少年/戦姫絶唱フェイト・シンフォギア   作:にゃはっふー

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謎のサーヴァント、セイバーは複数の宝具持ちであり、他者の宝具も己の物らしい。

龍崎・アインハルト、龍崎・冬馬、立花・洸に聖遺物のことを知られてしまう。手引きしたのは謎のサーヴァントである。

マリアがイグナイト・モジュールを使い、ガリィを撃破。

それではどうぞ。


33話・歯車は狂いだす

 とある場所で、銀の腕、アガートラームから歌を回収したのを確認する錬金術師。

 

 キャロル・マールス・ディーンハイム。彼女は傷ついた身体を直しつつ、計画を遂行させるように動いている。

 

「ちっ、この身体………なかなか直らない」

 

 本来ならあの場でこの身体は破棄し、用意されている身体に記憶をダウンロードして使いつぶすのが最初の計画だった。

 

 だがこの身体は維持しなければいけなくなったため、それができず、負った傷を直すしかなくなった。

 

「身体なんて時間があればいくらでも替えが利くと思ってたが、生身の身体がこうも使いずらいとはな」

 

 少しばかりイライラしながらも、ガリィの仕事は終えた。後はこの肉体を活動可能なほどに直して、動くようにすればいい。残りの仕事も残った物を使えば問題ない。

 

 もう一つの『あれ』も利用できる。

 

 手に入れた情報、世界の根源、星と霊長の意思、抑止力。

 

 知らない世界の仕組み。もしかすれば、あるいはと思う。この世界にも意思があり、それがあるのなら、

 

「必ずだ………」

 

 エルフナインを抱きしめながら眠るそれを見ながら、静かに告げる。

 

 奇跡の塊、神秘の象徴。

 

「必ず貴様を、解体する」

 

 

 

 ――龍崎アスカ

 

 

「本部でしばらくウチの家族を?」

「保護、ですか?」

 

 響とオレの疑問に、司令は静かに頷く。

 

「まず第一に説明もある、それと例のサーヴァントも気になる」

「セイバー………アタランテ、申し訳ないけど、英霊として何者かわからないのかしら?」

 

 マリアの言葉に、アタランテは首を振り、むしろ不可能に近い。

 

 ナスタージャ教授もこの場にいる中で、セレナが代表して説明する。

 

「サーヴァントの戦いはまず、真名、本当の名前を暴くのが普通なの姉さん」

「真名?」

「私の場合、真名アタランテ、クラスとしての位、弓兵アーチャーで、英霊召還の場合、クラス名で通す」

「なぜデスか?」

「そうしなければ敗北する可能性が高いからだ」

 

 そこに、アタランテはあまり言いたくないがと前置きをして、指令室に自分の逸話をモニターに出してほしいと、藤尭さんと友里さんに頼む。

 

「正直黒歴史公開なんだけどな、サーヴァントにとって」

 

 後でうまいリンゴを食べさせようと思いながら、逸話を見せる。

 

 そして何名か、おっかなびっくりする。

 

「きょ、競争で男の人殺してたんですか」

「そうしなければ絶えなかったんだ」

「それで、黄金のリンゴに目がくらんで負けてしまった」

「神秘を帯びた果実なんだっ、しっ、仕方ないだろっ」

 

 その結果ライオンに替えられた逸話から、耳としっぽがあると説明して見せる。

 

「ともかく、サーヴァントはこのように、逸話から相手のことがわかるんだ。ここから私の宝具も推測できるし、弱点もバレてしまう」

 

 この場合、アタランテへの対策は、太陽も月の加護が無い状態を作り出し、神秘を帯びた果実で集中力を無くさせれば、勝率が上がる。

 

「とまこんな感じかな。サーヴァントはこう言った意味があるから、真名を隠すのが当たり前なんだ。中には意味ねぇくらいぶっ飛んだスペック持ちがいるがな」

「英雄王ギルガメッシュ。古代の王として、世界の財と言う財の所有者か」

 

