少年/戦姫絶唱フェイト・シンフォギア   作:にゃはっふー

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近づいてはいけない、それは無限の自分の記憶なのだから………

それでも、愚者は力を求めて、手を伸ばす………


53話・禁断の力

 司令に頼み、音も光も感じない場所、そこで静かに時間すら分からないよう感覚を狂わせ、無理矢理取り出せる刀剣を知ろうとする。

 

 深く深く魂に触れて、保存された。いや、理想として押し付けられた武器に、何があるか、どんな力か、どのようなものかを知ろうとする。

 

「誰も入れないように密閉されているはずだが」

「私にそれを言うかい?」

 

 アスカに呆れながら、弓矢と矢が握られていた。

 

「花園と同じもんか………」

「理想の抑止力、彼がよく使う宝具だねそれ」

「矢じゃないかッ、アーチャーだろそれ!!」

 

 そう思うが、座禅していたら、気が付けば部屋中に見知らぬ刀剣を初めとした武具がある。いつ取り出したんだろう?

 

 花の魔術師はにこやかに微笑む。それが不気味で仕方ない。

 

「そろそろ警戒するレベルか、テメェ」

「ま、私を知る君からすれば、不気味で仕方ないか」

 

 そんな会話の中、静かに立ちくらみはするが、おかしい。

 

 おかしすぎる。

 

「緩すぎる、お前が、星と霊長がオレを見逃すのに疑問がある」

「星と霊長、ね………ほかに疑問に思うことはないところが問題なんだけどな~」

 

 そんなことを言いながらも、それかと思いながら、

 

「現れれば斬る」

「!」

 

 その時、オレはどんな顔をしたか分からない。だが、

 

「やはり君は君か。問題ないよ、ああ問題ない。それだけは絶対だ、龍崎アスカが手を伸ばせる範囲、そして範囲を上げる行為。問題ない、あるとすればそれを超えて、魂と器が壊れるくらいだね。私達は困らないけど」

「そうか」

 

 そしていつの間にか消えた。それを見届け、また静かに武具の閲覧を始める。

 

「全てを守るためにも、押し付けられた如何なる理想を、この手に収める」

 

 ギアも纏わず、感覚が竜の瞳だと告げている。

 

 だがそのまま、閲覧を始める。

 

 

 

 とある風鳴が所有する機関にて、暗号の解読をすることになり、住人の一時避難など、少し思うことがある中で、静かに考え込む。

 

 装者は襲撃を考え、各自配置される中、通信機から奏さんが話しかけて来る。

 

『アスカ~そっちはどうだ』

 

「別に問題無し」

 

『だぁぁぁくそっ、私のロンの槍は威力がありすぎて基地待機ッ。カチャカチャ音するだけでなにもできないのかよッ』

 

『文句言わないでください、ロンの槍は強大過ぎます』

 

『奏、文句を言うくらいなら、エルフナイン達にお茶なり出したらどうだ?』

 

『それはもうしたよッ』

 

 マリア達も、リンカーが無くても動き、住人が避難しているか確認しに出てる。そのためか基地の中にいる奏さんは苛立ちは隠せない。

 

「響、そっちは平気か」

 

『へいきへっちゃら、問題ないよ』

 

「そうか、熊が出たから今日は熊鍋な」

 

『ヘッ、冗談言ってる場合かよ』

 

 クリスがそう言うが、オレはとりあえず後ろに回り、腰を掴みそのまま高く飛び上がり、後頭部を地面へと叩き付けて仕留める。

 

 全員が吹きだす音などで混線した。

 

「よし、兄貴から教えてもらった熊のうまい料理を食わせてやる」

 

『いや待て、マジかッ。マジでそっちに熊が普通に出たのかッ、そして仕留めたのか!?』

 

『マジデスかッ』

 

「ふう………ん、頬を切った」

 

 少しだけ頬に傷ができ、血が流れる。どうも草木の枝で切ったようで、枝に血がついている。

 

『!? アスカの顔に傷がっ』

 

『それは一大事デスっ、嫁入り前の顔に傷がッ』

 

『急いで痕に残らないようにしなければっ』

 

「響、切歌、セレナ。泣くよ?」

 

