アスカくんの未来は守られるか。
番外編、最終です。
どうぞ。
ダ・ヴィンチちゃん検査中は誰も襲いかからない。当たり前だ、それでなにかあれば大変なので一定の距離まで下がる。どんな暗黙のルールなんだろう。
ダ・ヴィンチちゃんはカメラモニターで色々様子を見ながら、ふむと検査を受けているアスカを見る。
先ほどまで女神の愛を受けていて、血がだいぶなく、キス痕もある死んだ目の少年であり、同じ容姿の英霊から「ボクもキスするッ」と叫ばれている彼だ。
「今回のことよく引き受けてくれたね」
「やめて、バレたら大変」
言葉がだいぶすり減り、精神が限界点な彼。それでも同時に献血しつつ、飯食い水飲み、体力回復しながら、上着を着る。
「これであとは明日の朝帰れるから」
「逃げ切る」
そして通気口から出ていく彼。さてさて、どうなるか。
「三女神達、影の国の女王、平行世界の騎士王。そして数多の女傑達………大丈夫かな?」
気にせず、データを整理する。
「セイッバァァァァァァァァァァァァ」
「お前は敵かヒロインXッ」
ギリギリで避けながら、シャァァァァァァと威嚇してくる。
「セイバー・オブ・セイバーは渡しませんッ」
「いらんオレ抑止ッ、まちまちだって」
「セイバーはみんなそう言うんだぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「セイバークラスなんていっぱいだろッ、本家より人気ある癖になに言ってるんだってかオレは本家よりそっちが好きなんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
そんなやり取りの中、なら持ち帰りますッと言い、嶺に変わった。何故やッ。
だが味方もいた。
「沖田ぁぁぁ、敵はここかッ!!」
誠を背負う侍が、仲間を連れて現れたのだ。
無数の鉄砲隊の攻撃に、ヒロインXは舌打ちしながら離れていく。
「助けに来ましたよアスカっ」
「今回の戦、新選組並び信長軍が手を貸そうぞ!!」
『ノッブノッブっ』
「茶々もいるぞッ」
「うわあぁぁぁぁ、仲間が増えたっ。沖田は敵になるかなって思ったけどやった」
そう思った瞬間、足元から何かが生えた。生えたと思った瞬間、土方はオレごと斬らんとばかりに一閃を放つが、それはほぼ同時に避ける。
まるで避けられることを分かっていたかのように、何事もなく、それを斬ろうとした土方とアスカの連携に、驚く沖田と信長。
だが、一番驚いたのは、その刃を通さない鱗を持つものだった………
「ま・す・た・ぁ・♪」
もはや隠す気は無く、土方の刀を白い肌に纏う、己の鱗で弾き、大蛇、否、竜化した清姫だった。逸話超えてませんか彼女?
「邪魔しないでくださいな………何億回転生しても消えぬ絆をその魂に刻み付けるだけです………あぁ………だいじょうぶです旦那様♪ 頑張りましたッ」
「なに頑張ったのきよひーッ」
「………ぽっ」
そう言って、ほんと何頑張ったんだろうこの子。なんでそこまで赤面するんだろう。知りたくないし、藤丸立香も知りたくないだろう。ただ本格的に喰われると感じる。
そして、
「ん、ここにいたか」
「いやぁぁぁぁ、スカ師匠が本気の槍やッ。兄貴ぃぃぃ兄貴いぃぃぃぃぃ」
影の国、そこを収める女王が現れる。フル武装、やる気まんまんだ。
こちらを見て、うっすら微笑み、こちらを見る。その目は獲物を見つけたと語る瞳であると共に、不愉快だと言う目である。
「ほう、私より奴を呼ぶか………よし」
鋭い眼光が光る中、紅い双槍が交差するが、凶人の刃が受け止めた。
「おもしれぇぇぇぇぇぇ、新選組なめるなぁぁぁぁぁぁぁぁ」
『ノブブブブブフブブブ』
「そこをどけ東方の武士いぃぃぃぃぃッ」
高速戦闘が始まる、バーサーカーである人斬りと、影の女王の深紅の槍が交差する中、壁を破壊して、ある拘束具をつけた男が高笑いしつつ、とある始祖と共に現れた。
「あっはははははは、圧制者はどこだぁぁぁぁぁ」
「ロォォォォォォォォマアァァァァァァァァ」
そしてその場から飛びのくが、空中で軌道を変え、黄金の劇場に閉じ込められるのを回避した。
そこには赤き薔薇の皇帝が、ウェディングドレスを持っている。
「余が参ったぞ奏者ぁぁぁぁぁぁぁ」
その後ろには、バーサーカー以上にバーサーカー状態の、キャスターが、もう一人の自分を睨んでいた。
「アレハ私ノダ私ッ」
「それをキャット奪うのだ♪」
「呪詛ハ完成、後ハ撃チ込ムッ。ツイデ喰ラウっ。子供、イッパイ、はっぴーッ」
キャスターの動きじゃない動きで、バーサーカーと殺り合うキャス狐。そしてベオウルフなどのバーサーカーもまた現れた。
「あっはははは、いいなこれっ。いつも殺ろうぜおいッ」
