少年/戦姫絶唱フェイト・シンフォギア   作:にゃはっふー

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56話・愚者の石と愚者の意思

 戦いが始まるが、九対三と言う事態だが、

 

投影開始(トレース・オン)ゥゥゥゥゥゥゥゥゥ」

 

 たった一人が八人守りながら、戦っていた。

 

「アスカっ」

「チッ、どうなってやがる」

 

『向こうは賢者の石を使ったファウストローブだッ、俺が使っていた物よりも強力なのは予測できていたはずだが』

 

「ロンの槍と円卓の盾も押されるのかよッ!!?」

 

 盾でみんなを守るセレナ、槍は強力無比な一撃を放つが、空振りなどを繰り返す。

 

 他の装者は錬金術師達に押されているが、一人がそれを支えていた。

 

 水色の光を貫く槍を投影したり、けん玉のような武器に対して、矢で僅かに軌道を反らしつつ、銃による攻撃は剣で弾く。

 

「いっや~んっ、たった一人であーし達の攻撃を~」

 

「全て背負って、無茶苦茶なワケダァ」

 

「やはり貴方は、シンフォギアではないか」

 

 集中が一人へと向けられだす。彼女達からすれば、アスカを倒せば一気に傾く。当たり前の戦法だ。

 

 そんな中、切歌と調が、

 

「! 待てっ」

 

「アスカばかりに」

「背負ってもらうばかりいられない、デスッ」

 

 抜剣をし、イグナイトモジュールになるが、

 

「浅はかなワケダッ」

 

 その時、簡単な魔力を波動だけで、イグナイトモジュールが弾け、切歌と調に無理矢理はがされた影響でダメージを負う。

 

「切歌、調っ。貴様らあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

「も~女の子がそんな声出したら、メ~よんっ♪」

 

「俺は男だァァァァァァァァァァァ」

 

 そう叫びながら、巨大な剣を投影した。

 

「削れッ、射殺す百頭・改(ナインライブス・カスタム)ッ!!!!!!」

 

 斧、メイス、剣、あらゆる形状攻撃可能の武器を、自分用として取り出した幻想を振るい、大地を薙ぎ払う。

 

「凄い………」

「凄いデスけど、この一撃は私達の為デスかね………」

 

 大地を削る一撃。それに驚きながら、錬金術師達は揃う。

 

「男ってっ、あのローズピンクちゃん男の子なのッ!?」

「それであの高エネルギー並び、出鱈目な力はあり得ないワケダっ」

 

 戦いの中、彼女達は引いていく。響が僅かに銃の錬金術師と話していたが、それでも拒絶され、落ち込む形で終わりを告げた。

 

 

 

「神の力による、月遺跡の掌握。それがパヴァリア光明結社の目的か」

 

 それの話の中、包帯を替えて戻るアスカは、静かに考え込む。

 

「そして星と霊長の野郎………『俺』の聖杯を手に入れる為に、オレを器にする気だったか………」

 

 その話をマリア達から聞いて、改めてその力の片鱗に全員が驚いている。

 

「装者達は、リンカーは完成したものの。イグナイトが封じられたままじゃ、アスカの足手まといで全員精神不安定だ。エルフナインも、研究室に籠っている」

 

 キャロルはそう言いながら、包帯の傷を睨みつつ、アスカを見る。

 

「念のために聞くが、無限なる夢幻から、どれほど力を取り出せる」

「は?」

 

「はって………これでいったい」

 

「そんなに取り出してない」

 

『なッ!?!』

 

 アスカはそう投げやりに言い、キャロル達司令室にいる者達が驚愕する。

 

「空間をぶっ飛ばし、穿つと言う事実だけを取り出す現象の矢と、あらゆるものを薙ぎ払う武器、全く誤差無く同時死角攻撃の双剣。それらがまさか」

「全部理想の抑止力にとって、三分の一にすら届かない。通常攻撃だ。当たり前だろ」

 

 そんな物が人の手で扱えるのかと思う中、通信が入る。

 

「どうした」

 

『司令、小日向さんが、マーリンを捕まえました』

 

「なんだとッ!? どこにいたんだっ」

 

『はい、スーパーの若奥様とたわいない話をしていたところ、ご友人達と共に捕獲したと』

 

「あれは本当に歴史に名を遺す魔術師かァァァァァァァァァァ」

 

 

 

