とりあえず、帰ったらどうなるんだろう?
平行世界、なのだろうか?と思うと思っていたが、そう思わなかった。
都市部に巨大なクレーターがあったりする辺り、少し考えることにする。
まずはこそこそ姿を隠し、食材などを確保して、廃屋のビルに集まり、話し合った。
「まずここは龍崎アスカと言う人間は絶対にいない世界だ、間違いは無いな」
龍崎アスカは平行世界ではなく、異世界の魂が元だ。この世界、分かりやすく『シンフォギア』と言おう。シンフォギアに龍崎アスカは絶対に存在しない、本来の世界でもいるかどうかすら分からないのだから当たり前だ。
ラジオなどを使い、情報を集めながら、キャロルは静かに考える。
「まずは一、コンサート事件にてネフシュタンの鎧だな」
「確かあたしと翼、ツヴァイウィングで歌った時に起動したんだったな。それをまあ盗られたんだが、いまはもういい。その時のことをアスカがいなかったらで考えると」
奏さんは静かに、
「あたしは絶唱を歌って死んでる。いや、あれは装者の誰かが死んでてもおかしくないからな。一番はあたしさね」
薬により後天的に装者になり動き、ガングニール装者だった自分だから分かる。あの場はアスカが絶唱を抑えるエネルギーとされることをしたおかげで、薬の後遺症も無い。まあガングニールも無くなっていたが。
「その現象は俺も知っている。仮設を立てるなら、アスカがあの場にあった聖遺物関係のエネルギー全てを、融合型聖遺物アストルフォへ変化させ、自分の物に変化される際、絶唱でエネルギーを外へ放出していたお前の力を奪い取ったに近い意味で燃料に変えたんだろうな」
あれ全てってことはノイズもか? そうキャロルと聞くとそうだよと答える。
「天羽々斬がこれにくみ取られたりしなかったのは、風鳴翼が纏っていたからだし、他の聖遺物は距離的な問題があったからだろうな」
だが所有者も無く、そんなにプロテクトされていない研究品や未覚醒の品は取り込まれたりしたらしい。現状はそうとしか言えないと答えるキャロル。
「むしろそれが後遺症も治す切っ掛けになったんですね」
「それももう過去話だからもういいさ、だが、この世界ではそれはないなら」
「天羽奏はあの日に死んでいるか」
みんな難しい顔をしながら、次にとセレナを見る。セレナもまたはっきりと、
「私はネフィリムの実験中、炎が舞い上がってる中での絶唱でした。瓦礫も上から降ってきましたから、十中八九死んでます。助けてくれる人も、マム以外、いるとは考えにくいですし、実際動く人はいなかったらしいですから」
「まあ、マリアやナスターシャ教授もそれが切っ掛けでテロ組織みたいなことしたからな………」
「はい」
そして次にキャロルを見る。キャロルはふんと鼻で笑い、
「正直、計画の際、俺は初め、イグナイトモジュールの最初の起動時に、その身に滅びの歌を受けて、それを持って自害する予定だった。アスカのパスを維持したまま、あの身体で逃走したが、本来はあの身体も使い捨てだ。ちなみにまた身体の予備なんて無いからな、よくて廃人、まあエルフナインに身体でもくれてやったかもな」
答えを知ったキャロルはそう告げ、つまりキャロルも消えているか、記憶が完全に消える前に、エルフナインに身体を渡していると言う結論に達する。
「ここにいる人間はこの世界の人からすれば死人か存在すら知らない人間か」
「そうなります」
そしてクレーターを見るが、ここはキャロルとの戦いの場所。おそらくその跡地だろうなと思いながら、だいぶ経っている。一週間程度か。
結論から言って、この世界の組織、タスクフォースのみんなと接触するべきかと考える。やはりバックアップがカルデアだけは心もとないと言うより、この世界で起きる問題である以上、必ず関わるからだ。
「だけど翼とマリアがな~」
「すまん」
「すいません………」
翼はいる状態ですらかなり精神状態が不安定になり、二年間無理していた。奏さんの言葉があるのにも関わらず、いつの間にか変な口調にもなった。