 彼の王は宝具として、王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)と言うものがあり、本人ですら分からなくなるほど、世界の財宝と言う財宝を内包した無限の蔵を持つ。

 

 その蔵の中には、世界に飛び散る前の聖剣を初めとした全てがある。

 

「だから対策なんて立てられない、立てられたとしても、無限の蔵にある名刀、聖剣の主と言う訳ではない彼の王に対して、その聖剣の主となった騎士がその剣に見合う技を叩き付けるなどの方法以外無い」

 

 無限の一には、究極の一で叩き落す。それが英霊の戦いだろうと思いながら、それを認めたいまの英雄王ならどうか知らないが、そういうものだ。

 

 そして話を戻すと、

 

「サーヴァントの真名を看破するのは、容姿や手に持つ武器、宝具から推測して看破するしかないんだ」

「宝具はその英霊が持つ力の表徴だ、それを偽れることは、できない」

 

 まず持っている英雄王が偽るはずは無い。絶対に無い、ありえない、子ギルだろうが無い。絶対に無い。

 

 なら無銘である投影魔術使いはと言えば、それもない。

 

「あの自称セイバーは、ヘラクレスの武器を、己を武器と言ったんだよな」

「ああ、ありえない」

 

 ヘラクレスの名を語る? それもあり得ないどころか、よく考えれば、

 

「ザババの鎌や、銀の腕の所持もだ」

 

 どうも、調整に使いやすい素材ではあったらしい。三つのギア調整に大きく関わったが、それでもおかしい話だ。

 

 つい英霊だからと納得してしまったが、そうほいほいあるもんじゃない。

 

「セイバーなら、剣士だということなんだろ?」

「ああ、剣の逸話を持つ伝説を持つものだ。含まれてる存在だ」

「? それって」

「小日向殿、吾々とて七の位の一つに縛られるわけではない。槍の逸話や騎乗して戦う逸話からライダーやランサーのクラスに成れる可能性もあります」

「ヘラクレスもしかりか」

 

 それに近いと、とある英霊から言われた人は腕を組みながら考え込む。まあそれは忘れよう。この人は死後英霊の座に登録されないんだから、されたらバーサーカーかルーラーか?

 

「となると、マジで何者だあのサーヴァント。聞けばグランド達とも顔見知り………神霊クラスかな?」

「神霊はさすがに言いすぎですし、なにより当てはまる逸話を持つ者がいません」

 

 どこの贋作師だよ。持ち物から真名を考えれば考えるほど分からなくなるなんて。

 

 一番の問題点は、何者とかじゃなく、なぜ自分の周りに現れ、しかも家族に暴露したんだよと言うことだ。いまの状態で突然敵になられても困る。

 

「なにがしたい、それだけ分かればいいのに」

「私は、あまり敵になって欲しくないな………」

 

 響はそう呟く中、静かに辺りが黙り込む。

 

「ともかくいまは警戒するしかない、いまはキャロル率いる錬金術師もあるんだからな………」

 

 ということで、話はここまでとなった。

 

 

 

「複数の伝承所持者………剣士で、あり得る可能性」

 

 ずっと考え込みながら調べているが、なにもなく、本部の施設、ホテル並みの設備でくつろいでいる。

 

 エルフナインとジャックを膝にのせている母親は、ぎゅ~としながら、

 

「腹掻っ捌いて、ジャックちゃん入れても死なない身体にできないかしら?」

「「冗談だろうがなんだろうがやめて」」

 

 父子揃ってのツッコミ、洸は苦笑しながら、響や未来もいる。

 

「アスカ、そんなにサーヴァントの人のこと、知らなきゃいけないことなのかな?」

「もうすでに父さん達を巻き込んだんだ、何者か調べたい。それに」

 

 なぜまだ関わっている? その疑問に未来もそう言えばと思いながら、

 

