だがその前にどうするアスカ。
新たな物語、始まります。
40話・病み
あの後から、響とは普通に接してます。本当です。
「アスカ~おはよ~」
「おはよう響、クリスも朝飯食うな」
「ああ」
少しムカムカしながら、席に座る。響に真夜中いきなりお泊りなんかするなと怒鳴り散らし、にこにこと微笑みながらごめん~とほんわかな響。
響があれを無かったことにするのなら、こちらもそうしよう。あれは事故、そう事故なんだ。以外と柔らかかったなとか、クリスとかも触ったりしたような気がする人生だなとか、色々思うことがあるが、考えない。いまは朝食に全力を出す。
にこにこしている響、食事の準備も手伝い。何事も無く、一人先に家を出て、学校へ向こう。
「その前に、お前ん家、一部消し炭があるんだが」
「花の魔術師」
「そか」
クリスは納得して、気にせずトーストを齧った。
学校で黄昏る、一人の時間。考えるのは、
(………やっちまったよねオレ)
どうすればいいんですか、誰か教えてください。だめだ、聞ける人はいないし、情報が漏えいすれば死ぬ。
未来に知られればどうなるんだろう? 責任取らないならなにされるんだろう?
考えるだけで震えが止まらない、汗が止まらない。響はにこにこしてたからどうすればいいのですか? 教えてください。
何事も無く、時間だけは過ぎる。どうも向こうは、
『アスカへ なぜか響が終始笑顔のままで、ほっぺが固定されてるの。なにか元気付けた?』
「身に覚えありません」
逆ならあります。
『ん~まあ、元気ならいいんだけどね。時々妙に挙動不審になるけど、それじゃ切るね』
電話が切られ、やはり向こうは何事も無かったことにするらしい。なら忘れよう、なにも無かった、花の魔術師は、
「アヴァロンにはどうすればいける………」
本体を殺りに行くしか無い。静かに精神に研ぎ澄まし、奴のいる理想郷あるいは夢の中で殺る。これしかない。
そう思いながら、夢で奴と出会うことを考えながら、
「お休みキャロル、エルフナイン」
「ん」
「はひっ」
「ほどほどにするんだぞ~」
パソコン作業する二人にそう言いながら、静かに部屋で横に乗り、数秒で夢の世界へ出向く。
「………ん」
身体を半身起こし、周りを確認。リディアン女子制服で、地下施設らしい部屋の中、首輪、リード付きで目が覚める?
「………違う、夢? にしてはリアル過ぎる」
精神感覚は無駄に鍛えられている身として、ここが夢なのは理解する。早すぎるが、これは、
「………マーリン? 彼奴の仕業………にしては趣味が悪い」
魂が鍛えられ、根源へと至った者。故にこのような事態に入っても冷静であり、精神汚染などの攻撃も無効化される。
はずです。
「………起きた?」
そこには眼に光宿らぬオカンこと、マリアさんがいたので、悪夢確定し、身体が震えだす。
「楽しもうとしたんだけど、気を失うんだもの………仕方ないから、そのままにしたのよ………」
「――――――――――――――ッ!!?」
声が出ない悲鳴の中、エプロン姿のマリアが包丁を持って歩き、近づいてくるため、急いで鎖の様子を探る。
気合いで外せる。よし逃げられると理解し、次はルート検索を開始した。
「ま、マリア」
「? なぁに」
「オレ、そと、出たいな」
そう言うと、静かに考えるそぶりをして、
「その前に、ご飯食べましょう。いっぱい作ったの」
「ご飯? どんなの?」
「スッポン料理、食べたあと少ししてから、出られる気があるなら出ましょうか」
そう言って、持ってくるわねと言って、部屋から出て行った。
部屋の隅になぜか、大量の薬瓶がある。
よし、
「………この程度の悪夢、慣れたよ」
オレは正常に鎖を音なく破壊、その後扉付近へ聞き耳立てて、静かに外に出る。
そして二つに分かれ、薬瓶が散乱する道と、別の道があるため、すぐに勘に頼り、外へと出て来る。慣れた。
「………悪夢の中とは言え酷い」
黒と赤い絵具をぶちまけたような空模様の中、森の中を走り抜ける。まさかの廃屋で、バイクがあるが、動かないように軽く壊してから、脱出する。
バイクで出ると言う選択肢があるが、なぜかしてはいけない気がした。
一気に森から離れたら、川が見えたので川の中に入ると共に、服のいたるところを触る。発信機は無い。慣れた。
「マリアオカン心理が、こんな形で具現化するとは………精神科行くの忘れてたぜ」
いや冷静になれ、これは悪夢でも、普通の悪夢ではない。
「聖遺物関係、あるいは魔術。一度死んでみるか? いや感覚がある以上、それは最悪の手段だ」
ここでの死が現実にも繋がる場合がある。そうなると行動できないが、この空間はなんなんだ?
