少年/戦姫絶唱フェイト・シンフォギア   作:にゃはっふー

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翼達、クリス達の戦いをカットした作者。

その間、アスカの記憶持つセイバーが、響と会話しに現れる。

ついにシャトーが動き出し、戦いは最終局面へと向かう。


36話・選択肢

 二手に分かれる中で、キャロルは絶唱を歌いだした。

 

「なっ、錬金術ってなんでもありかよっ」

「言っている場合かよっ」

 

 シャトーにはマリア三人に、セレナと奏が入り込み、ヒポグリフと共に駆ける。

 

 大人へと成長し、絶唱を軽く使う相手に戦う。

 

 シャトーの内部は大丈夫かと………

 

 

 

「内部にノイズがいないデスっ」

「こういうときって、変な罠がありそうですけど」

「………!?」

 

 その時、目の前にナスターシャ教授が現れ、足を止める。

 

 無数のミサイルやらの攻撃が放たれるが、セレナが前に出て防ぐ。

 

 そこに黒い槍が突き立てられた。

 

「!? 姉さんっ」

 

 黒いガングニールを纏うマリアが現れる。まるで過去の幻影のように現れるが、

 

「せいッ」

 

 セレナはためらいもなく腹を蹴り飛ばし、盾を構えながら睨む。

 

「悪いけど、一面だろうが偽物だろうが、私はマリア姉さんを間違えないっ」

「せめて葛藤してからにしてやれセレナ」

「問題ないわ奏、こんなことで泣かないわ」

 

 少し震えている気がするが、切歌も調も、武器を構える。

 

「けど、やる。だよね姉さん」

「………ええッ」

 

 はっきりと、そして目の前の敵を見る。

 

「私達の過去は重い罪でできている、けど、いまそれで足を止めるつもりは無いわ!!」

「よく言ったッ、なら私が突破するッ。そこをどっけええぇぇぇぇぇぇぇ」

 

 奏の光の嵐が、道を切ら開く。

 

 

 

「シャトーにはマリア達が、奏さん達がいる。キャロルっ」

 

「だから諦めろと言うのか?」

 

「違う、お前は方法を間違えているッ」

 

 父親の思い、エルフナインから聞いて思うのは一つ。

 

「キャロ、ッ!?」

 

 すぐに回りに気づく、シャトーの様子がおかしい。

 

「まさか」

「もう始まるのか!?」

 

 レイライン、地脈を利用した術が始まるが、それに矢を放ち、霧が立ち上り、切り刻む。その様子にも舌打ちして、睨む。

 

「貴様らは」

 

「サーヴァントアーチャーアタランテ」

「サーヴァントアサシン、ジャック・ザ・リッパー」

 

 術の発動を妨害する中で、キャロルは叫び声をあげながら、糸が放たれる。

 

 地面を切り裂き、それを避けながら、キャロルを止めるために、前に出るアスカ。

 

「キャロルッ」

 

「なぜだ」

 

 アスカを睨みながら、

 

「なぜいまになってお前が救うッ!?」

 

 それは悲しいことだ。

 

「今頃になって、のこのこ出てくるな。奇跡ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ」

 

 攻撃が全て一点、アスカへと放たれるが、

 

「………受け入れる、その慟哭を。だが」

 

 二つの剣で、確実にその攻撃を斬り、目の前の少女を見る。

 

「だからこそ止める、オレは諦めねぇ」

 

「いまだけ救うかッ、身勝手なッ」

 

「オレはそういうものだッ」

 

 そして嵐のように放たれる術の中、避け、躱し、そして仲間の援護を受ける。

 

「だからと言って、もう助けない言い訳にはならない。もうしなくていいことにはならない。諦めるかッ、誰かを助けられる力があるのなら、オレは、諦めないッ」

 

「くっ」

 

 その時、シャトーの方にも異変が起きる。

 

「司令殿っ」

 

『いまエルフナインと中の者たちが動いているッ、だがこのままでは、膨大なエネルギー波が起きる。衝撃に備えろッ』

 

「待ってください、それなら中のマリア達は」

 

