少年/戦姫絶唱フェイト・シンフォギア   作:にゃはっふー

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37話・龍崎アスカ

 エクスドライブが全員に発動した瞬間、龍崎アスカ達、異物のギアもまた、目を覚ます。

 

 女神のような姿でロンの槍を構え、光の翼を広げる奏。

 

 白亜のドレスを着て、鎧纏い、無数の光の盾を空に配置する騎士姫セレナ。

 

 そしてアストルフォの容姿でありながらかけ離れた男性としての目つき、竜の瞳と翼を持ち、スカートでは無くズボン。もこもこの尻尾を持ち、機械のリスのような耳のヘッドホンを持つ、剣士アスカが現れた。

 

「行くぞみんなッ」

 

 そして全員が空を駆ける。

 

 

 

 キャロルの前に現れるのは、奇跡と言うもの、理想と言うものを押し付けられた意識の集合体である、剣士だった。

 

「エクスカリバー」

 

 そう呟くと、大地に刺さる聖剣が二本選ばれ、彼の者の手のひらに現れる。

 

「輝け、約束されし勝利の剣よ」

 

 その一撃一撃は究極の一であり、それにキャロルは舌打ちして避ける。

 

「貴様、なんだその剣は」

 

「アーサー王伝説を知った者達が幻想して生み出した、聖剣エクスカリバーで、最も良質のいい物を使っている」

 

「なにッ?!」

 

 そう言い、それすらもその辺に捨てた。

 

「驚くことは無い、俺と言う存在は、理想像の押し付けられた英雄だ。アーサーとはどのようなヒーローだったかと、第三者により妄想され、幻想を押し付けられた理想像こそが俺であり、俺達だ。この地にある全ての武器や防具は全て、この世に生きる理想に思いを抱いた生きとし生きる者達が抱く幻想と理想と希望が集う、絶望の地、聖剣も腐るほどある」

 

 瞬間、黄金の流星が、無限にノイズへと降り注ぐ。

 

 本当にアーサー王が手に持つ聖剣では無いが、人が、アーサー王伝説を知り、どのような形をしているか? どのような強さか? そう幻想した瞬間、この空間に収納され、彼が使う宝具へと変わる。

 

 理想と言う根源の者が使う、象徴に相応しい、紛い物であり、本物を完全に凌駕する本物の聖剣、魔剣、武器防具達。

 

「無論、こいつもある、ダインスレイフ」

 

 魔剣すらこの空間に収められた幻想の産物。それを振るいながらも簡単に捨てる。

 

「聖遺物の使い捨て」

 

「宝具の使い捨てと言ってもらおう? 無限のように強大な力を使う。理想的な英雄だろ?」

 

 そう言いながら、キャロルはノイズを槍のように放つが、それも片手を構え、防いだ。防いだ盾は七つの花弁による盾。

 

「ローアイアス」

 

「ギリシャ神話の盾ッ!?」

 

「悪いが貴様はいま、無限の夢幻と相手してるんだ」

 

 

 

「出鱈目デス………」

「ほんと………」

 

 それはまだ現れるノイズを、喰らった。

 

「ガアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ」

 

 それは、宝具の解放。己と言う獣の解放。

 

 咆哮と共に、アストルフォウがノイズを喰らい切った。

 

 比較されないため、全て無い場所。無へと帰したのだ。

 

「ん?」

 

 その獣へ無数のノイズが突撃するが、腕一本で弾かれる。

 

「無駄だよ、君達は僕を傷つける条件はあるが、威力が足りない」

 

 ビーストⅣである自分は、感情も無い、ただ淡々と倒す者以外では傷をつけられないどころか、対峙できない。

 

 自分と戦う条件を言う気は無いため、アストルフォウの姿で、ズボンをはいた白い彼は、ただ荒ぶる獣として、蹂躙する。

 

 

 

「邪魔だ邪魔だ邪魔だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 斬る。

 

 迫る者を斬る。

 

 敵対する者を斬る。

 

 絶望を斬る。

 

 道、阻む、絶対を斬る。

 

 ただそれだけの剣技。

 

「絶ッ好調ッ!!」

 

「応ッ」

 

 響と共にノイズを駆逐し、キャロルの下に迫る。

 