そしてけが人多発の為………
「けが人はここに………殺してでも生かします………」
「藤丸立香あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、何人英霊と契約しやがったあの野郎ッ」
硝子の馬車が掻っ攫おうとしたり、ジャンヌが静かに参戦してたり、全身鎧のよく知る騎士も参戦したり、もう女子英霊が(本気)(印付けの為)(面白半分)で参戦してたり、カオスを通り越した何かが始まる。
のちにこの映像が魔術協会関係者に出回り、手を出してはいけない魔境と認定されたとかされなかったとか………
三姉妹の英霊も軽くスル―された。彼女たちも本格的に骨抜きにすると言って参戦してた。
「くっ、飯もロクに食べておらんはずなのに、なぜこうも逃げられる?!」
そんな中、アスカはただのマスターの来世では無い。抑止力、世界の代役者。
そしてマスターと違い、力を纏い、前線で戦う、転生の際に得た知識などを己の物にして戦い、死線を歩いていたのだ。
いまさら英霊、神霊、あまねく混乱の中でも、潜り抜けるように逃げている。
だがそれを楽しむのも英霊だった。
「クッハハハ、それはそれで面白いぞっ。それそれそれえぇぇぇ、捕まえたらたっぷり鬼種として可愛がってやろうっ」
「ルーンで回復はする、安心するといいぞ………」
「ん? ならもうみんなでいただくと言うのもありか」
混乱に次ぐ混乱、様々な陰謀が瞬間瞬間で変わりながら、仲間は、味方はノブ達しかいないのか………
とあるカルデア、地下施設ルームにて、やっと一息取る。
「………ふう、途中でシェイクスピアを盾にしたおかげで、心臓奪われずに済んだが、ここはもうどこだ?」
カオス過ぎる環境の中、師匠の槍をかわした。その瞬間、完全に標的として見られた気がしたが無視する。
カルデアスタッフの神経の異常性を知りつつ、地図を取り出す。そして、
「もぐもぐもぐ………」
まめ大福を食べる英霊を従えていた。
「頼むよえっちゃん、和菓子分は味方でね」
「安心してください、貴方の手作りはオルトリアクター回復には適してますので」
「お姉さんにまかちぇてね~♪」
まさかのマタ・ハリも味方(彼女曰く、私の願いは分かるでしょ? 叶えてくれるなら動くけど、嫌ならいいわ♪)です。
えっちゃんこと、ヒロインX(オルタ)は餌付けに成功し、味方にした。
その時、僅かに気配がしたとマタ・ハリが言うが、それ以前に気づく。
「おかあさんっ♪」
「こんにちわ~」
「トカナイさんですっ、別のトナカイさんですっ」
そう言って三人の少女が来て、静かに抱きしめる。
「娘たちが来た」
「お姉さん、胸貸してあげるわよ」
これは下心無く、本当に心配しての発言だが、娘達がいるから問題ないと伝える。余計に心配された。
恥ずかしいのか、それでも娘達は大人しく抱きしめられている。少し精神が安定して、完全に安定すればいいが………
無視して和菓子を食べているえっちゃん。同じものを三人にも食べさせつつ、少しだけ落ち着くオレ。安いな。
上から、色々なものを狙う狩人の叫び声を聞こえる。
「………マタ・ハリさん、捕まったらどうなるんだろう?」
「ん~お姉さんの経験上、きっと高校生の君には早いことになるでしょうね」
よしよしと抱きしめて、震える身体を落ち着かせてくれる。怖い。
「もうだめだ、血が足りねぇ………サーヴァントの動きの対応できねぇ」
「むしろよく持った方ですねもぐもぐ、黒セイバーの剣筋を白刃取りした時は驚きましたけどもぐもぐ」
けどそのあと、槍オルタの王様に捕まりかけたんですよ。
「………もういっそ受け入れたら楽になるかな………」
「お姉さん的にはやめて欲しいな、みんな引っ込みがつかないだけで、本気な子はいないわよ………(たぶん)」
いま顔を背けた時に何かつぶやいた。気にしない。
「初めては好きな子がいい………それは罪か?」
本格的にもう無理なのは分かりだしてきた、どうも本当に危ない、そして限界が来た。響達の顔がかすんできた。
「ん? かすむ?」
それに、はむはむとおいしそうにおはぎを食べている娘たちの一人を見る。
「………あっ、ライムちゃん」
「? なんですの?」
「お茶会しない?」
安全地帯を手に入れた。
「「ただいま~」」
藤丸立香とマシュが来ると共に、山の翁なども着た為、ついに乱世は終わりを告げた。
「………少し惜しいな」
「………」
「アスカ………」
数名本当に何かしようとしていたの? 鎖やら魔法の類の拘束具などを手に持ち、仕方ないと言っているけど、駄目だからねほんと。
師匠、その二つの槍に貫かれている、黄金の粒子になっている弟子はいいんですか?