『ごめんなさい、悪いけどここまでよ』

 

『あの時、偽善者って言ってごめんなさい』

 

『あとは』

 

『いえ姉さんたちっ』

『あたしのロンの槍とセレナのギアがあれば内部爆発でも耐えられるから、辞世の句みたいなこと言わなくていいからッ』

 

『デデスッ』

 

 そんなことが聞こえ、ギリギリまでシャトー崩壊をすると通話を切る。

 

 だがそれに目を見開き、叫ぶ少女はいた。

 

「やめ、やめてッ。あたしとパパの邪魔をしないでッ」

 

 シャトーの崩壊らしき影と響が見えだし、それに剣を構える。

 

「アスカっ」

 

「悪いッ」

 

 そう言ってアスカはキャロルの方に、宝具を構える。

 

「真名解放ッ」

 

 広大な範囲でエネルギーを放つ。それは一人の少女を守る剣撃。

 

 

 

「つっ、いてて………」

「だ、大丈夫ですか」

 

 友里さんをかばうエルフナインをかばった洸、仮本部も大きく揺れた結果だ。正直頭を切ったが、平気で笑いながら、

 

「大丈夫、へいきへっちゃらだよ。それより」

「問題ありません、シャトーの世界解体の術式は止まりました」

 

「よしっ、藤尭ッ、友里ッ」

 

「装者並び、サーヴァント両名も無傷。アタランテさんの働きで被害者はいません」

「並びシャトー内部はロンの槍にて中が、映像………なぜかウェル博士がいます」

 

「あの時、海底施設でキャロル派と手を組んだが、また主義の違いで立ち位置を変えたかあの男」

 

 ウェル博士は海底施設内で幽閉に近い形で封印されていたが、キャロルにより連れ出されたが、どうもそちらで色々あったらしい。

 

「途中でシャトー内で協力者らしいものが現れたので、よもやと思いましたが」

 

 ナスターシャ教授はそう言いながら、アインハルトに支えられていた。

 

 一般人もいる中で、彼らはその様子を見る。

 

 エルフナインから視覚、情報を得ていても、動かすことはできないいま、もう、

 

「万策は尽きたはずだ、彼女は………」

 

「キャロル………」

 

 

 

「どーだっ、これで僕は英雄の仲間だッ!!」

「少し黙ってください、ランスロットみたいで醜いですよ」

「ああそれは嫌だな、ならおとなしくさせてもらうよ」

 

 ウェル博士にそういわれながら、土煙が晴れて、全員がキャロルを見る。

 

 呆然とシャトーを見て、首を振る彼女を見ながら、響は、

 

「キャロルちゃんもうやめよ、こんなの、キャロルちゃんのお父さんは望んでないよっ!!」

 

 その言葉にびくりと体を震わせる。

 

「………ふざけるな」

 

 そう叫び声を挙げ、無数の陣を乱射させる。

 

「まずいッ、全員っ」

 

 クリスが叫び、攻撃を避けながら、キャロルは叫ぶ。

 

「誰が諦めるかッ、誰が終わらせるかッ。奇跡なんか、奇跡なんか、奇跡なんかッ」

 

 その時、

 

「!?」

 

 片腕が糸に巻き付き、巻き上げられた。

 

「この俺が解体するッ!!」

 

「アスカッ」

 

 糸に巻き上げられ、引っ張られる。あまりに強く、斬られるように血をにじむ、そのままアスカを引き上げた。

 

 それに、

 

(まずい、さっきの防ぐのに力がッ)

 

 そのまま元素のエネルギーがぶつかりながら、ただでさえ防御力は無いギア。少し出血しながら、キャロルの顔が眼前に来た。

 

「この世界の解体ができないのなら」

 

 そして静かに、

 

「異世界の、神秘を解体するだけだッ」

 

 そう言って、口を、口で押えられた。

 

 

 

「えっ………」

 

 

 

 響はあまりのことに驚き、切歌と調、セレナがシャトーから飛ぶ。

 

 クリスはすぐに照準を合わせる。

 

 

 

『離れろッ』

 

 

 

 数名が同時にそう叫んだが、陣が二人を囲み、目の前で唇を奪われる幼なじみを見て、響も拳を向けて放つが、止められる。

 

(!?!!!??)

