少年/戦姫絶唱フェイト・シンフォギア   作:にゃはっふー

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英雄や怪物の代理人と言う抑止力、そう思われていた龍崎アスカの謎が深まる。

切歌と調はミカを協力し、それを撃退。

それではどうぞ。


35話・もしも、かもしれない、都合のいい物語

 その日、クリス、切歌、調、セレナが海底にある施設へ出向くことになった。どうも敵さんは竜脈を利用した大規模な何かをする。

 

 そこまで分かり、色々調べたりするために、竜脈を守る翼、奏、マリア。何かあったときに動く、響とオレ達とで分け分けされた。

 

 事実上、暇なのだが、その間考えることがあるからか、気を使わせたようだ。

 

 自分の過去なんて知るかと思えば思え程、無視できない事態へと引きずり込まれる。許されたんじゃないのかグランド達。

 

 それに父さんが、

 

「それはもう許されてるんじゃないか」

「どういうことですかおじさん?」

 

 未来が不安そうに麦茶を出しつつ、施設の部屋で集まりながら、

 

「………可能性だけど、僕は彼に聞いた問いかけに『悪人とか、加害者とか言うけど、獣としては物語で言う悪党だけど、人間で言う悪党は善の一面と変わらないかい』と聞いた。お前と言う抑止力の悪ってのは、他人のために大量虐殺した人間性のことを言ってるんじゃないか?」

「………あり得る」

 

 そう言いながら麦茶を飲む。ジャックを父さんは見ながら言い、アタランテは黙り込む。そういう英霊はいる。

 

 怪物などなら、人側から見れば悪だが、それは生物としての活動で、ある意味外れるが、人は知性を持つ。そして人を守るためにある魂の悪と言うのならば、

 

「オレは大量に他者を滅ぼすことで、誰かを守る悪? それがオレが加害者と言う一面なら、オレって言う抑止力はなんだ?」

「抑止力ってなにか分からないのアスカ?」

 

 そう響に尋ねられた瞬間、無限の荒野、刀剣が突き刺さる大地に立つ男が浮かぶ。

 

「悪い、人類の掃除屋。すでに起きた事態を終わらせる殺人者としか意味はかみ砕いて覚えていない。それで無銘は一度、狂うくらいに、自分の人生を呪ったからな」

 

 それ以外は、魔術師が根源に近づけば消すなどと言う意味しか分からず、アタランテは分からず、ジャックも分からない。

 

 オレが知っていて、ビーストと対峙する人間で、主人公で、もうなんだこの都合のいい人間。オレか。

 

 そういうもんと納得するしかないが気持ち悪い。

 

「なに考えてるんだよサーヴァントのオレ」

 

 そう悩んでいると、

 

「おかあさん♪」

 

 そう言って抱き着くジャック。母親の所為でどんどん可愛くなるジャック。母親が満足と言う顔で着せていた。

 

「にあってる?」

「ああ、かわいいよジャック」

「うん♪」

「エルフナインちゃんの分もあるのよ~………全部終わって、気楽に話せられればいいんだけど」

「その時はキャロルの分もよろ~」

 

 そう言って寝っ転がる。疲れる。ほんと疲れる。

 

 響は難しい顔をするが、

 

「難しくてもやるぞ響」

「アスカ………」

 

 色々難しいことがぶつかるが、それはそれ。

 

 キャロルのこととは関係も何もないんだ。

 

「守りたいんだろ、キャロルを傷つけず、守る力としてギアを使いたい。やりたきゃやれ、オレは初めからそれで動く」

「………」

「響」

 

 そう言って響を抱きしめる未来を見ながら、響は微笑む。洸さんも苦笑する。

 

「そうだ、偽善で正しいだけだろうが、それ以外選べない」

 

 まるでそれは、彼、衛宮士郎の考え方だ。

 

 そう思いながら、

 

「………正しいだけの偽善か」

「アスカ?」

 

 立ち上がって、寝っ転がるオレを見る響。すぐに体を動かす。時折響は、オレのことを、本当に………

 

「響、スカートの中見えたらどうする気だよ………」

「あっ、ごめんごめんっ。アスカだからつい」

「あーそうだよ響。少しは慎みを持ちなさい」

 

 怒られる中、母親たちから視線を外す。

 

「なんかあれば連絡が入るし、一番の問題は、キャロルが全部終えて動いた際だ。その時はアタランテ達は全力で宝具でノイズを。オレ達は」

「キャロルちゃんを止める」

「そういうこと、ま、クリスや翼んとこでなにも無ければいいが」

 

 そう呟き、静かに、だが、

 

 

 

 だが………

 

 

 

 ――???

