とりあえず今回は短めでここで区切ります、ではどうぞ。
二課本部にて、精密検査を受けながらオレことアスカ。了子さんは静かに呟く。
「………やっぱり男か………」
「泣きますよ!?」
病院で着る患者の服だが、それでもわきわきしながら上着を脱がされ、色々な線を付けられながら、検査される。
正直本当に目つきが怖いし、あとは助手の男女の人達も、目線を逸らす。上は見られても平気なんだけど。逸らす意味を聞きたくない。
ともかく響と違い、自分のは異例中の異例、だからかどうか不明だが、
「完全聖遺物デュランダル、これはまず、響ちゃんの歌によって覚醒、起動したのは間違いないの」
検査されつつ、説明を受ける。今日も学園を休みながら、学校に出向いている響の顔を思い返す。
出来る限り防いだが、それでも少し戸惑っていた。
「まず響ちゃんはデュランダルとの適合率が高い、これは確か。そして」
「オレもですか?」
それに静かに頷き、人の背中をスーと撫でる。悲鳴が出そうになるが我慢する。けどすぐに残念がる了子さん。これはセクハラだったっ!!
「ともかく、せっかくアスカちゃんが学校休んでくれたんだもの♪ たっっっぷり楽しみますか♪♪」
「………」
響の時間を使わせる訳にはいかない。最近、未来との時間も割いてるし、学校のこともある。ならば自分でいい。響は時間がある時でいい。
そう言い聞かせながら、了子さんに耐えた。
「………そしてなんでオレ、リディアン制服なんだろう………」
泣きそうなほど小さく呟く。そう、自分はリディアンの女子生徒の制服に着替えた。慣れた自分が嫌になる。
缶コーヒーを両手で持ち、休憩スペースで飲みながら黄昏れる。アストルフォはどうしてこれに耐えられた? 理性蒸発してたからか………
「デュランダル………アストルフォの言っていた『剣』………違う気がするし、そもそも、この情報を信じていいのか?」
アストルフォは夢、意識が途切れていた時の話だ。確証なんて無い。
だが、自分自体がすでにこの世界にとってイレギュラー過ぎる。なぜならば、前世の記憶を持っている。
思い返すは、親を早いうちになくし、爺さんが唯一の家族。その爺さんの元で剣道していた。
そして事故、よそ見運転だ。それだけだ。
「………詳しく思い出しても、意味無いよな」
そう黄昏れて、立ち上がり、飲み終えた飲み物を捨てたとき、奏さんに尻を撫でられた。
「ひゃうっ!?」
「………確かに可愛い悲鳴だな」
そう言って距離を取るが、おいおいと苦笑する奏さん。真剣な顔つきで考え込まないで欲しい。
「なるほどな、んな小動物のように縮こまって涙目なら、そりゃ手出したくなるな」
「なにに納得してるんだよぉぉぉぉぉぉ」
腕を組み、頷き続ける中、奏さんに有ることを頼まれた。元々学校は休んでいるため、暇だから良い。
こうして彼女の元に出向くことにした。
病院の中、静かに扉をノックし、返事を待ち、中に入る。
「!? 貴方は」
――風鳴翼
この前のデュランダル輸送の案件、私と奏は外されていた。
元々私は絶唱を歌ったのだから、当然だが、やはり気が重い。その結果、彼らに多くの負担をかけた。
それにより、彼らの立場が危険になる。完全聖遺物デュランダル、それの覚醒に関わった以上、彼らはどうなるか分からない。
そう考え込んでいると、扉がノックされた。緒川さんか奏だろう。
「どうぞ」
「は~い」
その声に驚き、振り返るが遅かった。
「うっ………」
「………まずは、掃除か」
そこにいるのは龍崎だった。まずは呆れながら、静かに掃除のため、エプロンをつけ始める。可愛い物だ。
正直、いまだ彼が男性と思えない。だって、
「それじゃ、少し待ってて」
家事がうまいんだもん………
本は取りやすく、読みやすいように置かれていく。洋服は変えと洗濯物に分けたりする。無論、種類別。
色々な私物も知っているため、よくしてくれている。
彼にはたびたび緒川さんの変わりに、奏と共に掃除してくれていた。正直最初はともかく、いまは抵抗できるほど私には資格が無い。
夏場のあれが出たときなんか、その………頼もしかっただもの。
「翼さん? 少し気分が悪い?」
「大丈夫だ」
そんな彼の後ろ姿、前は何も話しかける機会があっても、かけられなかった。
だけど………
「………龍崎」
「アスカでいいですよ」
側に座り、ベット周りの掃除をし出す彼に、静かに、
「ならアスカ………君はなぜ戦う?」
「はい? できるからですけど?」
簡単に答えた。
「………できるから?」
それに驚くように、簡単に言う。
言葉にすると簡単だが、彼の顔は、暗かった。
「できるからしなきゃダメなんですよ、だって、翼さんが戦ってるって知ったし………響や未来、ああ、未来も幼なじみの子です。彼奴らのことを考えたりすると、まあ、無視できないですから」
「君は………」
「それで守れてる訳でもなかったですけどね」
そう言って、ペンダントを握る。苦々しく、静かに、
「オレはアストルフォじゃないんです、英雄である彼のように、守れなかった」
「?」
なにを言っているか分からない。彼はよくやっている、いままでだって、
「オレ、響や奏さん、翼さんも何も、救った実感も何もないですよ。みんな」
悲しそうなんですもん。
これは彼の本心だ。苦しげに、そして本音だと分かった。
「彼奴はその、趣味が人助けで、色々あって、誰かを助けて生きていたいって強く思ってますけど、オレには無いです」
そう言いながら、無いともう一度言う。