 

 一番分からないのはアスカであり、離れようとするが身体を密着させられ、糸や聖遺物、ギアもいまの体制のままにさせるために、巻き付いてくる。そして、

 

(!?!)

 

 身体に異変が起きる。

 

『!? アスカくんのバイタルの変化がッ、彼女、何かしてますッ』

 

 その言葉に、次に動いていた翼が気づき、すぐに巨大な剣と共に飛来し、剣を振り下ろし、奏は光の渦を纏い突進したが防がれた。

 

 そして空気を吸う時間すらしないまま、何かをし、ぷはっと離れる。口元を唇で拭きながら周りの反応を見下すように、

 

「なんだ? うらやましいか小娘ども」

 

 そうニヤリと笑い、アスカを離す。地面に落ちると共に、ギアが解かれた。

 

 アタランテが回収し、ジャックが睨む。

 

 周りの数名が本格的な殺意を放つ中、よだれを拭くため腕で拭き、そして、

 

 

 

「万象黙示録、神秘の界………解体させてもらうぞッ奇跡ッ」

 

 

 

 そして彼女は、歌いだす。糸を弾き、音色を奏でながら、

 

「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁАаааааアアァァあぁぁ」

 

 その歌声と共にアスカが苦しみ、もがきだす。

 

『シンフォギア、ファグニックゲインが暴走してますッ』

『これはアスカくんと共に絶唱ッ!? まさか』

 

『だめ、キャロルやめてッ』

 

「これはどうなってるのエルフナインちゃんっ」

 

 指令室から叫ぶエルフナインの声が、いち早くキャロルのやりたいことを察した。

 

『アスカさんと共にいま万象黙示録をしてるんですッ、だけど何に!? レイラインに繋がってもいないのなら、ただ単純にアスカさんと絶唱しているだけなのに………』

 

「ともかく殺す」

「デスッ」

「殺しますッ」

 

 すでに意味を間違えている娘たちがいる。絶唱を歌うキャロルに、三方向から同時攻撃を放つのだが、

 

「АаАアаааа――――――――――――――――」

 

 アスカからの光が放たれ、それに吹き飛ぶアタランテとジャック。同じように黄金の輝きを放つキャロル。

 

 その顔は狂気に染まった笑みを浮かべ、歌い続ける。

 

『レイラインの変わり………まさかアスカさんが持つパスっ!?』

 

『異世界への繋がりかッ』

 

 風鳴弦十郎の叫び、それにエルフナインが驚愕する。

 

『そんないつ………いえ、まさかあの時、そんな』

 

 それに、歌を一時止め、僅かに笑う。

 

「ああそうだエルフナインッ、あの時、こいつに口づけしたときに術で繋げていたッ。お前と同じ仕組みだ、お前ですら気づかない!!」

 

 歌を続ける、それは異世界の解体作業であり、アスカは苦しみながら身体に光のラインが刻まれていく。

 

「アスカッ」

 

 光へと手を伸ばす響、阻まれながら手を、

 

「アスカあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 そして、光が世界を飲み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目が覚めた、響が、翼が、クリスが、奏が、マリアが、切歌が、調が、セレナが見た世界は………

 

「なに、これ………」

 

 

 

 地獄だった。

 

 

 

 無数の剣が地面に刺され、見渡す限り、骸が雑に寝かされていた荒野。

 

 それは夕暮れの世界、そして磔にされたような骸から、僅かに血が流れ続けている世界。

 

「心象世界………ここが、マスターアスカの?」

 

 アタランテは気づき、世界を見渡すが、あるのは生き物がいない世界、冥府よりも酷く、何も無い訳ではない。あるからこそできた世界。

 

「………これは」

 

 その世界の扉を開けたキャロルですら困惑した。これが異世界の心理だとでも言うのかと思いながら、

 

 

 

『至ったか』

 

 

 