 この二人を感じ取り、キャロルは首を振る。

 

「なんで………」

 

「君に一ついいことを教えよう」

 

 

 

 愚かな男の物語だ。

 

 男は災厄な事故に巻き込まれ、数少ない生存者として、とある男に助けられた。

 

 助けてくれた男に拾われ、そして彼から色々なことを教えられる。

 

 その中に、自分は正義の味方を目指していた。けれど、駄目だったと苦笑する。

 

 だから、俺が代わりになってやると約束した。

 

 そして男は成るために生きた。抑止力と言う、人の身を超えたものへ契約し、死後すら人を守るものとして生きる覚悟をして、死んだ。

 

 死んだ理由は、助けた者達の裏切り、されどその男は後悔はしなかった。

 

 そして死後、守護者として世界を救う為、多くを殺し続けた。

 

 だが知らなかった。

 

 守護者とは名ばかりであり、やることはただ善悪問わず、霊長が決めた存在してはいけない者達を殺すことのみ。

 

「そして男は過去も未来も現在からも英霊を呼び戦わせる聖杯戦争なる儀式に目をつけ、過去の自分を殺すことにした。ただの自己満足、いや、第二の自分なぞ存在するだけで愚かすぎて笑えないと捨てきり、殺すことにした」

 

 だが過去に出会った男は、もはや過去の自分では無かった。

 

 自分と言う地獄を歩いた自分を見ながらも理想を捨てられなかった馬鹿である。

 

 それでも、

 

 誰かを救いたいと思うことがきれいだからと、言いのけたバカだった。

 

 自分の気持ちが誰かからもらった偽物であろうと、

 

「理想を求め、理想を夢見て、理想のまま、正しいだけの偽善まみれの人助けをした愚か者。それが龍崎アスカより先に、この理想が集う場に来て、その理想をいらないと言って至った正解者だ」

 

 ある多くはここに来て、多くがこの理想を超えた、人知を超えた奇跡に手を上し、失格者になった者達だった。

 

 だが彼らは違う、いらないと言い、手にする権利を手に入れた。

 

「理想を求め、この理想をいらないが正解だと?」

 

「分からないと言う顔をするな錬金術師。だが当たり前だろ?」

 

 

 

 理想とは自分で手に入れるからこそ意味がある。そう告げる。

 

 

 

「故に与えられる者にすがった者達は手にする価値すらない。自分で歩み、諦めなかった者達こそ、理想と言う、神や世界すら超えた力を得るに相応しい、偉大なる愚か者ッ。ここに集う力は、人を守ると、偽善まみれの大ばか者達のために存在する、愚者の園。そう、理想とは現実にあっけなく消し飛ぶ弱者の力でありながら、神や世界すら殺す、絶対者の力を言う」

 

 全ては理想、夢、願いや希望。なんて弱々しい、現実に砕かれる思いだ。

 

 だがそれらは、時に怪物を、悪人を、神すら打ち倒す。歴史と言う記録に、人々の魂に刻み付けるほど、強大な力と成り、世界に刻まれる力にもなる。

 

「理想なぞ儚い、人によれば理想に溺れ溺死する。だが溺死しながらも叫び続けたバカがいる、そんな生き物を、人は英雄と言う言葉で片付ける。だが本人らには無関係、俺達はただ、現実に立ち向かって吠えただけだ」

 

 そう言い、キャロルを見る。

 

「お前も諦めないのなら、戦え、この圧倒的な戦局を変えてみせろ」

 

 それに目を見開き、

 

 

 

「ふざけるなァァァァァァァァァァァア」

 

 

 

 怒りの慟哭とともに現れるそれを見ながら、静かに下がる。

 

「緑の獅子、カオスの段階の原物質の意味。火を吐き、万物の究極的感性をもたらす気か………」

 

 その左右を飛び出す二人の装者の後ろ姿を見ながら、それを見送る。ここからは、

 

「主役の出番か」

 

 

 

「キャロルッ」

「キャロルちゃんッ」

 

「認めてなるかッ」

 

 その力を引き出し、喉が潰れるほど叫び歌う。

 

 だが、突如頭を押さえる。

 

「やめて、パパっ。邪魔しないでっ」

 