「邪魔をするからだ馬鹿者」
こちらを見て、少しだけ舌打ちする。鬼系の子なども残念残念と酒を飲み始め、初めからなにも無かった的にふるまう者もいれば、気にせず残念がる者。
「ごめん、ほんと大丈夫」
「あとで泣くから平気」
スタッフたちは空を割らんばかりの喝采を送り、サーヴァント達も、そう言った反応をし終えてから、やはり契約している彼がいいらしいのでそっちに出向く。
アストルフォは説得した。
「アスカ………ボクは、ボクは」
「アストルフォ」
ぎゅと抱きしめたりはするけど、ウェディングドレス姿のアストルフォは、目を閉じ、唇を突き出すが、無理だとはっきり言う。
恥ずかしそうに頬を染めている。これで女子なら男は堕ちるだろうが、無理だ。
ひょっとしたら友情も無くなるだろうが、それは流す。
「アストルフォ」
「………生まれ変わったら女の子になる」
そう言って、ふんと決意するアストルフォ。色々無理なのだが、気にせず放置することにして、藤丸立香は、オレを見た。
――藤丸立香
色々すごいことになっているカルデアを見ながら、もう一人の自分に苦行をさせたことに頭を下げる。だって上着無いんだもん。トランクスだけだよ。
話を聞くと、固有結界に閉じこもってたみたいだけど、最後には清姫が突き破って乱入して、みんなが流れ込んだらしい。清姫、君にそんな能力があるなんてびっくりしたよ俺。
そのあともその場で何か、具体的に何する気だったのか聞かないで、何かしようとしたサーヴァント達から逃げたりして、パンツ一枚だ。
ついに本格的に終わると思ったときに、俺達が帰ったってアナウンスが流れた瞬間に逃げたらしい。みんなが心配で早めになったけど、別の意味になったよ。
「もう抵抗することもできなかったんだ………」
本当に早めに帰ってきてよかったよッ。お土産男性サーヴァント達だけにしようかなッほんと。
荷物はほとんど奪わ………無くなったらしい。衣類はもう彼に合う服が無いため、諦めるらしい。吸血痕あるけどいいんだろうか。俺が聞くことではないが………
ともかく、寒そうな彼は精神的にもう話を切り上げておく。そして、
「ジャックとアタランテを頼む、二人とも、アスカをよろしく」
「はいっ」
「うんっ♪」
そして二人の契約も戻せないが、これで戻せる糸口は、こっちの担当だ。それまではマーリンが様子を見たりしてくれる。
武蔵は泣きながら「べんがいざぜで~」と言い、三女神の姉達は鋭い眼光で俺達を見ていて、えっちゃんはパクパクとお菓子を食べていて、それでえっちゃん初め、やはり何名かアスカくんを異常な目で見ていて………やめよう。
俺は目頭を押さえている時、マーリンが入口を作ると、
「アスカっ」
立花響ちゃん? と言う、彼の幼なじみを初め、みんな待っててくれたらしい。彼女達にも頭を下げなければいけないと思ったとき、
「あっ、マスター♪」
そう、クロエが言ったとき、初め俺かと思ったが、俺を通り過ぎた。
「魔力ちょうだい♪」
そう言って、アスカくんに抱き着く、キスする、押し倒すを最後にする。
その瞬間、時間が停止したが、軽く済ませたクロエは静かに、
「ごちそうさま♪」
「………」
ウインクして、小悪魔百パーセントなクロエ。だけど俺達はそんなの気にしていられないよ。
壊れたブリキのように響ちゃん達を見て、俺は同じように、サーヴァント達を見る。
「ふむ、繋がっている間は問題無し、そこに物陰ありか………よし」
師匠がそう呟いた瞬間、今度は歌姫も交えて戦いが始まった………
数時間後………
「ん~~~ものすごくデリシャス♪♪ また来てくれないかしら」
「クロエえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ、この現状でそれを言うのッ」
肌がつやつやのクロエはそう言いながら、唇をなめる。
向こうがどうなったか、とりあえずセレナ?ちゃん、調?ちゃん、切歌?ちゃんから、とてつもない殺意を感じ取ったんだけど、本当に平気かな………
「とりあえず頑張って修理しないと………」
やはり帰ってすぐの仕事は、カルデア修復であり、おとなしく頑張る中で、