 そんな感じで、お肉の処理したりと色々しておく。

 

 しばらくは平和な時間が流れる中でその後、錬金術師の襲撃があった。マリア達が狙われたが、クリス達が駆けつける。

 

 オレもヒポグリフで駆けつけたがすでに終わっており、少しばかり気になる点があった。

 

「響、向こうさんはなんだって」

「分からない、けどまた来る、みたいなことは言ってた」

 

 やはり目的があり、だが一人だったためか、また来ると言って去る。

 

「ちっ、配置変え考えて欲しいが、文句言ってる場合じゃねぇか」

 

 ヒポグリフの加速は威力が高すぎて、遠くに配置される。そう言うが、クリスが、

 

「心配するなよ、こっちにはイグナイトモジュールもあるんだ。テメェだけに背負わせることはねえっての」

「ああ、アスカはアスカの配置で敵が来た時、対処を頼む」

「分かってる」

 

 その時、マリア達がこちらを見る。目が合うとすぐに反らされたが、やはり気になるのだろう。

 

(そう言えば、血がいいってのも気になるな。なんでんなことを? 魔力供給の順位ってなんだ? クロエはキス魔だから分からない)

 

 知識から分からないし、記録から引っ張り出せない。

 

 そう考えながら、熊持って帰って、飯に出した。みんな気づいていないのか、今回のカレーはうまいと喜んでくれてよかった。兄貴ありがとう。

 

 

 

 深夜の夜、暗号の解読は終わらず、配置として少し離れた位置にいる。

 

 森の中で、静かに夜風が身に染みていた。

 

「やべっ、ばんそうこう外れたか。ま、ナイチンゲールさんもいないからいいか」

 

 傷になっても気にせず、左頬にできた傷をそのままにしている。考えることは他にあるからだ。

 

(配置はエルフナイン達の側に奏さん。民間人の側にセレナ………この距離だと加速して飛ぶと通り過ぎるから、通常飛行か)

 

 静かに考え込む。マーリンも暇なのか人のいる民間人側で、マジシャンとして手品風に、魔術を行使しているらしい。あれはなにしてるんだ。

 

「このままなにも」

 

 そう呟きかけたとき、警報が鳴り響き、急いで向かおうと立ち上がると、木の葉をかき分け、何か機械的なものが、

 

「アルカノイズっ!?」

 

 瞬間、大量のアルカノイズが現れたが、ほぼ同時にギアを纏う。

 

「仕込まれていたか、無限なる夢幻の担い手ッ」

 

 無数のノイズを切り伏せ、すぐに高く跳び、ヒポグリフを空へと呼び出した瞬間、空間が変わった。

 

「なっ」

 

 

 

 ――???

 

 

 ナビゲートで、二つのアルカノイズ反応を確認する。

 

「反応の一つはアスカくんと完全同一ッ、映像出ますッ」

 

 だが出た映像はヒポグリフが待機状態で浮遊し、アスカやアルカノイズがいない。

 

「これは、先日のアルカノイズかッ」

 

「チッ、どうやらそのようだ。アスカがヒポグリフを取り出した瞬間、空間のオリにアスカを捕らえたらしい。音声を取り出す」

 

『邪魔だッ』

 

 音声からして余裕で戦っているらしいが、ここから出るには隠れている空間を作るアルカノイズを倒すしかない。

 

「アスカ聞こえるかっ」

 

『キャロルッ、ああ』

 

「ならお前なら多重広範囲に攻撃可能だッ、それで一気に」

 

『それなら三千世界であらゆる場所を爆破済みッ、空間のオリを作ってるのは』

 

「反応ありっ!!? アスカくんを捕らえているアルカノイズはッ、外にいます!!!」

 

 それに司令室に戦慄が走る。中ではなく外にいては、アスカに攻撃方法は無い。

 

「まずい、響、翼、クリスは他のポイントっ、奏を向かわせても時間がかかるぞ」

「ぐっ」

 

 苦虫を噛む顔になる司令だが、

 

『問題ない』

 

 

 

 変に作り物のような宇宙をモチーフにした空間、その中で静かに、

 