 

 

 真夜中、隣の部屋を借りていた立花洸と共に、なぜか龍崎家と未来を混ぜて男女分け分けしてしている。ここは女子部屋。

 

 そしてベランダに誰かいるのを感じたため、立花響は起きてリビングへ出向いた。

 

 正直、声をあげたりしなければいけないんだろうけど、

 

 だけど………

 

「アスカ?」

「………」

 

 ベランダにいた、夜の中、月を背にしているサーヴァントと言うものである、もう一人の幼馴染の男の子。

 

 その姿をよく見る。素肌も顔も隠しに隠し、だけど私より背は高く、彼はベランダの手すりに立っていた。

 

「………ねえ、アスカは何を伝えたいの」

「………」

「言えないの? 私達に気づいてほしいの?」

「………立花響」

 

 初めて声を出した、やっとのような気がする。

 

 彼の声が、アスカと重なった。

 

「オレは一面だ、龍崎アスカだったものだ」

「なら私の幼なじみのアスカだよ」

「………」

 

 ベランダに静かにおり、僅かな目でこっちを見る。

 

 服はボロボロだった。なんでだろう?

 

 それに凄く疲れている、いつもそうだ。いつも何かに疲れて、それでも前に出てきては守る。大切な幼なじみ。

 

「………疲れた? 麦茶飲む?」

「俺に疲れは無い」

「………そうなの」

 

 同じことをやはり言う。

 

「何億人殺した」

 

 夜風が入るベランダで、彼の声が響く。

 

「それを超えるほど人を救ったし、殺したし、意味もあり、無かった」

 

 そしてと、

 

「俺の存在は意味が無いである。ずっと矛盾を繰り返して、ずっと同じことをしている。それが俺の存在、俺と言う、魂の記録と情報と偉業。ただ俺はその保存庫」

「難しいことは分からないんだけど………」

 

 困ったように苦笑しながら、だけど、伝いたいことがあるから近づく。

 

 だけど近づけられない。何がそれもヒントのように思える。

 

「同じことばかりだ、悪でも善でも、人でも獣でも。俺の人生は、誰かを救うために己を捨てた」

「えっ………」

 

 正しいだけ、偽善すら無い。ただの自己満足な選択肢。そう言った。

 

「俺の選ぶのはそれであり、未来永劫変わらない」

「………アスカ?」

「俺が唯一、俺と言う人生だったと言える人生。記録………この世界の記録だけは、俺達にとって特別な記録………」

 

 そう静かに呟きながら、

 

「………君にヒントを与える」

「ヒント?」

 

 それには一つ、

 

 

 

「俺は諦めない」

 

「例え俺の人生が偽物で、誰かの物であろうと諦めない」

 

「愚かでも、紛い物だろうと諦めない」

 

「何が何だろうと諦めない」

 

「なぜならば、その時の俺は間違いなくオレであり俺なんだ」

 

「全ての俺の選択肢はどうなろうが誰にも決められないが、俺は後悔だけはしない」

 

「信じる、俺を。別の俺を信じる」

 

「そして何度も同じ選択をする」

 

「諦めない。同じ選択を進む」

 

「過ちも、正しいも間違いも何かもかもその時の俺が選ぶ、俺だけの選択だ。諦めない、そして信じる。救えることを永劫に」

 

「そして………そんな俺を信じる人たちを信じる」

 

 

 

 そうはっきり告げていく。

 

「………アスカ」

「お前なら、アスカを二人目にして、手を結び付けてくれると信じる」

「………なんか難しいこと言われてるけど」

 

 少し微笑みながら、

 