 声が響く。

 

『だがお前たちがいるのは入口だ』

 

「誰だッ」

 

 キャロルの問いかけに、それは言う。

 

『お前たちは、神秘、いや、世界の根源への入り口を開けた。繋げる歌を歌える者たちよ、いまお前達に、世界、神も星も超えた根源の英知に触れる許可が与えられた』

 

 それに全員が驚くが、だが、

 

「アスカっ」

 

 その時、アスカは、

 

「………脈が、無い」

 

「おかあさんッ」

「!? 契約が切れてるだと………」

 

『対価はもらった、この入口の鍵取る者の命。すでにもらい受けた』

 

 それに響は、響達は凍り付いた。

 

「……………うそだ…………」

 

『ここはそういう場所だ』

 

 至れば死ぬ、それが根源。その言葉が響達の中でこだまする。

 

「いやだ」

 

 いやだいやだいやだいやだいやだイヤダイヤダやだやだやだヤダヤダヤダヤダヤダッ

 

 響はそう叫びながら、だが、

 

『ならこの荒野にある魂を見つけろ』

 

 そう言った途端、全員が周りを見た。

 

 誰かを貫く剣、朽ちた剣、いまだ朽ちぬ剣。剣剣剣剣剣と、

 

「この無限にある剣は」

「彼奴の魂?」

 

『そこから鍵足る魂の剣を見つけ出せ、さすれば根源への扉が開かれ、至る』

 

「そんなのいいッ、アスカを返し」

 

 その瞬間、糸が辺り一面を薙ぎ払った。

 

「キャロルッ」

「貴様ッ」

 

 クリスと翼が睨む中で、ふんと鼻で笑う。

 

「鍵と言う大層なものなら、壊れまい。壊して壊して壊しつくすッ。見つけ出すのはそのあとだッ」

 

「ざっけんなッ」

 

「そのようなことは」

 

 

 

『させない』

 

 

 

 三人の娘がほぼ同時に現れ、瞬間的に動き出す。

 

 その様子を見て、翼達も動く。

 

「ともかく、魂の剣? それを探すしかないのか」

「ええ………少し姉としていろいろ思うんだけど」

「後にしろっ、愚痴は聞くからッ」

 

 外との連絡を取りながら、それを探す中で、奏は、

 

「響っ」

「奏さんっ、あす、アスカ、アスカが」

 

 何も言わず、本当に死んだような姿のアスカを抱える響。

 

「落ち着けッ、彼奴がこんな簡単に死ぬかッ」

「けど、ですけどッ」

「落ち着けッ」

 

 怒鳴り、響を見る奏。

 

「私は諦めないぞ」

「えっ………」

 

 静かに微笑みながら、ロンの槍を構えながら、静かに、

 

「あの時、生きることを諦めなかったお前たちのために、諦めないお前達からもらった、この暖かい命と力………」

 

 静かにアスカの手を取り、胸に当てながら、

 

「絶対に諦めないさ。な~に、あたしの弟分がこんなことで死ぬかよ。一度身体真っ二つになっても生き返ったんだぞ」

 

 そう微笑み、響に言い聞かせる。

 

 そして、

 

「諦めない」

 

 その時、二人を抱えて飛ぶ奏。糸の攻撃、ノイズまで現れ、剣を壊し始める。

 

 その時、あたり一帯を見る響。

 

 酷い、そうとしか言えない。

 

 骸ばかりがあり、剣で殺されたかのような、そんな悲惨な世界だった。

 

 そんな世界が広がっていて………

 

「諦めない」

 

 その時、骸の丘ともいえる場所で、血が流れているのを見た。

 

 もう死んでいるであろう磔の者から流れる血、そして無数の剣を見て、響は、

 

「奏さん、すいません。足場にさせてくださいっ」

「ん、ああッ」

 

 そして奏を足場にして、骸の丘を目指す。

 

 

 

「んっ、まさかッ。させるかあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 糸、ノイズ、錬金術が響に向かってくる。だがそれを気にせず、目指す。

 

 骸の丘、磔にされたそれに刺さる剣を見ながら、

 

「それかあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 糸を伸ばす中、それは、

 

 

 

 響の目の前で砕け散った。

 

 

 

「……………はっ………」

 

 キャロルはその時、ハズレかとすぐに切り捨てたが、響は違う。

 

 届け。

 

 飛び散る剣の破片、それに手を伸ばす。

 

 届け。

 

 諦めないと彼は言っていた。

 

 届け。

 

 とあるボロボロの衣類を着て、誰かのために刃を受け続けた者の剣を、

 

「届けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」

 

 掴む。

 

「諦めないッ」

 

 そう彼は言っていた。

 

「諦めて、なるものかあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 

 

 ――

 

 

 その人は、正しいだけの物語を歩いた。

 

 見せられた、自分の理想の先が地獄だと見せられた。

 

「お前は偽物だ、俺はお前の理想だ」

 

「そう、絶対にならなければいけない。自身の身から出た感情で無かろうと」

 

「正義の味方だと? 笑わせるなッ」

 

「そうだ、誰かを助けたいと思った感情がきれいだったから憧れたッ。故に、自身からこぼれた気持ちなぞ無い!! これを偽善と呼ばず、なんと呼ぶ?!!」

 

 だが、歩くことをやめられなかった。

 

 未来の自分の激昂と憎しみを、正しさを見せつけられながらも、選んだのは理想だった。

 

 この体は剣でできている。

 

 俺は、正義の味方を張り続ける。

 

 

 

 いつしか分からない場所を歩いていた。

 

「ここどこだ? 俺は………」

 

 そして丘のような場所を歩く、歩きながら、ああと、

 

「俺は、抑止力と契約しなくても、ここに来たんだな………」

 

 その時、見知らぬ少女が倒れていた。コスプレ? のような、少し魔力を感じる衣服の子が気を失っていた。

 

 すぐに駆け寄り、声をかける。

 

「おい君っ」

「ぁ………すか………」

 

 その子の手にある剣を見る。それは、

 

「?!」

 

 目の前の丘にある剣と同じ柄であり、ああそうかと納得する。

 

「俺が最初、この子は………二番目の知り合い」

 

 そう流れ込んできた情報に、それなら、助けるのは俺じゃないと知る。

 

「………俺は」

 

 理想に足掻き、理想に溺れ、理想に突き進み、理想をかざし、理想を振るう。

 

 人に否定される幻想、綺麗事だけ、正しいだけ、救えるものやことなど数が知れるただの子供のわがまま。

 

 だが、だからこそ、

 

「………この身は」

 

 

 

 

 

「「この身は無限と夢幻の担い手なり………」」

 

 

 

 

 

 

 オレとは『理想』であり、理想像。押し付けられ、英雄や怪物へと理想像を押し付けられた魂。

 

 理想に届くことは無い、行きついても先がまた生まれる。終わり無き探求、根源にたどり着くのが人類の成長の終わりだが、理想と言う根源だけは違う。

 

 絶対に終わらない終着点(ゴール)なのだから、終わることは無い。

 

 人間()と言う意味も、怪物()と言う意味も、全部が全部、誰かが考えた、理想的な悪役で主人公をする存在。

 

 求められた立ち位置に生まれる、理想的な人物や怪物。

 

 それは夢で、幻想で、本当も真実も何もない。夢物語の主人公が自分の正体。

 

 現実に立ち向かう幻実。

 

 むなしいか? 悲しいか?

 

 うれしいか? 楽しいか?

