セレナ「アスカさん、なにか落ち込んでるんですけど、なにが?」
奏「薄着で歩いていたら装者全員から女の子がそんな姿で歩くな的なこと言われて、昔に戻ったみたいで心にな」
アスカ「俺は男だ………」
アストルフォ「僕はどっちでも問題ないよ♪」
清姫「わたくしもです♪」
アスカ「アアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ」
ともかく、オレは静かに、
「ハウスッ!!」
二人のサーヴァントにそう叫ぶ。
「僕はアスカと寝たいッ」
「アスカ様と寝床を共にするのはわたくしですッ」
二人の暴走者に対して、セレナがよいしょっとと、
「阻めッ、ブリテンの歴史ィィィィィィィィィィ」
「「ああッ!?」」
セレナが作った城壁の中で、静かに寝るが、
「セレナも中だけどいいのか?」
「力を維持するためにも中にいないといけませんから、気にしないでください」
そう言って、奏さんも隣にいる中、城壁を削り出す二騎を無視して、ゆっくり寝る。
ただ一人、平行世界の銀の腕さん。何か複雑そうなしている人がいるから、奏さんはどうすんだこれと呟いた。悪いが無視する。
「………」
やべっ、こっちじゃ防人も加わってる。一人増えてる。
そしてキャロルは翌朝、目が覚めたら隣に立花響がいたので、布団で縛り付けて海に投げ捨てました。
朝食を作る中、奏さんを初め、こちら側も向こう側もいる中で、少し情報があるらしい。朝食を食いながら、夏休みの響、いや立花達も含めての話し合いだ。
「ここ最近、低学年の少年少女が行方不明と言う謎の誘拐、失踪事件が多発している。この件を今回の、英霊事件が関わっているか、君たちから意見を聞きたい」
『いま送られたデータから、微弱ですが、サーヴァントの反応があります。関係はどういったものかはわかりませんが、ほぼ無関係と言うわけではないでしょう』
『と言っても、まるでその場から消えたように、そこだけにしか反応が無いのがおかしいけどね。少しばかり解析度を上げてみるよ』
マシュさんやダ・ヴィンチちゃんの話を聞き、全員が黙る中で、これで問題点が二つある。それはデオンが、
「今回のその事件を起こしているのが、私達のような、偶然呼ばれたはぐれサーヴァントか、あるいは」
「魔神柱が故意に呼んだ英霊かだよな………少年少女を攫う英霊なら、反英霊。悪名が有名の人物か?」
そう言うが、書類を読む中で、少し引っ掛かりがある。
「共通する点があるな」
「ん、ガキってこと以外にあるのか?」
雪音さんがそう尋ねると、いいやと答えながら、
「全員が全員、塾帰りであり、発覚も塾終わりからだいぶ経ってる。一時間くらいってレベルじゃない」
それに全員が首をかしげる中、それに嫌な顔をする弦十郎司令官。
「………被害者の子供の保護者は、後日、気付いたそうだ。子供が家に帰って無いことにな………」
「デスっ!?」
「後日って」
「まさかっ、テメェのガキなのに、ちゃんと面倒見てねぇのかッ!!?」
それに憤る装者達、捜査するために派遣した者達も呆れるほどで、中には調べている時の訪問で気づいたと言う、バカな親がいたほどだ。
「ご両親がいるのに、なんでそんなこと………」
立花さんが悲しそうにする中、アストルフォ達も嫌な顔をするが、
「………」
一人だけ、鋭い顔をする。
「………まだ安心はできないが、まだはぐれサーヴァントで、命の安全は保障する」
「本当かっ!?」
驚く中だが、こんなことをするサーヴァントに心当たりがある。
だが予想だ。外れていたら大問題だ。
「ともかく、オレの予想通りのサーヴァントか確認すれば、問題は………子供達の説得だな。誘拐されたんじゃなく、サーヴァントに言われて、家出したであってほしいが」
「? そんなサーヴァントいるっけ?」
「全てのマスターを我が子とのたうち回るサーヴァントなら知っておりますが?」
「それもそれで怖いが、生贄みたいな扱いじゃ無い事を祈るしかない」
難しい顔のまま、それにはマシュが、
『その心配なら、まだ大丈夫と言えます。それらしい術や儀式の痕跡はありません。ただサーヴァントの気配だけはあると』
「それは行方不明現場付近で?」
『はい』
それなら予想通りのサーヴァントの可能性が高い。なら子供の安全は問題ない。むしろこっちが心配だ。
「あの子、敵に回るとまずいか? ともかく、マシュさんはここの人達と協力して、魔術的反応の索敵で、オレらは現場で」
そう言いながら、料理を置く。おいしそうな洋食だ。
「絵本を探そうか」
――???