ともかく、さっさと走りながら、濡れた身体で走る。これでにおい問題ない。
町は不気味なほど静かであり、悪夢の度合いが酷い。
誰かの仕業としか思えないが、マーリン以外に思いつかないが、
(あれにしては趣味が悪いし、真っ向から文句言うだろうから除外。ならなんだ?)
それだとマーリン以外、自分の世界、自分の魂の世界のどちらかの仕業であるが、何が目的か分からない。
ともかく、目を覚ます方法を考えなければいけない。
その時、足音が聞こえ、すぐに近くに家に隠れる。
「………」
気配からしてマリアだが、鍋を持つ。妙な色のスープであり、静かに食わせるためのようなものらしい。
無言のまま歩いていて、探している。
(………やり過ごすことは不可能だ、なら、気配を消して移動し続ける)
この手は、一か所の滞在は危険だ。空間そのもの、世界が敵として認識しなければいけない。
向こうははっきりとこちらの位置が分からないようになっているのは、わざとか術式な理由だろう。だが随時監視カメラに見られていると認識して移動する。
そして廃屋のような大きな建物へ逃げ込む、なんの建物だ?
(………ん)
血のにおいがしたため、確認しに出向く。
静かに、物音も何も、気配を消して近づくと………見知った声が聞こえる。
「調っ!?」
「あす、か………」
リディアン夏制服の調、道路に倒れているのを見つけた。
足だけが酷くずたずたな調がいて、急いで近づく。
「ごめん、気が付いたら変な空間で………変なものに足をやられたの」
「なっ」
敵がいるのか? マリアの様子もおかしいが、いまは調に近づく。
「少し悪い」
そう言って足を触る見ると、太ももまでズタズタであり、歩けることはできなさそなので、このままにしてはおけない。
「仕方ない、調の治療を優先に動こう。ギアはあるか」
「ごめん、無いんだ」
「そうか」
そうして、お姫様だっこと言う状態で、移動を開始する。
しばらくして小さな診察所があり、そこに入る。
(鍵がかけられていない………)
引っかかる点が多くある中で、ともかく調を運び入れ、テーブルなりに座らせて、物色する。
包帯は無い、殺菌やらなんならしないといけないし、
「………」
嫌な汗を見ながら、調の汗を拭く。
「平気じゃないな、少し足見るぞ」
「うん………」
素足を覗き込み、傷を診ようとするとき、顔を近づけた。
瞬間、直観がすぐに後退しろと告げる。
それに従うと、調が足を思いっきり蹴り上げていたのだ。
「………調?」
その瞳から光は無くなっているのに気づく。
そしたら胸のボタンを外して、ギアのペンダントが見えた。
下着も見えているが、いまは無視する。様子がおかしすぎる。
「やっぱりか」
「やっぱり? アスカ、私のこと、疑ってたの?」
そう人形のように首を思いっきりかしげる。その様子に怯えることは無い、それより恐ろしい目に遭ったこともあり、耐性ができた。
「太ももから、スカートの下着にまで届く傷だぞ? おかしすぎる、まるで自分で歩けないと言わんばかりに足だけを無防備に傷付けられていた。調、その傷は自分でしただろ?」
そう聞くと、
「エッチだなアスカ、私の下着見たんだ両方………」
微笑みながら、ギアを纏う。すぐにギアのサポートで動き回れる状態になり、こちらもギアが無いか確認するが、無い。
「責任、取ってほしいな」
「どうすればいいの」
いまだに逃げないのは、マリアより情報を引き出せられるからだ。テーブル一つほどの距離、むしろ遠くの方が調のギアに分がある。
調は静かに、
「足にキスしてほしいな、そうすれば、
そう言い放つ、それに魔術と言う言葉が当てはまり、一気に歯車が回転するように記録から情報を引き出す。
足へのキスは魔術的な呪いに発展、隷属術の一つとかすめる。
ここは固有結界、魔術、向こう側の領分だと知った。
(いまはこれだけでいい)
その瞬間、近くの窓から飛び出た瞬間、建物を切り刻み、死の歌を歌いながら、接近してくるが、逃げ足に関しては前世から受け継いでいる。
多くのサーヴァントから逃げている人生だなと、己の記録に思う。
多くの建物が切り刻まれる中、瓦礫の中に身を隠し、出て来る。
どうやらあの調からは逃げられたようだ。
「………記憶からして、この手の術は」
夢と現実はリンクしている。夢の中でのことは現実に反映される。
調の足は酷い傷だ。それに心が揺れた。
建物は別に違う、これは術者によって設置されるから、建物への被害は無い。
もう一つルールがあるらしい、隷属する魔術を調が使用とした。なら隷属させるのが目的かと思うと、動き回る。