 キャロルの叫び声の中、装者達も交えて、マーリンから問いただすが、

 

「そう言われても、それでも三分の一すら届かないよ。だいたい、理想の聖杯へアクセスを無理にさせた君らなら分かるだろうけど、龍崎アスカと言う器だけでも満たないって」

 

 その言葉に、マリア、切歌、調は静かに考え込む。

 

「それじゃ、星と霊長は」

「リスク無しに、それに属する物が生まれ出る可能性があるからさ。どうにかできるか確かめろが私にされたオーダーで、面倒だからさ。私はハッピーエンドが好きだし。もう構わないって言ったんだから、できたらできたでいいと思ってね」

 

 それでも知ってないと危険と思い、三人に少し触れてもらい、少しだけ分かるようにした。

 

「あまりの力に悶絶する女の子も見たかったけど、見えたのは裸のローランリスペクト錬金術師だったけどね………ん、アスカくんどうして後ろにまわ」

 

 そのまま腰を取り、熊を仕留めた後頭部強打。その後、腕を曲がらないところに曲げながら、技をかけている。

 

 装者達はその後、エルフナインが何か手立てを見つけて去った後で、キャロルと共にマーリンを監視する。

 

「念のために聞くけど、オレで聖杯を作る気は前のり?」

「いいや、そんなに期待してないよ。できたとしても三分の一すら届かないし、英霊の座に登録して、まあまあ使えるようにする気だよ」

 

「まあまあ使えるってだけで、どーしてこう、回りくどいことばかりするのかね」

 

 データをまとめている藤尭の愚痴に、

 

「そりゃ、不老不死どころか、世界創造するエネルギーがノーリスクで手に入るからじゃないかな?」

 

 全員の時間が止まった。

 

 だがいち早く動き出すのは、やはり彼だ。

 

「いや、平行世界での『俺』の功績考えれば、オレを中身にし、英霊の座に登録して使えるようにすれば、世界の一つ二つの命まかなえてもおかしくないか」

「神すら倒し切った者もいるんだ、それでもまだまだ足りない。グランド・セイバーはまさに無限の魔力と接続された、けして人の世に現れない幻霊最強の英雄だよ? 何か神の力でなにか大変な話してるけど、それら全部、やり方次第じゃ君で終わるからね」

 

 いまとてつもない情報だけ入った気がする。キャロルと共にアスカはげんなりし、友里達は驚愕していた。

 

 

 

「そしてやっぱりどっか行ったマーリンであった」

 

 そう言いながら、海の施設。深海にて『深淵の竜宮』と言う施設跡地から、『愚者の石』を探す作業が始まる。

 

 愚者の石とは、響がその身にガングニールを宿していたころ、身体から生まれた石であり、何も力は無いが、物が物だけにここに保管されていた。

 

「だが俺がここを襲撃した際、壊してしまったから、ここから取り出すとは………」

 

 海上で地平線を見ながら、響のかさぶたみたいな石を探すのだが、

 

「オレ、その時死んでたからな………」

 

 石ができ始めていた時、身体と魂をグランド・アサシンに真っ二つに斬られていた。それを思い出したのか、切歌と調、そして響が血の気が引いて、青ざめていた。

 

「そう言えば、聞きたいことがある」

「なんだキャロル?」

 

 海上基地で作業するキャロル。その手伝いをする中で、キャロルは、

 

「簡単だ、異世界の知識と価値観を持つお前だから聞きたい」

 

 そう言いながら静かに、

 

 

 

「人類は統一言語を取り戻して、平和になるか?」

「無い」

 

 

 

 即答だった。それには少し驚いた。

 

「なぜそう思う」

「ん、別にいいか。せっかくだから通信機で」

 

 昔々、ある所に全知の過去も未来も見通す目を持つ、王がいた。

 

 王は生まれた瞬間から王であり、神からそう定められ、王として生涯生きた。

 

 王には七十二の柱とも言える配下がいて、王と共に世界を、人類、星を見る。

 

 親に殺され、親を殺したり。恋を知らない者や、恋を捨てる者。

 

 裏切りに嘆き、裏切りに生きる。家族を知らず、家族を捨てる。

 

 成功を求め、成功を憎む。信仰を守り、信仰を嫌う。

 

 同胞を愛し、異人を軽蔑し、叡智を学び、無知を広げ、怨恨を育て、誤解に踊り、差別を好み、迫害に浮かれ、憐れみを憐れんだ。

 