「先輩、がんばりましょ」
「ああ」
そう、大切な後輩にそう言い、もう一人の自分に感謝しながら、いまを過ごす。
――立花響
ボロボロのアスカはもう精神的に崩壊していた。
体中キスされた痕があるし、色々あったらしい。
ズボンも取られて、パンツだけ守った幼なじみは、いまクリスちゃんに銃口を向けられていた。私達は必至に止めていた。
その中でこの三日間の全てのことを聞いて、やっと落ち着いた。
「みんな、オレ、きれいなからだかな………」
「いまは休むといい」
「がんばったな、アスカ………」
衣類を渡す翼さん、奏さんは弟分なところがある分、気にせず抱きしめる。恥ずかしいとか言って嫌がりそうなアスカなのに、抱き着いて嗚咽をし出す。怖かったんだろうな、最後のあれ怖かったもんな。
無銘さんが、このままじゃ山脈が壊れるって言って、手に持つ槍が巨大化していくブリュンヒルデさんを止めようとしたりした。
その隙に白竜へ昇華したとか、清姫さんに驚愕する人たちがいて、もう私達じゃ分からない話ばかりで大変だった。
友里さんがお茶を出す中、事情を知るアタランテさんは複雑そうにしている。
そうだよね~と、せっかくだからと、未来と共に料理している。いまほとんどの人は反省の意味を込めて、調理室だ。
特にセレナちゃんはランスロットさんと、トリスタンさんを殴り倒したし、大変だった。っていうか早すぎたし、盾持った人も手を貸してたよなぜか。
「藤丸立香さん? とマシュさんだっけ? の、デートのために、カルデアってとこにいたんだもんねアスカ」
「だね、結局もう一人の自分のためって、少し複雑だけど」
未来はそう言う。そう、これはデートのためのお願いを聞いたアスカのわがままだ。
ホムンクルス、来るべき人理修復のためだけに用意された道具であったマシュさんのために、普通の人として、デートさせたい。それが藤丸立香さんの頼みであった。
それを聞いたアスカは「いいよ。ただ健全なもんにしろよ」と簡単に言った。
アスカからすれば、マシュさんの事情はゲームと言う形で知っているし、幸せになってほしい。だから聞いたのだそうだ。
その間、契約しているトップレベルのサーヴァントや安心できるアサシン、あの人で警護されつつ、情報の漏えいも気を付け、二人は三日間、デートしていたらしい。
普通の町、普通の女の子、ただ、好きな人と過ごす、普通の時間。
それをあげたいと、アスカ本人も言った。アスカからすれば、
「ゲーム的にも助かったとかじゃなくってな………ここで逃せば、他のサーヴァントがついてきて、普通はもう無理だろうから」
魔術師って言う生き物は、人理完全無視する。マシュさんのような対象は、研究材料としてかなりの値打ちだ。裏で狙っている者達が多い。
だから、普通な生活なんて、無理なんだと、だから、
「一回だけでいいから、好きな奴とただのデートっての、やらせてやりたい。これも手を貸すし」
「これなの? 私?」
と、マーリンさんに言いながら、この機会で普通の女の子させたいと言って、送り出した。
だけど、
「まさか血を吸われるわ、衣類取られるわ、お風呂侵入されるなんて………」
「あーけど、目、死んでたね………」
一番はアストルフォさんが、本気で恋する乙女のようにアタックしてきたときだけど、最後のキスは………
「文句はあとだ、いまは焼肉なりなんなりで鉄分とらせるぞ」
「デス」
「………」
クリスちゃんは不機嫌そうに、切歌ちゃん達も不機嫌だな~………
私も、嫌だなって思ったから同じだけど………
(どうしてそう思ったんだろう?)
首をかしげつつ、とりあえずこうして、アスカ地獄の三日間は終わりを告げた。
世・界・生・還
アスカくんは元の世界に無事に戻りました。やったね。
裏側はこういうことです、だからああいう人などは出てこなかったということです。
この作品の清姫さんは、純竜化と異空間破壊を会得しました。なぜだ?!
それでは、次回ついにGX編。頑張れアスカ、コミカルからシリアスなものが君に襲い掛かる。
では、お読みいただき、ありがとうございます。