サーヴァント、クラスキャスターのナーサリーライム。童話と言う童話から生まれた英霊であり、姿形が無いので、絵本の姿と、昔のマスターであり、大切な友達の『ありす』の姿をした少女。であり、娘のような子だ。
だが姿形は無いので、空間が本体のような、実体のない英霊の一人。
「それがアスカさんが子供たちを攫ってるサーヴァントだと?」
「まず予想としてだけど、痕跡も僅かで、子供オンリーってのがね。アサシンって可能性があるから、まだはっきりできないけど」
「そのナーサリーライムと言う英霊は、絵本の姿をしていると?」
風鳴さんがそう聞き返す中、静かに頷く。
「本来は姿が無い、ここ、イメージで生まれた英霊なんだ。姿形は当てにならないし、考え方は本当に子どもだから厄介なんだよ」
頭を指さしながら、装者に説明して、奏さんは、
「だけど、まだアサシンの可能性があるんだろ?」
「少しね、子供の顔がな………」
そう言われ、響は書類で渡された、子供達の写真を見る。みんながみんな笑っていない、覇気も何もない。
そのうえ、履歴を見ると、遊んでいる時間はどこだろうと思うけど、習い事が多い。学校もエリート校と、そうなっている。だけど息が詰まるなと思いながら、
「ナーサリーライムはね、子供の遊び心が生んだ英霊なんだ。だから」
「………確かに、マスターがいない彼女なら、遊び相手として自分の空間に閉じ込めそうですね」
デオンがそう言い、それに頷く。
「だけど問題がある、ナーサリーライム、アリスの空間に閉じ込められたら、時間の感覚が消えるし、自我が消える。取り込まれる可能性もあるんだ」
「なら問題じゃないのか!?」
「あっ、それは問題ないと思います。それならもう少し、反応が強くなるので」
セレナの言葉にそれには安心する。安心するが………
「まず、子供を取り戻しに来たオレ達を、敵として認識するのは確実だ」
「そうなんですか?」
「可能性が高すぎる、遊んでるときに邪魔されたらキレる子供だぞっ。正直手が付けられないし、たぶん空間にいる子供達も、貯めに貯めた不満が後押しするから」
「うへぇ~………だいぶ苦労しそうだよそれ」
アストルフォは嫌な顔をする。ともかく、
「とりあえず、お菓子を罠に張り、データをカルデアに送信して、子供を探す」
そう言って作ってきた焼き菓子を取り出して、みんなに配る。暁と立花さんがよだれを出しそうにしていたが、ハウスと言いそうになった。アストルフォはほほを引っ張った。
これで釣れればいいがと思いながら、
「んじゃ、この辺りらしいから、しらみつぶしに探しますか」
「デースっ」
「ああ」
「分かったわ」
「よしそれじゃ」
と、
「ん、皆さん? どうして私のことを睨んでるんですか?」
「立花響さん、いくらオレらの知っている響と大差ないからって」
「お前………言われてそうそう」
「はい?」
雪音さんが呆れ、周りもジト目で見られて気づく。
クッキーが無くなっていた。
「ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
「食いたきゃ、後で作るから、いまは後で」
「い、いえいえっ。食べてませんっ、あたし食べてませんよっ」
「立花、いまは任務中だぞ。これも大切な捜査道具なんだからな」
「翼さん~あたし、ほんっっっっっとうに食べてないですって~~~」
そう泣きそうな顔で言う立花さんの顔は、本当のことを言っている顔。それを見ながら、マシュさんに辺りの空間を検査、サーチしてもらった。
『っ!! 空間にゆがみがありますっ。立花さんが言ってるのは本当ですっ、もう釣れました!!』
「マジかっ!? こいつがつまんだんじゃなくって」
「マジらしいっ、さすがに驚いたが、逆に子どもの安全は確定し、オレらの交渉難易度が上がったぞっ」
「濡れ衣は解けましたけど………子供たちの説得ですよね?」
それを考えると億劫になるが、いまは言っていられない。
とりあえずサーチとクッキーをエサにして、本体か入口を探し出す。いまはそのために動き出すしかない。
お菓子をエサにして、静かに痕跡を探る。