「二年か………確実にこじられてるぞ。自分は防人、皆を守る剣って言い聞かせてる頻度も高そうだし………」
「マリア姉さんも、あれで思い込むと………原因である私達が言うのもどうかですが」
そこに平行世界で生きてる自分らが現れればどうなるか、確実にこじれる。分かる。確実だ。
「………逆でも、あたしもこじれるだろうからな。そういう関係じゃないのが分かる」
「………ですね」
そう言う中で、キャロルはふんと不機嫌そうに食事を終え、作戦会議を終わらす。
「俺はどっちでもいい、こっちじゃお前達と違って世界を解体しようとした重罪犯だ。それを後悔もしていない。どういう風に取られても文句は言わない」
「はあ、妹がそう言うのなら、それでいいだろう。正直、響には会いづらい」
オレもまたそうだ。逃げているだけだろう、それぐらい分かるが、できればだ。
「ギリギリまで接触は避け、最悪司令達だけにしよう。ともかく町で変装して情報を集めよう、キャロル達みんな変装してくれ」
そう言って部屋から出ようとするが、奏さんが腕をつかむ。
「まあ待て、安心しろ、お前の分もある」
そう言って、セレナが嬉しそうに、あるものを取り出す。
「待て、なぜ存在すらしないオレが変装しなければいけないの?」
「あたしらだけってのもな」
「大丈夫です、化粧は得意ですし、アスカさんは薄めでも問題ないです」
「覚悟はいいか、お・に・い・ちゃ・ん?」
こうして女装する羽目になりました………
「チッ、短パンは確保してたか」
「もうしないと思って油断してると思ってたんだがな」
「泣くぞ」
(写真は戻ったら現像しなきゃ)
ともかく、いまはこそこそ移動しつつ、この世界にあるはずの『ギャラルホルン』を確保、様子見するために施設へと向かう。
一応、司令から普段の警戒網など聞くが、ただ厳重に封印に近い形で保管しているだけだ。人はいない。
だから時間帯は気にせず、夏休みのことも考えると装者は翼とマリアは確実に動くことから気を付ける方面で動く。
施設は人が近づけばアラームが鳴るらしいが、そこは、
『もしもし、皆さん、保管庫近くですか?』
「はいマシュさん、それでは」
『はい、キャロルさん、サポートは任せてください』
「ふん、この程度の施設、問題なく入れるさ」
なによりと、平行世界のキーもある。よほどの違いが無い限り、問題なく中に入れると考えるが、油断はしない。
すでになにがあってもおかしくないのだからと、
「……………………」
ピピッと音が鳴ると共に、厳重な扉がいくつも開く。それに仮面を付けたり、覆面したりと、みんなするのだが、
「………順調過ぎない?」
『ですがこの世界のギャラルホルンがどうなっているかの確認は、最優先事項なのは確かです』
「確かにな、元々俺がしたこと、異世界のこと、そしてギャラルホルンが合わさって起きた異変だ。こちらでのギャラルホルンはどうなのかは見ておきたい」
「んじゃ、行きますか」
「異変が起きてなきゃ、ギアを纏うなよ。纏えば最後、必ずこっちの装者が飛んでくる」
そう言われながら、さっさと最深部へと出向く。
そして………
「………」
全員が絶句する。
「お、おい、異変はこっちの奴らも探知してないのか?」
「してるかどうかいま調べるっ、何もするな、警戒をおこたるなよッ」
そう言いながら、元の世界で見たギャラルホルンと違い、黒い泥を纏い、心臓のように脈動するギャラルホルンに、全員が絶句していた。
『こちらカルデア、完全聖遺物ギャラルホルンのスキャン完了しました』
『どうやら何かしら起動していてもおかしくないところ、その泥に力を奪われてるようだね。おそらくだが、こちらの住人は気づいてもいないんじゃないかい』
そうダ・ヴィンチちゃんが言うと、キャロルも頷き、そして、
「これを破壊すればいいのか」
『いいや、破壊すれば大規模爆発を起こすよ。ギャラルホルンに張り付いてるのは吸収しているだけだし、魔神柱の残骸は逃がす可能性はある』