 

 分からない、少なくともその場にいる自分は、そんなことは知らないのだから。

 

 だからこそ言おう。

 

「まあいいや、いいから帰せ」

 

 そう言って、ペンダントを掴む。

 

「オレにはオレの力、龍崎アスカが得た力と思いがある」

 

 一人の青年もまた、剣を引き抜き、そして静かに少女に渡す。

 

「俺はいらない、君の大切な人に届けるんだ。俺は、もうもらっている、アルトリアから、彼女やみんなから………」

 

 はっきり言う。そして、いつの間にか目の前に誰かいる。

 

「………」

 

「………」

 

 オレが握るのは、響の手。

 

 俺が握るのは、みんなからもらった剣。

 

「俺は衛宮士郎、ただの魔術使いで、正義の味方を目指してる」

 

「オレはシンフォギア装者龍崎アスカだ、それがいまのオレだ」

 

 そして、

 

「「それでいい、それこそ自分だ」」

 

 

 

 その世界は、蒼穹の空が広がる世界。無限の剣と武器が螺旋を作り、塔のように空へと延びる。

 

 そして祭壇がある。とあるものから透き通った水をあふれ出している。

 

「な、なんだ………」

 

 キャロル達はそれを見て、息を飲む。

 

 モニター越しの人々も、その神秘に呼吸が止まる。

 

 そして、それを知る者たちは絶句する。

 

「「聖杯………」」

 

 そこの前に一人の男性が座る。

 

「ああそうだ、ここは無限の夢幻が作り出す、世界の根源だ」

 

 赤い髪の男は、正義の味方を目指し、ここに至った。

 

 だから、

 

「彼らは至った」

 

 聖杯からあふれる水からできた泉から出てくるアスカと響。

 

「ぷっはっ」

「な、なに。あ、アスカ平気?」

「い、いや………キャロルがキスしたあと記憶が吹き飛んで………なにがなんやら。ってお前、衛宮士郎っ」

 

「姿を借りてるだけだ、一面だから違うとも言い切れないがな」

 

 そう言われた男は、やっと素顔と素肌をさらして、キャロルを見る。

 

「ここはあまねく生命が持つ、無限の夢幻を収める空間。君の言うところの、奇跡でできた世界だよ」

 

「奇跡でできた世界だと」

 

 顔をゆがめ、世界を見る。ああと言いながら、

 

「誰かが聖剣と言う幻想を抱いた瞬間、その聖剣はこの世界に生まれ、いずれ朽ちて壊れても、永劫に生まれ、永劫に終わり続ける世界。幻想を抱いた者の数だけ、ここに力は生まれ、そして諦めた瞬間朽ちる世界。人が希望を抱き続ける限り、理想を持つ限り、この世界は無限の力を得る」

 

 誰かが思い描いた偽物、本物すら超える幻想。

 

 夢幻と言う名の無限が生まれる世界、それこそが、

 

「これこそが龍崎アスカと言う人間を初めとした無限の可能性世界で、悪であろうと善であろうと、人であろうと獣であろうと。誰かを救う、何かを救う。他人の為、誰かの為、永劫を生贄にし至った愚か者の世界だ」

 

 それこそが、

 

「それこそがグランド・セイバーの正体、なんてことは無い。彼の冠位剣士の正体は、ただの子供ですら考える、幻想の主人公が形になっただけの、押し付けられた理想像だ」

 

 都合のいい主人公。命を捨て、誰かを救うヒーローこそが、龍崎アスカ。

 

 だが、そこで違うは、

 

「そして諦めなかった魂だよ」

 

 それはアストルフォが白い髪と尻尾を持ち、耳を持つ男性だった。アストルフォ、それはアストルフォウくんだった。

 

「何度もバカのように大切な誰かのために、悪でも善にも成り、バカのように人類悪や神々に挑み続ける馬鹿者だよ」

 

「お前は」

 

「僕はきれいなものを見た、天文の魔術師と最初のサーヴァントの生き方を見て、僕は討たれた。そして選んだ、僕のもしもは、彼らと同じようなもしもがいいと」

 

 それはビーストⅣ。

 

「僕はビーストⅣだ。比較の原罪を持つ獣、そしていまここに宣言する」

 

 

 

「おめでとう、神の槍と言う拳持つ歌姫よ。君は原罪の比較、ビーストⅣを討ち、理想像を押し付けることも無く、君は君の幼なじみを掴み取った」

 

 

 

 それに、ペンダント。ギアが輝く。

 

「やっとだ、やっと君は君だけのギア、シンフォギアを手に入れた」

 

