少年/戦姫絶唱フェイト・シンフォギア   作:にゃはっふー

69 / 92
ある日の物語です。一部のキャラクターが完全崩壊を起こします。

それではどうぞ。


番外編・二年そこそこの関係

「ん………?」

 

 龍崎アスカは布団から起き上がり、背筋を伸ばす。寝ぼけている頭を起こし、朝食作る為にカレンダーを見る。

 

 妹達が仕事だったり、休日の時は睡眠に時間を使うか、日向でのんびり茶を飲むと決めていた。

 

 昆布茶もあるし、のんびり過ごそう。今日は休日だった。

 

「………メールだ」

 

 翼からのメールで、話があるので家に行きますとある。構わないのでいいよと返事をして、お茶菓子でも用意しておこう。

 

 

 

 しばらくのんびりして、着替えておく。やはり男性は男性服だ、おかしな話だよ、見た目女の子だからって女装しなければいけないなんて。

 

 そうのんびりしてたら、翼は神妙な顔で来たが、いつものことなので気にせず上げて、お茶とお茶菓子を出す。

 

「すまないな休日に」

「いや、暇だからいいよ」

 

 飲み物の好みは分かり切っていたため、すぐに出す。お茶菓子も翼の好む組み合わせで出しながら、静かに前に座る。

 

「それでどうしたんだ、こんな時間に」

「ん、ああ」

 

 一息つき、静かに荷物から紙を取り出し、テーブルに置く。

 

 

 

「籍を入れてもらおうか」

 

 

 

 真顔でそう切り出された。

 

「………いまなんて」

 

「責任を取って籍を入れてもらおうか」

 

 なぜか吹っ切れた顔で微笑み、静かに紙を見せる。翼の名前もハンコも押されている。

 

 それに困惑していると、

 

「二年間の付き合いだが、色々あったな」

 

 そう黄昏ながら、

 

「まず奏の不注意でシャワーからあがったばかりの私の裸を見たのが一回目か」

 

 奏が自分と翼の関係を良くするために動いたが、どちらのうっかりでそのようなことがあった。

 

 そして部屋の様子も見られ、いつからか緒川さんと共に掃除することもしばしばあり、いつしかズレ始めた。

 

「お前に下着を買いに行ってもらったり、タオル一枚で、部屋の掃除を手伝ってもらったり………ああ、虫が出たときは完全に見たはずだな」

 

「つ、翼?」

 

 思い出すのは自分の女子力の低さであり、それを語る翼。

 

「私の家、風鳴の闇も知ってるだろ? 私の父親、あの人との関係を」

 

 翼の家のことは知っている。表向き父親となっている弦十郎の兄、八紘だが、実際は風鳴の血筋を濃くするため、二人の父親が息子の嫁に手を出したのだ。

 

 それが原因で、不器用な男八紘さんは翼を引き離すことで、風鳴家から遠ざけようとしていた。

 

 いまは関係は少しだが良い方向になり、本家の方の防波堤のように、翼を守る。

 

「本家がお前と私を婚姻させようとしていると知っているか?」

 

 考えそうなことだろう。一部とはいえ、知られている自分のこと。

 

 自分は世界の理、神々すら凌駕するルール、異世界の抑止力。

 

 だがその意味は理想、理想の英雄と理想の化け物が両立する。血筋では無く、魂が深く関係する。意味は無いのだが、きっと理解しないだろう。

 

 だがその辺りはさすがに隠され、よくて融合型や、装者として活躍した程度だろう。

 

「それで父がどうも、守る為に私達の関係を調べたらしい」

 

「………ぇ………」

 

「私とお前との関係だ。アスカ、男として責任を取って、私と結婚してくれ」

 

 そう微笑む。理解が追い付かない。

 

 セミの鳴き声が響く中、翼は静かに、

 

「私もお前との関係やしてること思い出すと何も言えないと言うか、恥ずかしくて死にたくなる。大人しくもらってもらうぞ」

 

 真っ赤になり、眼に涙をためながら震える防人。いや翼だった。

 

「待ってくれつば」

 

「どこの世界に家族でも恋人でもないのに脱ぎたての衣類を洗濯してくれる男子がいるッ。も、もうもらってもらうしかないじゃないか!!」

 

 うん、ガラス越しだけど、オレは翼がシャワー浴びてる時に脱衣所に入り、色落ちとか気を付けて、脱いだ衣類触ってる。

 

 おかしいな。

 

「知られたんだっ、本家じゃないが知られたんだっ。そして自覚した!! もらってもらう!! 元気な子を産むっ、私は、私は」

 

 泣かれてしまう。やべっ、こういう時は奏さんに救援を頼むしかない。

 

 実際いまメールを送信してる。奏さんや、助けて。

 

「………奏はもう知ってるからな」

 

 涙目でそう言い、静かに固まる。

 

「………紙は置いていく。明日返事を聞くから………」

 

 そう言って立ち上がり、玄関へ。

 

 そして振り返り、

 

「アスカ、逃げたら私はもう、なにするか分からないからな………」

 

 そう言い残して、翼は去っていった。

 

 とりあえず、魂が出ていく。

 

 

 

 時間だ。時間が空けばいいんだと納得して、とある山奥の廃屋に逃げ込む。家に帰れないし、探さないでくださいと手紙も置いたし、問題ないよね?