「オレにあるのは、ただ『やれる』ことだけだった。英雄みたいに前に出たいとか、勇気を持って前にとか、そう言う理由は無い。はっきり言える、オレはただ、やれるからって理由………いえ、理由すら無いんです」
だからと言う。
「翼さん、オレは良いんで、響とはよく話してください。彼奴はその、人との距離感が分からないから、最近詰まってて………」
「………君もだろ?」
そう言ってしまった。止まりそうにないと思いながら、静かに、
「私は君を憎んでいた」
「………」
「奏から戦う翼を奪った、例え奏を救うためでも………」
「………」
「………私は、君の友である資格は無い」
そう言ってしまう。
私の中でくすぶっていた、彼への不満。確かに彼は何かしらの使命も何もない、ただやれると言う理由からいるだけに、腹を立てていたのかも知れない。
だけどそれで助かっている理由から、私は距離を置いていたのだ。
しばらく間があいたが、
「それでも、やりたいですから、オレは翼さんを守ります」
そうはっきり言った。彼はそう、気にせず微笑んだ。
「待て、私は防人、この身は剣として」
「知りません、オレにとって翼さんは女の子です。守るべき人ですよ」
そう言って微笑む。
彼はそう言って、また片づけを始めた。
(………守るべき人、私が………)
そう言われたのは初めて………いや、
(私は色々な人に守られているんだな、奏………)
守ってくれている人達の顔を思い出しながら、私は彼を見る。いまは衣類の整理だが、正直悪い。
まさかジュースの容器がこぼれているとは、彼も呆れていた。
そっと顔を背けたとき、ドアがノックされた。
「失礼しま………アスカ!?」
「ん、響か」
「立花か」
「ってこれはなに!? 部屋が荒らされてる!?」
それには少し悲しくなる。やめて欲しい。
そして私の様子、彼の様子を見て、驚きながら納得して、次に、
「ってぇぇぇぇぇ、アスカっ!? なにしてるの!!?」
「なにって、洗濯物を纏めてるんだよ。仕方ないだろ、二年前から、手を貸したりして慣れ………あっ」
その時、彼も手に持つ物はまずいと察する。私はそれを見ても最初ほど気にしていないが、第三者が見ればまずいことだと、おそらく私は顔を赤くして逸らした。
はっきり言えば、いまの彼はリディアンの制服とエプロンで、どこから見ても女性生徒なのだが、男性だ。
そんな彼の手には、その………私の下着が………握られていた………
「出ていってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
アスカはそう言われ、下着を置いて叩かれて、外に追い出された。
正直、いつも助かってるから何も言えないし、緒川さんもだから………言う資格はないんだ………
――風鳴弦十郎
「んで、こっちに来たのか………」
「悪いですか………」
そう言いながら、コーヒーを飲みながら、彼は愚痴る。彼の場合、場所や容姿が相まって、女装させていることもあるので、愚痴くらいは聞いてやらないとと思っている。
奏や了子くんも、少し度が過ぎる点があるしな………
「未来の方が心配なんですが」
「君らの幼なじみか………彼女についてか」
「………正直、外部協力者として、関わって欲しいです。このままじゃ、響が潰れます」
幼なじみとして、彼はたびたび、片方の様子、片方から相談され、状態を知っている。正直、こうやって赤の他人に言うのも抵抗があるのだろう。
それもこれも、不甲斐ない俺達の所為だ。
「すまない、防衛大臣暗殺の件で、こちらもごたごたしている。それはギリギリまでにしておきたい。本音を言えば、このままの状態だ」
苦虫をかみ砕き、彼にとって聞きたくない答えを言う。そのままコーヒーを口の中に流し込む。
「確かに、いま本部は防衛強化され出しましたけど、色々と国際問題の点が酷くなりましたもんね」
藤尭の言葉に、場は少し重くなる。
彼もまたコーヒーを流し込みながら、静かに、
「ネフシュタンの鎧、それと、ノイズを操る聖遺物ですよね?」
「ああ、無論、こちらで調べているよ」
「………」
静かに目を閉じながら、融合型聖遺物アストルフォを見つめる。
(融合型)
現在平行線で、あの場にあった聖遺物、無くなった物、それかどうか調べていた物、それら全て調べ直している。
正直、彼はやはり特殊だ。あまりの特殊に、彼の履歴を調べてしまう事態になったが、それらしい不審な点は、書類上無い。
(………アスカくん、君は)
その先を思う瞬間、警報が鳴り響いた。
二年前、ある日、
アスカ「うわ、これってなんだ!?」
翼「………」
数日後、
アスカ「洗濯しますね~」
翼「すまない………」
数ヶ月後、二課本部で泊まる際、
アスカ「翼さん、ご飯は何にします?」洗濯物を受け取りながら、
翼「和食が良いな………ああ、明日はコンサートの打ち合わせだから、においがあるものは避けたい」下着の入った物すら渡す。
また数ヶ月後、
翼「すまない」
アスカ「はい」テレビのリモコンを渡す
奏(もうそこまでいけば仲良く成れよ………)
緒川(アスカさん、翼さんの味の好みも知っていて、助かるんですが………もう少し会話があれば………)
彼は家事スキルはEXです。割烹着でも、エプロン姿でも、お好みの姿で二課の人達の面倒見たりしてます。
料理、彼は得意なのは家庭料理です。肉じゃがとカレーと唐揚げが得意です。
それでは、お読みいただきありがとうございます。