 燃やす記憶、そして燃やして燃やして、目の前の存在を燃やす。

 

「記憶も何もかも要らないッ、もういらないッ。お前を殺す、殺してみせるぞ!! シンフォギアぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 二つの腕が迫り、獅子が火を吐こうとする。巨大なエネルギーが集まりつつあるが、

 

「響」

「!?」

 

 ただ穏やかに、

 

「頼むぞ」

 

 その微笑みに、

 

「うんッ」

 

 その瞬間、二つの剣から輝きが吐き出された。

 

 歌う、歌う。血まみれの奇跡を歌う、運命を架せら、骸の丘で磔にされるように、無数の刃が身体を、魂を突き刺される魂の剣士が歌う。

 

 そんな末路を永劫に繰り返そうと、穢れきった奇跡を背に、

 

「諦める? いいや………オレがオレである限り、歌い切ってみせるッ」

 

 それは、怪物を討ち、英雄になった剣士の一振りを模した剣撃。

 

 それは、自分の終わりにて、英雄が生まれる一振りを受ける剣撃。

 

 それは、始まりの終わりであり、終わりの始まりである。

 

「刻めッ、物語の剣ッ」

 

 その二降りの剣から放たれた輝きが、両腕を斬り落とし、そして、

 

「任せるデスッ」

 

 仲間達のアームドギアが放たれるが、あと一歩キャロルに届かない。

 

「ふん、アームドギアが一つ足りなかった………?!!」

 

 だがその目の前に、

 

「当たれば痛いこの拳………それでも」

 

「来るな」

 

「それでも私は」

 

「来るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

「守ることを、諦めないィィィィィィィィィ」

 

 その一撃が獅子を壊し、キャロルの一撃を破壊した。

 

 

 

「………パパ」

 

 気が付いたら白い空間にいた。

 

「キャロル、世界を知りなさい」

 

 涙があふれる。だって………

 

「分からない、分からないよパパ」

 

 その言葉の意味が分からない、分かりたく、無い。

 

「私は、私の願いは」

 

 その時、エルフナインが静かに、

 

「エルフ、ナイン………」

「キャロル、私達のパパは、パパが残したのはきっと」

 

 

 

「許しだよ………」

 

 

 

「………お前は許せと言うのか、パパを焼いた世界を」

 

 そう静かに問い返す。

 

「パパはそう願ってる………世界の周知を許せ」

「それが………」

 

 

 

「キャロルちゃんッ」

 

 気が付けば落下しながら、響は手を伸ばしていた。その時、

 

『キャロルッ』

 

 その時、パパが手を伸ばしていた。

 

 気が付けば私は、その手を握っていた………

 

 

 

『いまここに、我が存在として全てを始まりと終わりを宣言する』

 

 一人の幻が歩く、それは始まりであり終わりの宣言。

 

『これが逸話の終わり、そして始まりと知れ』

 

 黒と白の剣を持ち、それが一つになり、ただ一振り、剣を振るう。

 

『我、無限なる夢幻の担い手なり』

 

 その一撃が、キャロルが歌い集めたエネルギーへと放たれた。

 

『ウオォォォォォォォォォォォォォォォ』

 

 比較する獣はただ全てを飲み込む。欲望も希望も全て全て全てすべてすべて、

 

『アアァァァァァァァァァァァァァァ』

 

 獣の咆哮、それでエネルギーが飲み込まれ、全てが終わりを告げた………

 

 

 

 記憶はボロボロであったはずだった。

 

 だが、それの元データがある、別の体にインストールすれば延命できる。

 

 故にいまのこの身体はいらないので、

 

「お前が使えエルフナイン。それと、俺のサブの肉体はここにある。服を持って待ってろ。かなり長いが、記憶のインストールが終わって出てくる」

「ああ分かった」

 

 別空間にての戦いであったため、都市圏は大した被害は出ず、キャロルは忌々しくそう言って、戦える道具などは一切合切渡したあと、エルフナインに肉体を渡した。

 

 エルフナインの方は、寿命的な問題は少しあったのだが、これで人並みに生きられるらしいし、女の子になるらしい。方法がキスだが。

 

「彼奴のあとだからいいだろ」

「ふへっ」

 