『我々が把握しているのは、生き残りのようなものですが、この世界で活動している魔神柱は、我々が把握する方法で活動していない可能性が高いと思われます』
「なら、魔神柱ってのを倒す。それが一番だね」
「ですね、ですけど」
セレナが疑問に思う、力を吸収している。つまりこの世界で力を蓄えていると言う意味だ。何をする気か分からず、理解できない。
「よくて元の世界に戻って人類史の破壊だよな」
元々彼らは人類があまりにも哀れで、傲慢な生き物として嘆き、終わらせようとしたのだ。だがこの世界は無関係だ。
「まさかこの世界で人類史の終わりと再生をするのは、完全なお門違いだ」
「だね、けどこのギャラルホルンを無視するのもね」
そう言っていると、ブ―とサイレンが鳴り響き、赤いランプが点滅する。
「キャロルっ!?」
「俺じゃないッ、外から攻撃を受けて………はっ?! 装者ですら破壊できない外壁を壊しながら、一直線にこっちに向かってきてるだとッ!!」
「………なんか嫌な予感がするよ、マシュさん」
『アスカさんの言う通り、これは………』
外壁を壊し、ついに最深部であるここまでやってきたそれは、
『敵サーヴァント反応ッ、この世界にもサーヴァントが現れましたッ。並びにノイズと言う、シンフォギア世界の特殊兵器反応もあります!!』
――???
そこはまたとある施設であった。
「おいオッサンっ、ノイズの反応ってマジかっ」
「ああ、しかも完全聖遺物を保管していた場所だっ。朔也」
「現在モニタ確認中!! すでに外部に侵入者ありッ」
「並び、完全聖遺物ギャラルホルンに異変あり!! これは外部にエネルギーを吸われているの?」
「ここまで侵入されていて気づかなかったのかっ、奴さんの様子は」
「モニターに出します、装者は向かいながら見てくださいっ」
あわただしく動く中、車の中でそれを見る。
女性らしい四人組が、最深部の完全聖遺物付近にいる中、ノイズと対峙する。ノイズは大柄の男が従えているように見えた。
『こいつはッ、バーサーカーか!! マジィィィィ、確実にここ壊れるッ、税金施設破壊するなよッ』
『そう言うみみっちいことは後で言えっ、っていうかすでに手遅れだ!!』
『アスカさんっ、あの英霊は』
『間違いなく、三国志の将軍が一人、呂布奉先だ!! ノイズ従えて出て来る武将って最悪なんですけど!!?』
そして中国の武将のような男は雄たけびを上げて彼女たちに襲い掛かる。
だが、彼女たちは、
「!? 聖詠だと?!」
「装者っ」
回転するような槍を持つ、白と蒼の姿の赤い髪の装者。白い服、姫のように見える大きな盾を持つ少女。
そして一番、いや、この中で一番強いのは、
「これは」
短パンのような衣類になり、軽装の鎧を纏う。竜を思わせる瞳と、ヘットホンが耳のように動き、尾を持つ剣士が現れた。
『バーサーカーはオレがやるッ、たぶん装者は気づいて向かってるッ。こうなればあれだ、ギャラルホルンは装者に任せて、オレらはこいつらの撃退後様子見だ』
『その方がいいだろうなッ、モニターはすでに俺達のことを捉えてるッ』
金髪を三つ編みにしている少女が叫び、それに、
「向こうは我々に気づいている? 目的は」
「分からなねぇなら、直接言って聞けばいいだけだろっ」
「デスッ」
「うん、急ぎましょうっ」
そして武将のような人は竜の瞳をした装者が激突するようにぶつかる。
『テメェの相手はオレだバーサーカーッ』
雄たけびを上げ、そして、
『身体は剣でできているッ』
その叫びと共に、白銀と真っ黒な剣を構えながら、飛翔した。
敵サーヴァントは誰出すか。今回はノイズ(軍隊)を率いる英霊として彼が呼ばれました。
夏休みか入る前なので、顔を隠しつつ、薄着の美少女四人。町探索後の色々動いてこれだよアスカくん。
次回バーサーカーと戦い、そして出会う装者達。みんな素顔をバイザーなりなんなりで顔を隠してますがどうなるか。
それでは、お読みいただきありがとうございます。