「理想と言う理想像で生まれた冠位の剣士でも、原罪の獣でも無い。龍崎アスカが得た、龍崎アスカが仲間たちと共に得た、龍崎アスカだけの、誰かを救う力だ」

 

 響き渡る歌声が響く、キャロルはこちらを見て、顔をゆがめ、睨む。

 

「場所は貸す、ここで決着を付けろ」

 

「ここが奇跡の塊なら、破壊する、解体する、殺して殺して殺しつくすッ!!」

 

『やめてキャロルッ、パパは、パパはそんなこと望んでいないッ』

 

「うるさいッ、それなら、パパは、パパはなんで死んだッ。認めない、認めてなるものか!! お前達がいまを守るために戦うなら、俺はいまを蹂躙してくれるッ」

 

 無数のノイズが現れる中、それでも、

 

「………止めるぞ響ッ」

「うん………」

 

 ペンダントから力があふれてくる。歌が胸の内から、溢れてくる。

 

「私達も諦めない」

「オレは諦めない」

 

 

 

「「絶対に救い出すッ」」

 

 

 

 そして歌姫達の歌が響く、歌が理想郷へと流れる。

 

 これが終わりと始まりの、瞬間だった。




 真名、理想と言う名の剣士。性別。

 身長㎝ 体重㎏

 スリーサイズ

 属性、出典並び地域無し イメージカラー

 特技 家事

 好きなもの 世界

 嫌いなもの 世界

 苦手なもの 世界

 天敵 世界

 クラス・グランドセイバー

 筋力

 耐久

 敏捷

 魔力

 幸運

 宝具EX


 保有スキル

【理想なる者(推測不可能) 見た目や能力など、召喚者や時代に合わせて変わる】

【理想の使い手(測定不可能) あらゆる宝具、武器、武術、魔術を、召喚者の能力に合わせてられる。時には最強の剣士、最高の魔術師など、能力が変わる】

【対魔力(EX) 邪も神も魔も弾く】

【戦闘続行(A) けして終わらぬ戦いに挑む。永劫、その理想は尽きない】

【単独行動(EX) この世に心、感情、理想ある限り永続する】

【無限の夢幻の担い手(計測不可能) 求めた宝具を使用、世界、時代、いずこかの誰かが抱いた宝具の形を現実として使用する。それは本物すら凌駕する絶対の偽物で、本物なり】

【固有結界(EX) 理想と夢幻を内包した空間、現実として骸の丘、幻実として蒼穹広がる草原の二面性を持つ。どちらも本当であり、違うとも言える世界】

 宝具

『現実を超えた幻想(複数あるため、そのたびに数値変化) この世界に存在する、人が思い描く幻想から取り出す、宝具全部を指す。全てが偽物の宝具ではあるが、本物を必ず凌駕する偽物。この世の誰かが思い描いた宝具』

 聖剣エクスカリバーが出て来る物語を聞いて、誰かがこういうものかな?と思い描いた聖剣エクスカリバ―を使える。

 偽物だが、本物よりも強力な力を持つエクスカリバーを使ったりできる。他の英霊が持つ宝具も該当する。彼が使えないのは、誰も知らない宝具ぐらい。

『無限の夢幻の担い手(測定不可能) 最強であり、最弱の宝具とサーヴァントの証である、世界を創り呼び出す。その後、始まりと終わりを表徴する剣を取り出せる』

 邪悪の一面として、けして沈まない夕日の中、血まみれで骸の丘で磔にされた己がいる。だがけして武器は手放さず、世界には必ず、剣が共にあり続ける。

 正義の一面として、無限の宝具が存在し、最高の神秘でできた聖杯が安置された理想郷。そこにいるのは、たった一人、英雄と言う理想像でできた英霊が一人、その場にいる。



 他人が生み出した理想像から生まれた幻想の英霊。もしもを初め、人が見たことも聞いたことも無い思い描いた人物である。

 それは英雄でも、怪物でも、ヒーローでも、悪党でも、全てであり、全てで無い。

 世界が滅びても、それは滅びない。なぜならば、無すら、彼なのだから………

お読みいただきありがとうございます。

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