 真っ赤になり、アスカを見るエルフナイン。その瞬間、黒い何かを吹き出す三人がいたが気にせず、そちらは終了した。

 

 こうして魔法少女事件が終わりを告げた。

 

 

 

「おい、ビーストⅣと冠位剣士」

「なに?」

「なんだ?」

「なんでまだ現界してるの?」

 

 そう言って、まだボロボロで忙しい本部で茶を飲む二人。うち一人は実の母親がワンピース着せたりしている。切るなビースト。

 

「ああそれか、いや、俺の場合普段からあの聖杯がある園で待機だから暇なんだ。時々あの荒野だし」

「んなマーリンみたいな理由でいないで欲しい」

「悪いな、それとジャックとアタランテを元のマスターの下に返す。それは俺がしておく」

 

 悲鳴を上げる母親に、響達も包帯を巻きながら、少し残念がる。

 

 だが本来は別の世界、もう会えなくても仕方ない。

 

「それで、結局アスカは」

「もう英霊の座の力を借りず、聖遺物を利用した剣士だ。まあそれでも規則外だろうがな。やっと落ち着いたとも言える」

「そうそう。もともと全部の流れを求めると」

 

 アスカもとい、白銀のモードレッドに会いたい、平行世界の王の娘が、不老になり、あらゆる平行世界や時代から、聖杯を集め、一気に使った。

 

 結果、前世の記憶を持ち、ここは偶然だがその時に、聖杯から保管庫から記録と、英霊である正規アストルフォと白銀のモードレッドと契約。

 

 何度も魂から保管庫にログインを試みたせいで魂はボロボロで危険状態。

 

「ま、それも問題ない。君は二人目として、正規に保管庫の力を得た」

「そうかい」

「ビーストⅣの力も、理想像で生まれた自分の力を得ずに、よくここまで昇華するよね~」

 

 お菓子を食べているⅣくんが不安なことを言うが、気にしないことにした。

 

「もう疲れたよ」

「言うな、こっちも運命力なり、調整に追われる日々だ」

「抑止は大変だね~ビーストでよかった。討たれたあとの」

 

 そう言ってお菓子を喰らうビーストⅣ。なんでも冠位剣士のふりして、花の魔術師を致命傷負わせてもう満足らしい。

 

「「Ⅳも仕事との日々に追われますよう」」

「汚いものを見たよ」

 

 そう言いながら、あまり気にせず、お菓子のストックを確保して出ていくらしい。

 

「それじゃ、アタランテ達にも詳しく顔合わせできないから、僕はもう行くよ」

「………いいのか」

「………向こうには知性がなくなった僕がいるし、ビーストⅣは次元の間できれいなもの見たり、その為に戦ったり、勝手気ままにやるよ。それじゃ、お菓子ありがとね」

 

 そう言って、黄金の粒子になり消えるビーストⅣ。できればなぜアストルフォウくんなのか聞きたいがいいだろう。

 

 そしてジャックをさんざん甘やかし、彼女たちともお別れをする。

 

 どんどんこの世界から異物とも言える違う存在が消える中、残ったものがある。

 

 こうして、

 

「アスカ、アスカぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「えっ、な、なんで響が暴走してるの?! 待て、短パンに手を、やめろぉぉぉぉ」

「後ろは任せろ奏」

「翼あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 また背中から抑え込む。その所為で胸が、奏もまたゆっくりとスカート持って近づく。まずい、助けてくれるのは、

 

「アスカ………かわいく、なろうか?」

 

 ハイライトが無い未来さんがいました。

 

 アストルフォウくんは、スイッチになったのは後から知りました。

 

「いや、いっやああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

最後の最後で、少年の絶叫が指令室に響いた………




はい、次は後日談。主人公が抱える秘密全て解禁しました。

理想と言う幻想が根源の魂、他人や自分の夢物語を現実に変換する、させられる存在です。

冠位剣士「おかげで色々チートです」
第Ⅳの獣「僕は悪の面で取り込まれたから、自由に狭間を行き来するよ」
龍崎アスカ「なぜアストルフォなんだろう………」
冠位剣士「俺は召喚者によって性別の姿形も変わるからな、能力も。前に来た奴をベースにするけどね」
とある守護者「………」

それではお読みいただき、ありがとうございます。

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