「結果ここが堺か」
そう言って、ここまで来れば分かる。僅かな空間のズレ、それに清姫が手を上げる。
「ではアスカ様、この清姫が」
「えっ」
「えい♪」
そう微笑みながら、バキッと目に見えない隙間に指を入れて、バキバキと砕きながら、固有結界をこじ開ける。
ただ静かに、身体が震えた。
「いまは冬か………もう少し暖かい格好すればよかったよ」
「アスカ落ち着け、この世界の四季は夏だ」
「もう清姫伝説の清姫ではありません、きよひーです。もうただのバーサーカーじゃないですよ」
冷や汗すら引く寒さが身体を冷やす。セレナが自分の知識にある、サーヴァント清姫を遥かに超えた存在に戦慄する。
清姫は気にせず、ふふって微笑み、袖で口元を隠す。
「これくらい、淑女のたしなみの一つです。旦那様を支えるのなら、異世界の壁の一枚や五千枚、軽くひっぺはがせなければ、良妻にはなれないですから♪」
「怖いよ清姫」
頼もしいけどね。そう言いながら、入口に剣を刺して、中の様子を見ると、
「ガキがいたぞっ」
雪音さんの叫びに、みんなびっくりして、クッキー食べている。ここまで来るのにもクッキーがいつの間にか無くなっていた。
「さてと、交渉はオレに任せて、子供のことはオレ得意だから」
そう言われ、雪音達は後ろに下がる。黒服の大人も、視界に入られると面倒なので絶対に口出ししないように言っておきながら、中に入ると、
「アスカ様っ」
清姫の叫びと共に、瞬間的に現れた瓦礫が、アスカに落ちた。
「アスカさんっ」
そんな中、一人の少女が大きな絵本を広げて、現れた。
「貴方達、私の友達を攫おうとする悪い人?」
「ちゃうわい」
そう言って、瓦礫から平然と粉々に切り刻み出て来るアスカ。
「平気なのアスカっ」
「アストルフォ、オレはこれでも日々ヤンデレやらなんやらで精神が鍛えられた男だ。この程度はむしろ物足りない程度だ」
「日々どのような日常………いえ、時折濃いだけですね」
デオンが申し訳なさそうな顔をするが、アスカは平気な顔でアリスを見る。
「アリス、悪いけどお茶会は終わりだよ。そろそろ帰る時間だ」
それに子供達が酷く嫌な、怒られるとかじゃなく、本当に泣きそうになるほど嫌な顔をした。
「いや、まだみんなでお茶会を楽しむのっ」
瞬間、悪魔のようなものが現れ、その腕がアスカへと振り下ろされるが、瞬間斬られる。それに風鳴達は驚く。
見えない速さの居合切り、構えすら無く早いスペックに驚くこちらの装者達。
「無駄なのっ、ヤギさん!! お茶会邪魔する悪い人を追い出してっ」
それで現れたのは、ジャバウォック。それをスキャンしたマシュ側が叫ぶ。
『そんなッ、いくら自分の固有結界内だからってッ。逃げてくださいアスカさんッ!! いま現れた敵エネミーは、全スペックが計測不能っ、下手をすればメガロス以上のばけ』
「えい♪」
そう言って、清姫が小突いた。
結果爆砕したようにぶっ飛んでいった。
『ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ』
もう何も言わないと言う顔のアスカ、こほんと着地した清姫は静かに三歩後ろに控えてる。
「清姫、悪いけど子供が怯えるからやめて」
「ですけどアスカ様、アスカ様の場合では、剣で切り刻むので、こちらの方がよろしいかと思いまして」
「ううぅぅ………」
泣きそうな顔のアリスに、あれ、どっちが悪者だろうと言う顔の装者達。
「ともかく帰ろうか」
「い、いやだっ」
そう叫ぶのは、攫われたはずの子供達だった。
「帰ったって誰もいないもん」「そうだそうだ」「帰りたくないっ」「ここでずっといるんだっ」
それに少し悲しい顔をする立花達だが、
「えっ、いまビーフシチューの準備してるんだけど、食べたくない?」
全員がは?と言う顔をする。アスカは静かに、
「ビーフシチューだ、食べたきゃ一度帰れ」
それにきゅ~と可愛い音が鳴る。それはアリスからだった。
アリスは顔を真っ赤になりながらも、
「そ、そんなこと言ったって、これを見るのっ」