「私は私らしく、アスカを、みんなを信じて、みんなのために歌えばいいんだよね」

 

 ただいまは目の前の彼のために、笑って手を握る。

 

 ………その手は酷く痛々しいほど、傷だらけな気がした。手袋の上なのに、ボロボロで、それでもきっと、いま言ったことを貫いたんだろう優しい手だ。

 

「………ああ」

「ならへいき、へっちゃらだよっ♪♪」

 

 その笑顔を見て、そして、

 

「なら龍崎アスカが至れると信じよう、俺は………いつももう一人を信じて、歩き続ける」

 

 そう言って、彼は消えた。

 

「………最後のヒントかな?」

 

 もう頭パンクしてるんだけどな~と思いながら、結局やることは歌うだけと知る。

 

 そして水飲んで寝よと、部屋に戻った。

 

 

 

 翌朝、連絡は無く、少し心配する中で、本当に連絡ができない。

 

「これは、響」

「えっと、この場合、中心部で待機だよね」

 

 何かあれば、計画が進んでいると言うことであり、その計画の中心部に待機する。それがいまの自分達。アタランテとジャックが頷きながら、だがと、

 

「これは許可があるから言うけど、ジャックはこのまま父さん達の警護に当たってくれ」

「うんっ、おばさんたちはわたしたちがまもる」

「孫ができた」

「アインハルト、いまボケてる場合じゃないからね」

 

 そんな感じだが、アスカと響の顔つきは迷いを捨てて、駆けだす。

 

「響、アスカ」

 

 未来は静かに、

 

「待ってるからねっ」

 

 その言葉に頷き、彼らは駆けだした。

 

 

 

 都市部は何事もなく、アタランテは建物の上から周りを見るが、なにも起きない。

 

 このままなにも起きないままがいいのだが、

 

「アスカ、連絡は」

「まだ付かない。翼達のところもだ」

 

 やはりなにか起きてる。そう思ったとき、悲鳴が起きる。

 

 空が割れて、中から巨大な施設が下りてくる。さすがになにかあるとは思っていたが、すぐにアタランテは矢を使い、障害物の破壊などをして、姿を見せず、避難者の安全を確保する。

 

 少し無茶なことだが、アタランテは姿を現すことはできないし、こっちはそれどころではない。

 

「キャロルちゃん………」

 

 響の言葉に、空間から現れる一人の少女。父親の偉業を奇跡の一言で握りつぶされ、火あぶりにされてから狂った一人の錬金術師。

 

 それに対してすぐに構える二人。

 

「もう術式は完成してるのか」

 

「ああ、ガリィ、ミカ、レイア、ファラは歌の回収を終えたッ」

 

 そう言った途端、施設はビルの上に下り、活動を始める。

 

 もう周りに人はいないのを確認、アタランテには避難活動が終わり次第に来るように言う。令呪は戦いに取って置き、ジャックはそのまま悪いが殺傷力が高いから、守りに待機させる。

 

「歌の回収………」

 

「イグナイトモジュール、これは初めから貴様らに滅びの歌を歌わせるための装置だ。アルカノイズ対策は二の次。自動人形オートスコアラーである彼奴らも、その歌でお前達に倒されることを前提に作った」

 

「「ッ!?」」

 

 驚く二人に、施設が脈動するように機動し出しながら、空中に浮き、こちらを見下ろす。

 

「俺とエルフナインは視覚が繋がっている、おかげで、お前達の行動は筒抜けだった」

 

「なっ、だから」

 

「ああそうだよ抑止力っ、俺にとってお前の存在は目障りで仕方なかった」

 

 ニヤリと笑い、四つの陣から錬金術の、第四元素を操る。

 

 すぐにギアを纏い、構えながら、それにふんと響を睨む。

 

「やはり戦うか立花響」

 

「………少し違うかな」

 

 そう言いながら、拳を握り締める。

 

「前にお父さんが私の前からいなくなるとき、おばさんが拳で止めてくれた。おかげでお父さんは、心の整理できたって言ってくれた」

 

 それを思い出し、龍崎家の頭のネジの外れ具合に苦笑しつつ、前を向く。

 