 

 ガクガクと震える。なぜこうなってしまうのだろうオレの人生、前世なにした? 世界を救ったりした程度だろう。あっ、サーヴァント達の思い関係か。藤丸立香ッ。

 

 そんなことを考えていると………

 

「………殺気ッ」

 

 瞬時に切り替わる。戦意、敵意と言うのを感じ、静かに走る。

 

 それと共に、爆撃が開始された。

 

「なんでさッ!?」

 

 それに驚くと、深夜の夜、満月に人影が映り、降り立つは、

 

「クリスさん………」

 

 目から光が無く、静かに無表情で銃口を向ける。

 

「一つ聞く」

 

「はいッ」

 

 手を上げながら、様子を見る。少しおかしい気がする。

 

 クリスは静かに、

 

「お前は私のことをどう思ってる?」

 

「はい?」

 

 頬をかすめる弾丸。血が一滴流れた。

 

「オマエはワタシのコトをドウオモッテル?」

 

「友人ですッ」

 

 叫んだ。叫びました。

 

「………分かった」

 

「………クリス?」

 

 月明かりの所為でよく目が見えないが、なにか直感的な何かが危険と、アラームが頭の中で鳴り響く。

 

「お前が分からないってことが、よぉぉぉく分かった」

 

 瞬間、オレはその場から飛んで逃げ出した。

 

 その後、重火器のデスレースが始まる。無慈悲に放たれる弾丸、流れる歌を聴きながら、ただ走るしかできなかった。

 

「お前がそういう態度で、そんで勢いで翼先輩選ぶのならもういい………手段は択ばないッ」

 

 爆撃の中、訳が分からず、ただ走る。

 

 その後の記憶は無く、クリスは黒焦げの何かを持って帰還したらしい。

 

 

 

 ――超無関係な魔術師がナレーションします

 

 

「はあ………少しは俺に相談すると言う選択肢は無かったのか?」

 

 姪っ子となっている子は顔を両手で覆い隠している、赤面しているのだろう。

 

 マリアと言う人は髪をいじりながら呆れ、奏は紙を睨みながらどうするか苦虫を噛む。紙は無論、入籍届けだ。

 

 なぜか目から光が無い後輩ズとセレナ。無表情で立っていて、その中で響と言う子もまた無表情であり、未来と言う子は困惑していた。

 

 クリスと言う子は銃口をずっとアスカに向けている。あれは本物の鉛玉放つ銃だ。

 

「っていうより、なぜあなたがここにいるんですか?」

「向こうでお店の代金を払ってもらおうと、領収書を渡しに行ったらアルトリア達に殺されかけたから、ここかアヴァロンしか行く場所が無いんだよ」

 

 暇なんだ。サービス券も貯まってたし、使わないともったいない。そう聞くと全員が白目を向ける。黒焦げのアスカくんまでだ。ナレーションを続けよう。

 

「正直に聞く。アスカ、お前、翼と結婚すると言うか、将来どうしたい」

 

 奏がそう呟き尋ねた瞬間、やばい雰囲気を放つ子達がいる中で、彼は、

 

「山奥で一人で静かに終わりを迎えたい」

 

 

 

 暴力シーンが入ります、しばらくお待ちください。

 

 

 

「正直に言う。アスカ、お前、翼と結婚すると言うか、将来どうしたい」

 

 テイク2と言う奴だ。後ろで銃だけで無く刃物まで向けられた故か、ガクガク震えるアスカは正直に、

 

「そんなこと言われてもッ、オレは見た目は女の子のようなアストルフォの三つ編み切り落とした男だけど、中身は淡々と人生を過ごした、酒飲める大学生だったんだッ。いまさら恋人とかどうとか言われても分からないッ」

 

 それについて奏は私を見る。いまはナレーションなのにな。私は静かに、

 

「うん確かにそうだね。まあばっさり言えば、普通だね。感情らしいものが欠落した子って印象かな?」

 

「よくわかりますね」

 