「アスカはもうこの世界にいてもいいって、偉い人たちが決めたんだよね?」

「正確に言えば、オレがこの世界にてなにが起きても知らないぞと決めた、だな。すでにアタランテとジャックが、藤丸立香と言うマスターのパスと混線して、オレと契約しているし」

 

 そのまま床、カーペットに倒れている。頭が痛い。

 

「英霊が流れ込むのはオレの所為なら、止めなきゃいけないし、率先してやらなきゃいけないんだオレが」

 

 それが英霊と言う力との関わりを作った自分だと思い、それだけは譲らない。譲れない。

 

「アスカらしいね」

「そうだね」

「うるさい」

 

 そんな子供達の様子を見る大人たちは苦笑して、母親はエルフナインを離さない。正直エルフナインも仕事したいのだが、司令が休ませるつもりで渡している。

 

「可愛いな~全部終わったら、エルフナインちゃんウチの子にしたい」

「ふへっ!?」

「いいんじゃねぇ? 国籍とかいる際に言えば~?」

 

 そんな感じの中、冬馬もまた静かにいいよと言うので、後は事件を終わらせるだけになった問題だった。

 

 そんな話の中、連絡が入る。

 

「響」

「うんっ」

「ジャックは母さんたちと家に居ろ、アタランテも本部待機を命じる」

 

 ジャック達は静かに頷き、二人して出て行こうとしたとき、

 

「響ッ」

 

 洸だけは静かに、

 

「俺は信じるだけかもしれないが………」

 

「お父さんっ」

 

 それには満面の笑みで、

 

「へいき、へっちゃらだよっ♪」

 

「………分かった、気を付けろ。アスカくん、すまないが、頼むッ」

 

「はいッ」

 

 そして二人は駆けだした。

 

 

 

 ――???

 

 

『相手は地下施設で何かしている模様、申し訳ないですが場所が場所だけに、ヒポグリフ使用不可。響さんの他には切歌ちゃんと調ちゃんと合流できそうです』

 

「分かりました。とはいえああ言った後で響前倒し作戦かッ」

「しょうがないよっ、大丈夫っ♪ へいきへっちゃらで頑張るよッ」

 

 インカムからの連絡を聞きながら、二人は地下の施設へと入ると共に、ギアを纏う。切歌と調もまた合流し、施設を進む。

 

「! いたぞ」

 

 すぐに身を隠し、様子を見ると、何かしている。

 

「壊してる………じゃなく、マジでなにしてるんだ?」

「ノイズもいる、相手はミカ?って子だね」

「火のパワータイプ………響頼りだ、いくぞ二人とも」

「はいデス」

「分かったよ」

 

 こうして四人はすぐに飛び出て、行動を開始する。

 

「ん、なんだゾ?」

 

 作業の中、すぐにミカへと向かっていく響。ノイズが壁になるが、それを断ち切る三人。そのまま突き進む。

 

 ミカは何していたか分からないが、平然と攻撃を初める辺り、なにしたかったか分からない。

 

 響が何をしていたか問いただすが、教える気は無いゾの言葉だけで、攻撃をしまくる。

 

(すぐに逃げない? ここでまだやることがあるのか?)

 

 とはいえ、響以外、場所が悪い。残りはスピードタイプであり、その機動力はここでは狭すぎ、正確には精密機器が多すぎて守りながらの為、生かせない。

 

 そこに、

 

「切ちゃんッ」

 

 切歌に向かって水晶の弾丸が放たれるが、

 

「斬」

 

 魔剣の一撃にて斬り、それに驚きながら乱射してくるが、必要なもののみ斬り続け、接近する。

 

「この距離ならッ」

 

「お前邪魔だゾっ、おとなしく解剖されろ~」

 

 両手の大きな手を広げ、火が燃え上がる。一歩踏み込みかけたが、避けるしかなく飛ぶ。

 