「藤尭さん、響達のポイントを軸に、オリを作るアルカノイズがいるポイントを指定してくれ」

 

『えっ!? それって』

 

「速くッ」

 

 弓を取り出し、すぐに藤尭さんから教えられた方角とポイントを告げられた。

 

 それを知り、頭の中で行動した動きを思い出し、そして静かに構える。

 

 黒紅い矢を取り出し、夜空を思わせる弓を取り出し、真っ白な弦を引く。

 

「この身は、無限なる、夢幻の担い手。放つは死、獲物は森羅万象穿つ身、狙うは汝なりッ!!」

 

 空間を超え、それを見た。

 

「『戦紅纏め穿つ死翔の槍(ザ・ゲイ・ボルク・ストライク)』」

 

 矢として放つは心の臓を穿つ槍、並び、貫く系統の名前を持つ宝具の理想を纏った槍。

 

 カラドボルグなど、剣なども突くと言う概念が押し付けられた物を、放った。

 

 

 

「ッ!?!!?」

 

 藤尭が驚く中、巨大な音が鳴り響き、キャロルも耳元に響いたそれに驚きながら、モニターを見つめる。

 

 唖然の一言であり、空間の壁を貫き、余波でアルカノイズも吹き飛ばした。

 

 一撃で空間のオリを破壊し終え、涼し気な顔で笑う。

 

「絶唱が無い、そしてイレギュラーで生まれたんだ。まだまだ駄賃はもらうぜ抑止力ッ」

 

 このポイントでの戦闘を終え、通信機に話しかける。

 

「こちらアスカ、敵殲滅完了ッ」

 

『よくやったッ、こっちはイグナイトモジュールで一気』

 

 奏が喜んで言う中で、すぐに途切れ、悲鳴に似た声が響く。

 

「? 奏さ」

 

『急いで響達のもとへ迎えアスカッ』

 

「!」

 

 それだけで十分だった。

 

 ヒポグリフに乗り、ただひたすら向かう。

 

 

 

「………! この歌は」

 

 下を見ると、マリア達がリンカー無しで無理矢理歌い、イグナイトモジュールでアルカノイズを倒し、眼前で何か巨大な魔法陣、いや錬金術師なら錬成陣かをバックに、空に浮かぶ。

 

「ローランかッ」

 

 真っ裸の男がいて、なにかエネルギーだけが無駄に集まりつつある。

 

 ここまでくるとヒポグリフより走った方が早い、マリア達と合流した。

 

投影開始(トレース・オン)ッ」

 

 剣を取り出し切り伏せながら、歌っている三人の元に降り立つ。

 

「アスカっ」

「マリア、急いでなんとかするぞッ」

 

 状況を見ると、イグナイトモジュールが解除され、響、翼、クリスが倒れている。爆撃地のど真ん中にいる。

 

 そう気づき、剣を握りしめ、前へ踏み込もうとしたときだ。

 

 マリアがこちらを掴んだ。

 

「ごめんなさいッ」

「えっ」

 

 そう言って引っ張られ、首筋に噛みつく。かみ砕かんと言わんばかりに、噛みつかれた。

 

「イッ、まさ」

 

 しばらくして肉まで持ってかれそうだが、血がにじみ出るほどの噛み痕が残ったとき、感電するように装甲からエネルギーが漏れ出ていたアガートラームが、安定した。

 

「ごめんデスッ」

「ごめんッ」

 

 そう言って切歌と調も近づき、切歌は空いてる首元、調はほっぺの傷口へ。

 

 切歌とマリアは噛み切らんと、調は舌を使い、傷口を舐める。

 

 瞬間、電気が漏電しているような音を出すギアが、唐突に安定した。

 

「安定ッ」

「したデスッ」

「一気に畳みかけるわよッ」

「チッ、マジで血でかよ」

 

 それにより、対処が急激に早まり、三人が響達を背負い、アスカは真っ裸男を睨む。

 

「マジで………マジであの野郎………」

 

 エネルギー量が高い、このままでは逃れられるか分からない。

 

 なにより、

 

(殺したい、あのローランリスペクト野郎………)

 

 彼の中にある何かが憎しみを抱いた。

 