「当たれば痛いこの拳、それでも、私はキャロルちゃん、キャロルちゃんを救いたいッ。矛盾していることなのは分かってるけど、私は」

 

 その時、もう一人の幼なじみが脳裏をかすめる。

 

 ボロボロの姿の、それでも諦めないとヒントを託した、彼を思い出す。

 

「諦めないッ、何度間違いだって言われたって、諦めてなるものかッ!!」

 

「………母親の悪いところが似たッ」

 

 だが悪くないと笑い、ギアの剣、王と魔の剣を構える。

 

「「とりあえずあの建物はぶっ壊すッ」」

 

 単純な二人はそう決意して駆けだす。

 

「させると思うか単細胞どもッ!!」

 

 そして吠えるキャロルは無数のノイズと共に迫った。

 

 

 

 アタランテは周りの者たちを見渡し、随時インカムで連絡していると、

 

『こちら本部、こちら本部ッ。応答を』

 

「藤尭かっ!?」

 

『司令っ、アタランテと連絡が付きましたっ』

『応っ、アタランテ殿、そちらの状況はっ』

 

「こちらは民間人は最低限避難路の確保をしたッ。マスターと響殿は空間から現れた施設の破壊を基準に、錬金術師と交戦している」

 

『いま翼達、クリス達は全速力で向かわせているッ』

『司令、いまジャックちゃん達、洸さん達が本部近くで確認しましたッ』

『だそうだ、彼らのことも任せろっ。君は打ち合わせ通り、アルカノイズが大量に放たれた際、その矢で討って欲しい』

 

「了解した」

 

 

 

 激突する響の拳を、錬金術の陣で防ぐキャロル。それに、

 

「キャロルちゃんっ、キャロルちゃんはなにがしたいのッ。どうしてアスカをそんなに」

「俺は認めないッ、彼奴のような奇跡をッ。パパの命題のために、俺は世界を解体するッ」

 

 吹き飛ばし、着地する響は迫るノイズも吹き飛ばし、キャロルを見る。

 

「世界の解体………お父さんの命題?」

 

「そうだ、パパは火の中で焼かれる中で俺に言った、『世界を知れ』と………だからッ」

 

 その目に正気は無く、ただ一つのことしか見えていない少女は叫ぶ。

 

「俺は世界を解体するッ、世界を知る、パパが私に残した最後の命題ッ、そのために」

 

 その言葉に響は、

 

「違うッ」

 

 その言葉に、睨むように響を見るが、響は引かない。

 

「キャロルちゃんのお父さんはこんな方法を望んでなんかいないッ、私もエルフナインちゃんからキャロルちゃんのお父さんのことは聞いた、だから」

 

「黙れッ、お前程度の、奇跡を歌うお前がパパを語るな!!」

 

 無数のノイズが槍のように向かってくるが、

 

「遅い」

 

 静かに切り伏せる二つの影に、響は微笑むと、無数の弾丸が一斉に放たれた。

 

「遅くなった、アスカ、立花」

「翼さんっ」

「アスカ、ヒポグリフは返しておくぜ」

「おう」

 

 その時、戦いの中にいなかったギアを睨むキャロル。

 

「ヒポグリフはこいつらの回収に向かわせていたのか、抑止力」

 

「まあね」

 

 その時、光の嵐が放たれ、ノイズが吹き飛び、盾と共に、銀の腕、女神の二つの鎌が現れ、全員がキャロルを見る。

 

「戦況逆転デスっ」

「後はその施設、シャトーを壊すだけっ」

「もうやめろ」

 

 その様子を見ても、キャロルは気にも留めず、

 

「まだシャトーは動いている」

 

「まだパパの命題に手が届く」

 

「なら俺がするべきはただ一つ」

 

 錬金術師、キャロルは叫ぶ。

 

「邪魔をするな、シンフォギアあぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 こうして最後が動く。




他の場所で起きる装者の戦い、全カット。かわりにアスカの記憶を持つ彼は、響に会いに来ました。

もうお父さんと和解してますし、早い段階で本部の方に到着してます。

それではお読みいただき、ありがとうございます。

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