「逃がさないゾッ!!」

 

 爆炎をよける中、それに、

 

「!? まずいッ」

 

 機器が爆発し、まずいまずいと思いながら、剣を無限に取り出して壁に突き刺す。

 

「アスカっ」

 

「まずいっ、崩落し出したッ!!」

 

 どうも大黒柱らしく、辺りの重みで崩れかけている。ともかくそんなに知識が無い以上分からないが、剣を支え棒にするしかできないため、作っては支えるように補強する。

 

「? まずいのかだゾ。まあいいやっ」

 

 本人は気にせず、攻撃を続ける中、剣で補強するアスカへと迫る。

 

「させるかデスっ」

「まずはお前からだゾ装者ッ」

 

 水晶体が放たれ、イガリマを振るったが切れず、弾かれ、その場に吹き飛ぶ。

 

「ぐっ」

 

「切ちゃんッ」

 

 すぐに立ち上がろうとすると、炎が放たれるが、調が防ぐ。

 

 その様子を見ながら、剣を無限に突き刺しつつ、響が迫るノイズを倒す。

 

「ごめんアスカ、ここは」

「仕方ない、大剣作るッ、ぶん投げろッ」

「了解ッ」

 

 そして大剣をすぐに作り出し、少し驚きつつもすぐに、ぶん投げた。

 

 それに驚き、爆発して吹き飛ばした。

 

「あーもう、ひどいんだゾっ。もういいっ、帰るッ」

 

 そう言って、そのままノイズとも一緒にすぐに姿を消す。

 

「もう、女の子にあんなもの投げさせないでよ」

「悪かった………」

 

 その時、世界が揺れ、その場にひざを折る。

 

「アスカ」

 

「「!?」」

 

 その場でアスカは倒れ、響に支えられている。

 

 

 

 二人の装者は喧嘩していた。

 

 曰く、自分は守られている子供ではないと。

 

 だが、それを深く思わせる人は倒れた。

 

 夕暮れの中で強さとは何かと口論しつつ、している場合ではないと知りながらも、どうしてもそうなって街を歩いていると、

 

「デス?」

「あれって」

 

「あっ」

 

 立花洸と龍崎冬馬、二人してお酒を買って出てくるのを見つけてしまった。

 

「いくら狙われてないからって」

「何も言わないで出るのは不謹慎デスっ」

「あっはは、ごめんごめん」

「響達が忙しそうだし、アスカくんは魔力不足? で少し休めばいいって話だから、冬馬さんが」

「それもごめんな洸さん、ついつい」

 

 たっははと力無く笑う男。あのアスカの父親らしくなく、弱々しい雰囲気なのだが、不謹慎な感じではなかった。

 

 過去形なのは、いまこんなときに、お酒を買っていることに怒る二人。

 

「いやね、いい赤ワインあったな~って」

「アスカが二十歳になるのはまだまだ先デスっ」

「早すぎ」

「ははっ、アスカはね」

「………はい?」

 

 洸を初め、全員が首をかしげる中、

 

「いやね、もう一人はどうかなって」

 

 そう言って、こちらを見た(・・・・・・)

 

「君はどうだい?」

 

 そう言われ、渋々空間から姿を現す。まさか顔のない王(ノーフェイス・メイキング)が見抜かれるとは思ってもいなかった。

 

「………」

 

 ともかく、姿を現し、三人が唖然となる様を見ていた。

 

 

 

「やっぱりアスカの家族デス」

「うん………」

「あの家、気づかい、人の気配、動きとか察するの尋常じゃないんだよ………」

 

 洸はそう言いながら、安物のコップにワインを注ぎ、それを飲むサーヴァントと冬馬。洸は二人に缶ジュースを渡しながら、さすがに自分も缶ジュースだった。

 

 どこかの神社で、ワインを飲む。

 

「いつから見られてると思った」

 

 一口飲み終え、聞くと、

 