 心臓が高鳴り、なにかが吠える。

 

「マリア達は先に行けッ!!」

 

「アスカっ!!」

 

 だが、その時、流れ出る血がおかしな光を見せた。

 

 僅かに頬の血が、両首筋から流れた血は、赤く赤く………

 

 三人はおいしそうと思ってしまった。

 

「「「!」」」

 

 そうおかしな思考をしたと同時に、三人も妙に力が流れ込む感覚があり、アスカの歌が、叫び声が聞こえる。

 

 この身は無限なる夢幻の担い手。その力が逆流するように、身体に悪い気分ではなく、いい気持ちよさで流れ込む。

 

「くっ、これって」

「ちから、なにゅかしゅごいデス………」

「なに………」

 

 切歌はろれつががおかしくなり、マリアもアスカが欲しくなり、調はなにか色々我慢してたができなくなりそうな気分になる。

 

 その時三人は何か景色の奥底、あの透明なほど透き通った水を流す、聖杯が見えた。

 

 そして、

 

「いまこの場で終わりと始まりを告げるッ!!」

 

 そんな三人や、気を失う三人を見失ったアスカはそこにいた。

 

 バチバチと黒白の光が輝く、雷鳴し、光を剣にする。

 

 その力は静かに、

 

「吹き飛べッ」

 

 混じり合う斬撃が、錬金術と空で激突する。

 

「アアァァァァァァァァァァァ」

 

 その叫びは、

 

「あ、あしゅ」

「………」

「あ、アスカ………」

 

 流れ込む力に倒れかけるが走る三人。

 

 だが分かった。

 

「あの花の魔術師………アスカの血を飲むと、こうなるって、分かってたのね」

 

 それが人の身に過ぎることも知っていながら、言わなかった。

 

 頭をガンガン殴られるように、アスカの全てを欲する欲求を振りほどきながら、いまは遠くへ避難する。

 

 調が歯を食いしばり、切歌はオヨヨ~状態で、マリアも気合いで耐える。

 

 三人は戻ったら殺すと心で決めた。

 

 

 

 ――花の魔術師

 

 

「ああ、やっぱり離れててよかった」

 

 屋外で閃光が爆発するように激突するが、錬金術。無駄に黄金を錬成するだけの術。

 

 だが、そんなもの、

 

「聖杯の力の前では意味は無いよ。それも、押し付けられた神秘の塊ならなおのこと」

 

 そしてただ一つ残念なのは、

 

「………裸の男しか見えないッ」

 

 そう叫ぶ中、予想通り、彼は聖遺物との連動でより力を引き出して、その輝きが黄金錬成を押し返していた………

 

 

 

「aaaaaaaa―――――………いまの、感覚………やろう、聖杯への直接アクセスだと………オレになにさせたいんだ?」

 

 やっと正気に戻り、というより、力を放っている間に戻ったが、後に引けなくなりそのまま維持していた。

 

 間違いなく、自分は血を通して、聖杯の神秘にアクセスして行使した。少なくともそんな自覚がある。

 

 剣の輝きはまさに聖杯のバックアップを受けた剣撃。

 

「アスカぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 奏がロンの槍を纏い、辺りの様子を見て絶句する。

 

 辺りから金色の塊が降り注ぐ。それは自分の顔を映すほどの、

 

「高純度の金? マリア、おい」

「へい、きよ………」

 

 肩で呼吸しながら、安全と分かったらその場に倒れている切歌と調。マリアは気合いで立っていた。

 

「どうした?」

「き、気にしないで………聞かないで」

 

 そう頬を赤くしながら、その場に座り込む。

 

 そしていつの間にか男はいなくなり、その一撃が、多くを震撼させるものと知りながら、担い手は静かに、

 

「やはり引き出せたか、神殺し………」

 

 そう呟きながら、自分から流れる血を見る。

 

 それから魔力が火花散る様子が見えた気がした………




調、切歌((アスカアスカアスカアスカアスアスアアアアアアアア―――))

マリア(彼はセレナの、彼はセレナの、彼彼彼………フリーだし別に………襲っても)

アスカ(この悪寒、より力を引き出したからか………)

お読みいただき、ありがとうございます。

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