪いだッ。だけど、オレ達が必ず、なにがあってもどうにかし続けるッ。だから」

 

「あたしは歌でッ、ぶん殴るッ!!」

 

 アダムが何か叫ぶ中、すでに覚悟を決めた二人は、

 

「ならオレは、無限なる夢幻で、理想歌う歌姫達を守り続けるッ!!」

 

 竜は剣と成り、白亜と紅黒い剣と成り、神の力を取り込むアダムの腕を両断し、粉砕した。

 

 

 

「なんてことを………貴様あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 錬金術、それが響に放たれるが、その前に、

 

「させるか」

 

 瞬間竜の翼が阻み、そして、

 

「いい加減にしろ、人形が………」

 

「アスカ?」

 

 響は自分の側に来たアスカ。その声が高い事に気づく。

 

「こいつや、翼、クリス、マリア、切歌、調、セレナ、奏さん。ついでに錬金術師の三人………」

 

 竜の魔力を解き放ち、その姿を現す。

 

 それに全員が驚き、その姿は、

 

「えっ………」

 

「前の姿」

「かっこいいアスカ!?」

 

 燦然と輝く銀の刀と、黒と紅に染まった剣を持つ、竜の青年がそこに現れ、全員が驚き、心奪われる。

 

 また聖杯に支配され出すが、いまは気にしない。そう彼は決めた。

 

「さあ、いまより神秘の時ッ。汝の終わりへの物語を語ろうッ」

 

 まだ解放されていない者が、ここにいる………




誰かを救う事ができる力、理想の力を手放すことはできません。大事なものが多ければ多いほど。

それでは、お読みいただきありがとうございます。

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