「一応、殺す切っ掛け作りに、調べたから」

 

 藤尭朔也の何気ない一言に、正直に答える。それに全員から殺気を感じたが、

 

「私に睨まれてもね、私はグランド・オーダーで、彼を殺すよう星と霊長に頼まれたんだ。無駄に生きていられても困るからってね」

 

 それに本人は気にはしていないが、明らかに周りが理解できない顔か、怒りのどちらかになりながら、こちらを見る。それを涼し気に流しながら、

 

「ところで君はどうするの? 結局翼って子と結婚するのかい?」

 

 それに全員が二人を見るが、翼は、

 

「わた、私は………」

「あー防人語が完全に無くなって………」

 

 奏が頭を撫でるが、千里眼を持つ私には分かる。大多数の彼女がしたうっかりの出来事と関わったのは、彼女の仕業だ。

 

 いま言うなよと目線で睨まれた。

 

「そもそもアスカ、その、男なら責任を取るか、ちゃんとした理由を言いなさい。その、翼がそんなに嫌なの?」

 

 マリアが言いにくそうに呟く。すると、

 

「無理矢理結婚とかありえないと言うか、結婚とか恋愛とか、分からないことするより、縁側で茶すすりたい」

 

「なぜだッ!!!??」

 

 いくらなんでも叫ぶ。

 

「君ね、こんなに可愛い子達に囲まれて、出る感想がそれって本気かい!? もしかして同性じゃないとだめなのかッ」

 

「マーリン黙れよッ。言っちゃ悪いがほぼ全員娘か妹並みに歳離れてるし、人生のほとんどが生活する為に使ってた前世、こっちじゃ母さん達の無茶ぶりに付き合いつつ面倒見てたり、ノイズ倒す為に鍛えたりしたんだぞ。いまさら結婚、恋愛、恋人とか考えられない。そもそも翼はどう思ってる!?」

 

 逃げた彼の言葉に、翼は小さくなりながら、

 

「………知られたことを知って、倒れた話を聞いてから考えたら………この結論に達した………」

 

「元凶はこれかッ」

 

 弦十郎は兄が倒れた理由を知り驚き、翼はいまにも泣きそうな顔をしている。

 

 緒川は、

 

「申し訳ございません、自分が翼さんをサポートをしていれば………」

 

「話が緒川さんになるだけかもしれないですよ」

 

 それもそうなのだ。クリスは不機嫌そうに、

 

「結局先輩がちゃんとしてないのがいけないじゃないかッ、部屋ぐらいちゃんと片付けろ」

「そ、そんなことは分かってるッ。せめて着替えぐらいはと思うが、ジュースなどの飲料水がひっくり返って大変なことになってて、緒川さんにランジェリーショップに行ってもらうのには抵抗があったんだ!! 奏は派手な物を買ってくるし、アスカのがその、そのまま使える物だから、つい………」

「………どれくらい頼まれたんデェスかァ?」

 

 後輩ズは静かに睨まれるが、目をそらすアスカと翼。マリアは呆れながら、

 

「確かに、この子と外国で仕事すると、飲み物のふたは閉めないまま放置して、私のもダメにされたわね………その時は私が買ったりするけど、日本にいる時はアスカなのね」

「うぅ………」

 

 こうして話をしながら、キャロルが前に出る。

 

「でだ、結局こいつの女子力が高すぎるから、頼む回数が多いんだろ? 片付けやら、洗濯、料理に買い出し。早い話、性別間違えてるこいつが悪い」

「なんでさ!!?」

 

 まさかの裏切りに、涙目のアスカ。

 

「確かに、お嫁さんとして考えれば、アスカはこの中で一番モテるよね」

「中学の頃から、分かってても告白する男子いたから」

「オレは男だッ、同性の告白なんて受けるかよ!!」

 

 そして、

 

「じゃ、このまま翼ちゃんと結婚するの?」

 

 花の魔術師の一言で、眼から光が消える者と、血管が切れかかり、リロードする子が現れ、少し黙り込む子。

 

 当本人は半泣きでいて、アスカは、

 

「嫌だ、結婚なんて人生の墓場なんかに入りたくないッ」

 

「あーそもそも恋人同士でもないものを、すぐに結婚なぞ俺が許さないぞ」

 

 弦十郎がそう言う中、少しばかり方向が違うことで頭を痛める。別の意味も、この場合含まれるからだ。

 

「風鳴家は面倒な家だ、事の発端はアスカと翼の無自覚さもある。それもちゃんと話し合って解決する。だがいまこんなことになっていると知られれば、本家がどう動くか分からないからやめてほしい」

 

