少年/戦姫絶唱フェイト・シンフォギア   作:にゃはっふー

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50話・平行の終わり、帰る世界

 カルデアと言う機関で、静かにため息をつき、全員が一息をつき、休憩していた。

 

「結局今回は」

 

 藤丸立香、彼は静かに起き上がり、今回の事件を知り、シャーロックは何事も無くまとめる。

 

「何かの魔神柱は、まず理想の抑止力が置いていった、彼を大切に想う思いを利用した。自己犠牲によって自分の前から消えた、それに悲しむ者達の思いを取り込んだ」

 

 だがそれだけで止まらないほどの業を、抑止力は背負っていた。

 

 それは理不尽な救いの声。

 

 自分をなぜ救わなかったと言う、無理難題な声だ。

 

「理想の抑止力は万能では無い、だからこそ取りこぼすことだってある。いや、それは如何なる存在もそうだ。理想とはいえ、君は人だ。取りこぼす命もある。だがそれでもできた理不尽な負が、全ての元凶になった。規則性も計画性も無い、ただ、理想の抑止への不満を叫ぶ事件。そう言う事件だ」

「………そうですか」

 

 話を全て聞き、理想の抑止であろう自分として黙り込むが、それに一人の守護者は鼻で笑い、紅茶を淹れている。

 

「愚かなことを考えるなマスター」

「無銘」

「君は所詮は人だ、理想の抑止? 悪いが私も抑止力として働いたよ。100を救うため、10を犠牲にし続けた。今回はその10が不満を叫んだだけだ」

「………なにか思うかい?」

なにも(・・・)。そのようなことはとうに消え去っている、いまさらだ。万能者なぞ存在しない、理想の抑止と聞こえはいいが、結局君はなんだ?」

 

 たまたま一人しかいないがため、世界、人類史を背負わされた人間。一般人。

 

 いまでは魔術師達が一目を置くマスターだが、彼は一般枠の青年だった。

 

「君は運が悪い、理想なんてものを押し付けられた被害者であり、加害者だ」

「………」

 

 押し付けられた使命を受け入れ、仲間と共に人類史の修復に挑んだ。

 

 その結果、失ったものもあれば、守れたものもある。

 

 そして………

 

「全てを救える可能性を持たされたが故に、全てを救いたいと叫び続けるしか無い者。私からすれば、君ら理想の抑止力が狂っている」

 

 化け物として英雄に殺される宿命を押し付けられた。

 

 英雄として、多くの罪と嘆きを背負うと押し付けられた。

 

 全てを忘れ、リセットされながら繰り返す。安息の無い魂の輪。

 

 そしていま、自分は、もっとなにかできたんじゃないかと、後悔しているかと言われれば、黙り込む。

 

 なぜならば、自分は彼らも守り、救い、助けたかった。犠牲と言う言葉で片付けられない、大切な出来事が、心にある。けして否定できない。

 

「骸の丘で磔か、まさに似合いものだ。君たちは骸の丘で、無限に思える夢幻の墓標で、血を流しながら立ち続けられているんだ」

「………」

「………それでも構わないと言う顔をしているぞ」

 

 無銘の言葉に、静かに目を閉じ、胸を押さえる。

 

 微かに責められ続けているのだろう。自分勝手、自己犠牲、それでも救えるものが少なく、それでもここにいなきゃいけないと言う、絶対の何かを感じた。

 

 だが、

 

「………たぶん、俺は藤丸立香として生きるか?と言われたら、頷いている」

 

 そう、眼を開き答えると、二人の男は静かに見る。

 

 マシュの先輩、多くのレイシフト先での戦い。またやることになろうと、選ぶ。

 

 また失う悲しさ、虚しさ、そして苦しみを背負おうと、

 

「俺は、俺。藤丸立香だから」

 

 やはり理想の抑止なのだろうと本人は思う。

 

 そんな幻想を抱き、同じ苦しみを味わいながら生きる。

 

 また0からであろうと、藤丸立香の生き方を、他人に渡す気は無い。

 

「愚かだな」

「ああ、そうだね」

 

 無銘はそう呟き、仕込みがあると言い、調理室へと出向く。

 

 シャーロックは何も言わず、眼を閉じた。

 

 

 