(このまま何もない空間じゃ、外の援護しかない。クッソ、変な時に死んでるんじゃないマーリンッ)
今日マーリンを倒したのがまずい方向に傾いている。この手の術式解呪は自分の記録には無い(ほぼ力技か他人が起こしてくれた)以上、どうにか考え込むしかない。
(ゲームなら核みたいなキーがあるはず、それを探すか)
そうして動き回ることにした。
図書館らしい場所で、何か手がかりを探すが、
「くそ、どの本もなんだこれ」
愛してると言う文しか書かれていない奴とか、人の観察日記とか、年齢制限に引っかかるようなグロいものやピンクなもの。
役に立ちそうなものが無い。
ほぼ全部血文字ってなんだよ。
「………人の気配」
すぐに気配を隠し、かつんかつんと近づく足音に気配を感じ取る。
すぐに窓から脱出するルートを確保していると、
(………音がしなくなった)
気が付かれた、行動と共に窓から逃走するかと思案すると、
ズボッと地面が急に変化した。
「なっ」
「あはっ♪♪ み~つけた♪」
そう言って、覆いかぶさるセレナ。
大きな盾を背に持ち、それの所為で、地面の泥に沈んでいく。
「ま、待てセレナっ。このままじゃ泥の中にっ」
「いいじゃないですかっ、一緒に泥の中で一つになりましょ♪」
黒い泥? それに身体から危険と感じ取り、泥から出ようとするが、手足を抑え込まれ、泥の中に共に沈もうとするセレナ。
時々顔を胸に押し付け、臭いを嗅いだり、頬や首筋をなめたり、嬉しそうにいつもよりテンションが高い。
「セレナっ、オレはいつものセレナの方が好きだッ」
「いつもじゃだめですっ、このままじゃマリア姉さん達にとられますっ。たまにはこれくにい押さないとだめです!!」
そう言いながら、キスまでしようとするので片手で制するが、やめない。
「大丈夫っ、この泥の中で一つになるだけですよアスカさんっ。ずっとです、永遠永劫永久にずっと一緒に、一つになるんですっ。がんばりますっ」
「な、にをッ」
泥の中に沈む、このままではまずい。
セレナだけでもと思い、思いっきり蹴とばした。
セレナを外に出した瞬間、泥の中に沈む。
片腕しかない状態、もう泥からは、
まずいと思った瞬間だった。
「まったく、他人より自分のことも勘定に入れなさい。転生しても変わらないのですね、困った子です」
その時、何かが腕に絡みつくと共に、引き寄せられた。
黒い泥は冷たく、全ての考えを止められた。だが助けられたことにより、すぐに我に返り、セレナを見て、無事なことにホッとする。
「全く、貴方は………」
「『母様』っ!? !?」
「私は『いま』の母ではありませんよ」
だが微笑ましく微笑み、弓を持つ赤い髪の女性。
それは英霊、アーチャーの適正があると言われていて、能力が分からないが、知っているよりも大人になっている。
彼女は、
「シータ?!」
「ええ龍崎アスカ、いずれかの貴方の母親、英雄ラーマ様に愛された娘。シータです」
その時、無数の矢を放つと、盾でふさがれる。
光を宿さない目で、邪魔をするなと呟き続けるセレナ。
「よく聞きなさいアスカ、ここは貴方の『平行世界を安静させる』力と、『平行世界に関わる』完全聖遺物が合わさり起きた現象です。どうにか平行世界、貴方の母の座にいる私が駆けつけることには成功しました」
「シータがオレの」
「いいですか、私と違う、キャスター適正の誰かを探しなさいっ。平行世界関係者なら関われる空間、固有結界に近い現象です。彼女たちを傷つけずに、この事態を解決しなければいけませんっ」
「っ!? ならやっぱり傷は」
「いまは気にしていられないッ、泥に気を付けなさいっ。ここは平行世界の私が引き受けます、早くっ」
「ジャマスルナァァァァァァァァァァァァァァァ」
盾を振り回すセレナに、少し悪いと思いながら走り出す。
「邪魔をします、あの子………一年だけの間であの方との愛し合った証であり、呪いを消し去った、愛する子です。記録として正史で無くとも、いまは違う母の子供でも………私はあの子を守る義務があるのですから」
そして赤い髪をなびかせ、彼女はセレナを足止めする。
ともかくアスカはこの世界のヒントをもらい、走り出した………
マリア、属性もういい、自分を女性として見るのならそれでいい。責任は取る、だから襲います的な子
調、属性は自分を傷つけてでも、相手を自分の物にする。
セレナ、貯めに貯めた想いを爆発させる。
残りはまだいる中、この世界から逃げられるかアスカ。頑張れ。
アスカ「慣れた自分が嫌だ………」
お読みいただきありがとうございます。