「え~きっと初めからとかじゃないかなって。だって君、僕らにアスカのこと知らせて、何か企んでるんだろ? なら初めからさ」

 

 それにそうかと答え、二人は驚きながら目の前の男を見る。洸は頬をかく。

 

「相変わらずですね………」

 

 自分が世間の重みに潰れかけたときも助けた家族である。

 

「せっかくだ、三回だけ質問に答えてやろう」

「三回で君の真名看破? 専門や知識知ってる息子ですらサジ投げてるのにな~」

 

 そう言いながら、眼鏡を拭きながら、二人は目の前のサーヴァントをよく見る。

 

(男か女でだって、判断材料デス)

(ならきっと役に)

「ああきっと性別は意味ないだろ、あまりに意味ないから聞かないからね」

「懸命だ、俺の真名に性別は意味は無い」

 

 二人はずっこけ、その様子をつまみにワインを飲むサーヴァント。洸は呆れている。

 

 そしてん~と言いながら、

 

「………君はアスカ、正確には前世来世含めてのアスカだろ?」

「それには頷こう、前世であり来世であり現在であると」

 

 それに三人は困惑する。前世も来世もわかる。いることは分かっている。だが、

 

(現在って)

(それじゃまるで目の前にいるのは)

 

 そのままワインを飲みながら、

 

「それじゃ、君はルーラーとかいうのと、セイヴァ―に成れないだろ。絶対」

「………ああ」

 

 さすがに驚いたように、そう頷く。

 

「意味を知っての質問か」

「ああ。裁定者ルーラーは、聖杯戦争だっけ? その審判者だろ。君は審判には成らない、救世主にもだ」

「なぜだ?」

「君は君を救わない、君は君を裁かないからだよ」

 

 それに舌打ちする。そしてワインを飲む。

 

「ど、どう言うことデス?」

「ん、そのままの意味だよ。ルーラーは中立でなければいけないけど、アスカって与えられた役目って、中立は無理だなって思ったんだ。むしろ逆、片方に絶対によるんだ。だからルーラーには絶対なれない。はっきり言えばただのセイバーとか言うけど、ぐらんど? だっけ。彼、それのセイバーだよ。ああカウントしないでくれよ」

 

 それを聞き、黙り込む一同。セミの鳴き声を聞きながら、セイバーは、

 

「まさか俺の正体を、息子の一面だからで、ここまで看破するのは、人類史始まって以来だ………」

「子供のことになるとね、親ってのはばかばかしいくらいに思いつめるんだよ。これでも僕、なにかできないかな~って思って、せめて君の正体なんだろ? で考えた、君は息子じゃね?って」

「………英雄王どころか、ガイヤとアラヤですら見抜かれてなかったのに」

 

 そう言ってワインを飲む。

 

「特別だ、ああそうだ。俺はグランド・セイバーであり、その二つのクラスに成れないからって、このクラスに当てはめられたんだ。冠位なんて飾りだからって、俺を冠位に当てはめやがって」

 

 投げやりに答えるが、装者である二人は驚く。

 

「いやいや、ビーストってもの倒す役目じゃないんデスか!?」

 

 ビースト、人類悪と言うのを倒す、世界の安全装置? そう言う存在らしいと思っていたが、それは、

 

「あそれたぶん、もういるから無理じゃんってことだろ」

「ああそうだよ、ビーストがいるときなんか、人として生きてる俺がいるから、召喚に応じられないからな」

 

 事実上、自分と言うグランド・セイバーは、ビースト対策に使えない。だってもう人としてそこにいる。ならば喚ばれない。

 

「ここまでわかるなんてな、んで最後の質問は」

「ん、ああいや、次で君のことわかるはずないから、もういいやってところかな。そもそも三回でほんと、分からないだろ。だって君は」

 

 

 

 そしてはっきりと、

 

 

 