「それでは、この世界はまだギャラルホルンが?」

「ああ、まだ機能している。君らの世界のは止まったようだが、この世界は平行世界での問題はまだ起きるかもしれない」

 

 そう弦十郎司令が言いながら、帰る支度をしていた。

 

 この話を聞くが、これ以上はできることは少ない。自分らの世界は終わり、帰って自分らの世界で防衛に戻らなければいけない。

 

「気にするな、この世界の装者もまた、君の知る装者達だ。なにがあろうと」

「へいき、へっちゃらですね」

 

 そう苦笑する。

 

 そうだなと思いながら、静かに荷物をまとめる。いつの間にか清姫達がいなくなっていた。

 

 女性服も無くなっていた。

 

 お菓子はいいが、それは誰が持って行ったかによって恐怖を感じる。

 

「それでは」

「ああ」

 

 結局エルフナインの為か、少し作業を手伝った妹の様子、セレナと奏がこの世界で起きたことを知り、必ず思うと言い、言葉を二人に送り、静かに去る。

 

「それでは」

 

 こうして平行戦慄世界 【パラレル・フェイト】は終わりを告げた。

 

 

 

 ………だけどね。

 

「ですけど平行世界の繋がりはこちらの方が安定していて、しかもデータを取ると言う点では安心できるんですようなので」

「しばらく夏休みの宿題をしようっ、こっちの私っ」

「ダブル私とダブル調なら、二倍で宿題が終わるデスッ」

「デスッ!!」

「アスカが物凄く頭いいたんだよッ私ッ。やったねッ、これなら夏休みの宿題が早く終わる!!!」

 

 舞い上がる向こうの装者達に呆れる中で、クリスは頭を痛める。

 

「おいアスカ、どっか、増えたバカと関わらずに済む場所は無いか?」

「俺に近づくなッ、解体するからなッ」

 

 すでにダブル響がキャロルを囲もうとしていて、クリスは頭が爆発しそうなくらいに、キャロルの次は自分かと思うようで、嫌な顔をする。

 

「まず全員で来るな、何名か帰れ」

「デデスっ!?」

 

 夏休みはどうやら、ゆっくりできないことがはっきり分かり、データ取りの為に時折平行世界から、彼女らが遊びに来るらしい。

 

 マムに驚いていたり、色々なことに驚く少女達を背に、ふうとコーヒーを飲む。

 

「もう疲れたよフォウ………いなかった」

「私はいるよッ!!」

 

 いい笑顔のなんちゃって冠位魔術師をぶん殴って、妹のエルフナインを抱きしめる。

 

 夏はまだ終わらない。

 

 

 

 一人、我が家で休むかと思ったが、なんとなく町を見渡せる場所へと足を運ぶ。平行世界組は一度帰る中、やはりと言うかなんというか………

 

「………俺は異物だったな………」

 

 彼らの世界に自分は存在しない。はっきり見ながら、それで助かった人もいれば、助けられなかった人もいる。

 

 理想像を押し付けられた、幻の希望。

 

 この奇跡は、人が身勝手に、都合よく考え作られた幻想の一部。無限なる夢幻である自分は、いましか自分の選択肢を選ばないと言うが………

 

(嘘だな)

 

 そう思い、眼を閉じる。

 

 知性無い生き物は、ただそこに生きていただけだ。

 

 人として生きる時、必ず選ぶ、理想的な生き方。そう………

 

 自己犠牲、何かを犠牲にしてまで、救おうとする身勝手な存在。

 

 自分は主人公ではない。

 

 主人公の為に犠牲になる必要なモノであり、そして、物語の為にいるパーツだ。

 

 だけどま………

 

「別に………構わないさ」

 

 この世界の龍崎アスカは決まっている。

 

 平気と笑い、誰かを救う力を拳にする世界に苦しむ歌姫。

 

 防人として、その身を剣へと研ぎ澄ましながら、歌う歌姫。

 

 悲しい現実に立ち向かう、本当は心優しい歌姫。

 

 死んでいるはずが、歯車が変わり生き、片翼を支える歌姫。

 

 誰よりも優しく、母親のように厳しく、優しく微笑む歌姫。

 

 姉妹のように手を取り合い、世界を見る歌姫達。

 