「それが人間と言う生き物だと、七十二の柱達は思った」

「七十二の柱………まさか」

 

 キャロルは七十二の柱と言う言葉、通信機で装者や司令達も聞く。

 

 醜い生き物、それが人。ただそれでいい。人間は万能では無い。みな苦しみに飲み込み、矛盾を犯しながら生きるしかない。

 

「だが万能の王は違う。過去も未来も見通し、解決する術を持つ。万能の王に、彼らは聞く。笑いながら、この世全ての悲劇を知り、知らないならいい。知りながら、笑う万能なる王に問うた。『それを知ってなにも感じないのかッ、この悲劇を正そうと思わないのか!?』と」

 

 そして王は、

 

 

 

 何を感じるか、彼は全く理解することは無かった。

 

 

 

 そう、王は人を整理するだけだと、彼はそう割り切っていた。

 

 聞く者達の反応を無視しながら、続ける。

 

「王からすれば、自分には関係ない話だからね。なにより理解もできない」

 

 彼はそもそも王であるため、人としての感性を持ち合わせていない。

 

 何故自分が彼らを救わなければいけないか、理解できなかった。

 

 自分には関係ないことだから、という次元での話では無い。本当になぜしないといけないのか、理解することすらできなかった。

 

「なんだって………俺でもどうかとおも」

「イザークさんの悲劇も、その王はへぇ~と思いながら見たと知ったら?」

「!」

「そう言うもんだったんだ、魔術王は」

 

 ゲームでしか知らない、悲しき王を思い出す。

 

 だが、魂が泣いている気がする。

 

「彼は王なんだ、人じゃない。神とは人を戒めるものであり、王は人を整理するもの。統治は完璧さ、王としてだけに生まれた王だから。ただそれだけだ。それ以外の生き方なんて無かった」

「………」

「人は知ったところで実害が無ければ動かない、だからなぜ自分が動かなければいけない。彼は本当にそう思った。故に」

 

 七十二の柱は知った。

 

 世界は神が生まれた時点よりも前から間違っている。間違えたのだ。

 

 だから、

 

「人類史を総てをエネルギーに換えて、神も世界も生まれる前にさかのぼり、その間違った事実を変える。最も正しく、最も間違いな答えにたどり着いた」

「………お前は」

「俺はどちらでもあり、どちらでもないと思うね、俺は正義の味方じゃなく偽善者だ。手の届くものしか救えない。俺は押し付けられた理想だ、身勝手な願いから無理矢理作られた」

 

 その言い方は押し付けられた者としての、問いかけであり、一人の俺は関わっている話だ。オレがどうこう言う話ではない。だからこそ分かる。

 

「人が統一言語があり続けていれば、それでなにも無い世界ができていたと理解できる」

 

 誰もが理解し、お互いが分かる世界。

 

 だがそれは、分からないと言うことが分からないと言うことだ。

 

「全てが全て分かると言うことは、一体なんで平和に繋がるか、それこそ分からない。何がいい?」

 

 全ての種族が理解し合うと言うことは、分からなくていいことも分かる。

 

 それはきっと、おかしな世界だ。

 

 オレは分からない。空が飛べないと言う悲しみが、水中に居続けられる悲しみが。

 

 逆もそうである。

 

「きっとオレが知る、とある王様なら」

 

 

 

『この(オレ)こそが王なり、その(オレ)の心を知るだと? 不敬だ死ねい』

 

 

 

「ってね。そもそも悪と言う感情ですら分かるんだ。全てが分かるなんて、ふざけるな」

 

 分かるはずがない。

 

「あの、愛する人に裏切られ、竜、蛇へと変わった娘の想いが、100を救う為、10を犠牲にし続けた男、奇跡にすがるしか世界を救えないと思い裏切られた男、国を救いたいと願った少女………分かるか? 分かるはずがない。ただの言葉程度で分かってたまるかッ」

 

 聖女の思い、英雄達が信じて駆けた思い全て、言葉程度で理解されるはずが、無い。

 

 いつの間にか顔が怒りに歪んでいる。そう分かりながらも止まらない。

 

「統一言語程度で世界が平和になるのなら、オレからすれば分からないことを分からないだけの世界だ」

 

 生まれる前に死んだ、生まれた後の幸福を知らない少女達も頭をよぎった。

 

 多くの英霊達が、いや、

 