「もうすでにビーストなり、なんなりとで対峙している人間としているんだろ? わかるはずないじゃないか」

 

 

 

 それに静かに、

 

 

 

「………ほんとあんた………魔術師のマスターじゃなくってよかったよ………」

 

 

 

 すでにその場にいる、すでにあるもの。もしかしたら、

 

「アスカはすでに君のことを誰よりも知っている。だって君を引き出したから、アスカは滅茶苦茶特別なんだろ? ならもう正体は分かった、君はアスカ、龍崎アスカだ」

「正解だよ、そして不正解。当たり前だね」

「ああ、龍崎アスカ。僕の息子の一面、二面性なんだから、絶対に当たらない」

 

 洸達は困惑している中で、彼だけ、父親としてそれを看破した。それにああと、冬馬は説明し出した。

 

「つまり彼は、英霊、グランド・セイバーとして召喚された、アスカであり、アスカじゃないアスカなんだよ。ややこしいけどね」

 

「ま、マジデス?!」

「それって………」

 

「当たり前だろ、格となる魂、そして無かった扱いだが、あったことにもしておかなければいけない記録と実績が龍崎アスカと言う魂の行いだ」

 

 だからこそと、間を置き、

 

「それを保存する場所が無ければいけない。俺は保存場所で生まれた意識体だ。だからこそ、俺は龍崎アスカが辿った異業と改善した記録の全てだ」

 

 肩で笑いながら、ワインを飲み干して立ち上がる。

 

「そろそろ本気で、あんたと話していると俺がなんなのは至られそうだ。それは困る、俺に至った俺は、まだ一人でいい」

「おいおい、あと一つ質問させてくれ。これ父親として知っておきたいんだ」

 

 それに舌打ちししながら、その場に立ち尽くす。仕方ないなと呟きながら、

 

「最後の問いかけだよ、グランド・セイバーこと、俺の息子アスカでもある君に」

「ああなんだ」

「………」

 

 

 

 いままで悠長に看破し続けた男は、悲しそうな顔をしながら、

 

 

 

「悪人とか、加害者とか言うけど、獣としては物語で言う悪党だけど、人間で言う悪党は………善の一面と変わらないかい」

 

 

 

 外れて欲しそうに尋ねてきた。

 

 

 

 だが、

 

 

 

「………あんたの危惧した通りだ、俺は悪党で罪人で殺戮者なのは確かだ。だが、あんたの思う意味での『悪』だ」

 

 

 

「………あのバカ息子、死んでも死にまくっても、誰かのために死に、手を汚す道しか選ばないってことか」

 

 

 

 知ったこの男を殺すべきかと思うが、それはできない。この男は俺の父親でもあるのだから。できないと思いながら笑う。

 

「バカだろ? だから俺は俺なんかしてるんだ」

 

 そうバカバカしいと思いながら、周りは理解できていない。当たり前だ、理解される方がおかしいんだ。

 

「?」

「と、冬馬さんっ」

 

「ああ洸さん、簡単ですよ………彼奴は自分より他人を優先して、加害者などになる人間。誰かを守るために自分を犠牲にする人間だったってことですよ」

 

 輪廻転生、何度生き、何度人生を歩こうと、結局進むのは同じ。

 

「魔竜であろうと、怪物、化け物であろうと、それは人から見れば悪だが、怪物側からすれば悪で無い。ただそこで生きるために人を喰らったりしただけだ。価値観が違うだけの俺だ」

 

「だけど人のアスカ達は違う。悪であり、罪であり、害と知りつつも、他人のために血で手を濡らした存在。それが人としてのアスカの悪か」

 

「そうだ、ここまで知られるのも本当に想定外だ。何のために、あの屑をアヴァロンから出られないように怪我を負わせたか分からないッ」

 

 実際は悪の面である自分がしたのだが。

 

「子への親の愛は偉大だっ、シェイクスピア辺りは喜びそうだ」

 