 歯車が狂い、姉を支え、変わり果てた生を生きる歌姫。

 

「………やるべきことは変わらない」

 

 彼らを支える者達。

 

 そして自分は、自己犠牲、自己満足、自己で決め、自己で覚悟し、自己で終わる愚かな物語を担う担い手。

 

 その時、少しだけ気づく。

 

「背、伸びたかな?」

 

 そう言えば少し世界が広く感じる。

 

「………目睫はまあ、ひ孫に見守られながら終わりたいな」

 

 そう笑いながら、決めた。

 

 歌姫を守る龍の崎にいる明日の可能性は、偽善者である。

 

「今日はパーティーか、うまいもん作りますか」

 

 そう笑い、歩き出す。

 

 分岐する絶望は破壊し、希望を作る。

 

 それ以外の生き方を選ばない、偽善なる理想の自分として………

 

 

 

 一人の青年は、骸の丘で血を流し続けていた。

 

「どうしてそこに立っているのですか?」

 

 一人の少女はそう呟く。

 

 身体中を貫く刃、けして手放すことも無い武器を持ちながら、丘に磔にされたように、そこに立ち続けている。

 

 見守るものなんてない。意味もあるか分からない長い時間、ずっと、ここにいる。

 

「俺は、ここにいたいんだ」

 

 他人が傷付く光景を否定し、誰よりも先を歩む。

 

 結果がこれだ。痛みなぞ分からないほど、傷を負った。

 

「悲しいですね………」

 

 そう呟く。彼から嘘偽りは無い。

 

 誰にも理解されない生き方か、あるいは作られる生き方。

 

 勝手にそう思っていると思われ、語られる。

 

 だが、

 

「それでも………譲れないからね」

 

 少女は手を伸ばす。だが届かない、彼は届かない丘にいる、場所にいる。

 

 彼は一人で、戦い続けている。

 

「諦めません」

 

 少女は呟く。

 

「必ず隣へ………貴方の側に、貴方と共に、貴方と時間を共にする………」

 

 教えてもらった、見せられた。

 

 本当に誰かを好きになるこの想い。この想いだけは叶えて見せる。

 

 必ず、必ず彼の傍に………

 

「私は諦めませんよ………」

 

 彼の者は理想を押し付けられた守り手。

 

 彼の者を支えるは、理想を信じる者達。

 

 無限の夢幻と共に、戦場を駆け抜ける。

 

 

 

 そして………

 

 

「んでだ。夢ん中でのあたし達や、先輩の様子とか、テメェに色々と聞きたいことがあるんだが」

 

 装者達に捕まり、血を吐きそうなほどストレスで胃が痛い。

 

 真っ赤になり、手で顔を覆い隠す翼。光が宿らない切歌、調、セレナ。

 

 マリアも、

 

「ねえ、貴方にとって、私、そんなに飢えてるように見えるのかしら?」

 

 そんなことを聞かれながら、未来は何も言わず見ていて、響もどうすることもせず見ている。

 

 奏は仕方ないなと頭をかく。

 

「みんな、ともかく落ち着いてくれ。アスカを拘束すんなよ」

 

「「奏」さん」

 

 二人は希望を見る目で見る。その話題をそらしてくれる、そう信じて………

 

 

 

「アスカは翼の下着をここ最近買ったり、シャワー室でドア一枚でアスカは平気で脱衣所に入って脱ぎたて洗濯したり、何度も裸を見たことがあったり、部屋掃除したりする情報。まずは私が教えるから………」

 

「「奏」さんッ!?」

 

 

 

 龍崎アスカは今日も叫ぶ。今度の女性服を着て過ごすというお仕置きの元………

 

 防人は真っ赤になってしばらく部屋から出なかったが、三日くらいして泣く泣く出てアスカに掃除を頼む。

 

「結局かあぁぁぁぁぁぁ」

 

 生き方はすぐには変えられない………




オリジナル編、終わりました。お読みいただきありがとうございます。

この後の展開の更新ペースで、活動報告に書きます。

好き勝手に色々しましたが………アスカくん、きよひーに風鳴弦十郎。

どうしてこうなったんだ。

そんな作者ですが、興味がある方は見てくださるとうれしいです。

それでは二回目ですが、お読みいただきありがとうございます。

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