 目の前にいる、父親を火あぶりにされた妹を見る。

 

「人の心が言葉程度で全てが分かる? そんな世界なんて無い、あっていいはずない」

 

 この世界の神は、人の進化に脅威や不遜とした。だがそれは違う。

 

「分からないことから、知り、理解し合うことを知った世界こそ、脅威だとオレは思うがね。故に理想が生まれたんだから………」

 

 そうだ。理想とは分かり合えない中から生まれた思いでもある。

 

 そして、根源に近づいた『俺』は、神すら滅ぼす愚者になった。

 

「理想を語り、理想の為、努力する者が愚者なら、オレは愚者を愛するよ」

「………」

 

 言葉だけの理解を否定する様子を見ながら、キャロルは内心、心が荒れていた。

 

(こいつは、確実にこの世界の神を否定する思考の持ち主だ。パラルの呪詛なんてものを用意する奴が、こいつを放置するのか)

 

 否。

 

 手出しできない。

 

 そう答えが出ている。

 

 世界の一つや二つが、本当に世界そのものの創造に繋がるとしたら、すでに神すら超えている。

 

(こいつのことは絶対に各国政府機関に知られるわけにはいかないッ。馬鹿な奴が戦争を引き起こすだろうが、そんな次元じゃないッ。世界そのものが神ごと消される可能性もある)

 

 急に、あの優男ですら恐怖に思える。あれもその中に入る、グランドなのだから。

 

(ともかくいまは愚者の石だ、パヴァリア光明結社を潰してしまわないと)

 

 すでに何かしら疑問を龍崎アスカに抱く者達。早く片付けて対策を考えないといけないと、そう思う。

 

 そして突如、ノイズが現れた。

 

「!」

 

 キャロルがすぐに道具を取り出そうとしたが、いまの自分はそう言った物の所持は簡単に許されない身。いまは探索で人が多くいる為、関係ないことも踏まえ、置いて来た。

 

 自分の失策に気づくが、

 

「妹に手を出すな」

 

 そう、ギアを纏う前に、ノイズを切り刻んだ。

 

 目の前にいるのは、ただの人で無くなっていく兄だった。

 

「キャロルは避難誘導」

「………ああ」

 

 こうして錬金術師の襲撃があったが、二人だけであり、アスカが狙いで無く、ギア破壊の為だったが切歌と調の合わせ技のおかげで一人撃退。その後引いた。

 

 

 

 そして愚者の石を探す中、ずっと頬をかくアスカ。

 

「おい、血がにじんでるぞ」

「ん、ああ悪い」

「ごめんなさい、頬のは私が………」

「気にしない気にしない」

(私、アスカの頬にキスしたんだ。キス………えへへ………)

 

 キャロルがなぜか兄を殴る。

 

 調は心配する中、外すと調の痕があるため外せないが、血がにじんで、指に触れた。

 

「ん?」

 

 別に血は、ついてない。

 

「見つけたデースっ」

 

 そう泥の中から見つけ出した切歌が、泥をはね飛ばした時、調の顔に当たりそうなので前に、

 

「やあやあ、みんなご苦労様」

 

 いいところで盾が現れたので、そのローブを掴むが必死に抵抗したため、自分を盾にする。

 

「君ねっ、男なら自分を盾にしなよっ」

「貴様を見たら貴様で泥を阻めと天啓を得た」

「神なんて信じてないくせにッ」

 

 エルフナインも大急ぎで動き、泥にこけ、あーあと言う顔になりながら、

 

 愚者の石を、

 

 手に取ってみるアスカ。

 

「確かに結晶だな」

「………だね」

 

 そう微笑む花の魔術師。ついでに捕獲して、エルフナインとキャロルは加工に入る。

 

 こうして海上の作業は終わった………




マリア(まだ包帯が、まだ痕が残ってるのっ!? い、いま考えれば、だ、だだ、男性の首筋に………も、もう責任取るしかないのかしら………)

調(アスカアスカアスカアスカアスカアスカアスカ―――)

切歌(アスカにまだ、わた、私が付けた印があるデス………)

アスカ「最近三人の視線が清姫達を思い出すのは気のせいか?」
キャロル「………メディカルチェックに一人ずつ後で呼ぶか」
エルフナイン「はい」
アスカ(あれ、妹達の目からハイライトが無い気がする?)

お読みいただき、ありがとうございます。

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