突然窓ができ、そこには自分達が帰っていないことに気づかなかった親。そして気づいてから醜く争う親。それを見せられる。
「こんなところに戻るより、ここでお茶会する方が楽しいものっ。だから帰る」
「帰る帰らないはそれじゃ置いといて」
「置いとくのっ!?」
アストルフォはそう叫ぶが、だって面倒だもんと思う。
こればかりは大人な人に任せる。あの人なら安心できる、まずは子供達を落とす。
「そこの親や大人のことは知らん、ともかくうまいビーフシチューを作ったから食うか? いまならお肉多めだぞ」
「嘘だもんっ、そんな、そん………」
だがアリスは嘘らしい気配が無いのか、すぐに黙り込む。
そして、
「いまならアイスも食えるぞ」
子供達を取り戻した。
「なんて言うか、分かっていたとはいえ、こうも簡単に事が運ぶとは」
「だな、配るのは私も手伝うよ」
「うんお願いします、風鳴さん」
「言いにくいならさんはいい、皆もそう言うだろう」
名前呼びは向こうの自分達のことを考えて、そう分かるとそう言う風鳴。いま焼きたてのパンやビーフシチューを食べながら、わいわいきゃあきゅあと楽しそうに食事する子供達。
ここにいる全員が驚きながら、おいしそうに食べているし、その映像を、
「後で見せるのか?」
「この笑顔を見て、何も思わなきゃ、終わりだがな。その辺は司令官を信じるさ」
「旦那なら平気だろ? こっちもかなりイライラしてたからな」
こっちの大人である風鳴弦十郎を信じ、このただの子供の笑顔を見ても、自分の子供に対して何も思わなきゃ、彼が怒鳴りつけるだろう。
ともかくいまは、野菜だろうがなんだろうが、おいしく食事して、嬉しそうに食べている子供達。アリスも混じって、嬉しそうに食べていた。
キャンプ地のように車で囲んでいるんだが、なるべく物騒な武器を持った人は下げて、いまのところこの通りだ。
「アイス、アイスはまだデスかっ」
「このお肉柔らかいな~」
「お前ら………」
雪音がもう呆れを通り越して、月読もジ~と見ている。
セレナはセレナで、
「こういうことを想定してたんですか?」
「ん~なんかさ、アリスはこういうことする子って思って、こういう風にすれば解決するって、なんとな~く思ったんだ」
悪意も何も無く、ただ友達と楽しく過ごしたい英霊の為に動けばいい。そう思ったら、すらすらとこういうことを思いついた。
だから、
「たぶん、前の俺だろうな。アリスは物理的な戦いより、我が儘な子供相手の説得でどうにかできるって」
そう言いながら、アイスも出す。プリン付き、子供達は一気に笑顔になり、なぜか嬉しそうに泣く子もいる。
「こんなおいしい食事、久しぶりなんだもん………」
そんな言葉を聞きながら、車を背にして子供達の声を聴く大人の顔を見る。
「あの子たちのことは」
「任せていいだろうよ。あの光景を見ても目を覚まさないのなら、旦那が覚まさせてやるよ」
そう言ったので、安心する。
ともかく、はぐれの出現を確認する中。そう思った時、
「あの変な人達のお願い聞かないままでよかったの♪」
そうアリスが言ったので、すぐに切り替わる。
「お願いって?」
アストルフォも食事に参加しているとき、アリスは笑顔で、
「うん、この子達をお茶会に誘うように言われたの。それで後で渡せって、アリスはお茶会がしたかっただけだから、渡すこともしなかったのっ♪」
そう言った時、僅かな気配を感じ、それは幽鬼のように、現れる前だった。
謎の男「絶版だ」
きよひー「させません」
謎の男「なにッ!? バカな!!? なぜポーズの中でただの人間が動け」
きよひー「ときめく出会いを否定する貴方こそ絶版です………愛の前に散りなさい」
謎の男「馬鹿なッ、アアァァァァァァァァァァァ」
アスカ「はっ、ゆ、夢………いやなんの夢?」
アストルフォときよひー「………」
アスカ「………ずっと見てたの?」
アストルフォときよひー「「サーヴァントには睡眠は必要ないよ」ですので」
立花「うわっ、冷たっ、えっ。なにこれ、キャロルちゃん、なにこれ、ちょっ」
キャロル「糸は緩いから、冷えた頃には出て来るだろう………」
お読みいただきありがとうございます。