 大切な、愛する者の為、世界を犠牲にする殺戮者。悪の一面こそ、それが該当する。

 

「そもそも悪と正なぞ誰が決められる? もはや単純にそれの行いが関係ない者を巻き込むことが悪ならば、俺達は悪人だろうよ」

 

 それは投げ槍に答えつつ、呆れながら芝居かかったようにあざ笑う。

 

「平凡な人間が生んだ、偉大な子は、如何なる時代、如何なる人物であろうと他者のために生きて、他者のために」

 

「死に続けるか………」

 

 それに三人は驚く。その瞬間だけ、うっすら笑う。

 

「それが『俺』だ。救えるのなら血の海をいくらでも作り、骸の丘で磔にされ、罪過の中で正義をやらされる道化。それが俺の罪であり、象徴でもある。ここまでバレて、本当に俺が何なのかバレそうで怖い」

 

 意味が分からないという顔をする者達に、冬馬は静かに、

 

「俺の息子も同じだというのかい?」

 

「当たり前だろ、中身は自分の命優先にすればよけられた衝突事故を、他人を救うという一点で全て、そう人生全てを捨てた男だ。それは永劫に変わらない、断言していい、ここの俺もまた、誰かを救うために、早々に自分の全てを捨てて死ぬ」

 

 それにやっと切歌達は血の気が引いた。

 

 そうだ、この世界、前の人生は最後、他人をかばって彼は死んだ。

 

 そうなるように仕掛けられていたが、そうしなければ死なないからそうされたんだ。

 

「認められた? 違う、結局変わらない、星と霊長は変わらないから放置しているだけだ。すぐに、いずれ、死んで戻ってくる。だから監視する程度に変えただけ」

 

 自己犠牲、それが第一の行動理由。それが自分達の絶対共通点と言い放ちながら、告げておく。

 

「諦めろ、お前の息子は早く死ぬ」

 

 誰かを救うことを引き換えにと告げる。

 

「ふざけるな!!」

「アスカは私達が死なせないッ」

 

 それには二人の少女が吠えたが、気にも留めない。

 

「愛されてるな」

 

「あーうん、後ろから刺されて死ななきゃいいけど………」

 

 それには変にごまかさないで欲しいと怒鳴られ、洸はまあまあと落ち着かせる。そして俺の父親はそれを受け止めながら、

 

「お前はそう思うのか、アスカ」

 

「ああ。俺たちはいつだって、骸の丘で一人勝手に死ぬ」

 

 どういう意味か、二人が無理矢理でも聞き出そうと、ペンダントに手を掛けたとき、

 

「チッ、俺がいる時に動くか、世界ッ!!」

 

 爆炎が起き、赤い自動人形が町を襲った。




可愛い存在を愛し、かなり若く見える可愛い奥さん。

前世持ち、色々運命に使命やらなんやらを架せられている息子。

何も特徴の無い人ではなく、冷静に分析する父親。

なんだこの親子、チート親子だ。

そしてアスカくんの抑止力の意味の一つは『自己犠牲』です。

愛する何かの為に、平然と命や人生を捨てる存在。目的の為に自分の命すら一として消耗する何かとして見て、使う。

命を数としか見ない、もしかすれば自分の命だけはその数すら入っていないかもしれません。

響達から見ればそれは、その行いは正義ですか?

それが彼と言う知性ある状態での悪です。彼はそれで多くの悪役を演じました。

星も霊長もそれを知っているから放置してます。何もしなくても、長くて100やそこらでありますしね。

それが誰かの為に戦っていると知っていれば、すぐに戻る。そう判断しました。

そしていま表側はだいぶカットします、戦闘面は変わらないからです。メインは龍崎アスカと言う存在が関わって変化したシーンだけを書きます。

ちなみにキャロルが身体を直すと言うのは、自分の身体を物として見てるからです。この子も面倒な性格してる。

それでは、お読みいただきありがとうございます。

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