「そう言えばそうだった。旦那、本家の方はアスカを翼の夫にしようとしてるって本当なのか?」

 

 それに翼はすぐにキリっとなり、それと共に顔が曇る。

 

「政界の裏で、二課当時から動いている家だからな。向こうからすれば、融合型として通っているアスカのイレギュラー性に目を付けて、私の婚約者にしようとするのは理解できる」

 

「アスカについては機密レベルの話ではないこともあるが、さすがに融合型のようなイレギュラーな装者や、どの事件でも活躍したのは知られているだろう」

 

 司令として報告できることと、弦十郎としてできないことを判断しているようだ。それを聞いて、響は立ち上がり叫ぶ。

 

「そんな、翼さんの意思とか、考えないんですかっ」

「どこの世界でも政治ってのは個人の意思なんて考えないよな」

 

「だね、その結果壊れた国もあるんだけど」

 

 アスカと共に遠い目をする。まあ、私はそそのかしたからね。

 

 そしてうまく逃げられそうになっているが、翼の暴走は叔父である自分の責任と言って、アスカも彼の問題でもあるため、共々奥へ連れていく。あれはこっぴどく説教だろう。

 

 と、

 

 

 

「でだ、おい花の魔術師」

「銃口向け無いでほしいな、なに?」

「なんでアスカはああも恋仲とか、んなこと考えねぇ。少しばかり異常な気がするんだが………」

 

 どうも私がなにかしたと思われているらしいが、それは心外だ。

 

「保存庫とアクセスした所為や、前世、そう言うのと無縁だったことがあるからじゃない? さすがにそこまでしか分からないよ」

 

 正直に言うと、未来が鉄スパナをどこからか取り出しながら側に来る。

 

「どういうことですか?」

「なんで君らまで私に対して攻撃的なのっ!? 保存庫にアクセスしたってことは、過去の自分を知ったようなもんだよ。つまり」

 

 過去、女神に手を出したり、幼なじみに手を出したり、ハーレムのような事態に成ったり、もう色々だ。

 

 感覚的に感情がごちゃまざにされたと説明する。

 

「それでも彼が彼として感情があるのは、元が空っぽだったからだ。無自覚でも、もし感情があれば壊れてるはずだ。だけど」

 

 壊れた器に水を入れても、壊れたところから流れ出た。だからどうにかなったと説明する。そもそも彼のアクセスは異例中の異例だ。

 

「彼は前世は多くの大事な者達のために戦った、藤丸立香も一人の女性と仲良いけど、狙ってる英霊は多くいるし、彼女達の思いも無下にするタイプじゃないからね。まあ、早い話、感情が枯れてるんだ。喜びも悲しみも、善悪の判断も。なにげに彼、シビアなのも前世の影響だけじゃないよ」

 

 どこの世界に、前世機械的な人生を生きたからと言って、不思議な力を持って命がけの戦いをこなせる?

 

 覚悟なりなんなりは、より前の記録から影響を受けた結果だ。

 

「まあ、それもこれも、龍崎アスカと言う受け皿があった結果だけどね」

 

 それだけは確かだろう。

 

 龍崎アスカははっきりここにいる。多くの記録に影響を受けていても、自分は確立しているのは事実だ。

 

 説教を受けている者を外してそれを聞き、黙り込む中で、

 

 

 

「まあ、記録の中で絶世の美少女とあれこれした記憶とかもあるんだろうから、そんな感情が無いんだろうね」

 

 

 

 ここで、その人を一番愛したとかの記憶とかにしていればいいところを、まるでハーレムが当たり前的な発言の所為で、とある少年はこの後、猛アタックを意識した者達に狙われる羽目になる。

 

 ちなみにアスカと翼は………

 

「はい替えの下着、渡されたのは洗ってるから」

「すまない」

(結局日本にいる間は世話されるんだな、翼………)

 

 自分が買った少し大人な下着を大人しく着て、赤面するさまを見せてくれればいいものを、結局変わらない関係。

 

 マリアはそれを聞いて、全ての元凶は貴方じゃないと、奏に文句を言うのであった。

 

 ちなみに私は後でつるし上げられそうだから逃げました。

 

 めでたしめでたし………




アルトリア「めでたくありません、いい加減にしないと斬ります」
マーリン「なぜだい!?」

翼「ふう、さっぱりした」タオル一枚でシャワー室から出る。
アスカ「翼、替えの着替え。あと明日着る服と、朝食にレンジで温めるものを………」
翼「すまな………」
アスカ「ん?」翼から頼まれて、ここにいる。
翼「………」気付きだす、お世話されているタオル一枚の自分。

問題は解決していなかった。

それではお読みいただきありがとうございます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。